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ろろの犬猫部屋所属。麻布大学獣医学部獣医学科卒業 / 動物病院で3年間臨床医 / 現在は横浜市の福祉施設にて研究事業と臨床医として働きながら保護猫活動に従事
愛犬の鼻の毛や周囲の毛がはげているのに気づき、どうしたらいいか迷った経験はありませんか?
老化やけがなどさまざまな原因で毛が薄くなったりはげて見えたりすることもありますが、皮膚病などの病気が原因の可能性もあります。
犬の鼻がはげる原因や考えられる病気、対処法について解説します。
目次
- 犬の鼻や周囲の毛が抜ける原因
- 病気が原因で犬の鼻がはげる場合も
- ケアするときの注意点と受診が必要な脱毛の症状
- まとめ
犬の鼻や周囲の毛が抜ける原因
人間と同様、犬も加齢により毛包や皮膚の機能が低下すると、毛が細くなり薄毛になります。
老化のほか、けがなどによって鼻にはげが発症することもあります。また、毛の成長には、亜鉛、ビタミン、アミノ酸、必須脂肪酸などの栄養素が必要で、栄養不足によって脱毛が生じているのかもしれません。
そのほか、ストレスによって鼻を壁にこすりつけているケース、おやつを隠すために日常的に鼻をカーペットにこすりつけて毛がこすれてなくなってしまうケースもあります。ストレスの場合は、その原因が軽減されることで抜け毛がおさまります。
犬の鼻がはげる原因はさまざまであり、原因によって治療法も異なります。犬の鼻周辺がはげているのに気づいたときは、まずは動物病院を受診し、心身の健康状態に問題がないかを確認しましょう。
病気が原因で犬の鼻がはげる場合も
老化やけが以外では、寄生虫や感染症、紫外線などが原因となって病気を発症しているケースが考えられます。皮膚病の一つといえますが、皮膚病の症状には毛が抜ける以外にもフケやかゆみを伴うケース、鼻以外の部分に現れるケースなど個々に症状は異なります。ここでは考えられる病気のなかで代表的なものを紹介します。
膿皮症
特徴的な症状は発赤や強いかゆみ。皮膚の常在菌が異常に増殖して起こる細菌感染による皮膚病です。不衛生な環境や外傷、合わないシャンプー、強いブラッシング、免疫力の低下などがきっかけとなって起こります。湿度が高い梅雨時や夏季に多い傾向があり、犬種を問わずかかる可能性がある病気です。
患部を足で引っ掻き、舐めると短期間で広がります。重症化すると皮膚の深い部分に感染が起こり全身状態の悪化につながる場合もあるため注意が必要です。治療は抗生剤や抗ヒスタミン剤の外用薬でかゆみを抑え、薬用シャンプーを用います。全身に症状が出ている場合は抗菌薬を投与します。
アトピー性皮膚炎
特定のアレルゲン物質が皮膚に作用し免疫が過剰に反応することで起こる皮膚疾患です。犬のアレルゲンとなるものとしては食べ物(卵、牛乳など)や花粉、ハウスダスト、家ダニ、ノミといった寄生虫、食器、じゅうたんなどさまざまあります。
主な症状は発赤としつこいかゆみで、顔や脇の下、指の間、お腹まわりなどに左右対称に出現します。食べ物によるアレルギーの場合は下痢や嘔吐などの症状が生じる場合もあります。
柴犬やウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなど遺伝的にこの病気にかかりやすい犬種もいます。アレルギーがあるかどうかは血液検査や皮膚検査でわかるので、気になるときは動物病院で調べてもらいましょう。治療法はいくつか種類があり、一般的には抗生剤や抗ヒスタミン剤、ステロイドなどのかゆみを抑える薬や薬用シャンプーなどが処方されます。日常的にアレルゲンに触れないよう飼い主が気を付けることも大切です。
マラセチア皮膚炎
犬の耳や口、肛門などに常在しているマラセチアというカビ(真菌)の増殖によって発症する皮膚炎です。免疫力の低下や皮膚の状態に異常が出たときに発症します。症状はかゆみ、脱毛、赤み、皮膚の肥厚、色素沈着ほか、皮脂の分泌による独特の脂漏臭が生じます。外耳炎を発症することもあり、その場合は耳のあたりをよくかいたり耳垢が増えたりします。
梅雨の時期に発症しやすく、生まれつき皮脂の分泌が多いトイ・プードル、チワワ、マルチーズ、柴犬などの犬種がなりやすいといわれています。治療は抗菌作用のある内服薬および薬用シャンプーによって行われます。外耳炎がある場合は内服薬にプラスして点耳薬が処方されます。
皮膚糸状菌症
皮膚に常在する糸状菌によって発症します。全身に発症する可能性があり、特に顔や鼻周辺、肢に円形のはげができるのが特徴的です。この病気の犬に接触すると犬にも人間にも感染する人獣共通感染症なので注意が必要です。換毛期や免疫力が低下しているときにうつりやすいといわれています。
治療は抗真菌作用のある内服薬や、薬用シャンプーによる治療が行われます。
コリーノーズ(日光性皮膚炎)
長時間、日光に当たることで発症する皮膚病で、鼻先やその周辺が発赤したりはげたりといった日焼けのような症状が出ます。コリーだけでなく、シベリアン・ハスキーやジャーマン・シェパード・ドッグなどに発生しやすい疾患です。
治療の際はステロイド剤や抗炎症剤の投薬が行われますが再発が多いともいわれています。そのため、紫外線から愛犬を守る工夫も必要です。
その他の病気
犬の鼻がはげたときに疑われる病気としては、皮膚病以外に甲状腺機能低下症などのホルモン性疾患、自己免疫性疾患、遺伝性疾患によるものもあります。
また、鼻がはげやすい犬種としては、顔に深いしわがあるブルドッグやペキニーズなどの犬種、雪国生まれで遺伝的にメラニン色素の少ない犬種がなりやすいといわれています。
ケアするときの注意点と受診が必要な脱毛の症状
犬の鼻は皮膚病によってはげることがあり、傷があったり免疫力が落ちたりすると皮膚の常在菌などから感染症になり皮膚病につながりやすいことがわかりました。
顔に深いしわがある犬種は特にしわに汚れが溜らないようケアの際に注意しましょう。また、シャンプーの回数が多い、皮膚をこすりすぎるといったケアの仕方によっても細菌感染しやすくなります。家でシャンプーをする場合はしっかりとシャンプー液を洗い流しましょう。生乾きは細菌繁殖のもとになるためタオルドライで水気を切った後にドライヤーでしっかり乾かすことも大切です。
脱毛部、または全身的に以下のような症状がある場合は動物病院を受診しましょう。
- 地肌が見えている
- 部分的、左右対称の脱毛
- かゆみ、発赤、フケ、臭いがある
- 皮膚から分泌液が出ている
- 元気がない
- 手足、顔にむくみがある
- ハアハアと呼吸することが増えた など。
愛犬の毛が抜け、強いかゆみや発赤、フケ、臭いを伴う場合は早めに受診するようにしましょう。治療が必要ない場合もありますが、なかには病気が隠れている場合もあります。かゆみは犬にとってもつらいものです。軽い皮膚病であれば塗り薬や薬用シャンプーなどの治療でよくなります。
まとめ
愛犬の鼻の毛がはげていたり、抜け毛や脱毛していたりしたときは、皮膚病やそのほかの病気が隠れている場合があるので、動物病院を受診して適切に対処しましょう。ブルドッグ、パグなど顔のしわが深い犬種はケアが不十分だと皮膚病になりやすくなることもあるため、家でシャンプーする際などは気を付けましょう。また、メラニン色素が少ない犬種は日光に当たることで発症する皮膚病もあるので紫外線を避ける工夫も大切です。