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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
「多頭飼いで愛犬同士が喧嘩してしまう」「散歩中にほかの犬と喧嘩してしまう」など、犬同士の喧嘩でお悩みではありませんか?
犬同士の喧嘩は、トラブルやケガにつながってしまう不安もあり、何とかして止めたいと考えている方も多いでしょう。
そこで今回では、犬同士の喧嘩の原因や対処法を紹介します。喧嘩と遊びを見分けるポイントや犬同士の相性についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 犬同士が喧嘩してしまう原因
- 犬同士の喧嘩のリスク
- 犬同士が喧嘩してしまった場合の対処法
- 犬同士の喧嘩を避けるための対策法
- 遊び・じゃれあいと喧嘩の見分け方
- 犬同士が仲良くなったときのサイン
- まとめ
犬同士が喧嘩してしまう原因
犬はもともと社会性が高く、群れで生活する動物です。しかし、2匹以上を同時に飼う「多頭飼い」をしていると、愛犬同士の喧嘩に悩んでしまう方もいるでしょう。
また、散歩中にほかの犬に威嚇行動をしてしまい、不安を感じたことのある人もいるかと思います。こうした犬同士の喧嘩を防ぐためには、まずは犬が喧嘩をしてしまう原因を理解することが大切です。
所有欲・縄張り意識で喧嘩になる
犬には、自分のものに対する所有欲があります。例えば「これは、自分のおもちゃである」と認識している場合、ほかの犬がそのおもちゃを持っていってしまうと、自分の所有物を奪われないように相手の犬を威嚇・攻撃してしまう場合があります。
犬の所有欲は、おもちゃだけではなく、飼い主やフードなど、さまざまなものに対して生じます。お気に入りの場所や自分の寝床に対しては、縄張り意識もあるため、その場所を取られそうになると喧嘩に発展するケースもあります。
発情期の影響で喧嘩になる
近隣エリアに発情期のメスがいると、周囲のオスが興奮してしまい喧嘩になることがあります。とくに、未去勢のオスは発情期のメスのニオイに反応して、マウンティングをしてしまい、その結果喧嘩になってしまうケースも少なくありません。
また、まれにメスや去勢済みのオスでも、発情期のメスの影響で興奮して、喧嘩をしてしまう場合があるため注意しましょう。
不安や恐怖心から喧嘩をしてしまう
臆病な性格の犬の場合、不安や恐怖から警戒心が強くなり、攻撃的な態度を取ってしまうことがあります。一方的に吠えて威嚇することもあるため、喧嘩をしているように見えるかもしれません。
また、相手の犬も攻撃的な対応になった場合、喧嘩に発展してしまうケースもあります。愛犬がほかの犬に威嚇行動をとってしまった場合は、近づかないように注意しましょう。
犬同士の喧嘩のリスク
犬同士の喧嘩では、興奮した犬が相手の犬や仲裁に入った人に噛みついて、ケガをさせてしまうリスクがあります。とくに、力が強く体重も重い大型犬の場合は、犬も人も何針も縫うような大ケガに発展してしまう恐れもあるので注意が必要です。
環境省の「犬による咬傷事故状況の報告」によると、令和2年度は全国で4,602件の犬による咬傷事故が起こっています。そのうちの約99%が、飼い犬によるものです。
万が一、散歩中にほかの犬と喧嘩になり、相手の犬や人にケガをさせてしまった場合、飼い主同士のトラブルに発展するリスクがあります。さらに、治療費や入院費、慰謝料、損害賠償金の支払いが必要になる可能性も考えられるでしょう。
犬同士の喧嘩と侮らず、トラブルに発展させないためにも、喧嘩してしまった場合の対処法や喧嘩を避ける方法を十分に理解しておくことが大切です。
犬同士が喧嘩してしまった場合の対処法
愛犬同士や散歩中の犬同士が喧嘩してしまった場合、飼い主が仲裁のために喧嘩している犬にいきなり手を出してしまうと、思わぬケガをする恐れがあります。
こうしたトラブルを避けるためには、まずは次のような対処法で犬の注意をそらし、喧嘩している犬同士を引き離すことが重要です。
大きな音で注意をそらす
犬同士が喧嘩を始めてしまったら、大きな音を出して犬の注意をそらしましょう。例えば「おもちゃのラッパや笛を吹きならす」「空き缶にコインを入れたものを床に落とす」などの方法がおすすめです。
こうした音の出るグッズをあらかじめ用意しておくと、もしものときも安心でしょう。犬の注意がそれたら、犬同士を引き離して落ち着かせます。
ハーネスを持ち上げて犬の前足を浮かせる
庭や散歩中など屋外で喧嘩をしてしまった場合は、犬のハーネスをぐっと持ち上げて犬の前足を浮かせましょう。前足を浮かせることで顎の力を弱めることができるため、そのタイミングで犬同士を引き離します。
ハーネスではなく首輪を強く持ち上げてしまうと犬の頚椎や喉に負担がかかるため注意が必要です。犬の前足を浮かせたいときはできるだけハーネスを利用してください。
犬の間にものをはさむ
大きな音が出るものを用意できない場合や犬がハーネスをつけていない場合などは、飼い主の上着やお散歩バッグを犬と犬の間に挟み入れて、お互いの視界を遮ります。
急に視界が遮られることで、犬の注意がそれるため、そのタイミングで引き離しましょう。
犬同士の喧嘩を避けるための対策法
犬同士の喧嘩は、大きなケガやトラブルの危険性があります。そのため、日ごろから犬同士の喧嘩を避けるための対策を行うことが大切です。
適度に運動させる
犬もストレスがたまると、攻撃性が強くなり、威嚇行動をとりやすくなります。そのため、愛犬には適度な運動をさせて、ストレスをためないように心がけましょう。必要な運動量は犬のサイズや犬種、年齢によって異なります。
大型犬など、運動量の多い犬種の場合は、毎日の散歩にプラスして、定期的にドッグランなどで思いっきり走らせるのもおすすめです。小型犬であれば、散歩にプラスしておもちゃを使った室内遊びでも、十分な運動量を確保できるでしょう。
適切なトレーニングを行う
万が一、散歩中などに他の犬を威嚇してしまった場合でも、適切なトレーニングができていれば、飼い主の指示を聞いて、喧嘩に発展する前に気持ちを落ち着けることができます。
適切なトレーニングを行うためには、愛犬が喧嘩してしまう原因を理解しておくことが大切です。例えば、不安や恐怖心から相手を威嚇してしまう場合は、トレーニング中に飼い主が褒めてあげることで、犬が自信を持ち威嚇行動をしなくなるケースもあります。
また、気性が荒く喧嘩っ早い犬の場合は「おすわり」や「待て」といった基本的なトレーニングを継続することが大切です。トレーニングを継続していれば、どんな場面でも飼い主の指示を聞いて、気持ちを落ち着けることができるでしょう。
トレーニングを行う際は、愛犬との信頼関係を大切にしながらも、飼い主がリーダーシップを取ることがポイントです。
相性の悪い相手を避ける
犬の中には、性格によって相性の良し悪しも見られます。会うたびに喧嘩になってしまう相手や、お互いに存在に気付いた時点で「唸り声をあげる」「尻尾がさがる」といったサインが見られる相手とは、相性が良くない可能性があります。
例えば相性の悪い相手がいる場合は「お散歩ルートを変更する」「お散歩時間をずらす」などの方法で、犬同士が遭遇しないように配慮することも大切です。日ごろから愛犬の反応を見ながら、犬同士の相性を確認しましょう。
避妊・去勢手術も検討する
発情期のメスのニオイは、ほかの犬を興奮させて喧嘩を引き起こすことがあります。とくに、去勢をしていないオスの場合、発情期のメスに対して過敏に反応してしまいます。
発情期のメスは、ホルモンバランスの影響で、落ち着きがなくなったり攻撃的になったりするケースもあります。オスが発情期のメスにマウンティングしてしまうと、メス側が威嚇行動をとり、喧嘩に発展してしまう可能性があるので注意が必要です。
犬同士の喧嘩を避けるためにも、妊娠や繁殖を望んでいない場合は、避妊・去勢手術を検討しましょう。
遊び・じゃれあいと喧嘩の見分け方
犬同士は、遊びやじゃれあいでお互いを甘噛みしたり、相手に乗って押し倒したりすることもあります。こうした犬同士のじゃれあいは、相手にケガをさせるリスクが低いため、無理に止める必要はありません。
遊びやじゃれあいと喧嘩を見分ける際は、次のような犬のサインに注目しましょう。
<喧嘩の際に見られるサイン>
・牙をむき出しにしている
・低い唸り声をあげている
・尻尾が下がっている
・毛が逆立っている
こうした喧嘩のサインがなく、じゃれ合っている場合は、飼い主はそばで見守るようにしましょう。
犬同士が仲良くなったときのサイン
本来、犬は社会性が高く群れでコミュニケーションを取る動物です。そのため、喧嘩を避けながらも、相性の良い犬とは「一緒にお散歩をする」「一緒に遊ぶ」といったコミュニケーションを取り入れてあげるのもおすすめです。
相性のいい犬や仲良くなった犬は、お互いに以下のような行動をするようになります。
<犬同士が仲良くなったときのサイン>
・相手の顔をなめる
・お尻のニオイをかぎ合う
・尻尾を振る
・じゃれ合う
こうしたサインが見られる場合は、喧嘩のリスクも少ないため、一緒に行動することも可能でしょう。
まとめ
犬同士が喧嘩してしまう原因には「所有欲・縄張り意識」「発情期の影響」「不安や恐怖心、警戒心」などがあげられます。万が一、犬同士が喧嘩してしまうと、犬や人がケガをしてしまう恐れもあります。
犬同士の喧嘩を止める際は、ケガのリスクを避けるために、まずは大きな音で犬の注意をそらしたり、ハーネスを持ち上げて犬の前足を浮かせたりしてから、犬同士を引き離しましょう。
また、適度な運動や適切なトレーニングを心がけて、日ごろから喧嘩を避けるための対策を意識しておくことが大切です。さらに、状況に応じて避妊・去勢手術を検討するのも、喧嘩を避ける有効な手段のひとつです。
犬の喧嘩を上手に避けながら、ぜひ愛犬とほかの犬のコミュニケーションをサポートしてあげましょう。