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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
飼い犬として人気のチワワですが、抜け毛はどれくらい多いのでしょうか? 抜け毛の量によってお手入れの方法も変わるので、犬種ごとの抜け毛の特徴を知っておきましょう。今回は、獣医師の茂木千恵先生に教えていただいた、チワワの抜け毛の量や被毛の特徴、お手入れのコツなどを解説していきます。
目次
- チワワの抜け毛は多い?
- チワワの抜け毛の原因は?
- ロングコートチワワの抜け毛対策
- スムースコートチワワの抜け毛対策
- チワワにトリミングは必要?
- チワワの抜け毛の掃除方法
- チワワの抜け毛対策をする際の注意点
チワワの抜け毛は多い?
まずは、チワワの被毛の特徴と抜け毛の量がどれくらいなのかを見ていきましょう。
犬の被毛の構造は、シングルコートとダブルコートの2種類がある
犬の被毛の構造には、シングルコートとダブルコートがあり、犬種によって構造が違います。シングルコートとは、表皮がオーバーコート(上毛)のみで覆われており、ダブルコートとは、表皮がオーバーコートとアンダーコート(下毛)の二重構造で覆われていること。ダブルコートの犬種は、季節の変わり目にアンダーコートが一気に抜けて生え替わる「換毛期」という時期が年2回あるので、抜け毛も多いといえます。
チワワの被毛はシングルコート?ダブルコート?
チワワの被毛はダブルコートですが、さらに、オーバーコートが長く伸びる「ロングコート」と、オーバーコートが長く伸びない「スムースコート」の2つのタイプに分かれます。ロングコートもスムースコートも換毛期には、アンダーコートの短い毛がたくさん抜けます。
チワワの抜け毛の量は?
抜け毛の量は個体差が大きく、一概にいうことはできません。しかし、アンダーコートがしっかりと生えているチワワは、他の小型犬に比べて抜け毛の量が多いです。特に春先から夏前と、晩夏から秋にかけての換毛期にアンダーコートの抜け毛が多く見られます。
チワワの抜け毛の原因は?
チワワの抜け毛の原因は、「換毛期によるもの」と、病気やストレスなどの「換毛期以外によるもの」が考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
【換毛期によるもの】
年2回の換毛期
前述したように、ダブルコートの犬種には、被毛が生え替わる「換毛期」があります。住んでいる地域にもよりますが、一般的には春(5〜7月)と秋(9〜11月)が換毛期といわれています。春には夏の暑さでも過ごしやすいように毛量が減り、秋には冬の寒さでも体温が奪われないように毛量が増えます。換毛期に抜け毛が多くなることは生理的な反応なので、心配ありません。
子犬の被毛から成犬の被毛へと生え変わる換毛期
年2回の換毛期とは別に、子犬の被毛が抜けて成犬の被毛へと生え変わる時期があります。おおむね生後4か月前後に訪れますが、この抜け毛も生理的な反応です。
【換毛期以外によるもの】
甲状腺機能低下症
喉のあたりにある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが少なくなることによって起きる病気です。この病気にかかると、細胞の代謝活性が低下するため、体の被毛が左右対称に脱毛する、尻尾の脱毛、太りやすい、体温が下がる、元気消失などの症状が見られます。予防法がないため、定期的に健康診断を受け、早期発見することが大切です。
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
副腎皮質からホルモンが過剰に分泌されることによって起きる病気です。クッシング症候群では、多飲多尿や筋肉・皮膚が薄くなる、脱毛といった症状が見られます。愛犬にこのような症状がある場合は、獣医師に相談しましょう。
パターン脱毛症
生後6か月〜9か月齢時に起こりやすく、炎症や痒みなどはないのに、徐々に被毛が薄くなっていくのが特徴です。耳介の外側全体の脱毛と色素沈着だけが症状に現れる場合もあれば、複数箇所(耳介と首の腹側面、胸からお腹にかけて、あるいは内股)が脱毛する場合があります。命に関わる病気ではないですが、気になる場合は動物病院を受診することをおすすします。
感染性皮膚炎
寄生虫、真菌(カビ)、または細菌によって皮膚炎が起こります。脱毛のほか、赤みや痒みを伴う場合もあるので、症状が見られたら進行する前に治療しましょう。
アレルギー
環境アレルギーといってノミやダニ、花粉、食事性などがきっかけで痒みがひどくなり、手足をかじったり、身体を掻いたりして脱毛を起こします。口と後ろ足が届く部位の毛が抜けます。
ストレス
ストレスを感じた際に、その不快感を解消するために痒くもないのに耳の後ろなどを後ろ足で掻いてしまうことで毛が抜けることがあります。人間の円形脱毛症のように、円形に脱毛している場合は、ストレス性の脱毛かもしれません。こちらも、病院で診てもらえると安心です。
ロングコートチワワの抜け毛対策
ロングコートチワワの被毛は、耳の下や胸元、お尻、尻尾など頭以外の全身が長く、飾り毛が長いのが特徴です。被毛が長い分、抜け毛が目立ちますので、抜け毛対策を念入りに行いましょう。
おすすめのブラシ
ロングコートをブラッシングする際は、目的によってブラシを使い分けるのがおすすめです。被毛の流れを整えるには「ピンブラシ」、アンダーコートの除去や毛玉をとかすには「スリッカーブラシ」、もつれや毛玉がないか確認するには「コーム」を使いましょう。
ブラッシングのコツ
被毛が長く柔らかいので、絡んだり毛玉ができたりしやすい傾向があります。毎日、短時間でもブラッシングを行い、丁寧にほぐしてあげることが大切です。特に胸元をこまめにブラッシングして抜け毛を除去すると、床などに落ちる抜け毛が減るでしょう。
シャンプーのコツ
ロングコートのチワワのシャンプーは、カットと一緒にトリミングサロンでやってもらうとよいでしょう。短時間でキレイに仕上がるのでおすすめです。
洋服を着せる
洋服を着せることで抜け毛が床に落ちたり、家具に詰まったりすることを防ぐことができます。公共の場に連れて行くときに、抜け毛が周囲に舞うのを抑えるのにも有効です。ただし、洋服で蒸れて皮膚炎になってしまうことがあるので、着せっぱなしにしないよう注意しましょう。
スムースコートチワワの抜け毛対策
短くて、やや太めの硬いスムースコートの被毛。ロングコートに比べて、スムースコートのチワワは抜け毛が少ないように思うかもしれませんが、スムースコートも抜け毛はたくさん出ます。以下、スムースコートのチワワの抜け毛対策を確認していきます。
おすすめのブラシ
スムースコートをブラッシングする際は、「柔らかい獣毛ブラシ」を使いましょう。艶が出て、マッサージ効果もあり、おすすめです。
ブラッシングのコツ
被毛が絡まることは少ないですが、毎日のこまめなブラッシングは欠かせません。主にアンダーコートの抜け毛を除去してあげるといいでしょう。
シャンプーのコツ
スムースコートのチワワは、ホームケアでシャンプーを行える場合もあります。洗い過ぎないように、月1〜2回の頻度にしましょう。シャンプーをするときは、人肌程度のぬるま湯で全身をしっかりと濡らしてから、泡立てたシャンプー剤で優しく洗います。背中から胸、お尻にかけて洗った後、最後に顔をさっと洗い流します。すすぎ残しが無いよう、十分にぬるま湯で流してください。
チワワにトリミングは必要?
ロングコートのチワワは特に、被毛が絡みやすくアンダーコートも密なため、プロのスキルが必要です。子犬のときからトリミングサロンでケアをしてもらう経験を積ませておくと慣れさせやすいでしょう。
トリミングサロンに連れて行く頻度
2週から1か月に1回程度は、トリミングサロンでシャンプーをしてもらいましょう。特に、顔まわり、足先、お尻などの被毛が長いと汚れがたまりやすくやすくなるので、定期的なトリミングが必要です。これらの部分的なカットなら、トリミングサロンで教えてもらい、自宅で行うのもいいと思います。
トリミングするときの注意点
必要以上に被毛を短くしてしまうと体温調節がうまくできなくなったり、紫外線にさらされて皮膚炎になりやすくなったりします。また、虫に刺されるリスクも高まります。犬にとって快適な被毛の長さになるよう、トリミングサロンのスタッフや獣医師と相談しながら決めましょう。
チワワの抜け毛の掃除方法
換毛期には、大量の抜け毛が発生します。抜け毛を効率よく掃除するためには、以下のように、掃除場所によって掃除道具を使い分けることがポイントです。
フローリングなど広範囲を掃除する方法
フローリングなど広範囲を掃除するには掃除機やペーパーモップが適しています。部屋の端や角から、部屋の中心に向かって掃除をしましょう。抜け毛が空中に舞い上がってしまうので、ほうきは使わないほうがいいです。
サッシなどの溝を掃除する方法
先が細いアタッチメントを掃除機につけ、抜け毛を吸います。ハケや歯ブラシを使って汚れをかき出すのもいいでしょう。
カーペット生地を掃除する方法
カーペット生地やラグマット、絨毯などを掃除するときは粘着クリーナーが必須です。まず、掃除機でハウスダストを吸い取ります。その後、残っている抜け毛を粘着シートではがし取りましょう。
空気清浄機があると便利
空気清浄機の機種によっては、ハウスダストと抜け毛を吸着してくれるものもあります。掃除機や粘着シートを使った掃除方法ほど即効性はありませんが、空気中のハウスダストや抜け毛を減らすことに繋がるでしょう。
チワワの抜け毛対策をする際の注意点
ここまでご紹介してきたように、チワワは抜け毛が多い犬種なので、抜け毛のお手入れを必要とします。お手入れの際には、以下のようなことに気をつけましょう。
シャンプーやブラッシングに慣れさせておく
シャンプーやブラッシングなどのお手入れを嫌がらないように、様々な状況を受け入れやすい子犬の頃からトリミングサロンに連れていきましょう。プロに任せ、お手入れ全般に慣れさせておきます。
特に、ブラッシングは毎日のことなので、ストレスを感じさせないことが重要です。子犬を迎え入れた日からブラシなどの器具を見せたり、短時間使ってみたりして徐々に経験させることで、ブラッシングを嫌がらない子に育てられるでしょう。
ブラッシングは毎日短時間で行う
ブラッシングをしないでいると被毛が絡まってしまいます。これをほぐすには、多くの時間がかかりますし、長時間のケアは犬への負担も大きいです。短時間で済ませられるよう、毎日少しずつ取り組みましょう。ブラッシングをしながら、愛犬の健康状態をチェックすることも大切です
毛玉による抜け毛にも注意
被毛が絡まり、毛玉ができることによって脱毛が進んでしまうこともあります。毛玉の原因は、春〜夏は紫外線、秋は落ち葉、冬は雪や乾燥による静電気など様々です。散歩後には、犬の体にくっついた植物の種や葉などを落としてあげ、ブラッシングで被毛のもつれや毛玉を取り除きましょう。
洋服は着せっぱなしにしない
洋服は抜け毛対策にもなりますが、着せっぱなしにすると被毛と洋服が擦れて、被毛が切れたり傷んだりすることがあります。洋服によって通気性が悪くなり、皮膚トラブルの発症や悪化を招くこともあります。洋服を着せ続けないように気をつけましょう。
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