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獣医師でありながら、トリマー、動物看護士、ドッグトレーナーとしての実務経験も持つ。病気の早期発見、未病ケアに努める0.5次医療を提唱し、精力的に活動。
今や日本の国民病と言われる花粉症。花粉症にかかる人は近年、ますます増えていますが、同じ環境を生きている犬たちは花粉症になることがあるのでしょうか? 獣医師によれば、犬の花粉症は、人とは症状がちょっと異なるそうです。今回は、ペットスペース&アニマルクリニックまりも病院長の獣医師・箱崎加奈子先生に、症状をはじめ、対策や予防法、改善法、病院での治療法など、犬の花粉症について解説していただきました。
目次
- そもそも花粉症とは?
- 犬も花粉症になるの?
- 犬が花粉症になる原因は?
- 花粉症になりやすい犬種は?
- 犬の花粉症の症状とは?
- 犬が花粉症になったときの対処法・改善策は?
- 犬の花粉症は病院で治療できる?
- 犬が花粉症にならないための予防法は?
そもそも花粉症とは?
花粉症とは、花粉によって引き起こされるアレルギー疾患のこと。症状としてはクシャミ、鼻水、鼻づまりがある「アレルギー性鼻炎」と、目の痒みや流涙、目やにが出る「アレルギー性結膜炎」が、人の場合には多く見られます。まれに喘息やアトピーの症状を併発することも。
アレルギー反応を引き起こす原因物質は「アレルゲン」と呼ばれます。アレルゲンにはさまざまなものがありますが、花粉ではシラカバ、ブタクサ、スギ、ヒノキなど。中でも、春先にスギ花粉症にかかる人の割合が高くなっています。その発症頻度は日本で近年さらに増えていて、花粉症は今や「国民病」と言われるほどです。
犬も花粉症になるの?
犬の飼い主としては、「花粉症が増えているなら、もしかして、犬も花粉症も増加傾向にあるのでは?」と気になるかもしれませんね。これについては、花粉症というより「アレルギー症状で来院する犬が近年増えている」というお答えになります。
というのも、犬の場合、花粉症そのものの定義があいまいだからです。しかし、「花粉によってアレルギー症状が引き起こされることは、犬にもある」とも言われています。
ただし、日常の診察で「花粉症」と診断する獣医師は恐らく少ないでしょう。疾患名としては、「アレルギー性皮膚炎」が主です。また、犬では花粉が他のアレルゲンと一緒に影響してアレルギーを引き起こすケースがよくあります。
犬が花粉症になる原因は?
そもそもアレルギーとは、体内に入ってきた「異物」に過剰反応して起こる症状のこと。「異物」を無害化しようと過剰に反応してしまうと、人の花粉症では、激しいクシャミや流涙などとして症状が表れます。
犬の花粉症も、体内に入ってきた花粉を「異物」と感じることが最初の原因と言えます。さらに「異物」に過剰反応してしまうことで、皮膚や胃腸、呼吸器などさまざまな場所で症状が出るのです。
また、さきほどお話ししたように、犬の場合は花粉が他のアレルゲンと一緒に影響してアレルギーを引き起こすことがあります。特に、「アレルギー性皮膚炎」や「アトピー性皮膚炎」の犬が、花粉の時期に症状が悪化すると、「花粉症」として表現されることがあります。このケースでは、花粉症の原因になっているのは花粉だけではなく、主なアレルゲンはダニ(ハウスダストマイト)などになります。
花粉症になりやすい犬種は?
ところで、もともと花粉症になりやすい犬はいるのでしょうか。犬種で考えると「花粉症になりやすい犬種=アレルギーの多い犬種」と考えることができます。下記に挙げている犬種は、花粉症にもより注意してあげるとよいでしょう。
アレルギーの多い主な犬種
- 柴犬
- シー・ズー
- フレンチ・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ラブラドール・レトリーバー
- パグ
- コッカー・スパニエル
犬の花粉症の症状とは?
花粉症と言えば、人の場合は「激しいクシャミや鼻水が止まらない」などの症状がイメージされますよね。でも、犬の場合は症状の出方が人とは異なるのです。
犬の場合、花粉によってアレルギー症状が引き起こされるのは、「皮膚」にまつわる疾患が多くなっています。具体的には「アレルギー性皮膚炎」にまつわる皮膚の痒みや湿疹、発赤、脱毛など。人の花粉症で一般的にイメージされるクシャミ、鼻水、目の痒みなどは、犬ではあまり見かけないのです。
犬が花粉症になったときの対処法・改善策は?
犬が花粉症を疑わせる症状を見せたら、できる対策として次のようなことがあります。
動物病院へ行く
「花粉症かな?」と思わせる症状を犬が見せたら、症状を和らげるためには、病院に行くしかありません。まずは病院へ連れていきましょう!
お散歩は時間帯を選び、服を着せる
お散歩タイムは、花粉が多い時間帯を避けましょう。また、お散歩時に犬に洋服を着せると、体に直接花粉が付着するのを防げるので花粉症対策として有効。人のアトピーの方向けの肌着と同様の素材で作られているアレルギー対策用の服も販売されているので、利用するのもおすすめです。
手足を拭き、ブラッシングをこまめにする
お散歩から帰ったら犬の体や手足をしっかり拭いてあげしょう。花粉症が疑われるときは、いつもより頻繁にブラッシングをしてあげるのも大切です。皮膚炎であれば、シャンプーなどが症状緩和を期待できるかもしれません。
犬の花粉症は病院で治療できる?
動物病院に行くと、犬の花粉症に対して獣医師が治療を行ってくれます。花粉症では、対処療法を行うのが一般的。対症療法とは、その病気によって起きる症状を和らげたり、なくしてあげたりする治療法のことです。
具体的には、痒みなどを和らげるには、ステロイド、免疫抑制剤、抗アレルギー剤などを使います。その他、皮膚炎などには抗生剤、薬浴。消化器症状であれば、下痢止めなどを使用します。
アレルギーの根治療法として免疫療法や減感作療法がありますが、それが有効かどうかは症状によりますので、かかりつけの動物病院で相談してみてくださいね。
犬が花粉症にならないための予防法は?
「引っ越しをしたら花粉症がひどくなった」とか、逆に「よくなった」という話をよく聞きます。花粉といった環境由来のものは、ある意味では不可抗力。飼い主にはどうしようもないものです。それでも花粉症にならないように日頃からできる予防法として、考えられることをご紹介します。
花粉情報をチェックする
インターネットでこまめに自分の住んでいる地域や出かける先の花粉情報をチェックするようにするとよいでしょう。それをもとに、お散歩で外出する時間帯を工夫することなどができます。
食事内容を選ぶ
健康的な強い体を作るという意味で、犬のご飯に気を使うことは大切。「アレルギーはコップが溢れると症状が出る」とよく表現されます。数あるアレルゲンを少しでも減らすために、飼い主が100%管理できる食事内容をしっかり選定することは意味があります。
ストレスを減らす
適度なお散歩をしたり、犬にストレスをかけない生活を心がけたりすることも有効です。
花粉症対策グッズを用意しておく
花粉が気になる時期には、外出時に犬用の洋服を着せてあげましょう。犬を車に乗せて遠くに外出する時には、花粉症対策として車内にウェットティッシュ、グルーミングスプレー、ブラシなども用意しておくと便利です。