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ヤマザキ動物看護大学准教授、愛玩動物看護師、ペットグルーミングスペシャリスト。教育気・研究の現場だけでなく、数々のテレビ出演や、執筆活動など幅広く活躍。
シワの寄った顔でどう猛そうな外観が特徴のナポリタン・マスティフですが、ナポリタン・マスティフを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、ヤマザキ動物看護大学准教授の福山貴昭先生に教えていただいた、ナポリタン・マスティフの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- ナポリタン・マスティフの歴史やルーツ、英語名は?
- ナポリタン・マスティフのオスとメスの体高や体重は?
- ナポリタン・マスティフの平均寿命は?
- ナポリタン・マスティフの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?
- ナポリタン・マスティフはどんな性格、習性?
- ナポリタン・マスティフを迎える際にかかる費用は?
- ナポリタン・マスティフのしつけと社会化トレーニングのポイント
- ナポリタン・マスティフに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- ナポリタン・マスティフを飼うのに向いている人は?
- ナポリタン・マスティフがかかりやすい病気と予防法は?
- ナポリタン・マスティフの日常のお手入れ
- ナポリタン・マスティフとの生活で注意すべきことは?
ナポリタン・マスティフの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | ナポリタン・マスティフ |
英語名 | Neapolitan Mastiff |
原産国 | イタリア |
分類 | 超大型犬 |
グループ | 2G:使役犬 |
ナポリタン・マスティフ【英語:Neapolitan Mastiff】は、イタリアが原産の超大型犬です。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、番犬や警護、作業をする「2G:使役犬」に属します。
ナポリタン・マスティフの起源は古く、紀元前300年頃までさかのぼります。古代ローマ時代にローマ軍の軍用犬として帯同してヨーロッパ中に広がったとされていて、多くのマスティフ犬種の祖先となったと考えられています。闘犬や牧羊犬、番犬、サーカス犬としても活躍した歴史があります。
どう猛な外観とは裏腹に、穏やかかつ利口な犬種で、現在では世界中で番犬として親しまれています。
ナポリタン・マスティフのオスとメスの体高や体重は?
体高:オスは65~75cm、メスは60~68cm
体重:オスは60~70kg、メスは50~60kg
ナポリタン・マスティフは超大型犬に分類されます。
ナポリタン・マスティフの平均寿命は?
ナポリタン・マスティフの平均寿命に関するデータはありませんが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬の平均寿命は11.5歳となっています。ナポリタン・マスティフは超大型犬なので、これより平均寿命が短い可能性があります。
犬を迎える際は、最後の時までしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
ナポリタン・マスティフの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?
ジャパンケネルクラブの犬種標準によると、ナポリタン・マスティフの毛色は、グレー、鉛のようなグレー、ブラック、ブラウンやフォーン、ディープ・フォーン(レッド・ディアー)とされています。胸や足先、足の裏に白い小斑がある場合もあります。どの色でもブリンドルや、ヘーゼルやドーブ・グレー、イザベラのシェードが許容されます。
コートは短いスムースコートです。
体つきは、どっしりと恰幅が良く、体高より体長が上回ります。
頭部は大きく、厚い口唇、喉元の垂れ下がった皮膚が特徴です。眼の色は毛色によってさまざまあります。
ナポリタン・マスティフはどんな性格、習性?
ナポリタン・マスティフは、どう猛な見た目と違って攻撃性はなく、温和で誠実な性質です。重量ある超大型犬が持つ堂々とした風格があります。
飼い主には甘えん坊で家族にも友好的です。
忍耐力もあり、自分のテリトリーを守る優秀な番犬として、また愛情深い家庭犬として世界中で親しまれています。
ナポリタン・マスティフを迎える際にかかる費用は?
犬を飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる一般的な費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約30万円~ |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
ナポリタン・マスティフは、ペットショップでの販売は珍しく、専門のブリーダーや輸入が主な入手方法です。迎える際の価格は、血統や月齢などによりますが、30万円からが目安となるでしょう。
ブリーダーから購入する際は時価となり価格は変動することがあります。また、常に子犬が産まれているとは限らないため、ナポリタン・マスティフのブリーダーにあらかじめ相談したり、問い合わせたりしておくと良いでしょう。
他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。また、ナポリタン・マスティフは自治体によって飼育に規制がある場合もあるため、事前に確認しましょう。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。
母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。
子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回すべて打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎたすべての犬が年に1回摂取するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育するうえでの生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。
しかし体の大きい犬種だとグッズ代やトリミング代などが高額になるなど犬種によって大きく異なるため、目安としてナポリタン・マスティフの場合は平均より高額になると考えておきましょう。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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犬を迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。ボールや引っ張り合ったりできるロープ遊びのおもちゃを用意したり、ナポリタン・マスティフと毎日散歩できるドッグパークや、関節への負担が少ない砂浜といった環境が近いと理想的です。
犬の生体代を除く初期費用としては、一般的には5~7万円程度ですが、ナポリタン・マスティフは体が大きくなるため、クレートやケージ、サークル費用は平均より高くなる傾向にあります。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、ナポリタン・マスティフは体が大きいので食事量は多く、トイレシーツも大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまった時に、保護された犬を飼い主のもとへ返すための重要な役目を果たします。
装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、ナポリタン・マスティフを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。
迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策をとるのもおすすめです。
ナポリタン・マスティフのしつけと社会化トレーニングのポイント
ナポリタン・マスティフは、穏やかで飼い主に忠実な性質なので、トレーニングは比較的簡単でしょう。
しかし温和な性質で、自分から攻撃をしかけるようなことはありませんが、スイッチが入ると身体が大きく力も強い犬種であるため飼い主にも体力が求められます。飼い主が制御できるように、子犬の頃から徹底的にトレーニングをする必要があります。
子犬の頃から自主的に人の指示に従うように褒めてトレーニングすることが大切です。また、子犬の頃からたくさんの人に会わせ、多くの経験をさせることで、見知らぬことに対して過剰な警戒心を持たないよう社会性を育てていきましょう。
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ナポリタン・マスティフに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:30分以上を1日2回
✓運動量:普通
✓おすすめの遊び: ドッグラン
身体が大きいため、腰や関節に負荷がかからないように激しい運動よりは長時間散歩をしてあげる方が向いています。
運動が好きな犬種ではありませんが、肥満にならないように適切な運動は必要なため、毎日散歩を欠かさないようにしましょう。
ナポリタン・マスティフを飼うのに向いている人は?
✓超大型犬のトレーニングをできる人
ナポリタン・マスティフは体が大きい犬種なので、ちょっとしたことが事故につながることがあります。しっかりと犬の興奮をコントロールできるように訓練できなくてはいけません。
✓子どものいる家庭でも大丈夫
ナポリタン・マスティフは、子どもに優しい犬種だといわれています。子犬期からしっかりとトレーニングをすれば、優れた家庭犬になります。
✓力持ちで体力のある人
体重が50kg以上になる大きな体と力を制御できるくらい力持ちで、一緒に運動できる体力のある人が向いているでしょう。
ナポリタン・マスティフがかかりやすい病気と予防法は?
ナポリタン・マスティフがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。
✓股関節形成不全
体の大きな犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な肥満などが誘発することがあるので、体重管理を心がけましょう。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
ナポリタン・マスティフの日常のお手入れ
✓ブラッシング:週1、2回程度
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:不要
ブラッシングは週1、2回程度で良いですが、春と秋の換毛期は抜け毛が増えるのでこまめなブラッシングが必要です。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
よだれが多い犬種なので、口の周りはこまめにタオルなどで拭ってあげます。また皮膚はたるんでいるので、伸ばしながらお手入れをしてください。
歯みがきは毎日~2日に1回、耳掃除や爪切りは2週~1カ月に1回の頻度で行います。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床などで滑りやすくなるためカットしてください。
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ナポリタン・マスティフとの生活で注意すべきことは?
✓飼育スペースは十分な広さを確保!飼育費も準備して
ナポリタン・マスティフを含む超大型犬は、トイレも寝る場所も大きな体の分広さが必要になります。犬がゆっくりとくつろげる大きさのケージが必要です。さらに、食費やペットシーツ代などの消耗品や、医療費、ペットホテル費なども、小型犬、中型犬より高額になります。住居スペースや金銭的な負荷を考慮したうえで迎え入れるようにしましょう。
✓体重管理はしっかり!脚・関節に負担をかけない
ナポリタン・マスティフは運動が好きでなく、肥満になりやすい体質です。肥満になると、膝や股関節、脊椎への負担が増し、股関節形成不全のような深刻なケガにつながります。身体への負担をできるだけ減らすために、体重管理に気を付けてください。また激しすぎる動きはさせないように配慮しましょう。
✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やにおい、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。
✓口元をこまめに拭こう!
ナポリタン・マスティフはよだれが多い犬種です。運動や食事の後は口元をこまめに拭いてあげましょう。屋内ではよだれで家具などが汚れることを考え、あらかじめカバーをかけたり定期的に掃除を行ったりしましょう。
✓自治体の特定犬制度の対象か確認、準備しよう
マスティフ系の犬種は、人に危害を与える可能性がある特定犬として飼育規制が設けられている自治体があります。各自治体で定められている遵守事項のほか、飼養義務があるためナポリタン・マスティフを飼う際は条件を満たす環境であるか、確認しておきましょう。