更新 ( 公開)
海動物病院所属。潜水士免許保有。動物検疫所、製薬会社での勤務を経て、海動物病院に所属。自宅で猫、実家で犬を飼っており、最近は自宅でも犬をお迎えしようか検討中。
「おすわり」や「待て」と並び、犬のしつけの基本である「伏せ」。実は、犬が自分からする伏せには意外な感情や理由があると言います。今回は、獣医師の鈴木佐弥香先生に教えていただいた、犬が伏せをする理由やシチュエーション別の犬の感情、飼い主の指示でも伏せない犬に有効なしつけ方法などについて解説します。
目次
- 犬が伏せをする主な理由とは?
- 犬が伏せをするシチュエーションから考えられる犬の気持ちとは?
- 一見伏せに見える攻撃体制に要注意!
- 犬の伏せに見られる病気やケガのサインは?
- 犬が伏せをしなくなった場合に考えられる主な原因と対処法は?
- 犬に伏せを教えるしつけ方法は?
犬が伏せをする主な理由とは?
犬が自分から伏せをしているときは、基本的には飼い主への服従を示したりリラックスしてくつろいでいたりします。具体的に見ていきましょう。
飼い主への服従を示すため
犬にとっての伏せのポーズは、とても無防備な状態です。トレーニングにおいても愛犬との信頼関係をきずく大切な意味をもちます。また、他の犬に敵意がないことを示すために伏せている場合もあります。このようなときは、口角や尻尾も下がっているので、見分けるポイントとして覚えておくといいでしょう。
興奮を落ち着かせるため(カーミングシグナル)
犬が自分自身を落ち着かせてリラックスしたいときにも伏せをします。遊びすぎて興奮しすぎたとき、食事の前に興奮しすぎたときなどにみられます。また、犬には“カーミングシグナル”といって、自分と相手の気持ちを落ち着かせるためにとる行動がいくつかあります。あくびをしたり目を逸らしたりする他、伏せもその一つです。
犬が伏せをするシチュエーションから考えられる犬の気持ちとは?
犬が自分から伏せたシチュエーションから、より具体的に理由を考えてみることもできます。
食事の前後に伏せをする
食事前のうれしい気持ちを落ち着かせようとしたり、食事後にお腹がいっぱいでリラックスしている状態で伏せたりします。
散歩中に急に伏せをする
散歩のコースが嫌なときや歩きたくないときに、急に座り込んだり伏せたりすることがあります。
遊んでいる途中で伏せをする
はしゃいで興奮しすぎてしまったときに、自分自身を落ち着かせるためのカーミングシグナルです。この場合は、自分だけでなく相手の興奮もしずめようとしています。
他の犬に出くわして伏せをする
他の犬に対し、攻撃する意図がないことを示しています。このとき、口や鼻の周りを舐めていたら「敵意はないよ」、尻尾を嬉しそうにブンブン振っていたら「相手の犬と仲良くしたい」といった気持ちの現れかもしれません。
飼い主に怒られて伏せをする
「怒られてつまらない」、「もう怒らないで」といった気持ちを示しています。
ごはんやおやつを目の前にして伏せをする
ごはんやおやつがうれしくて待ちきれない気持ちや興奮を自分自身でしずめようとしています。
おねだりで伏せをする
おやつをもっと食べたいとき、もっとおもちゃで遊んでほしいときなどにも伏せをします。
上記以外にも、犬が退屈しているときや、飼い主がかまってくれずすねているという意思表示にも伏せをします。このようなときは、前肢に顎を乗せてつまらなさそうな上目遣いで飼い主をじっと見つめることが多いです。耳やしっぽも、しょんぼりと垂れ下がっているかもしれません。
一見伏せに見える攻撃体制に要注意!
犬が耳を立てて頭を低くし前傾姿勢になっているとき、さらにお腹が地面についておらずお尻が高く上がっている場合は攻撃態勢です。一見伏せているようにも見えますが、相手を威嚇しています。低く唸り声を出していたり歯茎を剥き出しにしていたりするなら、いつ攻撃してきてもおかしくないので気を付けましょう。
飼い主に対して威嚇している場合は、まずは無視して様子を見つつ、愛犬ときちんと主従関係が作られているか、最近のできごとや生活を振り返ってみましょう。散歩中に他の犬や人間に対して威嚇するようであれば、散歩の時間を人通りの少ない時間帯に変えたり、他の犬が見えたら道を引き返したりして対策を。
他の犬や人間に近づける距離を少しずつ短くするには、犬が威嚇しなかったらすぐに褒めてご褒美をあげるのも有効です。あまりにもひどい場合には、しつけ教室に通うことも視野に入れましょう。
犬の伏せに見られる病気やケガのサインは?
普段に比べて元気・食欲がない状態で伏せをしている場合は、風邪やケガの可能性があります。いつもより体温が高くないか、鼻水や咳はでていないか、うんちやおしっこはきちんと出ているか、歩き方がおかしくないかといった点を観察しましょう。飼い主から見て少しでも違和感があれば、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
犬が伏せをしなくなった場合に考えられる主な原因と対処法は?
飼い主の指示で「伏せ」ができていた犬が急に伏せをしなくなったら、下記のような理由が考えられます。
主従関係が逆転してしまった
飼い主と犬の主従関係が逆転した、信頼関係が崩れてしまった場合に、急に伏せをしなくなることがあります。こうなると犬がどんどんわがままになり手をつけられなくなってしまうので、日頃からきちんと主従関係を維持できるよう意識しましょう。
ストレス状態が続いた
飼い主からの愛情不足や運動不足などといったストレスによって、徐々に飼い主の指示に従わなくなります。「伏せ」をしなくなるだけでなく、あくびをしたり痒いわけでもないのに身体を掻いたり、執拗に肉球を舐める、耳を倒す、舌なめずりをするなどの行動もストレスのサイン。見つけたら気にかけてあげてください。
上記の他にも、生後半年~1歳くらいの反抗期の時期や、病気やケガでどこかが痛む、呼吸が苦しいといったときにも伏せをしなくなることがあります。
犬に伏せを教えるしつけ方法は?
お迎えしたての犬や、「お座り」はできるのに「伏せ」を習得できていない犬には下記の方法を試してみましょう。
犬に伏せを教える必要性
そもそも、犬にとって伏せは服従を意味します。なので、犬に伏せを教えることは、飼い主と犬との主従関係を構築し、お互いの信頼関係をきずく上でとても大切です。
また、「お座り」よりも「伏せ」の方が起き上がるまでの動きの工程が多いため、散歩中や災害時の避難場所で他の犬や人間に飛びかかって危害を加えることを防げます。愛犬のためにも、飼い主の指示には従わなければいけないのだときちんと教えてあげましょう。
具体的な伏せのしつけ方法
「お座り」から徐々に「伏せ」に移していくのがおすすめです。
1)犬の鼻先におやつを持っていく
2)おやつを舐めさせながら、ゆっくりと手を地面に向かって下げる
3)おやつを追って犬の体勢が低くなってきたところで「伏せ」と言う
4)犬のお腹が地面にきちんとついて伏せができたら褒めておやつをあげる
これを数セット繰り返します。犬の集中力が続くのは10〜15分ほど。毎日少しずつ練習するのが大切です。また、練習時の環境も、犬が集中しやすいように窓を閉じ、テレビや音楽などの音もなくしてあげましょう。途中で犬が遊びたくならないようにおもちゃも片付けておくといいですね。
飼い主から犬に言う言葉は、「伏せ」「いいこ」「グッド」など分かりやすい短い言葉にし、犬に指示を出すときに使う言葉、犬を褒めるときに使う言葉を家族で統一するのもおすすめです。