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ろろの犬猫部屋所属。麻布大学獣医学部獣医学科卒業 / 動物病院で3年間臨床医 / 現在は横浜市の福祉施設にて研究事業と臨床医として働きながら保護猫活動に従事
一面の銀世界をさっそうと犬ぞりが走る姿を見たことはありますか?
白い息を吐きながら力強く走る姿は迫力があって、日頃接している犬の愛らしさとはまた違った魅力を感じるのではないでしょうか。
犬ぞりの歴史や、どんな犬種が犬ぞりを引いているのかをはじめ、アクティビティとして楽しめる犬ぞり体験についても紹介します。
目次
- 極寒の地で活躍する犬ぞりとは?
- どんな犬種が犬ぞりを引いているの?
- 日本にもある!犬ぞり体験ができる場所
- まとめ
極寒の地で活躍する犬ぞりとは?
雪原や雪に覆われた道が続く極寒の地には、そりを犬にひかせる「犬ぞり」が存在します。犬ぞりは、寒さゆえ馬などの使役動物が働けない北極圏などで、人間や荷物を運ぶための移動手段として発展してきました。犬ぞりの歴史とそりを引くときのフォーメーションについて解説します。
犬ぞりの歴史
犬ぞりの起源については諸説あります。3万~3万5,000年前のモンゴルにはすでに存在していたとも、4,000年ほど前に北極圏に暮らすイヌイットが荷物の運搬や移動手段として使用したのが始まりともいわれています。
近年はスノーモービルの普及などもあり、人や荷物を運ぶ移動手段としての犬ぞりは減っています。その代わり、早さを競う犬ぞりレースや犬ぞり体験などのアクティビティが一般の人々にも楽しまれるようになりました。特に犬ぞりレースはアラスカやグリーンランド、ノルウェーなどで人気の競技です。
複数の犬が隊列を組んで進む
犬ぞりをひく犬種の多くはオオカミを祖先に持ち、群れを形成し生存本能に従って行動します。犬ぞりで人や荷物を運ぶためには通常、複数の犬をつないで走らせる必要があります。そのつなぎ方は「ファンタイプ」と「ダンデムタイプ」の2つに分かれます。
ファンタイプは、そりに1匹ずつ扇形に犬をつなぐタイプ。カナダのイヌイットに古くから使われていたスタイルといわれています。一方のダンデムタイプは2頭ずつを縦につなぐスタイルで狭い道を進むのに適しています。犬ぞりレースや犬ぞり体験ではこのタイプが多く採用されています。
どんな犬種が犬ぞりを引いているの?
どんな犬種でも犬ぞり犬になれるわけではありません。犬ぞりをひくためには寒さに強く、人や荷物を乗せて長い距離を移動できる頑丈な体や体力、精神力などが求められます。ここからは代表的な犬種について紹介します。
シベリアン・ハスキー
シベリア北東部が原産地。進化系統上はスピッツと同系でありエスキモー犬の一種です。古くからイヌイットなどが冬はそり犬として、夏はボート引きとして飼っていました。極寒の地でそりを引いてきたため、耐寒性と持久力があります。風貌だけでなく遺伝子的にもオオカミに近い犬種ですが、性格は温和で飼いやすく美しい姿から人気があります。
アラスカン・マラミュート
アラスカ西部に住んでいたエスキモーのマラミュート族に飼われていたと言われ、祖先はシベリア原産と推測されています。見た目はオオカミやシベリアン・ハスキーに似ており、フワフワの毛と筋肉質の大きな体が特徴の犬種です。犬ぞりや狩猟犬として古くから活躍してきたため、愛情深く、飼い主に対しては忠実で献身的です。
カナディアン・エスキモー・ドッグ
カナダの北極圏でイヌイットによって古くから飼育されてきた犬種です。防寒に優れた厚い毛に覆われ、スタミナが豊富にあるので長距離タイプとしてとても優秀で、重い荷物を運んだりホッキョクグマなどを狩る猟犬として活躍したりしてきました。穏やかな性格で子どもや小さい動物とも仲良く暮らせます。
サモエド
ロシア北部のシベリア地方出身で、サモエドという名前はその地方に住むサモエド民族に由来しています。犬ぞり犬としてだけでなく、荷役やトナカイ番、狩猟などさまざまな作業を担ってきました。真っ白なふわふわの毛の下には厚い皮下脂肪があり、寒さに強い犬種です。人懐っこく温厚で優しい性格ですが、警戒心が強いことから防御的に吠えることもあります。
ニューファンドランド
カナダ東岸のニューファンドランド島を原産とする犬種で、超大型犬に分類されます。頑丈な体と筋肉を生かし、重い荷物を運んだり泳ぎが得意なことから水難救助犬として働いたりしてきました。毛色はブラックまたはブラウンで、防寒の役目を果たすアンダーコートが豊富です。優しく穏やかな性格の持ち主ですが、家族が危険になったときは助けようとする行動をとります。
グリーンランド・ドッグ
グリーンランド原産の固有種。勇敢さと持久力を兼ね備えたエネルギッシュな犬種で、古くから荷物の運搬や狩猟犬としてエスキモーの人々の生活を支えてきました。性格は誰に対しても友好的で人懐っこいため、番犬には向かないといわれています。また、性格的には家庭犬に向いていますが、日本の気候では飼育に適さないともされています。
日本にもある!犬ぞり体験ができる場所
犬ぞりはアクティビティとしても近年人気です。北海道の帯広・十勝地方、網走・北見地方、本州の群馬みなかみなど日本国内でも体験できる地域があります。初心者でもベテランのガイドのサポートによって手軽に楽しめるともいわれています。
また、北海道稚内市では、毎年、犬の甲子園と呼ばれる「JAPAN CUP 全国犬ぞり稚内大会」が開催されています。この大会は映画「南極物語」に出演したタロとジロが稚内市に贈られたことがきっかけで開催されるようになった大会です。1頭引きレースから6頭引レースほか、「ワンワンダッシュ」「犬ぞり体験」なども行われています。
まとめ
犬ぞりは北極圏など寒さの厳しい土地に住む人々の移動手段として、古くから用いられてきました。イヌイットの人たちにとっては今でも欠かせない生活の手段であり、そりを引く犬は欠くことのできない仲間であり、家族だといえるでしょう。その一方で、時代と共に犬ぞりを取り巻く状況も変化しています。移動の手段としてだけでなく、犬との一体感あるアクティビティとして犬ぞり体験や犬ぞりレースを楽しむ人も増えています。