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川村動物クリニック院長/いばらきどうぶつ看護センター管理獣医師

低脂肪ドッグフードへの切り替えを検討する理由のほとんどは、愛犬の肥満が気になる、健康診断で膵臓の数値が気になるから、というものです。でも低脂肪のドッグフードは、犬にとって何がどのように良いのでしょうか。
この記事では、獣医師の川村康浩先生に伺い、低脂肪ドッグフードの基準や特徴、低脂肪ドッグフードはどんな犬におすすめかなどを解説していきます。愛犬に適したフード選びの参考にぜひご覧ください。
目次
- 低脂肪のドッグフードとはどんなフード? 基準、種類は?
- 低脂肪ドッグフードは脂肪摂取制限のある疾患、シニア、消化機能が弱い場合におすすめ
- 低脂肪ドッグフードは目的別で選んで。ダイエットは低カロリー&高タンパクがおすすめ
- 低脂肪ドッグフードの注意点。脂質の控えすぎは不健康な場合も
- カインズでも低脂肪ドッグフードのほか消化をサポートするサプリメントやおやつ、グッズを取り扱っています
- まとめ
低脂肪のドッグフードとはどんなフード? 基準、種類は?
低脂肪と記載されたドッグフードは、いわゆる一般的なドッグフードと何が違うのか、低脂肪ドッグフードと謳う基準や種類などを紹介していきます。
低脂肪ドッグフードは脂質が少ないフード
「低脂肪ドッグフード」には、この基準を満たしていれば「低脂肪」と表記して良いといった明確な基準はありません。一般的なフードに対して「低脂肪」である、ということになります。一般的な成犬用のドッグフードでは脂肪含有量は15%前後のものが多いので、低脂肪ドッグフードはそれよりも脂質の割合が少ないと考えて良いでしょう。「低脂肪」とパッケージに記載されたドッグフードのほとんどは10%以下の含有率になっています。
ドッグフードの栄養基準となっているAAFCO(アメリカ飼料検査官協会)では、成犬のドッグフードでは5.5%以上の脂質含有率を推奨しています。ドッグフードにどれくらいの脂質が含まれているかは、パッケージの成分分析値の“脂肪(脂質、FAT)”の項目をチェックしましょう。
脂質が少ないということは、脂肪を消化吸収する際に使われる内臓器官への負担が少なくて済むメリットがあります。
低脂肪ドッグフードの種類はダイエット用や療法食、シニア用など
低脂肪のドッグフードには、主に次の3種があります。
✓総合栄養食の低脂肪ドッグフード
脂質の割合が10%以下で減量目的のものが多く、低カロリーの設計になっています。
✓療法食の低脂肪のドッグフード
療法食の低脂肪ドッグフードは、何らかのアレルギーや疾患、体質の傾向に合わせて低脂質の食事にしなければいけない犬のためのフードで、獣医師の診断に基づいて処方されます。
たとえば「消化器ケア・消化器サポート」などの名目の製品は、消化吸収不良でお腹を壊しやすい体質や高脂血症の犬に向けたものです。脂質の含有量は7%程度で、他の栄養成分も対象の疾患に対して配慮のある配合となっています。
✓シニア犬用の低脂肪ドッグフード
高齢になると活動量や代謝量が減少し、1日に必要なエネルギー量が減少していきます。そのため成犬用のドッグフードでは太りやすくなることも。また、内臓機能が衰えると消化機能も低下して、これまで食べていたフードでは内臓への負担が大きくなったりすることもあります。
そのためほとんどのシニア用フードは、成犬用のフードより消化に配慮した低脂肪のつくりになっています。
低脂肪ドッグフードは脂肪摂取制限のある疾患、シニア、消化機能が弱い場合におすすめ
低脂肪ドッグフードがおすすめの犬は次のような犬たちです。
✓膵炎や高脂血症、胆泥症など、脂肪制限が必要な消化器疾患をかかえる犬
消化器症状が強く出る膵炎や胆泥症、それらの原因となる脂質の代謝異常を併発することが多い高脂血症は、脂肪制限が必要な疾患です。現在進行形で疾患を抱えているだけでなく、過去に膵炎をやったことがある犬や、高脂血症の傾向のある犬にも、食事では脂肪制限が望まれます。
健康診断の血液検査項目で、血液中の「コレステロール(LDLコレステロール、HDLコレステロール)」と「中性脂肪“TG(トリグリセリド)”」の数値から判断されます。高脂血症の傾向が見えたら獣医師に食事の見直しなどを相談してください。
✓遺伝的に膵炎や高脂血症になりやすい犬種
ミニチュア・シュナウザー、コリー犬種(シェットランド・シープドッグやボーダー・コリーなど)、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・コッカー・スパニエル、ジャック・ラッセル・テリアなどは、高脂血症や膵炎になりやすい体質を受け継いでいるといわれています。これらの犬種には、予防として低脂肪フードを勧めることが多いようですが、自己判断でなく獣医師に相談しながら切り替えるようにしましょう。
✓シニア犬や胃腸が弱い犬
胃腸が弱かったり、加齢によって消化機能が衰えてきたりした犬には、消化吸収する際に内臓負担の少ない低脂肪ドッグフードがおすすめです。また脂質が少なく、低カロリーなフードは、シニア期になって太りやすくなった、という犬にも良いでしょう。
低脂肪ドッグフードは目的別で選んで。ダイエットは低カロリー&高タンパクがおすすめ
脂肪1gあたりのエネルギー量は9kcal、対してたんぱく質や炭水化物のエネルギー量は1gあたり4kcalです。そのため効率的にダイエットをするなら脂質を減らすことが有効です。
しかし「低脂肪ドッグフード」は、必ずしも犬の体重管理のためのものとは限りません。脂質を低く抑える代わりに、たんぱく質や炭水化物で足りないエネルギー量を補っていて総カロリー量は変わらない設計、ということもあります。
そのためダイエットが必要な犬には、低脂肪で低カロリーのものを選ぶようにしましょう。パッケージに「体重管理」「体重ケア」「減量/ダイエット」「ウェイトマネジメント」などと記載されていることが多いです。
また、ダイエット中は高たんぱくなフードもおすすめです。たんぱく質は、筋肉量の維持や免疫力の維持に欠かせない栄養素です。ダイエットのための食事制限は、やり方を間違えると犬にとって大きな負担となってしまいます。くれぐれも自己判断で行わず、かかりつけの獣医師に相談しながら行いましょう。
低脂肪ドッグフードの注意点。脂質の控えすぎは不健康な場合も
「脂肪や脂質は太る原因」、「脂肪はダイエットの大敵」など、脂肪にはネガティブなイメージがつきまといます。しかし脂質(脂肪)は犬にとって非常に重要な栄養素のひとつです。生命活動のためのエネルギー源であり、皮膚や被毛を保護するはたらきもします。犬の健康維持のために、必ず一定量は摂らないといけないものです。
健康のために減量中でも、極端に脂質を控えてしまうと、かえって健康のためにならないので気を付けましょう。さらに脂質は、犬が「おいしい」と感じる風味に関係しています。そのため低脂肪ドッグフードは犬の食いつきが悪いことがあります。
カインズでも低脂肪ドッグフードのほか消化をサポートするサプリメントやおやつ、グッズを取り扱っています
体重増加が気になりダイエットを検討中、お腹が弱い体質の犬は、低脂肪のドッグフードが良いか、まずは獣医師に相談してみましょう。
獣医師がおすすめした場合に低脂肪ドッグフードで迷う際は、カインズでも豊富にラインナップしています。カインズオンラインショップやお近くのカインズで探してみてください。
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※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
低脂肪ドッグフードには、おもに「ダイエット目的」のものと「シニア犬用」のもの、「膵炎などの療法食」の3種類があります。
ダイエット目的で低脂肪ドッグフードを検討している場合は、必ずしも“低脂肪ドッグフード=低カロリー”ではないことに注意して選ぶようにしましょう。
また急激な節制は犬の体に大きな負担をかけてしまうことがあります。ダイエット目的で低脂肪ドッグフードを取り入れたい場合は、まずは自己判断せず、必ずかかりつけの獣医師に相談してみることが大切です。