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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
垂れた耳と、すらっとした優雅な姿が印象的なイギリス原産のイングリッシュ・ポインター。大型犬の中では小さな体つきながら、筋肉質でスタミナがあり、優れた嗅覚と運動能力を兼ね備えているといわれます。この記事では、そんなイングリッシュ・ポインターの性格の特徴や飼い方のコツ、気をつけるべき病気などを、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- イングリッシュ・ポインターってどんな犬?
- イングリッシュ・ポインターの平均的な体高や体重は?
- イングリッシュ・ポインターの平均寿命は?
- イングリッシュ・ポインターの外見や吠え声の特徴は?
- イングリッシュ・ポインターの毛色の種類、被毛の特徴は?
- イングリッシュ・ポインターはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
- イングリッシュ・ポインターを飼うのに向いている人は?
- イングリッシュ・ポインターを飼う上で気をつけるべきことは?
- イングリッシュ・ポインターのしつけのコツは?
- イングリッシュ・ポインターの日常のお手入れで気をつけることは?
- イングリッシュ・ポインターの食事の注意点は?
- イングリッシュ・ポインターがかかりやすい病気やアレルギーは?
- イングリッシュ・ポインターを散歩させる際に気をつけることは?
- イングリッシュ・ポインターにおすすめの遊びやトレーニングは?
- イングリッシュ・ポインターの迎え方は?
イングリッシュ・ポインターってどんな犬?
まずは、イングリッシュ・ポインターとはどんな犬なのか、その歴史やルーツ、犬種の特徴を見ていきましょう。
イングリッシュ・ポインターの歴史やルーツは?
イングリッシュ・ポインターは、ヨーロッパで鳥猟に使われてきた犬種です。「ポインター」と呼ばれる犬種の中での歴史はそれほど古くはなく、スペインやポルトガルの祖先犬をもとに、イタリアン・ポインターやフレンチ・ポインターの血を混ぜながら、現在に続くイングリッシュ・ポインターの姿に固定されていったとされています。
ほかのポインター犬との違いは?
イングリッシュ・ポインターは英国産の最高傑作として、高く評価されている犬種です。犬種が固定されたあと、さらにハウンド系の種類をかけ合わせることで、嗅覚や走力の向上がはかられたという特徴があります。
イングリッシュ・ポインターの平均的な体高や体重は?
イングリッシュ・ポインターの平均的な体高・体重は次の通りです。
体高:約60~70cm
体重:約20~30kg
分類としては大型犬ですが、その中でもやや小ぶりな体格といえるでしょう。
イングリッシュ・ポインターの平均寿命は?
イングリッシュ・ポインターの平均寿命は12~17年ほどで、大型犬としては比較的長めの寿命であるといえます。
イングリッシュ・ポインターの外見や吠え声の特徴は?
イングリッシュ・ポインターの外見や吠え声にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。
外見
体高は高く、すらっとした長めの四肢を持ちます。筋肉質で全体的に頑丈な体つきながら、カーブを描くような体のラインはしなやかで、優雅な雰囲気も感じさせます。
吠え声
イングリッシュ・ポインターは、鳥猟犬として獲物が逃げないよう静かに居場所を知らせる役目を果たしていたこともあり、それほど吠えることの少ない犬種とされています。
イングリッシュ・ポインターの毛色の種類、被毛の特徴は?
滑らかな光沢感が気品を感じさせるイングリッシュ・ポインターの被毛。その被毛の色や特徴について見ていきましょう。
毛色の種類
イングリッシュ・ポインターは、ホワイトをベースに黒、レバー、オレンジの斑点が入った2色の毛色が多く、ほかにも単色の個体も見受けられます。
被毛の特徴
被毛は「ダブルコート」と呼ばれるオーバーコートとアンダーコートの二層構造をしています。オーバーコートは表面に生える粗めの被毛、アンダーコートはその下に密生する少し柔らかめの被毛です。短毛なので目立ちにくいですが、春と秋の換毛期には多くの抜け毛があります。
イングリッシュ・ポインターはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
イングリッシュ・ポインターは優しく温和な性格で、飼い主と良好な関係を築けると、愛情深く忠実に接してくれる犬種です。とても賢く、その分少し繊細な面もあります。
大型犬で体力もあるため、きちんとしつけをしないと攻撃性が表れてしまう危険性も考えられます。特にオスは体力や筋肉量がメスよりも多い傾向があるため、きちんと制御する必要があるでしょう。
イングリッシュ・ポインターを飼うのに向いている人は?
イングリッシュ・ポインターを飼う際は、家の中でも犬のスペースを充分に確保できるだけの広さがあることが前提となります。運動が好きで、体力のある犬種のため、充分な散歩時間をとれる生活スタイルであることが好ましいといえます。万が一のトラブルを防ぐために、日頃からしつけをしっかりと行う必要があるため、愛犬に向き合う時間が十分にとれる人が飼い主として向いているといえるでしょう。
イングリッシュ・ポインターを飼う上で気をつけるべきことは?
イングリッシュ・ポインターを飼う際は、特に次の点に気をつけましょう。
定期的に運動させる
もともと猟犬として活躍していたことから、1日中動き回れるほどの体力を持つ犬種です。定期的に散歩や運動で体を動かす時間を作り、体力を発散させてあげましょう。
家族と多く過ごせる時間を作る
賢く愛情深い性格のイングリッシュ・ポインターは、飼い主と接する時間が不足すると寂しく感じたり、精神的な負荷から体調不良につながったりすることがあります。飼い主は愛犬との信頼関係をしっかりと築いた上で、一緒に過ごす時間をたくさん設けてあげましょう。精神的に満たされた状態になれば、信頼関係はさらに深まっていくはずです。
頭を使う遊びやトレーニングをする
知的な犬種のイングリッシュ・ポインターは体を使うだけでなく、頭を使う遊びやトレーニングも得意です。「発散」というと体を動かすことを重視しがちですが、頭を使う遊びも集中力を高め、程よい疲労感を与えることができます。雨の日など体を動かせない日は、頭を使うノーズワークなど知育玩具を用いて一緒に遊んであげるとよいでしょう。飼い主との関係性も深まります。
こまめに耳のお手入れをする
垂れ耳のイングリッシュ・ポインターは、こまめな耳のお手入れが欠かせません。特にじめじめとした夏場などは蒸れて外耳炎になりやすいため注意が必要です。清潔に保つことはもちろん、日頃のチェックも定期的に行いましょう。
イングリッシュ・ポインターのしつけのコツは?
頭がよく、体の大きいイングリッシュ・ポインターには、飼い主との関係構築と、生活環境に適応させるしつけが必要になります。しつけの開始時期やコツを確認しておきましょう。
しつけを始める時期
イングリッシュ・ポインターのしつけは、社会化期と呼ばれる生後8週齢から12週齢くらいの時期から始めるのが理想的です。ワクチン接種が完了していないと散歩は難しいですが、バギーのような乗り物などで外に連れて行き、周りのにおいや音を感じさせてあげるなど、たくさんの刺激に触れさせてあげるとよいでしょう。
しつけのコツ
力が強いので、早い段階から飼い主の言うことはきちんと聞くよう、ダメなことはダメとしっかりと教えることが大切です。
イングリッシュ・ポインターの日常のお手入れで気をつけることは?
被毛が短く、抜け毛が目立ちにくいイングリッシュ・ポインターですが、換毛期には抜け毛が増える傾向があります。さらに、外で体力の発散をする機会が多い犬種でもあるため、皮膚や被毛を清潔に保てるよう、こまめなブラッシングや定期的なシャンプーを家庭で行うことをおすすめします。金属製のブラシでブラッシングすると皮膚を傷つけてしまう危険があるため、ラバーブラシなど刺激が少ないものを使いましょう。
イングリッシュ・ポインターの食事の注意点は?
イングリッシュ・ポインターに食事を与える際は、次の点に気をつけましょう。
総合栄養食を主食として与える
イングリッシュ・ポインターにとって肥満は厳禁です。主食には、犬に必要な栄養素がバランスよく含まれている総合栄養食を与ることをおすすめします。与える量はフードのパッケージに記載してある量を基準にして、与えすぎには注意しましょう。
年齢と目的に合わせたフードを与える
「子犬用」「体重管理用」など、愛犬の年齢や目的に合わせたフードを選ぶことも大切です。体質や病気などに対応したフードも市販されているので活用してもよいでしょう。
イングリッシュ・ポインターがかかりやすい病気やアレルギーは?
イングリッシュ・ポインターを飼う際は、次に挙げる病気やアレルギーに注意しましょう。
白内障
眼球内の構造である水晶体が白く濁る眼疾患です。類似の症状が見られる「核硬化症」は老化現象のひとつですが、白内障は失明に至るリスクのある疾患で、進行が早く、周囲の構造へのダメージや炎症なども起こり得えます。視力の低下などで気づくケースもありますが、定期的に眼の白濁の有無などを注意して観察することで、早期発見することが大切です。
眼瞼内反症
まぶたが内側に入り込んでしまう疾患です。そのせいでまつ毛が眼球に触れ、慢性的な刺激が続いてしまうことがあります。状態によっては外科的な処置が必要になるかもしれません。涙の量が多いなど、変化に気づいたらまずは受診することをおすすめします。
股関節形成不全
先天的に股関節の形状に異常があり、歩いたり座ったりするときに負担がかかってしまう疾患です。大型犬に多く、痛みや違和感から歩き方や座り方におかしい点が認められることで発覚することが多いです。程度により、内科的な治療や体重管理で維持するケースもありますが、重度になると外科的な処置が必要になる場合もあります。
胃拡張・胃捻転
食後や空気を吸い込んだ後に体を動かすことで、胃が拡張・捻転してしまう症状を指します。早食いをして空気を一緒に吸い込んでしまうことを防ぐために、早食い防止の食器を使用したり、食後すぐの運動を避けたりすることで予防できます。
胃拡張・胃捻転が起こると、腹部が膨れ上がり、痛みや違和感から伏せた状態などでお腹をかばうような仕草をすることがあります。緊急性の高い疾患であるため、様子がおかしいと感じたら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
イングリッシュ・ポインターを散歩させる際に気をつけることは?
イングリッシュ・ポインターはスタミナのある犬種のため、毎日の散歩が欠かせません。散歩に連れて行く頻度や注意点を確認しておきましょう。
散歩の時間、頻度
1日に1時間以上の散歩を2回行うのが理想的です。ゆっくり歩くだけではなく、ドッグランで思い切り走らせるなど、エネルギーを発散させる運動を取り入れることもおすすめです。
気をつけること
胃捻転を起こしやすい犬種のため、食後すぐの散歩は避けましょう。
イングリッシュ・ポインターにおすすめの遊びやトレーニングは?
広い場所でボール遊び
イングリッシュ・ポインターには、広い場所で思い切り体を使える遊びがおすすめです。ボールを投げて取ってくる遊びは、体を動かして運動欲求を発散させるだけでなく、飼い主と愛犬の絆を深めることにもつながります。
知育玩具を使った遊び
知育玩具などを用いた遊びも、知的なイングリッシュ・ポインターには向いています。雨で外に出られないときなどに取り入れてみるとよいでしょう。知育玩具を使用するときは、愛犬だけでなく飼い主も一緒に遊んであげることが大切。愛情深い性格のイングリッシュ・ポインターにとってより充実した時間となるはずです。
イングリッシュ・ポインターの迎え方は?
イングリッシュ・ポインターを迎えるには、ペットショップやブリーダー、保護犬など、さまざまな方法があります。ただ、比較的珍しい犬種のため、ペットショップで出会える機会は少ないかもしれません。
保護犬を迎える場合は、その犬が抱えている背景なども含めて受け入れてあげることが大切です。子犬を迎えるよりも、苦手を克服したり、心を開いてくれるまでに時間がかかることがあることも知っておきましょう。
どんな迎え方であっても出会いはご縁です。性格や今までの環境などすべてを受け入れた上で、その子のペースに合わせて家庭の環境に慣らしてあげるようにしましょう。