更新 ( 公開)
愛犬の口臭がきつい…と感じるけれど、臭いのが普通なのか対処法が分からず不安になる人も多いかと思います。犬の口臭の原因は歯周病だけでなく、胃腸や腎臓の病気を患っている可能性があるので放っておくと命に関わる恐れもあります。今回は、酪農学園大学獣医学群獣医学類 准教授・佐野忠士先生に教えていただいた、犬の口臭の原因や、口臭が引き起こす病気のリスク、飼い主が自宅でできるケアなどを解説していきます。
目次
- 犬の口臭ってどんなにおい?
- 犬の口臭がひどい原因は?
- 犬の口臭がひどいときの対処法は?
- 犬の口臭を予防するための自宅でできるケア
犬の口臭ってどんなにおい?
通常、犬が口にするようなものから異臭や刺激臭はしません。食後であれば、食べた物のにおいはするかもしれませんが、それが「口臭」と感じるほどの嫌なにおいに感じることはあまりないと思います。犬の口臭がきついときは、必ずなんらかの原因で本来あるべきではない成分が口の中にあり「口内がおかしな(良くない)状況」になっているということです。
犬の口臭が気になるときは口内トラブルが起きている可能性がある
口臭に限らず、においに関して大切なことは「人はにおいに慣れる」ということです。嗅いだことのないにおいや、変なにおいに対しては「ん?」「うわ!」など色々な程度でにおいを感じますが、少し時間が経つとほとんど気にならなくなります。これは他人の家にお邪魔した時に感じる生活臭で例えると分かりやすいかもしれません。
つまり、人は嗅ぎ慣れたにおいには非常に鈍感になります。毎日一緒に暮らしている愛犬の口が臭いと感じるということは、他人からしたら「うわぁ!」と言いたく程のにおいが発生しているかも知れないのです。愛犬の口臭が気になった場合は、口の病気やトラブルの可能性があると判断し、かかりつけの先生に相談してみることをおすすめします。
犬の口臭がひどい原因は?
犬の口から異臭がする場合には、口内トラブルや病気などのリスクが潜んでいます。以下、口臭の原因を詳しく見ていきましょう。
歯周病や歯石
歯周病や歯石が付着している口内では、食べ物が残り続けている、唾液の成分の変化が続いている、それによって歯肉の炎症が進んでいると考えられます。歯石や歯垢自体のにおいというより、口内の異常状態が長期間続いていることが口臭に繋がっている場合があります。
舌炎、口内炎
一番多い症状は歯肉(歯茎)の炎症です。食べ残しが口内に長く残っていることで歯肉炎や歯周病になり、その影響で唾液の成分が変化してしまい口臭がするようになります。
口腔内腫瘍
口の中にできる腫瘍は悪性のものが多いです。血なまぐさいような、生ゴミの強烈な臭いのような「まさに異臭」を放ちます。食べ物を食べこぼすようになった、飲み込みづらそう、おもちゃや水に血が混じるなどの変化が起きることで病気に気づくことがありますが、腫瘍自体はかなり大きくならないと気づくのが難しいでしょう。日頃から愛犬の観察や口内ケアで予防してあげることが重要です。
胃腸の病気(腸閉塞)
口臭や嘔吐、元気消失、食欲不振などの症状が見られます。胃液が吐かれた場合にはすっぱいにおいがすることがあります。
腎臓や肝臓の病気(腎臓病・腎機能不全)
腎臓の働きが低下し、末期になると口からアンモニア臭を感じることがあります。初期にはお水をたくさん飲み、たくさんおしっこをするなど腎臓の異常による症状が現れ、進行すると嘔吐や元気消失などがみられます。肝臓に病気がある場合はかなり進行しないと症状として現れないことが多いので注意が必要です。
口内の乾燥
人間と同じように、口の中の水分が不足すると唾液が凝縮され口臭が強くなります。鼻詰まりのときに口呼吸をして口内が乾燥し、口臭が強くなる子もいるようです。また、冬場は暖房の効いた室内で過ごし、水を飲む量が減りがちなため、口臭が強くなることも考えられるでしょう。脱水症状になると口臭が強まるので、夏場の暑い時期も要注意です。
便秘
便秘が重度となり、完全に腸の動きが止まってしまったりすると口から糞便のにおいがすることがあります
食べ残し
食事直後であれば食べたもののにおいしかしないはずです。「口臭=変な臭い」と感じる場合には、長い間、食べ残しが口の中に残って変性(へんせい)している可能性があります。
与えているフードが傷んでいる
ドライフードやウェットフードどちらにせよ、開封後の管理を怠ると劣化や酸化が進み傷んでしまいます。傷んだフードの食べ残しが歯に付着したままになると腐敗しやすく、口臭につながる場合もあります。しっかり封をして保管したり、大容量ではなく食べきりサイズを選んだりしてフードの劣化を防ぐ工夫をしましょう。
犬の口臭がひどいときの対処法は?
犬の口臭がきついときは、すでに口内環境が良くない状態を示唆していますので、飼い主の判断で対処をしなかったり放置したりするのは控えましょう。特に以下のような場合には動物病院で診てもらうと安心です。
歯垢や歯石が気になる場合
歯石や歯垢が気になるときは、動物病院で早めに相談しましょう。歯石取りをしてもらうだけでも、口臭が軽減されます。歯石や歯垢の付着が目立たなくても口臭が気になるときは、歯周病が始まっていることも多いです。
犬の口臭の原因が病気の場合
犬の口からそれぞれの病気特有の異臭がする場合や、嘔吐や元気消失、食欲不振などの症状がみられる場合は口腔内や内臓の病気を引き起こしている可能性があります。動物病院で相談する際は「どんなにおいがするのか」を伝えると、診察の判断材料になります。
犬の口臭を予防するための自宅でできるケア
飼い主がこまめに愛犬の口内ケアを行い、歯石や歯垢の付着を防ぐなど口の中の環境を良くしてあげることが大切です。歯ブラシだけでなく、便利な犬用の口腔ケアアイテムがあるのでうまく活用しましょう。
自宅での歯みがきを習慣化
どのような食事でも食べた後に、こまめなケアをしなければ歯垢ならびに歯石は溜まっていきます。歯垢や歯石を予防するためには1日1回歯みがきを行うのが理想ですが、少なくとも3日に1回は行いたいです。犬用の歯みがき粉を使う時は、犬が喜ぶ味を選んであげるようにします。歯ブラシを嫌がる子には、綿棒を使用したり、指にガーゼを巻いて拭いてあげたりするのもおすすめです。
歯みがきガム
噛むことで歯を綺麗にしてくれる歯みがきガムは、歯みがきが苦手な子にも試しやすいアイテムです。口内を傷つけたり丸呑みして喉に詰まらせたりしないように、愛犬の口の大きさに合うサイズを選びましょう。
ジェルタイプの殺菌剤(歯みがき粉)
ジェルを舐めさせるだけで口臭予防や口内ケアができるものがあります。歯ブラシが苦手な子にもおすすめです。
飲み水を常にたっぷり用意しておく
口腔内が乾燥するのを防ぐために水をたっぷり用意し、愛犬がいつでも飲めるようにしてあげてください。
サプリメント
ドッグフードや水にまぜて食べさせるだけで歯周病や虫歯を予防、口の中の健康を保つサプリメントを取り入れるのもおすすめです。ただし、口の中に食べ残しがあれば歯石・歯垢は付着してしまいます。歯みがきなどの口内ケアとサプリメントを併用すると良いでしょう。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。
第2稿:2021年9月21日更新
初稿:2020年5月22日公開