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往診専門るる動物病院、TNRののいちアニマルクリニック 所属。小動物臨床15年、往診による一般診療、終末期医療、オンラインでの診療や相談にも積極的に取り組む。
犬を飼ったことのない人にとってはケンカしているようにも見えるワンプロですが、愛犬にとってメリットの多い行動です。しかし、一部では「ワンプロで愛犬がケガをしたり、嫌がられたりしないか」と心配する人もいます。ワンプロなのか、ケンカなのかの見極めが難しいという人もいるでしょう。
今回は、ワンプロのメリット・デメリットやケンカとの見分け方などについて紹介します。ワンプロを安全に楽しむための注意点などについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- ワンプロってなに?
- ワンプロのメリットは?
- ワンプロのデメリットは?
- ワンプロの注意点は?
- ワンプロと本気のケンカの見分け方は?
- まとめ
ワンプロってなに?
「ワンプロ」とは、犬同士のじゃれあいのことです。これは犬たちが楽しんで行う遊びのようなもので、プロレスのように見えることから「ワンプロ」と呼ばれています。
ワンプロは犬たちにとって楽しい遊びで、特に子犬の成長には欠かせません。犬同士がじゃれあう遊びやコミュニケーションの1つなので、ケンカの予兆がなければ見守ってあげて大丈夫です。
犬種によってはダイナミックなじゃれあいもあり、心配することも理解できますが、過剰な心配や介入は必要ありません。 ワンプロは犬たちにとっては、遊びと学びの場です。
犬がワンプロをする理由
ワンプロは犬たちにとって社交的な行動であり、言葉の通じない犬同士のコミュニケーション手段の1つです。犬は基本的に社交的な動物なので、散歩中でもほかの犬たちとコミュニケーションをとりたがります。
犬がワンプロをする理由は、いくつかあります。多くの場合、他の犬との相互作用を通じてコミュニケーションスキルを磨き、犬同士の行動を学ぶための貴重な機会となっています。
ワンプロのメリットは?
愛犬にとってワンプロはどのようなメリットがあるのでしょうか。大きなメリットは下記の3つです。
- 社会性が身につく
- コミュニケーションスキルが上がる
- 運動不足やストレスなどが解消できる
室内での一頭飼いの場合には、身につきづらいスキルばかりです。1つずつ詳しく紹介します。
社会性が身につく
ワンプロは、犬にとって社会性を身につける重要な行動です。社会性とは、犬と人間の共存や環境に慣れることを意味します。犬がむやみやたらに人に吠えたり、飛びついたりしないことも社会のルールとして大切なことの1つです。
犬はワンプロで他の犬を観察しながら、マナーの基礎を学び、ルールや他犬の感情や意図を理解し、成長していきます。これは他の犬とのコミュニケーションの基礎となり、他の犬や人間との関わり方を上達させます。
特に、異なる年齢層や種類の生き物と触れ合うことで、様々な社会的な状況に適応することは非常に重要です。そのため、ワンプロは社会性を身につけるために欠かせません。
コミュニケーションスキルが上がる
ワンプロは犬同士が体を使って、コミュニケーションをとる絶好のチャンスです。ワンプロでほかの犬と触れ合うことで、自分の気持ちを適切に伝える術を学びます。自分の気持ちを一方的に押し付けるだけではなく、他犬の気持ちを知るいい機会です。
ワンプロを通じて、ケンカにならない程度のじゃれあいや力加減なども学べます。他犬と円滑にコミュニケーションを取れるようになると、日常生活におけるストレスや苦痛が軽減されるでしょう。
コミュニケーションスキルは個性にも大きな影響を受けますが、ワンプロでも十分身につきます。
運動不足やストレスなどが解消できる
散歩だけでは解消できない運動不足やストレスも、ワンプロで解消できます。特に大型犬は小型犬と違い運動不足になりやすく、散歩だけではストレスが溜まることもあります。
犬種だけではなく、個性や性格によって、必要な運動量が異なるので、その子にあった運動量が必要です。散歩中にほかの犬とワンプロすることで、たくさん体を動かせるので、運動不足やストレス解消にはぴったりです。
ワンプロのデメリットは?
ワンプロさせるデメリットは、ケガの可能性があることです。特に興奮しやすい性格の犬は、ワンプロからケンカに発展しやすいので注意が必要です。
幼い犬もワンプロ中は注意が必要です。幼犬は力加減や相手の嫌がり方も分からないため、ワンプロしていても途中でケンカになってしまうことがよくあります。
ほかにも「穏やかな性格」や「他の犬が苦手な子」はワンプロが苦手でやりたがらないこともあります。そういう子の場合、一方的に圧迫されてしまい、ケガを負ってしまうこともありますので、目の届く範囲で行うことが重要です。
ワンプロの注意点は?
本章では、ケガをせずワンプロを楽しむための注意点を紹介します。注意すべき点は以下の4点です。
- 体格差・年齢・相性を考慮する
- 本気のケンカになる前に止める
- 一方的なじゃれあいになっていないか見る
- 休憩をはさむ
これらの注意点に気を付けながら、ワンプロを楽しみましょう。1つずつ詳しく解説します。
体格差・年齢・相性を考慮する
ワンプロする犬同士の体格差や年齢差には、十分な注意が必要です。特に子犬と大型犬のワンプロは力加減が難しく、思わぬケガにつながってしまうことがあります。
ほかにも、安全にワンプロするには犬同士の相性も大切です。気性の荒さや好意の有無なども考慮すべき点です。
相性の合わない犬同士だと余計にストレスが溜まったり、本気のケンカになったりします。ケガをするようなケンカにならないように、お互いの犬の相性を注意深く見極めましょう。
本気のケンカになる前に止める
ワンプロからケンカに発展してしまうこともあるので、ケンカになりそうになったら止める必要があります。ケンカになると、相手への配慮をせずに攻撃的になってしまうことがあります。
普段のワンプロと違い、「低い唸り声や牙をむく」「緊張度の高い硬直がある」といった仕草を見せて険悪な雰囲気になってしまったときは、犬同士の遊びを中止させましょう。
一方的なじゃれあいになっていないか見る
愛犬がワンプロをしようとじゃれあっても、相手が嫌がる場合もあります。一方的なじゃれつきは、相手に負担をかけていることもあるので注意しましょう。
逆に、こちらが常に攻撃を受け続けている場合、愛犬への負担になっていることもあります。どちらかの負担になるようなワンプロは中止させたほうが無難です。
鳴き声や行動がいつもの様子と異なるストレスサインを出している場合は、迅速に対応し遊びを中断させることをおすすめします。
休憩をはさむ
適度なワンプロはメリットが多いものの、長時間の遊びはケガをするリスクが増えます。愛犬がまだ遊びたいと離れたがらない場合でも、興奮して気づいていないだけで体力的に無理をしていることもあります。
ワンプロは疲れているとケガにもつながりやすいものです。遊ばせるときは時間を決めて行うようにしたほうが安心です。例えばドッグランなどで長時間遊ばせるときは、途中で水分をとるなどの休憩をはさむようにしましょう。
ワンプロと本気のケンカの見分け方は?
ワンプロと本気のケンカの見分け方は以下の3点です。
- 鳴き声で判断する
- しっぽや体の動きに注目する
- 噛み方を見極める
これらに注意しながら、愛犬から目を離さずしっかりと見守って、ケンカに発展させないことが大切です。
鳴き声で判断する
ワンプロでじゃれあっているのかケンカなのか判断するサインとして、とても役立つのが鳴き声です。犬の鳴き声にはバリエーションがあり、気分や気持ちを伝えようとしています。
例えば、興奮してケンカになりそうなときは、歯を見せて唸るような声を出します。普段からいろんな鳴き声を聞いていると「喜んで遊んでいる」のか「興奮して怒っている」のか判断しやすくなるでしょう。鳴き声に威嚇の要素がある場合、犬同士がケンカになる前に引き離してください。
しっぽや体の動きに注目する
しっぽや体の動きに注目するとワンプロか本気のケンカか見分けやすくなります。犬はしっぽの動きや毛の立ち方で機嫌が分かります。しっぽを優しくフリフリしていたら仲良く遊んでいると判断して大丈夫です。
一般的には、怒っているときはしっぽを力強く縦に上げる姿が見られます。また、喜んでいるときよりも振り幅が小さく、体が全体的に硬直した感じになるのも特徴的です。
ほかにも、鼻に皺を寄せる、牙をむく(ムキーっとした顔)といった表情の変化にも気を付けて見分けてみましょう。
鳴き声や表情(普段とは違う目つきなど)とあわせて、動きが強ばる、硬直を続けているといった動きが見られたら速やかに犬同士を引き離しやめさせるようにします。飼い主同士が目を離さずに注目して対処することが重要です。
噛み方を見極める
噛み方を注意深く観察すると、ケンカか遊びかを見分けられます。愛犬がおもちゃや他の犬に噛みつくことはよくありますが、甘噛みという形でじゃれているだけであれば、問題はありません。
しかし、牙をむき出しにして噛みついているなら本気のケンカになるサインです。噛み方に注意をして、安全にワンプロをさせてあげましょう。
噛まれた犬が鳴き声をあげたり、一点だけを集中して嚙み続けていたりする場合は危険です。その場合、飼い主が仲裁に入ってあげるようにしてください。また、人間への攻撃性の可能性もあり得るため、呼び戻しなどのコマンドを習得しておくことも必要です。
まとめ
ワンプロはメリットも多い遊びですので、無理に止めなくても大丈夫です。犬同士はワンプロしながら、社会性やコミュニケーションスキルを学んでいます。
ただし、犬同士は楽しんでいても、飼い主の中にはワンプロを嫌がる方もいます。お互いに楽しむためにも、飼い主同士で「一緒に遊んでもいいですか?」など、ひと言声をかける配慮があるととても親切です。