更新 ( 公開)
日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
人間の性格にも、犬派/猫派とあるように、犬と猫は真逆のタイプに思われることがありますが、仲良く同居することはできるのでしょうか? 今回は、動物行動コンサルティングはっぴぃているず所属の獣医師、フリッツ吉川綾先生に教えていただいた、犬と猫を同居させるときの注意点や必要な条件、猫との同居に向いている犬種などについて解説していきます。
目次
- 犬と猫が同居するときの注意点は?
- 同居に向いている犬・猫の条件とは?
- 猫との同居に向いている犬種は?人気犬種の猫との相性を解説
- シー・ズー
- パグ
- トイ・プードル
- チワワ
- ミニチュア・ダックスフンド
- フレンチ・ブルドッグ
- マルチーズ
- ゴールデン・レトリーバー
- ポメラニアン
- ミニチュア・シュナウザー
- 柴犬
- ヨークシャー・テリア
- 中型以上の犬を飼う場合は特に注意する
- 同居する犬と猫の顔合わせをするときの注意点は?
犬と猫が同居するときの注意点は?
そもそも、犬と猫、人間が安全で快適に暮らすというのは、それほど簡単なことではありません。まずは、本当に犬とも猫とも同居したいのか、そして、両者の安全と幸せを絶対に守ってあげられるのかを考えた上で決定しましょう。
それぞれの居場所を用意することが大事
犬と猫が安全に同居できる第一の条件は、それぞれの居場所をきちんと用意してあげることです。犬種や個体差はありますが、犬は動く小動物を獲物として認識し、追いかけて捕まえようという本能を持っています。また、普段は猫と快適に過ごせている犬でも、楽しくて興奮することで遊び相手として突進したり、逆に恐怖でパニックを起こし攻撃してしまうこともあります。意図せず猫を怪我させてしまうリスクも考えられるので、飼い主が見ていられない時など、必要に応じていつでも別々に過ごせる場所を用意してあげましょう。
一方で、同居による問題を避けられるかどうかは猫側の要因もあります。若くて健康な場合には、犬を避けて高いところに移動することもできますが、歳をとったり怪我をしたりすると、それができなくなります。猫の現在と将来の身体状況を考えながら、居場所を分けて設け、必要に応じてそれぞれが違う空間で快適に過ごせるよう準備しておくことをおすすめします。
同居に向いている犬・猫の条件とは?
犬と猫はそもそもの習性が異なるため、時として“お互いの快適な生活”に矛盾を生じることがあります。そのため、お互いが愛着を持って、同じ空間で快適に過ごすためには、一定の条件が必要になります。
【猫との同居に向いている犬の条件】
条件1.社会化されていること
小さい頃から、他の動物や人に関わることに慣れさせておくことで、環境が変わっても犬がストレスを感じにくくなるでしょう。同居する猫に対しても「愛着を持つ存在」として受け入れられるような経験が必要です。
条件2.猫を捕食対象としないこと
犬種に関わらず、犬は捕食行動をとる可能性があります。特に、小さな穴に住む小型の動物を捕まえる猟犬気質を持つテリア系、家畜を追いかけ囲いこむ仕事をする牧畜犬、視覚や嗅覚に頼って獲物を追跡し狩りをするハウンド、前の犬を追いかける行動を強化されたソリ犬などは、家畜化される過程で捕食行動が強化されている可能性があります。また、捕食行動を示しやすいかどうかは個体差も大きいため、親犬や生い立ちの確認が必要です。
子犬期には、遊びを通じて社会的な関係や捕食行動を確立し、動くものを追いかける行動が多くみられます。こういった行動が猫にとっては不快になることもあるため、注意が必要です。一般的には、相手に深刻な怪我をさせないように犬が加減を覚えることが大切です。
条件3.穏やかであまり吠えないこと
猫は匂いや音、急な動きに過敏に反応する動物です。活動的で、よく吠える犬は特に、神経質な猫との同居は難しいかもしれません。
条件4.必要十分な食事、愛情、運動の機会を与えられていること
猫と同居していても、犬に必要なケアが十分に与えられていることが大切です。犬が心理的なストレスを抱えてしまうと、予期せぬ事故を招くこともあります。「空間」「採食」「感覚」「社会」「認知」という5つの柱から成る「環境エンリッチメント」の基準に沿って愛犬との生活を見直し、安全で快適な生活リズムを保つことができる環境の用意が必要です。
【犬との同居に向いている猫の条件】
条件1.社会化されていること
猫にも、小さい頃から音や匂い、他の動物など様々な刺激に慣れさせる「社会化」をさせておきましょう。犬に対して「愛着を持つ存在」として受け入れるための経験が必要です。
条件2.過度に神経質でないこと
神経質すぎる性格だと、犬の動作や吠えによって休むことができません。隠れたり怯えたりするような猫は不向きです。
条件3.猫のみが使える場所を与えられていること
猫は、犬と違って単独で狩りをする動物なので、自分の身を自分で守ることができる快適な場所作り、相手との距離作りを重視します。必要に応じて逃げたり、ゆっくりしたりすることができる猫専用の高い場所を準備してあげましょう。トイレや食事・飲水場所なども、犬に邪魔されずにアクセスし、使うことができるように設置する工夫が必要です。
条件4.身体的に健康であること
必要に応じて犬を避けたり、逃げたりすることができない場合には、監視や別々の飼育が必要になります。
猫との同居に向いている犬種は?人気犬種の猫との相性を解説
ここからは、日本で家庭犬として人気がある犬種が猫とどれくらい相性が良いかを見ていきましょう。相性の度合いは、以下の3段階の基準で評価しています。前述した同居させるための条件と併せて、犬種ごとの猫との相性も同居させるかどうかの判断材料にしましょう。
★★★ 猫との同居に向いている
★★ 条件次第では同居できる
★ 一般的には向かないことが多い
シー・ズー
相性:★★★
小型犬によく見られるような興奮性が低く、落ち着いているだけでなく、攻撃性も低めなので、猫との同居を検討しやすい犬種といえるでしょう。猫と同居することになっても、人との穏やかな交流時間を作るように心がけてあげることが大切です。
パグ
相性:★★★
明るく愛情深い犬種であるため、猫との同居を検討しやすいでしょう。ただし、遊び好きな子が多いので、飼い主が散歩や遊びなどでエネルギー発散させてあげることが必要です。猫にも必要に応じて自分の時間や場所を作れる環境を用意しましょう。
トイ・プードル
相性:★★
非常に人気のあるトイ・プードルですが、その性格は個体差が大きいです。神経質や落ち着きがない子は、猫にとって受け入れられないことも多いでしょう。一方で、愛情深く、賢い子も多いため、飼い主の指示にいつでも従うよう教えておけば、猫と交流するときのルールを守れる場合もあります。
チワワ
相性:★★
世界で最も小さな犬種ですが、小型犬としては頑固で独立心が強く、攻撃性も比較的高いので、しつけには苦労することがあります。一般的には、猫と仲良く楽しく過ごすことは期待できませんが、猫と犬それぞれが独立し、相手を気にせずに過ごすことができるかもしれません。その場合はそれぞれの要求が満たされていることが重要です。
ミニチュア・ダックスフンド
相性:★★
嗅覚系ハウンドに属すミニチュア・ダックスフンドは、獲物の位置を吠えて知らせるよう強化された犬種のため、吠え声が大きく、よく吠える子が多いです。怖がりな猫には向かないでしょう。ただ、攻撃性が高くなく愛情深いことから、猫との相性が合えば、同居を検討することもできそうです。ミニチュア・ダックスフンドの活動性と興奮性の高さを考慮し、運動や交流の機会を作り、十分に欲求を満たしてあげることが、猫と同居する場合には必要です。
フレンチ・ブルドッグ
相性:★★
一般的には愛情深く遊び好きで、攻撃性も高くはありません。猫が怖がりな性格ではなく、健康で、必要に応じて犬を避けられる環境が整っていれば、同居ができそうです。ただし、個体によっては攻撃性が高く、またその攻撃性の程度が激しい場合もあるので注意しましょう。
マルチーズ
相性:★★
小型犬らしい興奮性、落ち着きのなさ、吠えが特徴とされる犬種ですが、安定した行動も多く見られます。子犬期からの社会化を行い、犬と猫の性質が合うかをよく見極めた上で検討しましょう、また、子犬期から落ち着いた行動を教えていくことが必要です。
ゴールデン・レトリーバー
相性:★★
一般的には愛情深く、穏やかな性質なので猫との交流に向いています。一方で、大型犬なので猫との体格差が大きいことから、犬が意図していなくても猫の大きな怪我につながる事故が起きる可能性があるので、注意が必要です。
ポメラニアン
相性:★
攻撃性や過敏性が高く、またよく吠える犬種でもあるので、一般的には猫との同居は不向きです。同居するには、子犬期からの社会化を行うこと、犬と猫の性質が合うかをよく検討する必要があります。
ミニチュア・シュナウザー
相性:★
過敏で、警戒心が高く、運動能力も捕食行動も高いテリア気質を持つこの犬種は、一般的には猫との同居には不向きです。同居する場合は、子犬期から社会化を行うこと、十分な運動をさせることが必要です。犬と猫、それぞれの性質を踏まえて検討しましょう。
柴犬
相性:★
警戒心が強く、捕食行動を示す子が多いため、一般的には不向きでしょう。同居させたい場合は、子犬期からの社会化を行うこと、犬と猫の性質を踏まえて、十分な安全対策をとってから検討することが必要です。
ヨークシャー・テリア
相性:★
見かけは小型ですが、テリア気質が強いこの犬種は、一般的には猫との同居に不向きといえます。同居するためには、子犬期からの社会化を行うこと、犬と猫の性質が合うかをよく検討する必要があります。
中型以上の犬を飼う場合は特に注意する
同居する際、犬が猫を怪我させてしまう場合と、猫が犬を怪我させてしまう場合の両方が考えられます。特に中型以上の犬が猫を襲ってしまう場合には、致命的な怪我を負わせかねません。
逆に、猫が犬を遊びの対象として戯れたり、犬を怖がって攻撃したりすることもあります。戯れる程度なら、怪我のリスクは低いですが、攻撃したときは犬に怪我をさせる可能性も考えられます。一般的には、攻撃された犬は猫から逃げますが、逃げるのが難しい老犬や体調不良の犬だと、心身の負担になりかねません。犬にも猫にも怪我が起きないよう、別々の場所で過ごせる場所を用意するなど、最大限の注意が必要です。
同居する犬と猫の顔合わせをするときの注意点は?
犬と猫が同居する場合には、お互いの相性だけでなく、顔合わせするときにも工夫や注意が必要です。以下のような点に気をつけましょう。
まずは違う部屋で過ごさせる
初めから顔合わせをするのではなく、まずはお互いの姿を見ることなく、匂いや存在に慣れるよう、違う部屋で過ごさせましょう。違う部屋でも、お互いの匂いや存在を近くで感じられる状態でご飯を与えたり、飼い主といつも通り穏やかに交流したりするなど、落ち着いて過ごせるような良い時間を作ります。相手の存在を感じても、リラックスして過ごせるようになったら顔合わせをしましょう。
犬に基本的なトレーニングをしておく
犬には、飼い主の指示に従うことができるように基本的なトレーニングをしておくことが大切です。犬の行動をストップさせる「待て」やリラックスさせやすい状態を作る「ふせ」、飼い主のそばに呼び戻す「おいで」などのコマンドを覚えさせておくと行動をコントロールすることができるでしょう。
基本的に猫のペースで交流させる
一般的には犬をリードでつないでおき、猫のペースで犬と交流させます。ただし、活発な子猫の場合は、猫の動きが犬の捕食行動の引き金になることがあります。また、犬が猫を鬱陶しく思い、嫌悪感を抱く可能性も高いです。そのような場合は、犬をリードでつなぐだけではなく、猫を抱っこして激しい動きをさせないなどの配慮が必要です。
交流することをプラスのイメージと結びつける
犬と猫の両方におやつを与えたり、明るく話しかけたりするなど、その交流がプラスのイメージとなるように心がけましょう。初めは短時間から、飼い主が監視できる状況でのみ交流させるようにします。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。