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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
気品を感じさせるブルーグレーの瞳や、筋肉で引き締まった体が美しいワイマラナー。狩猟犬としてのルーツを持ち、知的で運動能力が高いことから、海外では警察犬としても活躍している犬種です。この記事では、ワイマラナーの性格や体格の特徴、気をつけるべき病気などをバーニー動物病院千林分院分院長の堂山有里先生監修のもと、詳しく解説します。
目次
- ワイマラナーの歴史やルーツは?
- ワイマラナーの平均的な体高・体重は?
- ワイマラナーの平均寿命は?
- ワイマラナーの被毛のタイプや毛色の種類は?
- ワイマラナーの外見や吠え声の特徴は?
- ワイマラナーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
- ワイマラナーを飼うのに向いている人は?
- ワイマラナーを飼う上で気をつけるべきことは?
- ワイマラナーのしつけを始める時期は?
- ワイマラナーの食事の注意点は?
- ワイマラナーがかかりやすい病気やアレルギーは?
- ワイマラナーを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- ワイマラナーにおすすめの遊びは?
- ワイマラナーの日常のお手入れで気をつけることは?
ワイマラナーの歴史やルーツは?
ワイマラナーの起源については諸説ありますが、ドイツ原産の犬種と考えられています。特にブラッドハウンド(現在のリアムハウンド)の血を色濃く引いており、ジャーマン・ポインターをはじめとした狩猟犬との交配により生まれたとする説が濃厚です。1830年代にはドイツのワイマール宮廷で飼われていたとも言われています。
ワイマラナーは、猟のあらゆる場面で活躍できる実猟犬として、1897年にはドイツワイマラナークラブによって繁殖が厳重に管理されるようになりました。ドイツのポインティング・ドッグの中では、純粋犬としての歴史が長い犬種です。
ワイマラナーの平均的な体高・体重は?
血統書を管理する機関である一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)によると、ワイマラナーの平均体高はオスが59〜70cmで、メスが57〜65cmです。特にオスは62〜67cm、メスは59〜63cmくらいが理想的な体高とされています。平均体重はオスが30〜40kg、メスが25〜35kgです。
ワイマラナーの平均寿命は?
ワイマラナーの平均寿命は10〜12歳程度と言われています。大型犬の中では長くも短くもない、平均的な寿命です。
ワイマラナーの被毛のタイプや毛色の種類は?
艶やかな毛並みが目を惹くワイマラナーですが、被毛のタイプや毛色の種類を詳しく見ていきましょう。
ワイマラナーの被毛のタイプ
スムースコート
短く滑らかな毛質で、手触りのよさが特徴です。
ロングコート
絹のような艶があり、耳や尾には飾り毛が見られます。
ワイマラナーは、ほとんどがスムースコートで、ロングコートのタイプは珍しいとされています。どちらもアンダーコートの量が少ないか、もしくは全くないのが特徴です。そのため抜け毛の量は少ないですが、暑さに強く、寒さに弱い性質を持っています。
また、ワイマラナーの毛色の種類は、シルバー、ノロジカ色(赤みがかった灰色)、マウス・グレー、シェード(1本の毛にこれらの色が混ざったタイプ)の4種類です。単色が基本ですが、JKCでは胸や足先に見られる小さなホワイトの斑のみ公認されています。
ワイマラナーの外見や吠え声の特徴は?
ワイマラナーの見た目や吠え声の特徴は以下の通りです。
外見
狩猟犬として生まれたワイマラナーは筋肉質で、丈夫な体つきをしています。ほどよく引き締まった体やしなやかな足、やや波打つ垂れ耳が美しく、気品あふれる優雅な容姿が魅力の犬種といえるでしょう。その他にも、琥珀色またはブルーグレーの瞳や、指の間の水かきが特徴的です。
吠え声
ワイマラナーは体が大きい分、吠え声も大きめです。ただし、無駄吠えすることはあまりありません。
ワイマラナーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
ワイマラナーはどのような性格の犬種なのでしょうか? 主な性格の特徴を見ていきましょう。
賢くて運動が好き
狩猟犬にルーツを持つワイマラナーは、体力がありタフです。運動をするのが大好きなので、外を思い切り走り回らせると喜んでくれるでしょう。さらに賢い性格の持ち主で、学習能力が高いのも特徴です。飼い主に従順で愛情深い性格も持ち合わせているので、ドッグスポーツにも向いています。
甘えん坊な一面も
そんな知的なワイマラナーですが、大きな体からは想像がつきにくいほど、甘えん坊で無邪気な一面もあります。一度ワイマラナーを飼うと虜になってしまう飼い主が多いと言われるくらい魅力あふれる犬種と言えるでしょう。一方で、怖がりな性格から、家族以外の他人には警戒心が強くなりがちです。
オスとメスで性格の違いはあるの?
どちらかというとオスはメスよりも警戒心が強い傾向が多いです。そのため、攻撃性や縄張り意識が過剰に出てしまう場合があります。
ワイマラナーを飼うのに向いている人は?
ワイマラナーを飼うのに向いているのはどんな人なのか見ていきましょう。
広めの飼育スペースが作れる人
飼い主と一緒にいることを好むため、室内外が適しています。また、その際は、体が大きいワイマラナーにとってストレスにならないよう、広めの飼育スペースが望ましいです。また、自由に走れる庭などがあると、なお良いでしょう。
散歩の時間を確保できる人
ワイマラナーを飼育する上では、十分な散歩時間を確保することが重要です。五感を刺激できるような散歩を毎日行いつつ、お休みの日にはドッグランや広場などでたっぷり走り回らせてあげましょう。本能を満たしてあげることで情緒が安定し、心身の健康に役立ちます。
体力に自信のある人
ワイマラナーは大型犬なので引っ張る力も強く、そのコントロールやトレーニングには、体力がある人の方が向いています。さらに、病気になった時や介護が必要となった場合には、抱き上げて食事を介助したり通院したりなど、力を要する場面が多々出てくることも。そのため、飼い主にもスタミナが求められるでしょう。
費用面での負担がクリアできる人
体の大きいワイマラナーは、その分医療費や食費もかさみます。ワイマラナーを飼う前に経済的な計画を立て、費用面での負担をクリアできる人が望ましいでしょう。
ワイマラナーは初心者向きの犬?
ワイマラナーは体が大きく、かなりの運動量が必要なので、どちらかというと初心者よりも上級者向けの犬種です。
ワイマラナーを飼う上で気をつけるべきことは?
ワイマラナーを飼育する際に気をつけるべきポイントは以下の4つです。
毎日の散歩を欠かさない
ワイマラナーはスタミナが豊富なので、運動要求量は多いです。毎日の散歩を欠かさず行いましょう。散歩の時間をたっぷりと確保し、本能を満たしてあげるのが大切になります。
他のペットや子どもがいる家庭は事故に注意
ワイマラナーは体が大きく、そのルーツから狩猟本能が強いので、他の動物や子どもがいるご家庭では不慮の事故につながってしまう場合があります。ワイマラナーより体の小さいペットがいる場合は一緒の場所で飼育しない、子どもと犬だけの空間にしない、などに気をつけましょう。
寒さ対策は必須
アンダーコートがほとんどないワイマラナーは寒さに弱い傾向があります。気温の低い季節には服を1枚着せたり、暖房をつけたりなど寒さ対策をすると安心です。
食後すぐの運動は避ける
ワイマラナーのように胸郭の深い犬種は、食後すぐに運動すると胃にガスや液体が溜まって病気につながるリスクがあります。食事の直後の運動は避けるようにしてくださいね。
ワイマラナーのしつけを始める時期は?
ワイマラナーのしつけの時期やその方法について詳しく見ていきましょう。
しつけを始める時期
ワイマラナーはスタミナがあり、力も強いので早いうちからしつけを始めてみてください。ご自宅に連れてきて愛犬が落ち着いたら、なるべく早くしつけをスタートさせましょう。特に生後3週齢から12週齢までの社会化期は、目にしたものや触れたものに慣れ親しみやすい時期です。子犬のうちから家族以外の他人や他の犬に慣れさせることで、怖がりな犬になることを防げます。愛犬が新しい人やものに触れ合うときは、必ず犬にとって嬉しいことや楽しいこととセットで体験させましょう。
おすすめのしつけ方法
ワイマラナーはハンティングやポインティング、レトリーブなど、獲物を見つけて捕まえるのが得意です。そのため小さな生き物を見て過剰に興奮してしまったり、咥えてしまったりなどの問題行動が起きる場合もあります。まずは、噛み癖や破壊行動などが出ないよう、噛まれて困るものは届かない場所に置くといった環境設定が大切です。また、投げたボールを取ってきてもらったり、おもちゃを使って引っ張りっこ遊びをしたりなど、狩りに近い体験をさせてあげると本来の狩猟犬としての欲求が満たされるでしょう。
ワイマラナーの食事の注意点は?
ワイマラナーのように胸が深い犬種は、食後すぐに運動すると胃が捻れやすく、ガスや液体が溜まってしまう胃拡張や胃捻転を起こす場合があります。食事の直後に飛んだり跳ねたりといった激しい運動はさせないようにしましょう。
ワイマラナーがかかりやすい病気やアレルギーは?
ワイマラナーを飼育する時に気をつけたい疾患を詳しくご紹介します。
胃拡張胃捻転症候群
胸郭の深い犬種は胃拡張胃捻転症候群を起こしやすい傾向があるので、注意が必要です。特に食後すぐの運動で発症しやすく、胃にガスや液体が溜まってふくらむ胃拡張や、胃がねじれる胃捻転などの症状が出ます。悪化すると胃がよじれることで血流がさえぎられ、命に関わる疾患です。
最初は不安そうにウロウロする姿やよだれ、吐きそうなしぐさだけど吐かないといった様子が見られます。怪しい症状が見られたら、すぐに動物病院へ連れて行ってください。重症の場合は手術によって、捻れた胃をもとに戻します。胃が回転しないよう腹壁に固定させる胃固定術もありますが、胃拡張の予防は難しいと考えられています。普段から食後に激しい運動はさせない、1度に大量にご飯を食べさせないように気をつけましょう。
股関節形成不全
股関節の形が変形してしまう病気です。主に大型犬が若い時期に発症し、そのままにしておくと成長とともに痛みや歩行異常が現れます。遺伝や成長期の栄養状態が関係していると考えられていますが、原因は明らかになっていません。
眼瞼内反症
まぶたが内側にめくれて入り込んでしまう状態です。まつ毛や被毛などが角膜や結膜に触れ、傷がつくことで炎症が起きやすくなってしまいます。原因がわかっておらず予防法のない疾患なので、目の様子がおかしいと感じたら、すぐに動物病院を受診してください。
ワイマラナーを散歩させる際に気をつけるべきことは?
ワイマラナーに必要な散歩の頻度は、1日2回です。1回あたり1時間程度を目安に散歩時間を確保してあげてください。また、寒さに弱いので、散歩の際にはその対策も必要です。気温が低く寒い日は服を1枚着せてあげるとよいでしょう。
飼い主と歩調を合わせて歩く散歩も楽しみますが、運動欲求を満たすために、時には思い切り走れる場所に連れていくことも大切です。ドッグランや広場など自然の多いところで走らせるとストレス発散に効果的でしょう。
ワイマラナーにおすすめの遊びは?
ワイマラナーが楽しめるおすすめの遊びは以下の通りです。
ボール遊び
ボールを取ってこさせる遊びは獲物を追いかけて捕まえ、持ってくるといった狩猟の一連の動作を再現できるのでとても喜びます。
宝探し
宝探しもワイマラナーの猟欲を満たせる遊びのひとつです。草の中や地面におやつを埋めて探させるとワイマラナーが本能的に楽しめます。
ドッグラン
スタミナがあり、運動欲求の高い犬種なので、ドッグランで遊ばせるのはおすすめです。広い場所を思い切り走らせてあげると良いでしょう。
ドッグスポーツ
賢く、訓練性能に優れたワイマラナーは、コマンドや指示の理解が早く正確です。また、愛情深い性格の持ち主なので、飼い主と一緒に取り組めるドッグスポーツは特に喜びます。
ワイマラナーの日常のお手入れで気をつけることは?
ワイマラナーの日常のお手入れで気をつけるべきポイントについて詳しく見ていきましょう。
ブラッシング
週に2〜3回程度ブラッシングを行いましょう。抜け毛が多くない犬種なので毎日する必要はありません。お手入れにおすすめのアイテムは、ゴム製のラバーブラシです。短毛種のワイマラナーの皮膚を傷つけにくく、マッサージ効果も期待できます。
ブラッシングする時は、犬が触られても嫌がりにくい背中や首筋あたりから始めましょう。ブラッシングを好きになってもらうためにも、力を入れすぎず気持ちの良い程度の力加減を意識してみてください。自分の腕にブラシを当てて、感触や力加減を確かめると感覚が掴みやすいはずです。
定期的なシャンプー
月に1〜2回程度で良いので、シャンプーの習慣をつけましょう。軽い汚れであれば、硬く絞ったタオルで拭くだけでも大丈夫ですよ。