更新 ( 公開)
博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
いつも家の中で繰り広げられる攻防戦。飼い主がかける掃除機に向かって、常に戦闘モードなので『ソウジキライーヌ』と命名。コレクションに加えました。
さらに『ソウジキライーヌ』の生態や、掃除機への想い、戦う真相、正しいしつけ方について、獣医師の茂木千恵先生に真面目に解説してもらいました!
目次
- ソウジキライーヌの生態《変な犬図鑑009》
- ソウジキライーヌについて獣医師の先生に直撃してみた!
ソウジキライーヌの生態《変な犬図鑑009》
赤コーナー!ソウジキライーヌ!
青コーナー!掃除したい飼い主!
両者一歩も譲れない戦いが始まる。
ソウジキライーヌは鉄壁の防御。
「なんでわたしの毛を吸うのよ!」
飼い主はなかなか攻められない。
半分しか掃除できずに試合は終了。
「ふん!これで勘弁してあげるわ」
なぜか清々しいソウジキライーヌ。
ソウジキライーヌについて獣医師の先生に直撃してみた!
ソウジキライーヌには掃除機がどう見えているの?
恐ろしい存在と感じているのだと思います。
犬は掃除機自体を恐れているのではなく、掃除機が発する騒音を恐れている場合が多いです。日常的な生活雑音より格段に大きな音が発生するからです。その上、掃除機が出す高周波音は犬にとって聞き取りやすい感度の高い音なので、人間の想像以上に不快な気持ちになっていると言えます。
さらに過去に吸われた、足に当たって痛かったなどトラウマ体験があれば恐怖が高まることもあるでしょう。
その他、掃除機が大きすぎて犬が掃除機と戦っても勝ち目がないと考えている可能性もあります。生物的に負けそうな相手には、恐怖が芽生えます。
掃除機を怖がりやすい犬種はいる?
ジャーマンシェパード・ボーダーコリー・キャトルドッグ・シェットランドシープドッグです。
ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)によると、上記の4犬種は特に大きな音に怖がりやすいとされています。
ソウジキライーヌがいる場合、どう対応したらいい?(正しい掃除機との向き合わせ方)
嫌いな掃除機の音を、ごほうびの前触れと学習させて“嬉しいもの”という認識に変える。
掃除機をかけている間は別の部屋で待機させ、その時は特別なおやつを与えるようにすればひどく怖がることは無くなるでしょう。もしも掃除機の音が聞こえてくるとどこにいても落ち着けない場合は、掃除機の音に慣らす必要があります。音を出さない状態で見せて、犬が怖がらなければご褒美を与えてください。そして掃除機を片づけたらごほうびも終了します。
これを何度も繰り返すことで犬は掃除機がごほうびの合図と理解し、掃除機が出てくることを歓迎するようになります。次に「お座り」と号令し、出来たらご褒美を与えているときに、離れたところに置いた掃除機の音をほんの少し聞かせます。できれば2人で協力して掃除機と犬が離れているようにすると◎。音を聞いたらすぐにご褒美を与えられる体制が理想です。
そもそもソウジキライーヌにならないためにはどうしたらいい?
少しずつ掃除機に“慣れる”練習をしてあげましょう
犬がお家に来たその日から掃除機を見せて、おやつを食べさせながら音をほんの数秒聞かせます。おやつを食べている間だけ音を聞かせるようにすることで、音への印象が良くなります。音を聞いても食べ続けられるようになったら、次は食べさせながら掃除機をゆっくりと動かしましょう。5秒、10秒、15秒…と少しずつ動かす時間は伸ばしていって、怖いものではないことを教えます。
掃除機が動いているときに落ち着いて我慢していられる時間は犬によって異なりますので、頑張って我慢している時によく褒めて、ごほうびをあげてください。