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東大農学部獣医学専修卒後、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローや動物病院での臨床業務に従事。2020年に保護犬たちを新しい形でサポートする事業を開始。
艶のある被毛と利発そうな顔立ちが特徴のジャーマン・ピンシャーですが、ジャーマン・ピンシャーを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、獣医師の寺田かなえ体の末端まで血流がいかなくなり、耳の先端が壊死して、出血が止まらなくなるような病態です。先生に教えていただいた、ジャーマン・ピンシャーの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- ジャーマン・ピンシャーの歴史やルーツ、英語名は?
- ジャーマン・ピンシャーのオスとメスの体高や体重は?
- ジャーマン・ピンシャーの平均寿命は?
- ジャーマン・ピンシャーの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?
- ジャーマン・ピンシャーはどんな性格、習性?
- ジャーマン・ピンシャーを迎える際にかかる費用は?
- ジャーマン・ピンシャーのしつけと社会化トレーニングのポイント
- ジャーマン・ピンシャーに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- ジャーマン・ピンシャーを飼うのに向いている人は?
- ジャーマン・ピンシャーがかかりやすい病気と予防法は?
- ジャーマン・ピンシャーの日常のお手入れ
- ジャーマン・ピンシャーとの生活で注意すべきことは?
ジャーマン・ピンシャーの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | ジャーマン・ピンシャー |
英語名 | German Pinscher |
原産国 | ドイツ |
分類 | 中型犬 |
グループ | 2G:使役犬 |
ジャーマン・ピンシャー【英語:German Pinscher】は、ドイツが原産の中型犬です。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、番犬や警護、作業をする「2G:使役犬」に属します。
ジャーマン・ピンシャーの起源は非常に古く、19世紀後期には原産国のドイツではすでに公認されていました。
祖先はラフ・コーテッド・ピンシャーと呼ばれたドイツの農場でネズミ退治をしていた犬で、被毛が長くて剛毛なのがスタンダード・シュナウザーに、短毛なのがジャーマン・ピンシャーとなりました。そのため体型や性質は両者よく似ています。
犬種名の“ピンチャー”は「咬みつく」という意味です。そのためネズミを狩るだけでなく、優秀な番犬としても活躍してきました。
第二次世界大戦で絶滅状態に陥りましたが、1頭の純血犬と4頭のオーバーサイズのミニチュア・ピンシャーの5頭をベースに交配させることで復活しました。
外貌がよく似た犬種に「ドーベルマン」がいますが、ドーベルマンの基礎になったのがジャーマン・ピンシャーです。
ジャーマン・ピンシャーのオスとメスの体高や体重は?
体高:オス・メスともに45~50cm
体重:オス・メスともに14~20kg
ジャーマン・ピンシャーは中型犬に分類されます。
ジャーマン・ピンシャーの平均寿命は?
ジャーマン・ピンシャーの平均寿命に関するデータはありませんが、『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、中型犬の平均寿命は13.4歳となっています。
犬を迎える際は、最期の時までしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
ジャーマン・ピンシャーの毛色や種類、被毛、外貌の特徴は?
ジャパンケネルクラブの犬種標準によると、ジャーマン・ピンシャーの毛色は、ディーア・レッド、レディッシュ・ブラウンからダーク・レッド・ブラウンまでの色調の単色と、漆黒にレッドもしくはブラウンのマーキングのブラック・アンド・タンがあります。
マーキングは、両目の上や喉の下側、パスターン、足、後ろ脚の内側及び尾の付け根の裏側、さらに胸には2つの三角形のマーキングがあります。
コートは硬いスムース・ヘアーで艶があり、体に沿って生えています。
体型は優雅で発達した筋肉が美しい流線形です。
頭部は長くて幅は狭く、眼は卵型で暗色、口吻(マズル)は細くとがっています。
耳を断耳して立たせ、尾は短く断尾する慣習がありますが、近年では動物愛護の観点からされない傾向にあります。
ジャーマン・ピンシャーはどんな性格、習性?
ジャーマン・ピンシャーは明るい性格で、飼い主や家族に愛情深く献身的に尽くす性質があります。
賢さと忍耐力を持ち合わせているため、子どもの相手もできる優れた家庭犬になります。
また用心深さと咬みつく力が強い性質から、優秀な番犬にもなります。
ジャーマン・ピンシャーを迎える際にかかる費用は?
犬を飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる一般的な費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約40万円~ |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5~7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000~10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000~10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
ジャーマン・ピンシャーは、ペットショップでの販売は珍しく、専門のブリーダーや輸入、里親制度が主な入手方法です。ブリーダーから購入する際はあくまで目安となり、価格は変動することがあります。
また、常に子犬が産まれているとは限らないため、ジャーマン・ピンシャーのブリーダーにあらかじめ相談したり、問い合わせたりしておくと良いでしょう。
他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30 日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。
母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。
子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回すべて打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎたすべての犬が年に1回摂取するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育するうえでの生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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犬を迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。ジャーマン・ピンシャーは多くの運動を必要とするため、ボール遊びなどをさせて思い切り走り回れるようにするのがおすすめです。
犬の生体代を除く初期費用としては、一般的には5~7万円程度です。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどです。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまった時に、保護された犬を飼い主のもとへ返すための重要な役目を果たします。
装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。
そのため、ジャーマン・ピンシャーを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策をとるのもおすすめです。
ジャーマン・ピンシャーのしつけと社会化トレーニングのポイント
ジャーマン・ピンシャーは、賢く飼い主に従順な性質なので、トレーニングは難しくないでしょう。
しかし少し頑固な傾向があるので、辛抱強く一貫したトレーニングを行うように注意しましょう。
また警戒心の強さから、知らない人や犬に対して吠えやすい性質や、咬みつく力が強いため、子犬の頃から噛み癖や吠え癖がつかないようにトレーニングしましょう。合わせて、子犬の頃からたくさんの人に会わせ、多くの経験をさせることで、見知らぬことに対して過剰な警戒心を持たないよう社会性を育てていきましょう。
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ジャーマン・ピンシャーに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:1時間程度を1日2回
✓運動量:多め
✓おすすめの遊び: アジリティスポーツ
元々狩猟犬だったこともあり、運動量は多めです。走るのが好きな犬種なので、ドッグランなど広いところを思い切り走らせてあげましょう。
賢く運動神経も良いので、飼い主と一緒にアジリティスポーツを楽しむのも良いでしょう。
ジャーマン・ピンシャーを飼うのに向いている人は?
✓子どものいる家庭でも大丈夫
ジャーマン・ピンシャーは、子どもとも仲良くできる犬種だといわれています。
✓家族を守る忠実な番犬を求めている人
ジャーマン・ピンシャーは、知らない人を警戒し、家族には愛情深く忠誠心にあふれる性質なので優れた番犬になります。
✓充分な運動をさせてあげられる人
祖先が猟犬だったこともあり、パワフルでスタミナ豊富な犬種です。小走りを交えた散歩や、ボール遊びで走らせるなどして、毎日充分な運動をさせてあげられる人がよいでしょう。
ジャーマン・ピンシャーがかかりやすい病気と予防法は?
ジャーマン・ピンシャーがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓フォンヴィレブランド病
血小板の止血機能に関与する因子に異常が起こる遺伝性疾患です。症状によって3つのタイプに分類されますが、いずれも止血異常を起こします。
✓遺伝性白内障
水晶体などが白く混濁し、視野が奪われていく疾患です。遺伝性の場合、6歳までの若齢期に発症することが多いといわれています。治療法は唯一外科手術で、混濁した水晶体を乳化・吸引します。
✓股関節形成不全
成長過程で、股関節に異常が出て痛みや歩行障害が起こります。急激な肥満が病気を助長することがあるので、体重管理を心がけましょう。
✓寒冷凝集素症
体の末端まで血流がいかなくなり、耳の先端が壊死して、出血が止まらなくなるような病態です。耳の加温や、ビタミンE投与、軟膏塗布などの対処を行います。
✓胃捻転
体の大きな犬にリスクの多い病気です。胃がねじれてしまい、短時間で急激に全身状態が悪化する危険な病気です。緊急手術が必要になるケースもあります。原因となる早食い、ドカ食いをさせないようにしたり、食後の運動を控えたりするなどの予防策を意識しましょう。
かかりやすい病気や予防法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
>【獣医師監修】犬の目が白いのは白内障? 症状や対処法、予防のコツ
ジャーマン・ピンシャーの日常のお手入れ
✓ブラッシング:週1回程度
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:不要
ジャーマン・ピンシャーはシングルコートのため、被毛のお手入れには手間がかかりません。
ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間を作ったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯みがきは毎日~3日に1回、耳掃除は1カ月に1、2回、外耳炎治療の場合は1週間に1、2回となることもあります。爪切りは1カ月に1回程度の頻度で行います。肛門腺絞りは必要のないことが多いですが、自分で出しづらい犬の場合、1カ月に1回程度がよいでしょう。
また足裏の肉球間の毛が伸びると、フローリング床などで滑りやすくなるためカットしてください。
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ジャーマン・ピンシャーとの生活で注意すべきことは?
✓首輪が抜けやすい
ジャーマン・ピンシャーは頭が小さいため、首輪が抜けやすいです。リーダーウォークができないうちは、ハーネスと両方使用するなど工夫しましょう。
✓小動物、幼児との同居は注意
小動物を追いかけて捕まえる狩猟本能があるため、ハムスターや小鳥などの小動物、小さな子どもとの同居には注意が必要です。
✓寒さが苦手
寒さにあまり強くない犬種です。寒い日は洋服を着せたりして対処しましょう。特に耳は凍傷になりやすいので、気温が低い季節はスヌードなどを活用しましょう。