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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
犬の中でも個体差の大きいポメラニアン。よその子と比較すると、愛犬は「ぽっちゃりしすぎかも?」「細すぎるかな?」と気になってしまう飼い主もいらっしゃるかもしれませんが、そもそもポメラニアンの適正体重は何kgなのでしょうか。そこで、ポメラニアンの適正体重や、肥満や痩せすぎのリスクや予防法などについて、chicoどうぶつ診療所 所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきました。
目次
- ポメラニアンの適正体重は?
- ポメラニアンの月齢別の体重の目安は?
- ポメラニアンの体重のチェック方法は?
- ポメラニアンの肥満度のチェック方法は?
- ポメラニアンの体重を管理するための運動方法は?
- ポメラニアンの体重を適正に管理するための食事方法は?
- ポメラニアンが肥満になると引き起こされる病気やケガは?
- ポメラニアンが肥満になると起こる問題行動は?
- ポメラニアンが痩せすぎるとどのような病気になる?
ポメラニアンの適正体重は?
ほかの犬と比べて、愛犬が大きいのか小さいのかは、飼い主心としては気になってしまうもの。しかし、ポメラニアンは個体差が大きい犬種なので、ほかの子との比較はあまり意味がないかもしれません。
ポメラニアンの体重には個体差がある
ポメラニアンはシベリア原産の大型犬・サモエドを品種改良して小型化された犬種で、体重には個体差があります。一般的なポメラニアンの標準体重は1.8~3.5kgとされ、ジャパンケネルクラブが定めた犬種標準では平均体重1.8~2.3kgとされていますが、4~10kg以上の大きな体に育つ子もいます。そのため、人間と同じように体重だけを気にするのではなく、体格に合わせたボディコンディションスコア(BCS)を参考にするとよいでしょう。
ポメラニアンの月齢別の体重の目安は?
成犬サイズになるまでの、ポメラニアンの月齢別体重の目安は以下の通りです。ただし、ポメラニアンは個体差の大きい犬種のため、必ずしもこの通りにはならないことを頭に入れておいてください。
- 生後40日ごろ:約700g
- 生後50日ごろ:約820g
- 生後70日ごろ:約1.2kg
- 生後80日ごろ:約1.4kg
- 生後3ヶ月ごろ:約2.0kg
- 生後5ヶ月ごろ:約3.4kg
- 生後7ヶ月ごろ:約3.5kg
ポメラニアンの体重のチェック方法は?
ポメラニアンの体重を計測する際のおすすめの方法をご紹介します。
自宅では抱っこして体重計へ
もっとも早くて確実なのが、飼い主がポメラニアンを抱っこした状態で体重計に乗り、飼い主の体重を差し引くという方法です。ポメラニアンだけを体重計に乗せようとしても、じっとしていなかったり、計測するまで時間がかかったりしますが、この方法であれば誤差も少なく確実に早く計測することができます。小さい子犬の場合は、洗面器などに入れて体重計に乗せてもスムーズに計れるでしょう。
成長期には定期的な体重変化の確認を
成長期(ポメラニアンでは月齢6ヶ月くらいまで)は体重が一気に増える時期です。毎日でなくてもよいので定期的に体重測定をし、どのくらいのスピードでどの程度体重が増えたかをメモしておくとよいでしょう。成長期以外では、ドッグフードなど食事内容を変えたときに体重が変化しやすくなります。その場合は1週間ごとに体重を計測し、食事の適正量を見つけてあげてください。
ポメラニアンの肥満度のチェック方法は?
個体差が大きいポメラニアンですが、「個体差だから」とぽっちゃり体型や肥満を放置していいわけではありません。愛犬が健康に暮らせるよう、ボディコンディションスコア(BCS)で、定期的に肥満度をとチェックしてあげましょう。
ボディコンディションスコアで肥満度をチェック
ボディコンディションスコア(BCS)とは、犬の体型別に5つに分類した指標で、BCS3が理想的とされています。どこに分類されるのかは愛犬の体を触ることでチェックできます。
BCS1(痩せ) | 肋骨、 腰椎、骨盤が外から容易に見える。触っても脂肪がわからない。腰のくびれと腹部の吊り上がりが顕著。 |
BCS2(やや痩せ) | 肋骨が容易に触れる。上から見て腰のくびれは顕著で、腹部の吊り上がりも明瞭。 |
BSC3(理想的) | 過剰な脂肪の沈着なしに、肋骨に触れる。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られる。横から見て腹部の吊り上がりが見られる。 |
BCS4(やや肥満) | 脂肪の沈着はやや多いが、肋骨は触れる。上から見て腰のくびれは見られるが、顕著ではない。腹部の吊り上がりはやや見られる。 |
BCS5(肥満) | 厚い脂肪におおわれて肋骨が容易に触れない。腰椎や尾根部にも脂肪が沈着。腰のくびれはないか、ほとんど見られない。腹部の吊り上がりは見られないか、むしろ垂れ下がっている。 |
出典:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」
ポメラニアンの体重を管理するための運動方法は?
ポメラニアンはよく動き回る活発な犬種です。体重管理には運動が有効でしょう。
1日の散歩の量は?
適度な運動として、毎日の散歩は欠かせません。適度の目安として、1日2回、1回につき20~30分程度が理想的ですが、必ずしも1日2回しなければいけないというわけでありません。愛犬の様子を見ながら散歩の量を調整してあげてください。芝生やアスファルト、石や木など、さまざまな種類の道の上を歩くと、脳の活性化にもつながるでしょう。
散歩で足りない場合は室内遊びを
散歩だけでは運動量が足りていないと思われる場合、室内で知育玩具を使用したり、家の中に小さなアジリティを作って遊ばせたりするとよいでしょう。ほかにも、バランスボールやバランスディスクなどを使って筋トレをさせても、運動不足を解消できます。
運動量に合わせて食事量を調整
毎日同じ量を決まって出すのではなく、例えば遠くまで散歩をしたりよく遊んだりした日はごはんを多めに出してあげるなど、運動量に合わせて食事量を変えるとよいでしょう。
ポメラニアンの体重を適正に管理するための食事方法は?
ポメラニアンを適正体重にキープしてあげるためには、運動のみでなく食事管理も欠かせません。月齢ごとの適切な食事量を見てみましょう。
月齢ごとの食事量の目安は?
ポメラニアンの月齢別の食事量の目安は以下の通りです。
- 生後3ヶ月ごろ:約50~70g
- 生後4ヶ月ごろ:約70~80g
- 生後6ヶ月ごろ:約85~90g
- 生後6ヶ月以降:約60~90g
生後6ヶ月頃までは成長期であり、混合ワクチンや避妊手術の相談などで定期的に動物病院に通うことが多い時期でもあります。そのため、病院へ行く度に体重を測定し、急激に増えていないかなどをチェックしてもらうとよいでしょう。また、生後6ヶ月以降、特に避妊去勢手術を終えた後は体重が増えやすくなります。こまめに体重測定をし、運動量や食事量のバランスを心がけることが重要です。
1日に必要カロリーの計算方法は?
犬が1日に必要なカロリーは、次の計算式で算出できます。
犬が1日に必要なカロリー=安静時のエネルギー要求量(RER)×ライフステージ
RERとライフステージの数値は以下の通りです。
安静時エネルギー要求量(RER)=70×犬の体重の0.75乗
犬のライフステージ
- 生後4ヶ月まで:3.0
- 生後4ヶ月から1年まで:2.0
- 避妊・去勢済みの成犬:1.6
- 避妊・去勢なしの成犬:1.8
- 7歳以上で避妊・去勢済みの中高齢犬:1.2
- 7歳以上で避妊・去勢なしの中高齢犬:1.4
- 肥満傾向の成犬:1.0〜1.2
食事は複数回に分けて与える
胃腸が弱い犬や、エネルギーをすぐに使ってしまうような子犬には、1日の食事回数を多めにしてあげるとよいでしょう。また、離乳後に柔らかい食事から硬い食事(ドライフード)に移行する際は「少しずつ」混ぜていくと、消化器の負担軽減にもつながります。
成犬になってからの食事回数は、各家庭のライフスタイルに合わせつつ、愛犬にとってベストな回数を見つけてあげることが重要です。たとえば、1日1回の食事でも問題ない犬もいれば、3回のほうがよい犬など、犬によってかなり差があります。
体重よりもボディコンディションスコアが重要
成犬になってからは、あまり体重にとらわれすぎないほうがよいでしょう。なぜなら、排泄物の量によっても体重は増減するからです。普段はボディコンディションスコアを確認し、体重測定は1ヵ月に1回程度でもかまいません。
ポメラニアンが肥満になると引き起こされる病気やケガは?
ポメラニアンが肥満になると、次のような病気・ケガが引き起こされる可能性があります。
糖尿病
ポメラニアンが糖尿病にかかると、初期症状として多飲多尿、食欲不振、体重減少、嘔吐などの症状が起こります。症状が進行して重症になると、神経障害や昏睡などを起こし、最悪の場合は死に至るケースも考えられます。合併症で、白内障や腎疾患、肝疾患、細菌感染による皮膚の疾患などを引き起こすこともあるでしょう。
気管虚脱
気管虚脱は小型犬に見られる呼吸器系の病気です。何らかの原因で気管が潰れたような形になると、呼吸が苦しくなってしまったり、咳や異常な呼吸音、ひどくなると呼吸困難に陥ったりすることもあります。肥満になると気管が圧迫されやすくなり、気管虚脱になる可能性が高くなるため注意しましょう。
心臓病
ポメラニアンが肥満になると僧坊弁閉鎖不全などの心臓病になる可能性が高まります。左心室から左心房へ血液が逆流し、正常な血液の循環を維持ができなくなり、肺組織にうっ血や低酸素状態が起きかねません。初期段階では症状は現れないものの、重症化するとゼーゼーと喉につかえるような咳をしたり、肺水腫や呼吸困難を起こしたりする可能性もあります。
肝臓病
肥満は脂肪肝などの肝臓病に原因になることもあります。初期症状はありませんが、重症化すると肝硬変になり食欲不振や吐き気、下痢や黄疸などを引き起こします。
膝蓋骨脱臼
ポメラニアンなどの小型犬がなりやすい膝蓋骨脱臼は、膝の皿である膝蓋骨が内側や外側に外れてしまうことで足を浮かせて歩いたり、重症化すると足を引きずったり歩けなくなったりする疾患です。肥満になると膝蓋骨脱臼になるリスクがさらに高まります。
前十字靭帯断裂
前十字靭帯断裂は、大腿骨と下腿骨をつなぐ太い靱帯である前十字靭帯が何らかの原因で切れてしまい、膝関節が不安定な状態になることで半月板や関節軟骨に損傷が起こり、痛みを伴う疾患です。肥満の犬の場合、ジャンプをして着地する瞬間に前十字靭帯が断裂することが多いようです。
ポメラニアンが肥満になると起こる問題行動は?
肥満は健康被害を引き起こすだけではなく、問題行動を引き起こす原因になることもあります。
攻撃的になる
肥満が攻撃的な性格に直結するわけではありませんが、肥満から病気やケガなどを発症し、そのストレスによって、ほかの犬や飼い主に対して攻撃的になってしまうことがあります。
散歩に行きたがらない
肥満で体が大きくなることで動きが制限されたり、関節に負荷がかかることによる痛みが原因で思うように動けなくなったりしてしまうと、散歩に行きたがらなくなります。そうなるとさらに肥満になるという悪循環に陥るでしょう。
盗み食い・ゴミを漁る
通常の食事量では満足できなくなると、家にある食べ物を盗み食いしたり、散歩中にゴミ漁ったりすることで食欲を満たそうとすることがあります。
飼い主が呼んでも無視をする
肥満によって体が重く思うように動けないせいで、飼い主に名前を呼ばれても動きたくなくなり無視してしまうようになります。
ポメラニアンが痩せすぎるとどのような病気になる?
肥満も健康によくありませんが、痩せすぎもよくありません。ポメラニアンが痩せすぎの場合、次のような病気になる可能性があります。
免疫力の低下
痩せることによって筋肉量が低下すると、体の熱を作り出せなくなってしまいます。その結果、体温低下によって免疫力が下がることが考えられます。
肝機能の低下
痩せすぎの原因が極端なダイエットの場合、肝臓に負担がかかり、肝機能の低下を招くことが考えられます。肥満の犬を痩せさせる場合は、獣医師指導の下で適切なダイエットを行うことをお勧めします。
低血糖
痩せると体内の血糖値は低くなります。その結果、動けなくなる、元気がなくなる、後ろ足に麻痺が出る、痙攣を起こしてしまうなどの症状が起こる可能性があります。
基礎疾患がある可能性
運動量や食事量を変えていないのに痩せてしまう場合には、基礎疾患が関係している可能性があります。早めに病院を受診しましょう。