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ヤマザキ動物看護大学准教授、愛玩動物看護師、ペットグルーミングスペシャリスト。教育気・研究の現場だけでなく、数々のテレビ出演や、執筆活動など幅広く活躍。
骨太で大きな体を持つマスティフですが、マスティフを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、ヤマザキ動物看護大学動物看護学科准教授、ドッググルーミングスペシャリストの福山貴昭先生に教えていただいた、マスティフの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- マスティフの歴史やルーツ、英語名は?
- マスティフの体高や体重は?
- マスティフの平均寿命は?
- マスティフの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- マスティフはどんな性格、習性?
- マスティフを迎える際にかかる費用は?
- マスティフのしつけと社会化トレーニングのポイント
- マスティフに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- マスティフを飼うのに向いている人は?
- マスティフがかかりやすい病気と予防法は?
- マスティフの日常のお手入れ方法
- マスティフとの生活で注意すべきことは?
マスティフの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | マスティフ |
英語名 | Mastiff |
原産国 | イギリス |
分類 | 超大型犬 |
グループ | 2G:使役犬 |
祖先犬はチベタン・マスティフで、紀元前700年頃のバビロンのレリーフに、マスティフが野生馬とライオン狩りで活躍する図が描かれています。非常に古い歴史のある犬種で、ジュリアス・シーザーがイングランドに遠征したときに持ち帰り、ライオンなどと闘わせたことで、ローマで広く知られるようになりました。
その前後から軍用犬としても使用され、その勇敢さから一時期は猛獣として取り扱われた時代もあったとされています。17世紀には、熊との闘技が英国の国技とみなされるほどイギリス人を熱狂させました。闘技が禁止になってからは護衛犬や番犬としての能力を発揮し、穏やかな性格に改良されました。
英語名はMastiffです。「マスティフ」と名のつく犬種は多数存在しますが、一般的にマスティフと呼ばれる犬種は「オールド・イングリッシュ・マスティフ」または「イングリッシュ・マスティフ」のことを指します。ジャパンケネルクラブの犬種分類では、番犬、警護、作業をする犬「2G:使役犬」に属します。
マスティフの体高や体重は?
体高:約70cm以上
体重:75kg以上
体高はオスが約76cm以上、メスが約70cm以上、体重はオスもメスも79~86kgとする説もあります。超大型犬に分類され、重量感のある骨格を持ち、筋肉が発達しています。
マスティフの平均寿命は?
マスティフの平均寿命は約6~11歳とされています。『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬の平均寿命は11.5歳となっています。マスティフは超大型犬のため、これより平均寿命が短い可能性があります。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
マスティフの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
マスティフの被毛はダブルコートです。オーバーコートは硬い毛質で短く、体表にぴったりと張り付いています。オーバーコートの下にはアンダーコートが密集して生えています。被毛の色はアプリコット・フォーン、シルバー・フォーン、フォーン、ダーク・フォーン・ブリンドルが認められています。いずれの場合もマズル、耳、鼻はブラック、目の周りも両目の間の部分も上に向かってブラックが特徴です。
頭部はどの角度から見てもスクエア型のアウトラインで、筋肉質で頑健なボディをしています。体高と体つきの構成の釣り合いが取れていることが重要とされています。
マスティフはどんな性格、習性?
大きな体とこわもての顔から想像できないほど、優しく温和な性格です。
飼い主に対する愛情が深く、とても従順で、パートナーとして迎え入れやすい犬種です。その一方で、危険を感じると自身や家族、縄張りを守るための防衛能力を発揮します。
超大型犬で力が強いため、行動をコントロールできるように、子犬の頃からしっかりトレーニングをすることが大切です。
マスティフを迎える際にかかる費用は?
マスティフを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約25万円~60万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
マスティフのブリーダーは非常に少なく、ペットショップにいるケースはほとんどありません。迎える費用は一般的に25~60万円ほどと幅があり、ブリーダーや月齢などで異なります。ブリーダーの元でも常に子犬が産まれているとは限らないため、マスティフのブリーダーにあらかじめ相談したり、問い合わせたりしておくと良いでしょう。
他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。また、マスティフは自治体によって飼育に規制がある場合もあるため、事前に確認しましょう。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。体の大きい犬種だとグッズ代やトリミング代などが高額になるなど犬種によって大きく異なるため、目安としてマスティフの場合は平均より高額になると考えておきましょう。なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかった場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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マスティフを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。マスティフは多くの運動を必要とするため、庭などがあればボール遊びなどをさせて思い切り走り回れるようにするのがおすすめです。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。マスティフは体が大きくなるため、クレートやケージ、サークル費用は平均より少し高くなる傾向にあります。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、マスティフは体が大きいので食事量は多く、トイ関連用具も大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、マスティフを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
マスティフのしつけと社会化トレーニングのポイント
マスティフは怖そうな顔立ちとは裏腹に、温厚な性格で飼い主に従順なため、扱いにくい犬種ではありません。しかし、防衛のために、万が一攻撃的な行動をとった場合、超大型犬のマスティフを人間の力で制御するのは困難です。大きなトラブルにつながりかねないため、子犬の頃からしっかりしたトレーニングが必要です。
マスティフに限らず、犬は初めて見るものや知らない人と出会ったとき、恐怖心と警戒心から吠えたりおびえたりすることがあります。恐怖心や警戒心が強く現れる前の子犬の時期にトレーニングすることで、社会性を身に付けられます。
マスティフは聡明な賢い犬種のため、訓練自体はそれほど難しいわけではありません。トレーニングは愛情を持って、短い時間で集中して実施することが大切です。性格は穏やかで、きちんとトレーニングすれば頼もしい家庭犬になります。
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マスティフに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:20分以上を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ボール遊び、長めの散歩
マスティフは体が大きく、体力のあるパワフルな犬種ですが、激しい運動は必要ありません。毎日朝夕など、1日2回、1回20分程度の散歩を欠かさず行えばよいでしょう。もともとは闘犬のため、散歩中に他の犬などに向かっていくことのないよう、子犬の頃からしっかりコントロールすることが大切です。
また、たまにはドックランで思いっきり走らせてあげたいと思いがちですが、超大型犬のマスティフがいると怖がられることも……。ドッグランを利用する際は、周囲への配慮を意識しましょう。マスティフの入場を禁止・規制しているドッグランもありますので、事前に確認の上で訪れることをおすすめします。
マスティフを飼うのに向いている人は?
✓トレーニングをきちんとできる人
必要以上に警戒し攻撃的にならないよう、小さいうちから社会化トレーニングや、基本的なコマンドをマスターする必要があります。落ち着いて毅然とした態度を取れる人が向いているでしょう。
✓十分な運動をさせてあげられる環境
体が大きいマスティフは、毎日1時間程度の散歩が2回必要です。体力に自信があり、長めの散歩の時間が取れる人に向いているでしょう。
マスティフがかかりやすい病気と予防法は?
マスティフがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓股関節形成不全
マスティフを含む大型犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な肥満などが誘発することがあるので、体重管理を心がけましょう。
✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。
✓関節疾患
関節に過剰な負荷がかかるとトラブルを起こします。居室の床材を滑りにくいものにしたり、ソファやベッドへの上がり降りをさせたりしないようにするなどの対策が有効です。また肥満も関節に負荷をかける要因となるので、体重管理に気を付けましょう。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
マスティフの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に2回程度
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:不要
マスティフの被毛はダブルコートで、抜け毛は多いといえるでしょう。1週間に2回程度のブラッシングに加えて、シャンプーや耳掃除、足裏のケアを定期的に行いましょう。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯磨きは毎日~2日に1回、耳掃除や肛門腺絞り、爪切りは2週~1カ月に1回の頻度で行います。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床で滑りやすくなるためカットしてください。
マスティフとの生活で注意すべきことは?
マスティフと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓事故予防にトレーニングはしっかりと!
マスティフは超大型犬のため、入ってほしくない場所には頑丈な仕切りなどを設置して、事故を予防しましょう。力が強いので、他の人や動物に寄っていったり、飛びついたりしないよう、日頃からのトレーニングが大切です。
✓マメな皮膚のチェックをしよう!
マスティフは皮膚炎にかかりやすいため、特に顔のしわの間や口のまわりは炎症を起こしやすいため、気をつけてお手入れしてあげましょう。食前や運動中によだれが出やすいので、硬く絞ったタオルで優しく拭いて、清潔を保ちましょう。顔や首回りのしわに汚れがたまったままだと、臭いの原因になることがあるのでマメにチェックしてください。
✓暑さに注意!
マスティフは日本の暑い夏が苦手です。夏の暑さで熱中症のリスクが高くなります。暑い日に呼吸が速くなり舌を出してよだれを垂らしたりしていたら、すぐに体温が下がるような環境に移動しましょう。エアコンなどで温度調整できる室内で飼いましょう。