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イラストレーター。保護猫2匹と暮らし、「猫を残して死ねない問題」をライフワークとする。ねこヘルプ手帳などをはじめとする『もしもヘルプ手帳』も考案・製作している。
オキエイコさんが考案した、『いぬヘルプ手帳』とは?
目次
- 飼い主の“もしも”のときに愛犬を救う『いぬヘルプ手帳』を考案したオキエイコさん
- “もしも”のときにペットの命を救いたい。我が子の母子手帳がヒントに
- SNSで犬の飼い主の声を集めて作られた手帳は、飼い主からの“愛”そのもの
- 家族と暮らす飼い主にも。愛犬の“指南書”として使ってほしい
- 『もしもヘルプ手帳』と売上の一部を寄付。愛護活動に込める想い
- 身近にある“もしも”のリスク。愛犬のためにできることから準備を
- “前向きに”ペットを引き継ぐ覚悟ができる社会に
飼い主の“もしも”のときに愛犬を救う『いぬヘルプ手帳』を考案したオキエイコさん
もしも今日事故に遭ってしまったら。もしも突然倒れてしまったら――
不測の事態が起きたときに、私たちは家で待つ愛犬を守ることができるでしょうか?
仮に誰かが代わりにお世話をしてくれたとしても、いつもの生活が大きく変われば辛い思いをさせてしまいます。何日も発見されなければ、命も落としかねません。
そんな悲しい事態が起きぬよう、飼い主の“もしも”のときに愛犬を守ってくれるのが『いぬヘルプ手帳』です。
表紙には、犬を飼っていることを伝えるメッセージ。ページをめくると緊急連絡先や、かかりつけ動物病院の連絡先、犬のプロフィールなど、引き継ぎに必要とする情報が全て書けるようになっています。
『いぬヘルプ手帳』は、『もしもヘルプ手帳』シリーズの一作。ほかにも『ねこヘルプ手帳』や、エキゾチックアニマル用の『どうぶつヘルプ手帳』があります。
考案者は、株式会社nancoco代表のオキエイコさん。2匹の愛猫と暮らしており、猫をモデルにした作品を手がけるイラストレーター「オキエイコ」としても活躍中です。
「ペットと一緒に暮らすときの意識を変えていきたい」と話すオキさんは、どのような想いを『いぬヘルプ手帳』に込めているのでしょうか。制作背景や『いぬヘルプ手帳』を通して実現したい理想について伺いました。
“もしも”のときにペットの命を救いたい。我が子の母子手帳がヒントに
「自分が事故や病気など“もしも”のことがあったとき、家の猫を放置死させてしまうと思うと恐ろしい」
『もしもヘルプ手帳』誕生のきっかけは、猫を飼う一人暮らしの友人から相談を受けたことでした。猫を飼ってはいたものの、家族と暮らしていたオキさんは、その時初めて「自分の健康状態がペットの命のリスクにつながる」と気づいたそうです。
友人からの相談を受けてオキさんが最初に作ったのは、“もしも”のときに家でペットが待っていることを周知できるスマホ用の待ち受け画像。SNSで画像を無料配布すると約2.8万リツイート(当時)され、大反響を呼びました。
その後、双子を妊娠したオキさん。母子手帳に子どもの成長を記録している時、さらなる考えが浮かびます。
「うちの猫たちにも母子手帳があったらいいなと思ったんです。猫にもワクチンの接種日や検査結果などの情報がすべてまとまっているツールがあれば、“もしも”のときに便利ですし、猫を飼っているという意思表示にもなります」
オキさんは、猫の母子手帳をSNSで提案。多くの猫の飼い主から切望の声が届き『もしもヘルプ手帳』シリーズ第一弾となる『ねこヘルプ手帳』を作ることになったのです。
オキさんはSNSで、猫を引き継ぐ際に必要な情報についてアンケートを繰り返し、集まった意見を手帳に反映させていきました。約3ヶ月の制作期間を経て制作された『ねこヘルプ手帳』は、2022年7月に販売がスタート。人気はSNSで瞬く間に広まり、企画・制作・販売を個人で行っているにもかかわらず、発売日から約1ヶ月で2500部を記録しました。
この人気は愛猫家の間だけにとどまりませんでした。『ねこヘルプ手帳』の制作中、多くの犬の飼い主から「犬バージョンも作ってほしい」という声があったのです。しかし、犬を飼ったことがないオキさん。犬に関する知識がなかったため「私なんかが作るのはおこがましい」と最初は作ることに抵抗がありました。
そんななか背中を押してくれたのは、『ねこヘルプ手帳』を知りオキさんのSNSに集まってきてくれた犬の飼い主たちでした。
「『個人の声を聞いてくれるオキさんだからこそ作ってほしい』『私たちが犬のことを教えてあげるから大丈夫!』と嬉しい言葉をいただいたんです。家族であるペットを守りたいという気持ちは猫も犬も変わらないと思い、『いぬヘルプ手帳』を作ることを決めました」