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2019年に「犬の靴屋さんDogSoxx」を創業。動物用の靴の発明において特許を取得。愛玩動物飼養管理士2級。トイプードルの愛犬・ミルクとともに試作重ねている。
3Dプリンターで作る世界初の愛犬用シューズ、『DogSoxx』って何?
目次
- 「犬に靴は必要!メリットもたくさん」犬用靴を作る、千葉みつのりさん
- 「肉球を守りたい」トイプードルの愛犬に合う靴を探す中で、同じ悩みを持つ飼い主たちに出会う
- 起業未経験から「犬の靴屋さんDogSoxx」を創業。犬用靴の開発・商品化へ
- 『履かせやすく、脱げにくい』愛犬が嫌がらないオーダーメイドの犬用靴を3Dプリンターで開発
- もっと多くの犬たちが安心して散歩に行けるよう、効率的な犬用靴の作り方を模索中
- 原点は揺るがず「犬が自分の足で散歩を楽しみ続けられる」こと
「犬に靴は必要!メリットもたくさん」犬用靴を作る、千葉みつのりさん
犬用靴は、危険物や汚れなどから愛犬の足を守ってくれる役割があります。夏は肉球の火傷(やけど)防止やアウトドアでのケガ防止に、冬は寒さ防止やしもやけ防止にも役立ちます。
ここ2、3年は特に利用者が増えてきており、街中でも犬用靴を履いたワンちゃんを見かけるようになってきました。
しかし、まだまだ途上分野ではあります。「履かせるのが大変」「すぐ脱げてしまう」「愛犬が嫌がる」などの不便さがあり、犬用靴の使用を断念してしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
愛犬家歴22年の千葉みつのりさんも同じような悩みを持っていた飼い主の一人です。
千葉さんは、愛犬に合った靴探しをしていくうちに、犬用靴の開発にたどり着きました。
そして、2年間、試行錯誤を繰り返していくことで出来上がったのが『DogSoxx』。注文を受けてから作るオーダーメイドの、これまでにない犬用靴です。「愛犬の足にぴったりのサイズで脱げにくい!」「足袋みたいで、履かせやすい」と、SNSで評判の商品となりました。
2021年3月の販売開始以来、口コミで全国の飼い主さんに広まり、今や入手困難になるほどの人気を集めています。
「まさかこんなに注目してもらえるとは思っていなくて、正直、びっくりしています」と話す千葉さん。
世界初の犬用靴『DogSoxx』開発に至るまでの経緯や、犬用靴の普及にかける想いについて、創業者の千葉みつのりさんにお話を聞きました。
「肉球を守りたい」トイプードルの愛犬に合う靴を探す中で、同じ悩みを持つ飼い主たちに出会う
『DogSoxx』の開発・販売を手掛ける千葉みつのりさんは、東京・渋谷にあるマーケティング関連の会社の経営者。ものづくりとは縁遠かったといいます。
「もちろん靴なんて作ったことがありませんでしたし、3Dプリンターなんて実物を見たこともありませんでした」
そんな千葉さんが、犬用靴の開発を思い立ったのは2017年のこと。愛犬・ララちゃん(トイプードル)の足のトラブルがきっかけでした。
お散歩が大好きでとても元気な子だったララちゃんですが、晩年は脚の筋肉が衰えたことと、肉球が硬くなってしまったことが原因で、フローリングの床では滑って歩けなくなってしまいました。
「人間もそうだと思いますが、歩けなくなると、生活に張り合いがなくなるんでしょうね。明るい性格だったララが、すっかりふさぎ込むようになってしまって……。どうにかしてもう一度元気に歩いてもらいたくて、インターネットで情報を収集し、滑りにくさに定評があるというアメリカ製の犬用靴を購入しました。履かせてみると、本当に滑らなくなったんですよ! 久しぶりにしっかりした足取りで歩くララを見られて、本当に嬉しかったですね」
ところが、喜んだのも束の間、その犬用靴は一番小さいサイズだったにもかかわらず、ララちゃんの足には大きすぎて、少し歩いただけで脱げてしまうことがわかりました。
「何度履かせ直しても、すぐに脱げてしまって、脱げた途端にララが滑ってしまうので、怖くて履かせられなくなってしまいました」
結局、その後しばらくしてララちゃんは老衰で天国へ。
「最期はほぼ寝たきりになってしまったので、本当にかわいそうでした。もっと若いころから肉球をケアしてあげていたら、最期まで元気に自分の足で歩けたかもしれないな……と、すごく後悔しましたね」
ララちゃんとお別れしてから、もう1頭の愛犬・ミルクちゃん(トイプードル)には若いうちから靴を履かせて、肉球を守ろう、と決意したのです。
しかし再び靴探しを始めたものの、なかなか理想の靴には出会えませんでした。それでもあきらめず、ミルクちゃんに靴を履かせて歩いているところを観察しているうちに、脱げてしまう原因に気づいたのです。
「靴が脱げてしまうのは、足をまっすぐに伸ばしたとき。足首に遠心力が加わって、靴が飛んでいってしまいやすいんですよね。そこで、足首と靴の部分を固定できれば脱げなくなるだろうと考えるようになりました」
そこで千葉さんの頭に浮かんだのは、リーボックの『ポンプフューリー』というスニーカー。このスニーカーは、くるぶしの部分についているボタンを押して靴の中の空気を出したり入れたりすることができ、その日の好みに応じて足へのフィット感を変えることができるという優れもの。空気圧で足にぴったりフィットさせられるから、靴紐がないのに脱げにくい画期的なアイテムです。
「すごくいいなあと思ったのですが、やはり愛犬用の靴は小さすぎてポンプフューリーのような構造にするのは難しい。そこで、さらにいろいろ考えて、市販の犬用靴(シリコン製)に自分でマジックテープⓇを付けて固定できるようにしてみました」
すると、マジックテープⓇでしっかり足首部分が固定できたせいか、以前に比べて格段に脱げにくくすることに成功。ミルクちゃんも嫌がらなかったので、毎日の散歩にも履かせて行くようにしたそうです。すると、他ではあまり見かけないデザインだったこともあり、散歩の途中で出会う他の飼い主さんの注目を集め、「その靴、いいですね」と声を掛けられるようになりました。
「マジックテープⓇで固定して脱げにくくしてあることを説明すると、自分も欲しいという飼い主さんが多くて。市販の犬用靴に不満や不安をもっている飼い主さんがたくさんいることを改めて実感しました。特に夏のアスファルトの熱や路上の危険物から愛犬の足を守ってあげたいという声が多かったですね。私も同じ飼い主ですから、その気持ちは痛いほどわかります。皆さんのお話を聞いているうちに、ミルクに履かせているようなシューズを商品化すれば、皆さんの悩みを解消できるのではないかという気持ちが強くなっていきました」