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専門分野は救急救命学・防災学・災害レジリエンス・消防団研究。大学ではペット防災についての研究や、リアルな災害現場を再現した環境でのペット同伴避難訓練などを行う。
「災害が忘れた頃にやってくるというのは、真っ赤な嘘。災害は毎年、どこかで必ず起きています。ペットの命を守れるのは、あなただけです」大地震の時、犬・猫の命を守るために、私たちにできることは? 災害現場を熟知した防災と救命のプロフェッショナル、立岡伸章さんに取材しました。
目次
- ペットも大切な家族。人の命との優劣はつけるべきではない
- 【震災時の心得】自分が無事でいないと、ペットも助けられない
- 【ペット同行避難の現実】避難所は、動物が嫌いな人もいる
- 【家で揺れたら】リビング、トイレ、お風呂、ベランダで被災したら
- ペットを守る部屋づくりとは? 飲み水やリードは複数用意!
- 【外で揺れたら】街中、エレベーター、駅、電車で被災したら
- 【NG行動】絶対にやってはいけない大地震後の行動
- 【安全確認】揺れがおさまった後の確認手順
- 【火事】逃げる目安と消火の方法
- 【停電】人もペットも夏は熱中症、冬は低体温に注意! 現金の準備を
- 【車中泊】リスクを知って安全に! 一酸化炭素中毒やエコノミークラス症候群に要注意
- 【ペットの救助】車に閉じ込められたら
- 【ペットの救助】倒れた家具の下敷きになったら?
- 【ペットの救助】包帯の使い方
- 【ペットの救助】止血の方法 人獣共通感染症に注意
- 【ペットの救助】やけどの応急処置
- 【ペットの救助】熱中症・低体温
- 【防災グッズ】プロが選ぶ人とペットの持ち物
- 【今日からやること】チェックリスト
- 3.11 東日本大震災を経験して
ペットも大切な家族。人の命との優劣はつけるべきではない
地震で家具の下敷きになった犬や猫を、あなたは助けられますか?
防災グッズの準備だけでは、意味がありません。
「ペット防災は本当に役立つ情報が少ないと感じます。昨今、ペットを含め様々な防災セミナーが開催されていますが、災害現場での活動経験がない方が、講師をしていることも多いです。」
そう警鐘を鳴らすのは、救急救命士でペットセーバーの立岡伸章さん。
立岡さんは元々、救急救命士の国家資格を持ち、埼玉県内の消防本部で消防士として活躍していました。消防時代には、“犬が川に落ちているから助けて欲しい”といった通報があれば、市民サービスの一環ととらえて、積極的にレスキューに向かっていたといいます。
なぜ、人命救助のプロである立岡さんが、ペットにも力を入れるのでしょうか?
「私は大の愛犬家です。レスキュー現場ではどうしても人命が優先になりますが、ペットも大切な家族の一員である以上、人の命との優劣はつけるべきではないと思っています。」
そんな立岡さんは、ペットの救命救助法を学ぶため、アメリカ獣医師学会のガイドライン、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)、Ready.gov(アメリカ合衆国国土安全保障省)のエビデンスベースで作成されたぺットの救命救助法(一般社団法人日本国際動物救命救急協会主催)を学び、現在はペットセーバーのインストラクターとしても活躍しています。
今日は、そんな立岡さんにペットと一緒に助かるための地震対策を、詳しく解説いただきます。
【震災時の心得】自分が無事でいないと、ペットも助けられない
大地震がきたら、愛犬・愛猫のことが、とても心配ですよね。しかし、皆さんが無傷で生きて助からなければ、ペットを助けることは、絶対にできません。まずは自分の無事を第一に考えてください。それが結果として愛する犬猫のためになります。
また、ペットがいる家庭は、自分以外の命も守らなければなりません。避難のハードルは、高齢者や障害者、妊婦さんや小さいお子さんがいるご家庭と同じと考えて、早めの避難が必要です。
それから、災害時はSNSなどでデマ情報も多く出回ります。情報収集は安心できるではなく信頼できることを軸にして、公的機関や信頼できるサイトから取得することを心がけましょう。
避難場所でもペットの安全な飼養環境を守るために
愛犬・愛猫の安全を守るのは、飼い主の責任です。避難生活を送る場所で、安心な環境をどのように守るのか、具体的に考えてみましょう。
- 避難所
各避難所が定めたルールに従い、飼い主が責任を持ってお世話をします。環境の維持管理は、飼い主同士の助け合いや協力が必要です。ペットも慣れない場所でストレスを感じ、心身の不調につながることが考えられます。こまめに様子を見て、少しでも不安を軽減できるよう心がけましょう。
- 自宅
まずは、自宅の安全確認を確実に行いましょう。食料・飲料・生活必需品などの備蓄は、最低3日分、できれば7日分を準備しておきましょう。また、支援物資や情報は、必要に応じて指定避難所などに取りに行く必要があります。
- 車中避難
ペットだけを車の中に残す時は、車内の温度に注意し、十分な飲み水や食料を用意しましょう。また、長時間車を離れるような場合には、ペットを安全な場所に移送させてください。支援物資や情報は、必要に応じて指定避難所などに取りに行く必要があります。
- 誰かに預ける
自宅周辺が被災しても、親戚や知人宅は安全かもしれません。万が一に備えて、誰かに預けられるのかも検討しておきましょう。施設に預ける場合には、条件や期間、費用などを必ず確認します。後でトラブルにならないよう、預かり覚書などを取り交わすことも大切です。