公開
東大農学部獣医学専修卒後、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローや動物病院での臨床業務に従事。2020年に保護犬たちを新しい形でサポートする事業を開始。
豊かな被毛に優しい表情が特徴的なオールド・イングリッシュ・シープドッグですが、オールド・イングリッシュ・シープドッグを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、獣医師の寺田かなえ先生に教えていただいた、オールド・イングリッシュ・シープドッグの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- オールド・イングリッシュ・シープドッグの歴史やルーツ、英語名は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグの体高や体重は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグの平均寿命は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグはどんな性格、習性?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグを迎える際にかかる費用は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグのしつけと社会化トレーニングのポイント
- オールド・イングリッシュ・シープドッグに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグを飼うのに向いている人は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグがかかりやすい病気と予防法は?
- オールド・イングリッシュ・シープドッグの日常のお手入れ方法
- オールド・イングリッシュ・シープドッグとの生活で注意すべきことは?
オールド・イングリッシュ・シープドッグの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 |
オールド・イングリッシュ・シープドッグ |
英語名 |
Old English Sheepdog |
原産国 |
イギリス |
分類 |
大型犬 |
グループ |
1G:牧羊犬・牧畜犬 |
オールド・イングリッシュ・シープドッグのルーツはイギリスとされていますが、実は定かではありません。ヨーロピアン・シェパードやビアデッド・コリーとイギリスのシープドッグを繁殖させて生まれたという説や、ヨーロッパやロシア由来の複数の犬種から交配されて生まれたという説などがあります。
英語表記はOld English Sheepdogで、「オールド」や頭文字を取って「OES」と呼ばれることもあるほか、短く断尾をすることから「ボブテイル(ボブテール)」との愛称で呼ばれるケースもあります。
オールド・イングリッシュ・シープドッグの体高や体重は?
体高:約60cm
体重:約30kg
オールド・イングリッシュ・シープドッグは大型犬に分類され、オスとメスで体格に大きな差はありません。筋肉質でがっしりとしており、体長と体高がほぼ同じスクエアの体形をしています。肩より腰の方が高く張っているため、上から見ると洋梨のような体形が特徴的です。
オールド・イングリッシュ・シープドッグの平均寿命は?
オールド・イングリッシュ・シープドッグの平均寿命は10~12歳とされています。オールド・イングリッシュ・シープドッグは大型犬に分類されますが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、大型犬の平均寿命は11.5歳のため、平均とほぼ変わらないといえるでしょう。多くの運動量が必要な犬種なので、日頃から散歩や室内で運動させるなどして健康管理に気を付けましょう。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
オールド・イングリッシュ・シープドッグの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
オールド・イングリッシュ・シープドッグの毛色はグレーやブルー、グリズル(黒の毛色にグレーやレッドの色味が混じった混合色)、ブルーマール(青みがかった毛色に斑模様が入っているもの)など、さまざまな色合いが入っているのが特徴です。頭や胸、手足に白い斑が入ることもあります。
被毛は体をゆったりと覆うほど豊かで長く、オーバーコートとアンダーコートからなるダブルコート(被毛の層が2層)です。豊かな被毛は日差しから皮膚を守り、寒さに強いメリットがありますが、その分夏の暑さには弱いといえます。
外貌は断尾をされて短い尻尾が特徴ですが、近年では動物愛護の観点から長い尻尾のオールド・イングリッシュ・シープドッグもいます。
オールド・イングリッシュ・シープドッグはどんな性格、習性?
オールド・イングリッシュ・シープドッグは、穏やかで落ち着いた性格をしています。アメリカで「ナニードッグ(子守犬)」といわれるほど人懐っこく攻撃性の少ない性格なので、子どもがいる家庭や他の動物を飼っている家庭でも安心してお迎えできるでしょう。
元々牧羊犬として活躍してきたこともあり、外敵から身を守るために危険を察知すると攻撃的な一面を見せる可能性はありますが、飼い主の指示をしっかり理解できる賢い犬種なので、子犬期からトレーニングを重ねましょう。
オールド・イングリッシュ・シープドッグを迎える際にかかる費用は?
オールド・イングリッシュ・シープドッグを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約30~40万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
オールド・イングリッシュ・シープドッグのブリーダーは非常に少なく、ペットショップにいるケースはほとんどありません。迎える費用は一般的に30~40万円ほどといわれていますが、ブリーダーや月齢などで異なります。
他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。また、オールド・イングリッシュ・シープドッグは自治体によって飼育に規制がある場合もあるため、事前に確認しましょう。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
犬を飼うための初期費用や毎月の支出についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>犬を飼うのにかかる費用はどれくらい?初期費用や毎月の支出を解説【獣医師監修】
飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。体の大きい犬種だとグッズ代やトリミング代などが高額になるなど犬種によって大きく異なるため、目安としてオールド・イングリッシュ・シープドッグの場合は平均より高額になると考えておきましょう。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
犬を飼う際に生涯かかる費用についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>迎える前に知っておこう!犬の一生にかかるお金はどれくらい?
オールド・イングリッシュ・シープドッグを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。オールド・イングリッシュ・シープドッグは多くの運動を必要とするため、ボール遊びなどに使うボールやフライングディスクなどを準備しておくと理想的です。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。オールド・イングリッシュ・シープドッグは体が大きくなるため、クレートやケージ、サークル費用は平均より高くなる傾向にあります。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどですが、オールド・イングリッシュ・シープドッグは体が大きいので食事量は多く、トイレシーツも大型タイプを選ぶ必要があるので平均よりかかると見込みましょう。
犬を飼うための初期費用や毎月の支出についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>犬を飼うのにかかる費用はどれくらい?初期費用や毎月の支出を解説【獣医師監修】
2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、オールド・イングリッシュ・シープドッグを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
オールド・イングリッシュ・シープドッグのしつけと社会化トレーニングのポイント
オールド・イングリッシュ・シープドッグは成犬になるととても大きく、そして力が強くなります。トレーニングを受けず飼い主の指示を聞けないまま育つと、思わぬ事故を引き起こす可能性があります。子犬の頃からトレーニングを始めることが肝心です。
オールド・イングリッシュ・シープドッグは牧羊犬として使役していた犬種で、とても頭がよく物覚えがいいといわれています。頑固で警戒心が強い一面もあるので、してもよいこと、してはいけないことがぶれないよう、一貫性を持って対応することが重要です。スムーズにトレーニングが進まないからと叱ってしまうと、飼い主を怖がり逆効果になります。根気よく穏やかに接することが大切です。
また楽しいことが大好きな性格のため、トレーニングでおもちゃなどを上手く使うほか、トレーニングが終わった後に大好きなおもちゃや、体重管理に気を付けながらおやつをご褒美として与えるのもよいでしょう。
犬の社会化についてもっと詳しく知りたい方はこちらもおすすめ!
>子犬の社会化期とは?必要な理由と期間中にやっておきたいことを解説【獣医師監修】
オールド・イングリッシュ・シープドッグに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:1時間を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ドッグラン、ボール遊び、おもちゃ遊び、フライングディスク
オールド・イングリッシュ・シープドッグは豊富な運動量を必要とする犬種のため、毎日朝晩各1時間程の時間を取って散歩する必要があります。ただ歩くだけでは運動にならないため、時折早歩きで歩いたり、広場でロングリードを使ってボール遊びをしたりするとよいでしょう。
毛が長く豊かなので、梅雨の湿気や夏の暑さはとても苦手です。暑い季節の散歩は、日が出る前や日が沈んだ後に行うのはもちろんのこと、市販の犬用クールウェア商品を組み合わせるなどして熱中症対策を行いましょう。
庭やドッグランで走らせるほか、人と一緒に遊ぶのが大好きなのでボールやフライングディスクを投げたり、ロープで引っ張り合いをしたりして遊ぶのもおすすめです。ただし、体が大きいためあまりにも激しい運動をさせると股関節に負担がかかるので注意しましょう。
オールド・イングリッシュ・シープドッグを飼うのに向いている人は?
✓十分な運動をさせてあげられる環境
オールド・イングリッシュ・シープドッグは活動的で瞬発力が高く、体も大きめです。散歩では速く歩くなどして運動量を確保したいため、体力に自信がある人に向いているでしょう。
✓子どものいる家庭でも大丈夫
オールド・イングリッシュ・シープドッグは子どもが好きな犬として知られているため、小さなお子さまがいるご家庭でも犬がストレスを感じにくいでしょう。また、子犬期からしっかりとトレーニングをすれば、優れた家庭犬になります。
オールド・イングリッシュ・シープドッグがかかりやすい病気と予防法は?
オールド・イングリッシュ・シープドッグがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓皮膚炎
豊富な被毛を持つ犬種に多い病気です。ブラッシングやシャンプーなどのお手入れで皮膚を清潔に保って予防しましょう。
✓外耳炎
湿気が耳道にこもりやすい垂れ耳の犬種に多い病気です。原因はアレルギーや細菌性の炎症など。強いかゆみを引き起こし、頭を激しく振ったり、耳を足で激しく掻きむしったりしますが、点耳薬などで治療できます。定期的な耳掃除で予防しましょう。
✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。
✓股関節形成不全
大型犬にリスクの多い病気です。成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な成長や肥満などにより誘発されることがあるので、子犬の時期から体重管理を心がけましょう。
オールド・イングリッシュ・シープドッグの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に1、2回
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:1~2カ月に1回程度
全身を覆うふわふわとした豊富な被毛は毎日のお手入れが必要です。ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
全身長い被毛で覆われており自宅だけで被毛ケアを行うのは難しいため、定期的にサロンでトリミングをお願いするといいでしょう。口やお尻周りの被毛を汚さないよう、部分カットする方法もあります。
歯磨きは毎日~3日に1回、耳掃除は1カ月に1、2回、外耳炎治療の場合は1週間に1、2回となることもあります。爪切りは1カ月に1回程度の頻度で行います。肛門腺絞りは必要のないことが多いですが、自分で出しづらい犬の場合、1カ月に1回程度がよいでしょう。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床で滑りやすくなるためカットしてください。
犬のお手入れ方法についてはこちらの記事もおすすめ!
>実はとっても重要!犬に必要な“小さなパーツのお手入れ”方法を解説!〜顔・お尻・足〜
オールド・イングリッシュ・シープドッグとの生活で注意すべきことは?
オールド・イングリッシュ・シープドッグと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓マメな皮膚のチェックをしよう!
オールド・イングリッシュ・シープドッグは皮膚炎にかかりやすいため、皮膚に赤みや脱毛がないか、痒がったりしていないか、日頃から様子をチェックしておきましょう。豊富な被毛を持つ犬種に多い病気です。ブラッシングやシャンプーなどのお手入れで皮膚を清潔に保って予防しましょう。
✓湿気の多い季節は、耳のお手入れをいつもより念入りに!
垂れ耳の犬種は、梅雨時期から夏にかけて耳や皮膚のトラブルが増えます。耳の色やにおい、耳垢の様子をこまめにチェックしましょう。ただし、過度な耳掃除は耳を傷つける恐れがあります。かかりつけの動物病院でケアしてもらうと安心です。
✓熱中症に注意!
豊かな被毛を持つ犬は、太陽光の熱や湿気がこもりやすいため注意が必要です。晴天下で過ごす際は特に、口呼吸(パンティング)が激しくないか、体が熱くなっていないかこまめに確認しましょう。屋外では、十分な水分補給や太い血管のある場所を冷やすなど、暑さ対策は万全に。
✓定期的にブラッシングをしよう!
オールド・イングリッシュ・シープドッグのようなダブルコートの犬は毛が密生しているため、むだ毛が絡まったり、毛玉になったりすることを防ぐためにも定期的なブラッシングを心がけましょう。その他、月に1度の頻度でシャンプーすることもおすすめです。肌のバリア機能が低下する原因にもなるため、洗い過ぎは禁物です。
✓関節に負担の少ない床材を選ぼう!
床で足が滑ると足首などの関節に負担がかかります。普段過ごす部屋の床は滑りにくい素材を選ぶか、マットなどを敷くとよいでしょう。