更新 ( 公開)
chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
長い口ひげと眉毛が愛らしいミニチュア・シュナウザー。忠誠心が高く、好奇心旺盛という親しみやすい性格もあり、とても人気の高い犬種です。すでに飼っている方もこれから飼う方も、長い時間を共に過ごすためには、この犬種ならではの特徴や注意すべき病気などの知識を持ち、健康に気を遣ってあげることが大切です。今回は、chicoどうぶつ診療所の獣医師・林美彩先生に教えていただいた、ミニチュア・シュナウザーの平均寿命や長生きの秘訣、かかりやすい病気やその予防方法などを詳しく解説していきます。
目次
- ミニチュア・シュナウザーの特徴は?
- ミニチュア・シュナウザーの平均寿命は何歳?
- ミニチュア・シュナウザーの年齢による心と体の変化は?
- ミニチュア・シュナウザーを長生きさせる秘訣は?
- ミニチュア・シュナウザーの食事に関して気をつけるポイントは?
- ミニチュア・シュナウザーがかかりやすい病気とその予防法は?
- ミニチュア・シュナウザーの老化のサインは?
- ミニチュア・シュナウザーの老化のサインが見られた時の飼い主の対処法は?
ミニチュア・シュナウザーの特徴は?
長い口ひげと眉毛がチャームポイントのミニチュア・シュナウザー。立ち上がった耳の先端部分が少し垂れている半直立耳で、被毛は針金のような粗い毛質のワイヤーコートが特徴です。体高は30~35㎝ほど、体重は4~8㎏(平均で7㎏前後)ほどの小型犬です。好奇心旺盛で活発、勇敢でありながら警戒心が強い性格なことから番犬にも向いています。飼い主さんに対する忠誠心と忍耐強さをあわせ持っており、社交性もあるので子供やほかのペットとも比較的仲良くなれます。
ミニチュア・シュナウザーの年齢による心と体の変化は?
ミニチュア・シュナウザーが成長するとともに、飼い主が注意するべきポイントも違ってきます。どのような変化があるのか年代別にみていきましょう。
子犬期(〜10ヶ月ごろまで)
ミニチュア・シュナウザーの特徴のひとつである半直立耳ですが、生まれたときには垂れ耳で、成長とともに立ち上がるのが一般的です。また、子犬期に社会化をしっかり行えるかどうかが、それ以降の性格形成にも大きく影響してくるので、小さいころから多くの犬や人と触れ合っておくことが重要です。知能が高い犬ですので、この時期にトレーニングやしつけなどを行っておくと身につきやすいでしょう。
青年期(〜6歳ごろまで)
体がしっかりとできあがり、運動量も増えてくる時期です。繁殖を行わない場合には、この時期に避妊・去勢を行うとよいでしょう。
壮年期(〜10歳ごろまで)
少しずつ老化現象が見られてくる時期です。毛色がブラックやソルト&ペッパーの場合、毛色が少しずつ薄くなり始めます。
シニア期(11歳ごろ〜)
代謝が落ちやすくなるため、肥満に気をつけてあげましょう。運動能力も落ちてくるので段差の昇降は控え、視力の低下が見られてきたら目の高さにあるものは片づけるなど、目に入って傷つけないようにする工夫が大切になります。
ミニチュア・シュナウザーを長生きさせる秘訣は?
愛犬を長生きさせるために飼い主ができることもあります。以下のポイントを参考にしてください。
子犬の頃から定期的に健康診断を行う
病気の早期発見のためにも、年に1回のドッグドックは受けたほうが良いでしょう。シニア期に入ったら半年に1回程度、健康診断を受けると安心です。
ストレスケアを行う
ストレスを与えないような生活が大事ですが、犬種ごとの明確なストレス要因は一概には特定できません。愛犬が何をストレスと感じるのかを飼い主が気づいて、対処してあげることが必要です。一般的なストレス発散方法として、適度な運動を取り入れることは有効と考えられます。
被毛を健康に保つ
ミニチュア・シュナウザーは、比較的抜け落ちにくい被毛ではありますが、適度なブラッシングを行うことで、毛玉や皮膚炎のリスク軽減につながります。
運動(散歩)を行う
適度な運動は体を丈夫にするだけでなく、ストレス軽減にもつながります。1日に2回、40分ほどの散歩を取り入れると良いでしょう。ミニチュア・シュナウザーは作業欲が強い犬種なので、知育トイなどを使った脳トレもおすすめです。
適切な体重管理
体重の変動を管理することも健康維持の秘訣です。犬の体型を段階的に評価するボディコンディションスコア(BCS)を参考にしながら、日々の食事での摂取カロリーと運動での消費カロリーのバランスを保つようにしましょう。
ケガを防ぐために生活環境を整える
シニア期になるとケガをしやすくなり、ケガが原因となって体調を崩すことも考えられます。室内で段差のない環境づくりをするなど、不安な要素を取り除いておくと安心です。
口内環境のケア
口腔内を清潔に保つことは全身の健康につながります。毎日の歯磨きケアや、口腔内ケアのサプリメントなどを取り入れると良いでしょう。
ミニチュア・シュナウザーの食事に関して気をつけるポイントは?
ミニチュア・シュナウザーは肥満になりやすい犬種だといわれています。肥満にならないような食事には、栄養バランスがとれていることはもちろん、その日の運動量によってを食事量をコントロールしてあげることが重要です。適切な食事量や食事内容は個体差があり、犬が置かれている環境によっても変化しますが、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると肥満になりますので、あまり運動をしなかった日には食事量を減らすなどして加減してあげましょう。
ミニチュア・シュナウザーがかかりやすい病気とその予防法は?
ミニチュア・シュナウザーにはいくつかかかりやすい病気があるので、飼い主が注意してあげると良いでしょう。
若年性白内障
白内障は、レンズの役割を果たす水晶体が白濁して目が見えにくくなり、進行すると失明するリスクのある眼疾患です。若年性白内障は5歳以下に見られ、遺伝が関係していると考えられており、残念ながら予防法はありません。
尿路結石
尿路結石の原因は、食事バランスの偏りや飲水量の不足、ストレス、細菌感染、肝機能の低下、体質など、さまざまなものが考えられます。適切な食事を与えること、しっかりと水分をとらせることで、定期的な排泄を促すことが予防につながります。
外耳炎
外耳炎は、細菌や真菌によるもの、耳谷などの寄生虫、アトピーやアレルギー性疾患などさまざまな原因によって起こる外耳道の炎症です。一般的に起こる外耳炎のほとんどは多湿によるもので、湿度が高い梅雨の時期に悪化しやすいため、室内の湿度管理や、定期的かつ適切な耳掃除を行って通気性をよくすることがポイントです。
シュナウザー面皰(めんぽう)症候群
ミニチュア・シュナウザーに特有の、ニキビのような発疹ができる疾患です。毛穴の皮脂汚れや皮脂の詰まりによる炎症が原因となって発症し、二次的に細菌感染を起こして皮膚炎を併発する恐れもあります。予防には、適切なシャンプーと良質な脂質を摂取することが重要です。新鮮なオメガ3脂肪酸(亜麻仁油やエゴマ油など)を食事にトッピングするのがおすすめです。
糖尿病
犬の糖尿病には、膵臓が働かなくなりインスリンを作れなくなることによるⅠ型と、膵臓から分泌されたインスリンを体が受け取れなくなることで起こるⅡ型があります。Ⅰ型は加齢や遺伝、膵炎などの疾患が原因、Ⅱ型は肥満や運動不足が原因で起こります。一般的に、犬はⅠ型のほうが発症しやすいといわれていますが、ミニチュア・シュナウザーは肥満になりやすい犬種でもあるので、Ⅱ型にも注意する必要があります。毎日の適切な食事と運動、ストレスフリーな生活を送らせてあげることが予防につながると考えられます。
乾燥性角結膜炎
人でいうドライアイと同じ症状で、涙の量や質が低下することで起こる炎症です。予防するには、涙が流れやすいように瞼を温めて優しくマッサージをして涙の油分分泌を促し、部屋の湿度をある程度保って目の乾燥を防いであげることが大切です。
胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)
胆嚢内に過剰な粘液が蓄積することによって、胆汁の排泄が滞ったり、胆嚢が破裂してしまったりする疾患です。ミニチュア・シュナウザーは脂質代謝の異常が見られやすいため、この疾患や胆石(たんせき)症など、胆嚢疾患が起こりやすい傾向にあります。良質な脂質の摂取や適度な運動を取り入れることが予防につながります。
ミニチュア・シュナウザーの老化のサインは?
愛犬に以下のような行動が見られたら、それは老化のサインかもしれません。
睡眠時間が増えた
起きている時間と寝ている時間の比率が変わり、お散歩に行かなくなる、食事量が減るなどの症状も見られてくることがあります。
壁にぶつかる
視力低下により、今までぶつからなかった場所でぶつかったり、つまずいたりすることが増えます。
階段の上り下りに苦労する
関節の可動域が狭くなったり、筋力が低下したりすることで、階段や段差の昇降が難しくなってきます。同じ理由で、散歩を嫌がるケースも見られます。
毛つやが悪い(被毛の色が薄くなる)
肝臓機能の低下が、毛つやや被毛の色の変化として現れることがあります。
おしっこの回数が変化した
排尿回数が少なくなる場合もあれば、多飲多尿の症状が見られる場合もあります。どちらにしても腎臓や膀胱(ぼうこう)などの泌尿器疾患やホルモン系疾患が関連している可能性が考えられます。
ミニチュア・シュナウザーの老化のサインが見られた時の飼い主の対処法は?
足腰の弱りや視力の低下などが見られた場合には、ケガを防ぐために、室内の段差をなくす、目に当たるような位置にある物をどかすといった工夫が必要です。シニア期に入るにつれて、若い時よりも食事内容には気を付け、栄養をしっかりと摂れるようなものにしましょう。消化酵素が不足して消化吸収能力が落ちている場合もあるので、補助的にサプリメントなどを取り入れるのもおすすめです。また、筋力を落とさないよう適度な運動を取り入れることや、知育トイなどを使って、認知症や痴呆など、シニア期に特有の症状のケアをするのも有効です。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。