公開
ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。
チベタン・マスティフは、がっしりとした骨格と、ライオンのようなふさふさの被毛が魅力の犬種です。中国で高い人気を誇っていて、日本ではあまり見られない希少犬種となっています。もともと警戒心が強い犬種ですが、最近は温和な個体が増えているため、トレーニングにしっかり取り組めば家族の一員として仲良く暮らしていけるでしょう。今回は、チベタン・マスティフのルーツや特徴、性格、飼うコツについて紹介します。
目次
- チベタン・マスティフの歴史やルーツ、英語名は?
- チベタン・マスティフのオスとメスの体高や体重は?
- チベタン・マスティフの平均寿命は?
- チベタン・マスティフの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- チベタン・マスティフはどんな性格、習性?
- チベタン・マスティフを迎える際にかかる費用は?
- チベタン・マスティフのしつけと社会化トレーニングのポイント
- チベタン・マスティフを飼うのに向いている人は?
- チベタン・マスティフがかかりやすい病気と予防法は?
- チベタン・マスティフの日常のお手入れ方法
- チベタン・マスティフとの生活で注意すべきことは?
チベタン・マスティフの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 |
チベタン・マスティフ |
英語名 |
Tibetan Mastiff |
原産国 |
チベット(中国) |
分類 |
超大型犬 |
グループ |
2G:使役犬 |
チベタン・マスティフは中国西部に位置するチベット原産の犬で、紀元前の書物にも記録があります。ヒマラヤの遊牧民にとっては牧羊犬として、チベットの僧侶にとっては護衛犬としてともに暮らしてきました。さらに、モンゴル帝国でチンギス・ハーンの軍用犬として活躍したとも言われていて、マルコポーロも東方見聞録に記録しています。
19世紀にはイギリスに輸入され、ウェールズ王家やロンドン動物園でも飼育されていたと言われています。戦時下になると毛皮や食料が不足したことで犬が犠牲になり、チベタン・マスティフも同様に絶滅の危機に瀕しました。そんな中、イギリス国内で保護されたことで、現在もペットとして愛されています。
2010年代の中国のペットブームではチベタン・マスティフに注目が集まり、SNSをきっかけに爆発的な人気が出ました。絶滅の危機に瀕した希少種であることから、富裕層を中心に高額で取引をされていて、2014年には子犬が2億円で落札されたことが話題になりました。
チベタン・マスティフのオスとメスの体高や体重は?
体高:オス66cm、メス61cm
体重:オス、メス64〜82kg
チベタン・マスティフはクマやライオンのような大柄な体格をしています。ジャパンケネルクラブの基準では、チベタン・マスティフは成犬になると体高がオスで66cm以上、メスで61cm以上にまで成長します。体重は64〜82kgと幅広く、100kgを超える個体もいるようです。
チベタン・マスティフの平均寿命は?
チベタン・マスティフの平均寿命は12〜15歳と言われています。一般社団法人ペットフード協会によると中・大型犬の寿命は13.86歳なため、大型犬の中では比較的長寿です。
チベタン・マスティフの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
チベタン・マスティフは、ライオンのような大柄の体格とふさふさの被毛が魅力の犬種です。ここでは、毛色と被毛の特徴について詳しく紹介します。
毛色の種類
チベタン・マスティフの毛色はバラエティーに富んでいて、リッチ・ブラック、ブラック&タン、ブラウン、さまざまなシェードのゴールド、グレー&ブルー、グレー&ブルー&タンなどがあります。模様も個体によってさまざまで、胸と足には白い模様が、目の上やマズル、足の下、しっぽの裏にタンの模様があることも。目の周りには、スペクタクル・マーキングがある子もいます。タンの色味も、濃いものから薄いものまで幅広い個体差が楽しめます。
被毛の特徴
チベタン・マスティフの被毛は、ボリュームのあるダブルコートです。オーバーコートは長くてまっすぐな毛質で、アンダーコートは厚く密生しています。毛が伸びるとファーつきのフードを被っているような見た目になり、ライオンのような貫禄が生まれます。
チベタン・マスティフはどんな性格、習性?
チベタン・マスティフによく見られる性格や習性を紹介します。
警戒心が強い
牧羊犬や護衛犬として活躍してきたため、警戒心が強く、独立心が強い性格です。攻撃的になることもあり、中国では捨てられて野犬となったチベタン・マスティフが他の動物を攻撃しているとして社会問題になりました。
家族への信頼が厚い
テリトリー意識が強く、信頼関係を築いた家族を守ろうとする傾向にあります。自分のテリトリーに知らない人や犬が入ってくるのを嫌がるため、幼いころから社会化のためのトレーニングが必要です。
温和
かつては獰猛な犬として知られていましたが、最近では家庭で飼われる中で、温和な性格のチベタン・マスティフも増えています。思慮深い性格のため、子犬のうちからしっかりトレーニングすると家族の一員として馴染めるでしょう。
チベタン・マスティフを迎える際にかかる費用は?
チベタン・マスティフをお迎えするときにかかる初期費用や、毎月継続してかかる費用を紹介します。
チベタン・マスティフの初期費用
チベタン・マスティフの生体価格は、80万円以上が相場です。ただし、中国では2億円で取引されたこともあるほど希少な犬種で、日本での飼育頭数も限られています。
ほかにも初期費用として、次のような費用が必要です。
- 自治体への畜犬登録:3,000円程度
- 狂犬病の予防接種:3,500円程度
- 混合ワクチン:8,000円程度
- グッズ代(サークル・トイレ・食器・フードなど):40,000円程度
さらに、身体が大きいチベタン・マスティフはクレートに入れて移動するのは難しいため、自家用車があることが望ましいでしょう。
チベタン・マスティフの生涯経費
チベタン・マスティフを含む中型・大型犬の飼育にかかる費用は、平均2,559,186円です。1ヶ月の支出は平均13,174円となっていて、内訳は次のとおりです。
- 主食用ドッグフード:3,510円/月
- おやつ用ドッグフード:2,207円/月
- 医療費:3,719円/月
- ペット保険:3,071円/月
- トリミングなどのケア:3,624円/月
- 犬の雑貨:1,628円/月
- 犬のおもちゃ・衣類:1,121円/月
ただし、超大型犬であり希少種でもあるチベタン・マスティフは、食費や医療費が紹介した費用の3倍以上必要になる可能性が高いでしょう。
チベタン・マスティフのしつけと社会化トレーニングのポイント
大柄な体格のチベタン・マスティフは、飼い主がコントロールできるようにしっかりトレーニングしておくことが大切です。ここでは、チベタン・マスティフのトレーニング方法を紹介します。
子犬のうちにコマンドを身につける
身体が大きく警戒心の強いチベタン・マスティフは、成長すると飼い主がコントロールしにくくなります。そのため、子犬のうちからスキンシップを取って信頼関係を築きましょう。「待て」「お座り」「ハウス」などのコマンドが身につくようにトレーニングしておくことで、成長後のトラブルを防ぎやすくなります。トレーニングはごはんやおやつのタイミングで実施すると効果的です。
室内での呼び戻しトレーニング
超大型犬であるチベタン・マスティフは、運動量が多いためドッグランのように犬がノーリードで動き回れる施設に連れて行く機会も多いでしょう。そうしたときに犬を呼び戻せるように、まずは室内で呼び戻しのトレーニングを行うことが大事です。
飛びつきや甘噛みは毅然とした態度で止めさせる
チベタン・マスティフが飛びつきや甘噛みの癖がついたまま成長してしまうと、他の犬や人に怪我を負わせるリスクがあります。子犬のころから飛びつかれた場合は無視し、落ち着いたらおやつをあげてみてください。噛んできたときは、甘噛みであっても落ち着くまで無視し、落ち着いたらおやつを与えましょう。そうした積み重ねで、「静かにするといいことがある」と学習してくれます。
チベタン・マスティフに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
超大型犬に分類されるチベタン・マスティフの散歩は、1日2回、1時間程度行うのが目安です。それでも体力があり余ってストレスを感じている様子を見せている場合は、散歩時間を伸ばしたり、室内でできる遊びを取り入れたりするといいでしょう。
ただし、小犬期に激しい運動をすると、股関節形成不全のリスクが高まります。走り回るような運動は、1歳以降にはじめるようにしてください。おすすめの遊びは、ゴムや骨などの壊れにくい素材のおもちゃを使ったものや、賢さを活かした知育玩具を使った遊びです。
チベタン・マスティフを飼うのに向いている人は?
チベタン・マスティフの飼い主には、経済的な余裕と体力が必要です。それぞれ紹介していきます。
経済的に余裕がある
チベタン・マスティフを飼うのには非常にお金がかかります。生体費用が高い上、超大型犬の中でも長生きなので、生涯経費も高額になるでしょう。チベタン・マスティフに窮屈な思いをさせないために、広い家や十分なスペースのある車も必要なため、経済的に余裕がないと飼いつづけるのは難しいかもしれません。
体力に自信がある
体が大きいチベタン・マスティフが十分な運動量を確保するためには、飼い主自身もたくさん体を動かすことになるでしょう。力も強いため、体力に自信がないと散歩中にリードが手から離れて脱走してしまうリスクがあります。そのため、スポーツやストレッチの習慣がある人は、チベタン・マスティフを飼うのに向いているかもしれません。
チベタン・マスティフがかかりやすい病気と予防法は?
チベタン・マスティフによく見られる病気を4つ紹介します。
股関節形成不全・肘関節形成不全
まだ骨格が形成しきっていない子犬期に激しい運動をしてしまうことで、股関節形成不全・肘関節形成不全などの病気になりやすいようです。歩きにくくなったり、痛みをともなったりといった症状が出るため、1歳ごろまでは散歩でもゆっくり歩くよう気をつけましょう。
体重管理も非常に重要で、子犬期に体重が急増してしまうと股関節形成不全・肘関節形成不全が悪化するといわれています。
前十字靭帯断裂
前十字靭帯とは、膝を曲げたり伸ばしたりする役割を持つ靭帯です。前十字靭帯が肥満や加齢によって切れてしまう病気が、前十字靭帯断裂です。前十字靭帯断裂は、体重管理と滑りにくい環境を整えることが重要です。
外耳炎
外耳炎は耳の穴の外に起こる炎症の総称で、チベタン・マスティフのように垂れ耳の犬が発症しやすい病気です。原因はさまざまですが、耳を柔らかい布で拭き清潔に保つことが予防に繋がります。
皮膚炎
皮膚に起こる炎症の総称が皮膚炎で、外耳炎と同様に原因はさまざまです。皮膚炎になると、湿疹やかゆみ、脱毛などの症状が出ます。皮膚炎を予防するには、ブラッシングをしたり、散歩後には被毛を拭いて清潔に保ったり、免疫力をキープするために総合栄養食中心の食事を心がけたりといった対策が有効です。
チベタン・マスティフの日常のお手入れ方法
ライオンのようにふさふさの被毛を持つチベタン・マスティフは、ブラッシングが重要です。換毛期には毛玉ができないよう、とくに入念にブラッシングしましょう。また、毛が抜けやすいため、床やカーペットなどの抜け毛は取り除いて清潔に保つことも大切です。
チベタン・マスティフとの生活で注意すべきことは?
チベタン・マスティフが快適に暮らすために、飼い主が気をつけたいことを紹介します。
夏は暑さに注意
チベタン・マスティフの出身地であるチベットは、高原にある穏やかな気候の土地です。夏でも最高気温が20度程度なため、暑さに弱い傾向にあります。夏はエアコンで室内を快適な温度に保ち、散歩は日中の時間帯を避けてください。
被毛と耳のお手入れを入念に
ふさふさの毛と大きな垂れ耳を持つチベタン・マスティフは、外耳炎や皮膚炎のリスクが高い犬種です。細菌の感染を防ぐためにも、ブラッシングや耳の手入れを入念に行いましょう。