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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
日本人の生活習慣に深く溶け込んでいるお風呂は、汚れを洗い流すだけでなく、体を温めて疲れを癒す時間として、生活になくてはならない時間です。犬の場合も人間と同じようにお風呂に入れることは必要なのでしょうか。毎日入れてもよいのか、正しい入れ方など、様々な疑問が浮かんできます。そこで今回はchicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に、犬をお風呂に入れるメリットや気を付けるポイントなどを教えていただきました。
目次
- そもそも犬をお風呂に入れることは必要?
- いつから犬をお風呂に入れても良い?
- 犬は水やお風呂が嫌い?
- 犬をお風呂に入れる頻度の目安は?
- 犬をお風呂に慣れさせるために必要なことは?
- 犬をお風呂に入れる正しい方法・手順
- 犬をお風呂にいれる際の注意点
- 犬をお風呂に入れた後に必要なケア
そもそも犬をお風呂に入れることは必要?
犬の体を清潔に保ち、皮膚トラブルや臭いの発生を防ぐためには、定期的にお風呂に入れて体を洗ってあげることは必要です。犬の皮膚はデリケートなので、汚れを放置しているとダニやノミが付着したり、感染症を引き起こしたりする原因になることも考えられます。正しい入浴方法や頻度を守りながら、定期的にお風呂に入れてあげるようにしましょう。
ただし、心臓や呼吸器系に疾患がある犬の場合、入浴やシャワーが負担になることがあります。お風呂に入れても問題ないかどうか心配なときは、獣医師に一度相談してみるとよいでしょう。
いつから犬をお風呂に入れても良い?
お風呂の開始時期は、犬が住環境に慣れ、体を触られることに抵抗を示さなくなってからが望ましいです。加えて、ワクチン接種を終えた1~2週間後くらいを目安にするとよいでしょう。
シニア犬の場合も、お風呂に入れることは問題ありません。ただし、子犬やシニア犬は免疫力が弱かったり、体力がなかったりするため、長時間のシャワーやお風呂は避け、手早く終わらせるのがポイントです。
嫌がる時には無理強いしないこと
犬のお風呂は初めが肝心です。最初のお風呂で怖い思いをすると、それがトラウマとして残り、お風呂を嫌がるようになってしまうことがあります。お風呂に入れる際は犬の様子を注意深く観察し、水を怖がったり、嫌がる素振りを見せたりしたら決して無理強いはしないでください。最初は体を洗うことより、少しお湯をかけて、水に慣れてもらうことを優先するとよいでしょう。一度苦手意識を持ってしまうと克服するのに時間がかかるので、無理なら次の機会に回すなどして少しずつ慣れさせてあげましょう。
犬は水やお風呂が嫌い?
犬は水が苦手なイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。お風呂が得意な犬もいれば、苦手な犬もいます。お風呂好きの犬は、シャワーをかけると気持ちよさそうに体の力を抜いて、リラックスした表情を見せたり、うとうとと眠ったりしてしまうことがあります。一方、苦手な犬は水をかけると逃げ出したり、ときには攻撃的な行動をとったりするケースも見られるので注意しましょう。
犬がお風呂を嫌がる理由はいろいろと考えられますが、ひとつ挙げられるのはにおいです。自分の体のにおいが消えてしまうことを嫌がることもあれば、人間と比べて嗅覚が発達しているので、シャンプーや入浴剤のにおいの強さに拒否反応を示すこともあると言われています。
いずれにしても好き嫌いには個体差があります。まずは水に対して愛犬がどんな反応を見せるかを確認するようにしましょう。
犬をお風呂に入れる頻度の目安は?
犬のお風呂は、皮膚のターンオーバーに合わせ、2~3週間に一度が良いとされています。皮膚の状態にもよりますが、汚れや臭いがひどいようであれば、シャンプーを使ってしっかりと洗ってあげるようにしましょう。
お風呂の頻度が高すぎると逆効果に
犬の皮膚は表皮が薄く、デリケートなので、シャンプーのし過ぎは厳禁です。体を守るのに必要な皮脂もすべて洗い流してしまい、皮膚を痛めたり、炎症を起こしたりする原因になるので注意しましょう。
犬をお風呂に慣れさせるために必要なことは?
犬を驚かせないためにも、いきなり全身を濡らすのではなく、まずは足先からゆっくりとお湯をかけて、徐々に胴体のほうへと範囲を広げていくとよいでしょう。また、シャワーはできるだけ犬の体に密着させてかけることで、水の抵抗が低減し、シャワーの音も小さくなるので、犬の体への負担が和らぎます。最初のうちはお風呂の時間をできるだけ短くして、恐怖心を抱かせないようにして慣れさせてあげることも大切です。
お風呂好きにするための工夫
お風呂のあとに褒めてあげたり、おやつを与えたりするのも効果的です。お風呂に入ると良いことがあるという「正の条件付け」を行うことで抵抗感が減り、お風呂を好きになってもらいやすくなります。なお、どうしても自宅でのお風呂が難しい場合は、ペットサロンに任せるのもひとつの方法です。
犬をお風呂に入れる正しい方法・手順
シャワーをするときは、まず前肢・後肢から始めて、その次にお尻や内ももなどの下半身を、次に少しずつ上半身に移動させて、胸、背中、最後に頭部、顔という順で洗います。ぬるま湯でしっかりと地肌まで濡らすようにしましょう。
そのあとシャンプーをする場合は、あらかじめよく泡立てておき、お尻や背中、足先からやさしくマッサージをするように洗います。頭や顔は最後に洗いましょう。首から上を洗われるのを嫌がる犬が多いので、その場合は無理に洗う必要はありません。
洗い流すときは、最初にシャワーをかけたときと逆の順番で流していきます。お湯を含ませたスポンジを使ってそっとこすりながらすすぐと、毛の根本の泡までしっかりと洗い流すことができます。
犬をお風呂にいれる際の注意点
お湯の温度は、人間が快適に感じる温度では犬にとってはやや高すぎます。犬の平均体温とされる37度を目安に、少しぬるめの温度に設定しましょう。気温に応じて1~2度の範囲で調節しても問題ありません。たとえば、夏場は35~36度、冬場は37~38度といった具合です。
また、顔を洗う場合には、鼻や口、耳に水が入らないように注意しましょう。とくに耳に入ってしまうと中耳炎を引き起こす原因にもなりますし、鼻や口から水が入ってしまうことで、誤嚥性肺炎や窒息などの原因にもなります。また、目にもシャンプー剤などが入らないように気を付けながら洗ってあげてください。心配な場合は、頭や顔はシャワーではなく、タオルやガーゼ、スポンジなどを使って洗うこともおすすめです。
肌が弱くシャンプーだと刺激が強いという犬は、代わりに犬用の低刺激の入浴剤を入れたお湯に浸からせたり、かけ湯をしてあげたりする方法もあります。血行促進やリラックス効果が高い炭酸泉や、温泉成分を配合した犬用の入浴剤も販売されているので、気になる方は検討してみてください。なお、人間が使う入浴剤は刺激が強く、肌荒れの原因にもなるので使わないようにしましょう。浴槽に入れる場合は、飼い主さんは決して目を離さずに入れるようにしてください。
また、これは人間と一緒ですが、犬も体調が悪いときのお風呂は避ける必要があります。食後1時間くらいも、消化に負担がかかるので入浴は控えるようにしましょう。
犬をお風呂に入れた後に必要なケア
お風呂に入れたあと、生乾きの状態で放置すると細菌が繁殖しやすくなるため、完全に乾かすことが大切です。また、犬は体温調節が苦手なので、濡れたままにしておくと体温が急激に下がって体調を崩してしまうこともあります。
最初からドライヤーで乾かそうとすると時間がかかるだけでなく、皮膚へのダメージがかかるので、まずはしっかりとタオルドライをし、そのあとにドライヤーをかけるのが鉄則です。タオルドライの際は、ごしごしと擦るのではなく、タオルを優しく押し当てて水を吸い取るようにして拭いてあげましょう。
ドライヤーを使うときは、スリッカーなどで毛並みを分けながら乾かしてあげてください。なるべく低めの温度に設定し、背中→お尻→腹部→前肢・後肢→顔→尻尾の順番に乾かしていきます。
第2稿:2021年7月15日更新
初稿:2020年12月4日公開
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