公開
北海道大学獣医学部共同獣医学課程修了。一次診療施設にて勤務。現在は米国Purdue大学にて客員研究員として勤務。日本獣医画像診断学会所属
愛犬が飼い主に向けてお腹を見せて寝転がる姿は、へそ天と呼ばれています。犬にとってへそ天は、さまざまな理由が隠されています。一体、どんな理由で愛犬はへそ天をするのでしょうか。
この記事では、犬がへそ天をする理由を紹介します。愛犬が飼い主に対して出すサインを知ることで、愛犬との関係をより良くできることでしょう。また、へそ天をしない愛犬に向けて仰向けのトレーニングも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- へそ天とは?
- 犬がへそ天をする理由
- 愛犬がリラックスや甘えているときに出すサイン
- へそ天は愛犬の異変に気付くのにも効果的
- 愛犬にへそ天(仰向け)をトレーニングする方法
- まとめ
へそ天とは?
へそ天とは、犬がお腹を上にして寝転がっている状態のことを言います。へそ天は別名「仰向け寝」とも呼ばれており、その姿にメロメロになる方が多いことでしょう。
犬がへそ天をする理由はいくつかありますが、子犬時代に母犬にお腹を舐めてもらったポーズの名残とも言われています。
犬がへそ天をする理由
ここでは、犬がへそ天をする理由について、4つ紹介していきます。
完全にリラックスしている
犬はそもそもお腹をむやみやたらに見せません。理由は、犬にとってお腹は急所にあたるからです。
犬はもともと野生の動物だったため、常に危険と隣り合わせの環境にいました。野生動物時代は、周りに気を張っていることもあり、お腹を見せるような行為はほとんどしていませんでした。
飼い主の前でお腹を愛犬が見せているのは、完全にリラックスしている状態と言えます。
愛犬が危険を感じる必要性がないため、無防備にお腹を見せてゴロンとしているのです。また、仰向けになっていなくても、尻尾を伸ばしているときも、同様にリラックスしている状態と言われています。
飼い主に構ってもらいたい
飼い主とコミュニケーションを取りたいときも、犬はへそ天をする傾向があります。犬がへそ天をするということは、飼い主に甘えたいという気持ちの表れです。とくに、仰向けになりながら尻尾を振っていたら、飼い主と遊びたいと思っていると考えていいでしょう。
親子の犬の関係では、親犬が愛情表現の1つとして子犬のお腹を舐める習性があります。その名残が愛犬の本能にも残っているため、飼い主にもお腹を撫でてほしいと思っています。
愛犬がへそ天を見せてきたら、そっとお腹を撫でてみましょう。ただし、犬のお腹は皮膚が薄くデリケートなので、あまり強く撫でないよう気をつけてください。また犬にとってお腹は急所なので、たとえへそ天をしていても、お腹を触られるのを嫌がる場合もあります。愛犬が嫌がる場合は、無理に触らないようにしましょう。
愛犬がお腹を撫でられて喜んでいる場合、犬も「へそ天をすればお腹を撫でてもらえる」と学習します。愛犬とのコミュニケーションの一環として、この行為を取り入れてみるのもいいでしょう。
反省している・敵意がないことを示している
犬は、敵意のないことを相手に示すために、お腹を見せることがあります。飼い主に対してへそ天をしていたら、「私は敵ではないよ。」という気持ちを表していると思っていいでしょう。
飼い主に怒られたときも、お腹を見せることがあります。へそ天をすることで、「私は反抗する意志がないので、これ以上怒らないでください」と飼い主に訴えています。
しかし、そこでさらに怒りつけることは、関係の悪化につながる可能性があるのでやめましょう。愛犬が同じ失敗をしないよう、環境作りやトレーニングに意識を向けてください。
体温調節をしている
犬は人間のように汗をかきません。そのため、体温調節をするためにへそ天をすることもあります。犬のお腹は、ほかの部位に比べ毛が少なく皮膚も薄いので、体にこもった熱を逃しやすい場所です。また、犬にとって体温調節する方法も限られているため、へそ天が一番効果的です。
愛犬が体温調節をしているかは、大きく舌を出して「ハァハァ」と激しい呼吸をしているかで判断するといいでしょう。とくに夏場は、犬にとって危険な時期です。犬は人間よりも体内に熱がこもりやすく熱中症になりやすいので、愛犬の行動を注意深く観察してみてください。あまりにも激しい呼吸をしている場合は危険を伴いますので、早めにクーラーが効いた場所へ移動させるようにしましょう。
愛犬の体温を下げるために、お腹を冷やす方法もあります。氷水などを使うと冷やしすぎてしまうので、ひんやり素材のマットを敷いてあげたり、フローリングなど冷えやすい床材の部屋に移動させたりしてあげるとよいでしょう。
愛犬がリラックスや甘えているときに出すサイン
犬はへそ天以外にも、リラックスしているときや甘えたいときに出すサインがあります。以下に6つのサインを挙げていますが、これらのサインを愛犬が出したら、たくさんコミュニケーションを取ってあげるようにしましょう。
体を寄せてくる
愛犬が体を押し当てたり、こすってきたりすることはありませんか?このように犬が体を寄せてくるのは、飼い主に甘えたいという心の表れです。愛犬が体を寄せてきたら、飼い主も愛情に答えてあげると愛犬はとても喜びます。
あごを乗せてくる
飼い主のひざや腕などに、あごを乗せてくる行為も飼い主に甘えたいサインの1つです。犬があごを乗せている状態は無防備なので、飼い主を信頼しているときでないと見られません。愛犬があごを乗せてきたら、スキンシップを取って撫でてあげるようにしましょう。
お腹を見せてくる
お腹を見せてくるのは、愛犬がリラックスしている証拠です。飼い主に構ってもらいたいと思っている愛犬も多いので、コミュニケーションをたくさん取ってあげるといいでしょう。愛犬と一緒に遊んだり、お腹をやさしく撫でたりするのがおすすめです。
甘噛みしてくる
甘噛みをしてくるのも、甘えたい気持ちの表れです。とくに子犬の時期は、甘噛みをたくさんするので、おもちゃを使って一緒に遊んであげるといいでしょう。しかし、甘噛みを許してしまうと、成犬になったときに人を噛んでしまうこともあります。子犬の時期から、人に噛んではいけないことを教えてあげなければいけません。
人への甘噛みがひどいときは、遊ぶのを中断し、人を噛むと楽しい遊びが終わってしまうのだと教えてあげるとよいでしょう。代わりに噛んで遊ぶおもちゃを与え、噛みたい欲求も満たしてあげると、徐々に人を噛むこともなくなっていきます。
顔を舐めてくる
愛犬が飼い主の顔を舐めてくる行為は愛くるしいものです。この行為は、まさに愛犬の愛情表現で、好きという気持ちを表しています。また、子犬期は親犬に食べ物をねだるときも、親犬の顔を舐める習性があるので、そういった名残から飼い主を親と思っていることもあります。
愛犬が顔を舐めてきたら、頭を撫でて構ってあげましょう 。飼い主も同じように愛情表現をしてあげるようにしてください。
飼い主の後ろをついてくる
愛犬が飼い主の動く方向に一緒についてくるのは、まさに一緒にいたいという心のサインです。一緒にいて愛犬が何をしたいのかは、その時々によって違います。甘えたい、遊びたい、散歩に行きたいなど、愛犬の要求を満たすためについてくることが多いです。愛犬が今何をしたいのか、気持ちを読み取ってあげることが大切です。
へそ天は愛犬の異変に気付くのにも効果的
犬のへそ天は、飼い主とのコミュニケーションや気持ちを表した行為だけではありません。愛犬の健康状態を確認するためにも、効果的な行為なのです。
普段へそ天をしてお腹を触らせてくれる子が、お腹を丸めてうずくまっていたり、お腹を触られるのを嫌がったりする場合、体調不良のサインかもしれません。
またお腹は通常の体勢では見えにくい場所なので、愛犬がへそ天している時に、皮膚の状態などを確認するのもよいでしょう。
愛犬にへそ天(仰向け)をトレーニングする方法
お腹を見せて寝転がる、愛犬のかわいい姿が見たいと思う方も多いでしょう。 お腹を見せるトレーニングは愛犬との信頼関係が大切なので、愛情を持って、愛犬がリラックスした状態でトレーニングをしてみましょう。
おやつを持って「伏せ」をさせる
まずは、伏せのトレーニングを始めます。おやつを愛犬の鼻先に持っていき、徐々に足元へ下げていきましょう。犬は自然とかがんだような姿勢になりますので、ここで「伏せ」と声をかけていきます。愛犬の胸が床についたら、おやつをあげてたくさん褒めてあげてください。
なかには、伏せをうまくできない犬もいます。愛犬のペースに合わせて根気良くトレーニングを行い、間違っても無理やり押さえつけたりしないようにしましょう。
「伏せ」ができるようになったら「ゴロン」をさせる
伏せが上手にできるようになったら、次のステップ「ゴロン」のトレーニングです。おやつがなくても伏せが自然にできるようになったら、伏せの状態からおやつを再度見せて背中の方へ持っていきます。仰向けの状態になるときは「ゴロン」という掛け声をかけてあげましょう。
ゴロンが上手にできたら、おやつをあげてたくさん褒めてあげてください。
愛犬のペースに合わせて1週間ほど繰り返し訓練
伏せとゴロンが一連の流れとしてできるよう、おやつを使って繰り返しトレーニングをしていきます。
おおよそ1週間でへそ天ができるようになりますが、愛犬のペースによってまちまちです。慎重な性格であるほど、急所であるお腹を見せたがらないかもしれません。
また外で物音がする場合など、愛犬が安心感を感じられない状況では、トレーニングがうまくいかないこともあります。
あくまでも、愛犬のペースに合わせてトレーニングをすることが大切です。間違っても無理やり仰向けにさせないように注意しましょう。
まとめ
犬にとってへそ天は、飼い主にさまざまなサインを出しています。その多くは、飼い主との良好な関係を築けていることを意味します。
また近年の日本では猛暑が続き、犬にとって過酷な環境です。愛犬が体温調節でへそ天をしているときは、暑さ対策もしっかりと行うことが大切です。
ほかにも、へそ天により普段見えにくいお腹の皮膚の状態を確認することができます。日頃からスキンシップをとり、お腹をさわらせてもらえる関係を築けるとよいでしょう。