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上京どうぶつ病院院長。北里大学出身。日本獣医生命科学大学付属動物病院にて研修後現職。
優しくて穏やかな性格のラブラドール・レトリーバーは、小さなお子さんがいるご家庭や初めて犬を飼う方にとっても飼いやすい犬種です。
毛色は黒、白(イエロー)、チョコレートと3つ毛色があり、日本でよく見かけるのは白(イエロー)と黒です。なかでも、人気の「黒ラブ」と呼ばれる黒いラブラドール・レトリーバーを飼いたい方もいることでしょう。
この記事では、黒いラブラドール・レトリーバーの特徴や性格、寿命、なりやすい病気などを解説します。黒いラブラドール・レトリーバーを飼おうか悩んでいる方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
目次
- ラブラドール・レトリーバーの特徴・被毛について
- ラブラドール・レトリーバーの性格は知能が高く温厚
- 黒いラブラドール・レトリーバーの寿命は何年?
- 黒いラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気
- 黒いラブラドール・レトリーバーを入手する方法と価格相場
- 黒いラブラドール・レトリーバーを飼う際のポイント
- まとめ
ラブラドール・レトリーバーの特徴・被毛について
ラブラドール・レトリーバーは垂れ耳と筋肉質な体・短毛・太い尻尾が特徴の大型犬で、多くが体重30kg前後、体長54〜57cmほどの大きさです。
水辺での狩猟犬として活躍していた歴史があり、防寒性や防水性に優れた被毛をもちます。
黒のラブラドール・レトリーバーの被毛は、全身真っ黒で光沢があるのが特徴です。触り心地は硬めであるものの、太くて硬めのオーバーコートの下には柔らかいアンダーコートが隠れています。
1年を通して一定量の毛が抜けるため、定期的にブラッシングが必要です。
ラブラドール・レトリーバーの性格は知能が高く温厚
ラブラドール・レトリーバーは優しく穏やかな性格でありながら、自ら考えて判断する高い知能を持ち合わせています。無駄吠えが少なく、家族以外の人間やほかの動物に対して攻撃的になることはほとんどありません。
人懐っこい性格で家族には愛情深く接してくれますが、人が好きすぎるゆえに興奮したときに飛びつくこともあります。ケガをしないように、子犬の頃から感情コントロール力を育成するしつけが求められるでしょう。
順応力や警戒心、状況をよく見て自ら判断できる能力も持ち合わせているラブラドール・レトリーバーは、介助補助犬や災害援助犬としても活躍する犬種です。しかし、警戒心の強さゆえに雷や大きい音・得体の知れないものを怖がる一面もあります。
黒いラブラドール・レトリーバーの寿命は何年?
黒いラブラドール・レトリーバーの一般的な寿命は12〜13歳です。しかし、毛色によっても異なり、チョコレートは10.7歳と少し短い傾向です。
大きさで見る平均的な寿命は大型犬が10歳前後、小型犬は15歳ほどであるため、黒いラブラドール・レトリーバーの寿命は平均的と言えます。
近年では、食事や運動などの健康管理により15歳あたりまで長生きする犬もいます。長生きできるよう、適切な食事や運動などの生活習慣にも気をつけ、定期的に動物病院に受診してしっかりとサポートしましょう。
黒いラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気
犬は体の不調を言葉にできず隠す傾向にあるため、異変にいち早く気付くことが重要です。黒いラブラドール・レトリーバーがかかりやすい病気について紹介します。
異変を感じたときはあらかじめ動画に撮り、すぐに獣医師へ相談してください。
悪性腫瘍(がん)
実は、ラブラドール・レトリーバーは悪性腫瘍(がん)になりやすい犬種です。悪性腫瘍は体の外側や内側に悪性のしこりができる病気で、命にも関わります。
比較的多く見られるのが、以下の4つです。
疾患名 |
発症部位 |
リンパ腫 |
全身 |
骨肉腫 |
四肢や胴体の骨など |
悪性メラノーマ |
口腔内の粘膜、舌、眼瞼部、眼球、指先など |
組織球肉腫 |
あらゆる臓器 |
悪性腫瘍は若い頃から発症する可能性もゼロではないため、定期的に健康診断を受けることが重要です。悪性腫瘍と診断された場合には抗がん剤治療のほか、外科手術や対症療法を進めます。
体の外側にできたしこりは発見しやすいため、日頃のスキンシップでいち早く気付いてあげましょう。異変を感じた際は速やかに病院を受診してください。
胃捻転胃拡張症候群
胃捻転拡張症候群は胃がねじれる病気です。不安そうにウロウロしたり、吐きそうなのに吐けずにいたりするときには、胃捻転拡張症候群を疑いましょう。
胃捻転拡張症候群になる原因は以下のとおりです。
1. 胃液や胃ガスの増加
2. 水分補給・食事後の過度な運動
3. 多量のドライフード摂取
予防するためには1日に数回の食事に分け、食後3時間は運動を控えましょう。胃捻転拡張症候群は緊急手術になるケースも多くあります。
外耳炎
ラブラドール・レトリーバーは垂れ耳のため、外耳炎のリスクが高くなります。日頃から耳の状態を確認し、耳垢が多い、臭うなどの症状が見られたときは病院へ連れていきましょう。
病院で診断されると、耳掃除や点耳薬の治療を行います。日頃から耳をチェックし、症状を悪化させないように注意が必要です。
股関節形成不全
股関節形成不全は股関節が炎症を起こし、成長を阻害する可能性のある病気です。ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーなど、大型犬に多く見られます。
散歩時に歩くことを嫌がったり、すぐ座ったりする行動が見られたときは、股関節形成不全を疑いましょう。予防するには、適切な食事や運動を取り入れ、肥満状態を避けることが重要です。
白内障、緑内障
ラブラドール・レトリーバーは白内障や緑内障にもかかりやすい犬種です。白内障は目の中にある水晶体が白く濁ることで視力に影響のでる病気であり、緑内障は眼圧が高くなることで強い痛みをともない涙がでてくる病気です。
どちらも一度発症すると完治は難しいと言われていますが、進行を遅らせることは不可能ではありません。知らない場所でつまずく、以前より家具にぶつかるなどの行動が見られたときは、速やかに病院を受診しましょう。
インスリノーマ
インスリノーマとは膵臓に腫瘍ができる病気であり、過剰にインスリンが産生されることで低血糖による発作や運動失調が起こります。進行すると末梢神経にも異常を来たし、感覚障害も表れます。
インスリノーマの予防方法はいまだないため、早期発見・早期治療が重要です。普段より元気がなくボーッとしている状態が続いたり、よだれを垂らす回数が増えたりした場合はインスリノーマの可能性を疑ってください。
皮膚疾患
ラブラドール・レトリーバーは皮膚疾患にかかりやすいと言われています。防寒性や防水性・撥水性に優れているラブラドール・レトリーバーは、一方で体が脂っぽくなります。夏場などの高温多湿の環境では、以下の皮膚症状がでる可能性が高くなります。
1. 膿皮症
2. 脂漏症
3. アレルギー性皮膚炎
4. アトピー性皮膚炎
痒そうな仕草をしたり皮膚に赤みが見られたりしたときは、病院を受診しましょう。
網膜剥離
網膜剥離は目に入ってきた光の調整を行う「網膜」が剥がれ落ちる病気です。強い痛みをともない、目を閉じたまま過ごさなければならなく、目が充血します。
進行すると視力の低下や失明にいたる可能性があり、症状が見られた際には速やかな受診が必要です。
黒いラブラドール・レトリーバーを入手する方法と価格相場
黒いラブラドール・レトリーバーは、以下の4つの方法で入手できます。
1. ペットショップで購入する
2. ブリーダーから入手する
3. 保護犬の里親になる
4. 知り合いから譲渡してもらう
価格相場は入手方法により異なり、ペットショップで購入する場合は30万円前後、ブリーダーからの入手は10〜50万円ほどです。表彰経験があるブリーダーのもとで産まれた子犬は価格が高めになります。
また、2019年に改正された「改正動物愛護管理法の概要」によると、生後56日まで母親や兄弟と過ごした子犬は社会性が養われ、成長した後の問題行動が少なくなるとされています。
そのため、黒いラブラドール・レトリーバーをペットショップやブリーダーから入手する場合は、生後56日まで母親と過ごした子犬を引き取るのがおすすめです。
黒いラブラドール・レトリーバーを飼う際のポイント
体力がある黒いラブラドール・レトリーバーは遊ぶことが大好きな性格であるため、一緒に運動を楽しみたい方に向いています。黒いラブラドール・レトリーバーを飼う際のポイントを5つ紹介します。
子犬の頃からしつけを始める
ラブラドール・レトリーバーを飼う際は、無駄吠えや甘噛みなどのNG行動を子犬の頃からしつけることが重要です。子犬の頃はやんちゃな性格の子が多く、できるだけ早くNG行動を教える必要があります。
2歳頃には性格が安定するとされているため、できる限り早めにトレーニングを始めましょう。
スキンシップを心がける
ラブラドール・レトリーバーは愛情深く、人に好意を抱く犬種です。家族と遊びながらスキンシップを取ることで愛情を感じ、ストレスも発散されます。一方で、日頃のスキンシップがないと「必要とされていない」と感じ、寂しがります。
ラブラドール・レトリーバーを飼う際はスキンシップを心がけ、多くの愛情を注いであげましょう。
室内飼いをする
ラブラドール・レトリーバーは体の熱を発散させにくい体質をもつため、室外では熱中症や低体温症になる可能性があります。飼う際は室内飼いをしてください。
屋内の温度は18~22℃、湿度は40~60%が推奨されており、エアコンによる温度管理が必要です。
また、足首や関節への負担により股関節形成不全や脱臼が発症するのを防ぐために、滑りにくい床を用意するのがおすすめです。黒いラブラドール・レトリーバーを飼う際は、温度管理に気をつけながら、室内飼いをしましょう。
適切な運動と食事が必要
ラブラドール・レトリーバーは食欲旺盛で太りやすく肥満になりやすい犬種であり、食事と運動を適切に管理する必要があります。
食事は総合栄養食を取り入れ、運動は毎日1時間ほどの散歩を朝晩2回行うのがおすすめです。年齢に応じたドッグフードを取り入れながら、食事管理をしましょう。
噛み癖とストレスに注意する
黒いラブラドール・レトリーバーを飼う際は、噛み癖とストレスにも注意が必要です。噛み癖があると、遊びのなかで人を噛んでケガをさせたり、家電やコードなどを噛んでケガをしたりする可能性があります。噛み癖は子犬の頃からしつけをしましょう。
また、ラブラドール・レトリーバーは人懐っこく寂しがりの性格であり、運動不足やスキンシップ不足になるとストレスが溜まります。日頃から愛情を注ぎ、ストレスを発散させてあげましょう。
まとめ
ラブラドール・レトリーバーは温厚で人懐っこく、知能が高い犬種です。家族想いで愛情深いため、毎日しっかりとコミュニケーションを取り信頼関係を築く必要があります。
遊ぶことが大好きな犬種であり、一緒に出かけたり遊んだりして多くの素敵な思い出を作れるでしょう。
噛み癖もでやすい犬種とはいえ、日頃のしつけやトレーニングにより改善は可能です。人懐っこく、優しくて家族想いのラブラドール・レトリーバーを、ぜひ家族の一員にしてみてください。