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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
室内で犬を飼うときに、気になるのは家のなかの環境ではないでしょうか。犬の安全を確保しながら、飼い主も快適に過ごせるようにしたいものです。今回は、室内で飼うときに犬をケージに入れっぱなしにするのはNGなのかについて解説します。愛犬にとって心地よい環境を整えるために、正しい知識を知っておきましょう。
目次
- 犬をケージに入れっぱなしにするのはNG
- ケージやサークル、クレートの違い
- 室内犬をケージに入れっぱなしにしてはいけない3つの理由
- 室内犬をケージに入れたほうがいい場合
- 犬を室内で放し飼いするには
- 犬の留守番に便利なグッズ
- まとめ
犬をケージに入れっぱなしにするのはNG
犬をケージに入れっぱなしにするのは、どのような事情があってもNGです。犬の心身に悪い影響があるため、決して犬を入れっぱなしにしないようにしましょう。室内犬だから、小型犬だからといってケージに入れっぱなしにしてよい理由にはなりません。犬をケージに入れっぱなしにしておくのは犬にとって大きな弊害があります。犬を飼う際は、ケージに入れっぱなしにしなくてもよいように、室内環境を整えましょう。
ケージやサークル、クレートの違い
犬をケージに入れっぱなしにはできませんが、犬の安全を確保する際、一時的にケージやサークル、クレートに入れることがあります。それぞれどのように違うのでしょうか。飼い主や犬の性格や居住スペースによってケージやサークル、クレートをどのように取り入れればよいかは変わってくるため、それぞれの特徴や違いを把握しておきましょう。
ケージ
鳥かごのように、四方が囲われていて入口があるタイプをケージと呼びます。サークル内に設置することで寝床としても使用できるグッズです。ケージは犬がリラックスできる居場所として活躍します。大きさや形はさまざまな商品があるので、室内の広さや設置する場所に合った商品を選ぶようにしましょう。
サークル
天井が空いているタイプの囲いで、自由に囲いたい場所を決められるのがサークルです。サークルで囲って、犬を危険な場所に近づけないようにできます。設置する範囲の自由度が高いのがサークルの特徴といえるでしょう。とくに居住スペースが広かったり、台所や他の場所へつながっていたりする場合はサークルで囲って入れないようにします。サークルで囲いたい範囲を決めておくと、購入の際に商品の大きさから推測できて便利です。
クレート
クレートとは小型のケージで、持ち運びができます。キャリーと呼ばれるものより硬くて安全性が高いものがクレートです。動物病院へ連れていくときや、災害時に避難が必要なときなどに活躍するでしょう。愛犬を安全に運ぶためにも用意しておきたいグッズです。
室内犬をケージに入れっぱなしにしてはいけない3つの理由
室内犬をケージに入れっぱなしにしてはいけない理由は主に3つあります。
いずれの理由も、飼い主が犬を飼う際にとくに配慮したい点です。犬にとって室内で過ごすのが嫌な行為にならないよう、十分配慮して犬と関わりましょう。
ストレスがたまる
自由に動き回れないのは犬にとってストレスがたまる環境です。犬はストレスがたまると噛んだり吠えたりといった、周りの迷惑になる行動にもつながりやすいので注意しましょう。また、国際的にも動物を飼うときには5つの自由を保障するように、と定められています。5つの自由のなかに「本来の行動がとれる自由」があり、犬に限らず動物を飼うときはのびのびと行動できるよう配慮するのが飼い主としての責務なのです。
トイレを我慢する
犬は排せつするタイミングや場所を決めていて、寝床とは一定以上の距離がある場所で排せつするのを好む習性があります。ケージに入れっぱなしにするとトイレに行けずに我慢してしまったり、粗相をしてしまって不衛生になったりします。排せつしたいタイミングで排せつできることは、犬の自由の保障にとっても大切な観点である点を留意しておきましょう。また、5つの自由のなかの1つ「不快からの自由」にもつながる観点です。
ケージで緊張してしまう
本来であれば、ケージは犬の居場所であり安心できる環境のはずです。ところが、ケージに入れっぱなしにすると、怖い場所、苦手な場所と感じるようになり、リラックスできなくなります。ケージでリラックスできなくなると、災害などで避難した場合も犬が自分の居場所で安心できません。長く犬と付き合ううえで、リラックスできる場所を確保するのは非常に重要なのです。
室内犬をケージに入れたほうがいい場合
ケージに犬を入れっぱなしにするのは避けるべきですが、室内犬をケージに入れたほうがいい場合もあります。入れっぱなしにしなければ、犬にとっても飼い主にとってもケージは大切な場所でもあるため、上手に活用しましょう。
来客があるとき
飼い主が来客対応をしているときは、お互いの安全を確保するためにケージに入れるのがおすすめです。見慣れない相手が部屋にいると犬は不安になります。噛んだり吠えたりといった、普段はしない行動をする場合も想定されます。犬の安全を守るのはもちろん、来客を傷つけないためにも、来客時は犬と居場所を分ける必要があるのです。犬が安心できる環境を整えておき、来客中もリラックスして過ごせるように配慮しましょう。
犬の居場所を作るとき
ケージは犬にとって室内での家の役割を果たします。ケージ内には寝床やトイレなどを整えて、居場所を作っておきましょう。犬が安心したいとき、疲れてしまったときに居場所があれば、自らリラックスできるでしょう。居場所は犬にとって自身を整えられる大切な環境です。
災害時の対策をしたいとき
災害時には、犬の安全が守られる環境が必要です。災害が起きたときにひとまず犬を入れておける安全な場所を作っておきましょう。ケージ内が安全であるだけでなく、周りに倒れてくるものがないか、逃げ道は確保できるかなど、実際に災害が起こったときを想定して対策をしておきます。また、ケージに慣らしておくことで、避難所にも適応しやすくなります。急な環境の変化は犬にとっても大きなストレスです。避難所でも安心できる場所があることで、犬の心身の健康を保ちやすくなるでしょう。
犬を室内で放し飼いするには
犬を室内で放し飼いするには、環境を整えることが大切です。犬が安全に遊べるように配慮しましょう。また、犬にトレーニングをしておくことも大切です。根気よくトレーニングを行うことで、居住スペースが汚れてしまったり、犬が怪我をしたりするリスクを防ぎましょう。とくに気をつけておきたいポイントを3つ解説します。
トイレのしつけをする
犬にはトイレトレーニングが必要です。決まった場所で排せつできるよう促しましょう。トイレトレーニングは室内を衛生的に保つためにも大切な要素です。サークルやケージなどの犬の居場所のなかに、トイレシートとトイレトレーを設置し、犬がトイレで排せつする習慣を身につけられるようにします。犬が安心してトイレができる環境が望ましいため、騒がしい場所や人が行き来する場所は避けましょう。
犬と飼い主がお互い気持ちよく過ごすために、飼い主としてしっかりトレーニングをする姿勢が大切です。
リビングの危険なものを撤去する・囲う
犬には中毒を起こす食材があるため、基本的に放し飼いは食材のないリビングでおこないます。犬が口に入れると危険なものは撤去したり、周りを囲ったりしましょう。とくに食材の誤飲は犬の命に関わります。台所や食卓には近づけないように配慮が必要です。ケージやサークルを上手に配置して、犬の居場所と飼い主の生活スペースを分けるようにします。また、犬が怪我をするものや倒れてくる恐れがあるものは撤去しましょう。犬を飼う際は犬の安全を守れる環境を考える姿勢が必要です。
犬から目を離さない
放し飼いをするときは犬から目を離さないようにしましょう。飼い主がその場を離れるときには犬をケージなどの安全な場所へ移動させます。犬から目を離すと誤飲や事故など思わぬトラブルが起こる可能性があります。犬を室内で放し飼いにする場合は、犬を守るためにも犬がどこにいて何をしているのかを把握できるようにしておきましょう。また、室内の配置を、飼い主の目が行き届きやすいように変えることも重要です。死角や不必要な隙間がないか、確認しながら環境を整えましょう。
犬の留守番に便利なグッズ
犬の留守番には楽しく遊べてストレス解消になるようなグッズを取り入れることがポイントです。留守番に便利なおもちゃを3つ紹介します。飼い犬の好みに合うグッズを取り入れてみましょう。ここで紹介したおもちゃも、必ず事前に簡単に壊せるものでないか、誤飲誤食しやすいサイズでないか確認しておきましょう。
噛めるおもちゃ
噛んで遊べるおもちゃはストレス発散に効果的です。また、噛むことは歯を衛生的に保つのにも役立つため、犬の健康にもメリットがあります。留守番は犬が不安になったり行動の制限からストレスを感じたりしやすいでしょう。おもちゃで上手にストレスを発散できるような工夫が欠かせません。
動くおもちゃ
動きがあるおもちゃは犬自身で遊べるため、留守番用グッズに向いています。留守番中はケージなどの安全な場所にいてもらうとしても、犬は活動したいと感じています。動くおもちゃはおもちゃを追ったりつかまえたりといった遊びが自然と運動になるため、留守番に適しているといえるでしょう。
フードを入れられるおもちゃ
口や鼻先を使っておもちゃを動かし、フードを取り出せるタイプのおもちゃは集中して楽しめます。遊びと食事、おやつが一緒になっているため犬も飽きづらいのが特徴です。また、留守番中にお腹が空いてしまう事態も防げるため、飼い主としても安心して留守番を任せられるでしょう。
まとめ
結論として、室内犬はケージに入れっぱなしにしておくことはNGです。しかし、飼い主にも都合があります。犬と心地よく過ごすためにも、ケージやサークルなどは上手に活用しましょう。室内犬は家族の一員です。犬と飼い主、お互いにとってストレスが少ない環境を作っていきましょう。今では室内で過ごすのに便利なグッズがたくさんあります。もしケージに一時的にいてもらったり留守番をお願いすることになったりした場合は、犬が快適に過ごせるような犬用のグッズを取り入れてみてはいかがでしょうか。取り入れるおもちゃやグッズは誤飲誤食をしないよう、与える前に必ずサイズ感や状態を確認しておきましょう。