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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
まるでぬいぐるみのような可愛らしい見た目が印象的なプードル。特に体格の小さな「トイプードル」が知られていますが、大きさの違いで4種(JKC非公認を含めると6種)に分類されています。今回は、それぞれのプードルの種類とそのサイズや飼い方のコツなどについて獣医師の茂木千恵先生監修のもと解説していきます。
目次
- プードルの歴史やルーツは?
- プードルの性格は?
- プードルの飼育のポイントは?
- プードルの種類は?
- プードルの毛色の種類は?
- プードルの人気のカットスタイルは?
- 注意しておきたいプードルがかかりやすい病気は?
プードルの歴史やルーツは?
フランスを原産地とし、もともと来鳥猟に使用されていたプードル。フランス語の「caniche(プードル)」の語源はメスのアヒルを意味するフランス語の「cane」に由来しています。人懐こくて忠実な性格を持っていて、サイズの種類も多く、その人の好みによって選べることなどから、徐々にコンパニオン・ドッグとして人気が出ました。
プードルの性格は?
基本的には穏やかで賢く、活発で従順な性格です。オスは本能的に縄張り意識が強く、自分の家族や仲間を守ろうとする本能が出やすいといえます。そのため、来客や家のまわりの通行人に吠えたり、警戒したりする行動がみられます。一方、メスは比較的マイペースな性格なことが多いです。家族を見分けていて、特定の人にわがままな傾向もあるでしょう。また、来客や外で出会う人に対してはおとなしくても、散歩中の見知らぬ犬には攻撃的になるケースもあります。
プードルの飼育のポイントは?
とても賢い犬種ではあるものの、寂しがりで怖がりな面も持ち合わせていたり、人に友好的な一方で興奮しやすかったりするタイプの犬種です。そのため、無駄吠えが悪化しやすく、吠えないような行動コントロールが大事になります。飼い主やほかの犬と遊ぶことが大好きで、頭がいい犬種なので、しつけはしやすいですが、基本的な号令の訓練がしっかりできていないと、犬の都合で飼い主や家族をコントロールしようとすることもあるので要注意です。
また、プードルの被毛は、上毛がとても少なく、下毛がメインとなっている一層構造になっているため、寒さに弱いです。室内での飼育が適しているといえるでしょう。室内の温度管理や暖房器具の使用も欠かせません。
プードルの種類は?
一口に「プードル」といっても種類はいろいろ。飼い方のコツも異なります。種類ごとに見ていきましょう。
【スタンダードプードル】
スタンダードプードルはプードルのなかで最も大きな体格をしています。また、とても賢い犬種としてもよく知られています。
体高・体重
体高は平均的なトイプードルの倍以上で、45~60cmくらいです。オス、メスともに平均的な体重は20~30kg程度です。体格差が大きいため、一概にオスがメスより大きくなるとはいえません。
平均寿命
平均寿命は12~14歳です。
外見の特徴
スタンダードプードルの被毛は単色です。ブラック、ホワイト、ブラウン、グレー、クリームなどが主な毛色です。
飼い方のコツ
賢い犬種で、記憶力が優れており、飼い主の行動をよく観察していて良いことも悪いこともすぐに覚えます。トレーニングを生活習慣に組み込んでしつけをしっかり行いましょう。また、スタンダードプードルは副腎皮質ホルモンの分泌量の減少により発症するアジソン病が出やすい犬種です。元気がない、食欲が減退したときなどは念のために動物病院を受診するようにしましょう。
【ミディアムプードル】
スタンダードプードルを小型化したのがミディアムプードルです。その歴史は古く、16~17世紀頃のフランスで上流階級の愛玩犬として誕生しました。家族への従順さや愛着が強く、まわりの状況をよく見て自立的に行動できる犬でもあります。そのせいか、警戒心が強い傾向もあります。日本では登録頭数が少ないものの、世界的に見るとトイプードルより多く飼われているのがミディアムプードルです。
体高・体重
体高は35~45cm以下で、体重は8~15kgが平均とされています。個体差が大きく、性別による違いはありません。
平均寿命
平均寿命は12年です。
外見の特徴
ミディアムプードルの毛質は多くのプードルに見られるような強く巻いたカールが特徴です。また、抜け毛が少ないです。国際的な愛犬団体のジャパンケンネルクラブ(以下、JKC)では「やや胴長」な体格とされています。また、ショードッグとしてもよく活躍していますが、そういった場合でもしっぽを切らないケースが増えました。
飼い方のコツ
ミディアムプードルは活発で運動能力も高い犬種。そのため、毎日の散歩を欠かさないようにしましょう。体力があるので、だらだらと1時間くらい歩くよりも、10分程度の全身を使ったフリー運動、ダッシュなどを取り入れる方が運動欲求を発散させやすくおすすめです。もともと猟犬として発達してきた犬種なので、ボール遊びやフリスビーなど、物を飼い主のもとへと持って帰る遊びも得意です。
ただし、寒さに弱いので、寒い時期は比較的暖かい時間帯に散歩をするといった工夫をしてあげてください。
【ミニチュアプードル】
ミニチュアプードルはミディアムプードルと同様に、16~17世紀のフランスでスタンダードプードルを小型化して生まれました。
体高・体重
体高は28~35cm以下で、体重は5~8kgが平均とされています。個体差が大きいため、性別による違いはありません。
平均寿命
平均寿命は15年です。
外見の特徴
ミディアムプードルよりサイズが小さめです。毛色は単色で、ブラック、ホワイト、ブルー、グレー、ブラウン、アプリコット、クリーム、シルバー、レッドなどがあります。ただし、どの毛色であっても必ず年齢とともに色が変化し、子犬の頃の毛色は2~3年後には変色してしまいます。
飼い方のコツ
ミニチュアプードルは抜け毛が少ない犬種ですが、毎日ブラッシングをしないと被毛が絡みやすくなったり、毛玉ができやすくなったりするので、定期的なブラッシングとトリミングが必要となります。
また、運動能力が高いため、ゆっくりしたペースの散歩では何時間歩いても疲れないケースもあります。全身を使ったフリーの運動やダッシュなどを日常的にさせるようにすると良いでしょう。
【トイプードル】
飼い犬の中でも、日本で特に人気なのがトイプードル。愛らしい外見と人懐こく賢い性格などが理由とされています。より小さいサイズの「ティーカッププードル」、「タイニープードル」と呼ばれているプードルもトイプードルに分類されます。
体高・体重
規定の体高は24~28cmで、理想体高は25cmとされています。体重は3kgが平均で、オスとメスで体格に違いはありません。
平均寿命
平均寿命は14~17年です。
外見の特徴
丸い目と垂れた耳、強く巻いたカールの毛が特徴です。毛色には、ブラック、ホワイト、グレー、ブラウン、アプリコット、クリーム、シルバー、レッドなどがあります。抜け毛は少ないでしょう。
飼い方のコツ
元気いっぱいで明るく、見知らぬ人や犬に対して友好的にふるまうことができる犬種です。活発で運動欲求が高いので散歩はもちろん、全身を使ったフリー運動も日常的に取り入れてあげましょう。ゆっくり1時間歩く程度では満足しないこともあるため、ダッシュや物を飼い主の元へと持って帰る遊びなどの自由運動を10分間程度させることを日課にすると良いでしょう。
また、トイプードルは体が小さいため、攻撃的な態度を見せたとしても過小評価されがちです。その結果、犬からの要求がエスカレートしていく場合も少なくありません。周囲の状況から自律的に行動することができ、飼い主の動きを察知する習性を持っているので、飼い主が一貫した態度で犬の行動をコントロールする習慣をつけるとよいでしょう。
【タイニープードル(※JKC非公認)】
JKCやFCI(国際畜犬連盟)が定めるプードルのサイズは、スタンダード、ミディアム、ミニチュア、トイの4種類であり、タイニープードルは、公式には認定されているサイズではありません。タイニープードルはトイプードルの一種とされています。
体高・体重
JKCやFCI 非公認ではありますが、一般的にタイニープードルと呼ばれているサイズは、体高20~25cm、体重は2~3kgが平均とされています。オスとメスで体格に違いはありません。
平均寿命
平均寿命は15年です。
外見の特徴
基本のスタンダード・プードルを小さくした形をしています。ただし、超小型化する繁殖の影響で、短いマズル、小さな耳と口、大きな目が顕著になっています。
飼い方のコツ
トイプードルの飼い方と基本的には同じですが、タイニープードルは骨が細く骨折をしやすいので、骨格が完成していない成長期は特に注意が必要です。ソファーや階段など高い所から飛び降りただけでも怪我をする恐れがあるので、大きな段差がない環境をつくってあげてください。
【ティーカッププードル(※JKC非公認)】
近年、メディア掲載などで取りざたされるようになったティーカッププードルもタイニープードルと同様に正式に登録されているわけではなく、トイプードルの一種とされています。一般的に、2kg以下のプードルを通称「ティーカッププードル」として呼んでいます。
体高・体重
体高は20cm、体重は1.5~1.8kgが平均とされています。個体差が大きいため、オスとメスで体格に違いはありません。前述のとおり、本来はトイプードルなので、場合によっては2kgよりも大きくなることもあります。
平均寿命
平均寿命は12~15年です。
外見の特徴
トイプードルよりもコンパクトな体型で、くるくるの巻毛、抜け毛が少ないことが特徴です。
飼い方のコツ
ティーカッププードルもトイプードルと飼い方に大きな違いはありませんが、ティーカップサイズを維持する目的で、食事の量を調節するのはやめましょう。JKCでは、極めて小さなサイズの個体については、犬種の標準から逸脱していて、健康さに欠ける場合があるので注意が必要とされています。
また、イギリスの畜犬団体のザ・ケネルクラブは、犬の小型化は健康問題を引き起こす可能性があり、ティーカッププードルを含めた超小型犬には先天的な呼吸器疾患や骨の形成不全などの発症リスクがあると発表しています。健康チェックや健康診断を定期的に行い、病気の早期発見に務めることも大切です。
※参考
ティーカッププードル、豆柴について,JKC
https://www.jkc.or.jp/archives/important_notice/17679
Teacup puppies,The Kennel Club
https://www.thekennelclub.org.uk/our-resources/media-centre/issue-statements/teacup-puppies/
プードルの毛色の種類は?
プードルの被毛は、1本1本が細く絡まりやすいため、こまめなブラッシングが必要です。毛色の種類は以下の通りです。代表的な毛色から見ていきましょう。
ブラック
プードルの基本カラーです。色素が濃く、目から爪まで真っ黒です。毛量も多くて皮膚が強く、骨もしっかりしている傾向があります。
ホワイト
プードルの原種カラーのひとつです。ほかの毛色よりも汚れが目立ちやすいので、こまめにお手入れをしてキレイな毛色を保つ必要があるでしょう。
グレー(シルバー)
シルバーとも呼ばれることがあるカラーです。生まれてすぐはブラックに見えますが、1年程度で少しずつグレーの毛色に変化します。
レッド、アプリコット
歳を重ねるごとに毛色が薄くなる傾向があります。
ブラウン
プードルの代表的な毛色ではなく、ブラックの毛色の遺伝子変化によって作られたカラーです。また、成長に伴って変化していくケースが多い毛色でもあります。
クリーム
こちらも代表的な毛色ではありませんが、アプリコットよりも薄く白に近い色味です。年齢とともに退色し、ホワイトに近くなります。
毛色によって性格は違う?
トイプードルのブリーダーでJKC公認単犬種(プードル)審査員の資格を持つ山本晃子さんによると、「性格は毛色によって多少の傾向性はありますが、親から子へ受け継がれるものが大きいように感じます。プードルの原種のカラーであるホワイトと ブラック、そしてブラックの劣性遺伝子であるブラウンを基盤に、改良を経て中間色の(シルバー)、アプリコット、レッドが作られたと捉えると、原型のホワイトとブラックのほうが明るく快活で感情が安定していて、中間色の毛色のほうが繊細な性格を示しがちという印象です。ただし、2021年にJKCのプードルの犬種標準が改正された事により、プロのブリーダーの中では毛色や性格などの表現を変えはじめている人もいます」とのことでした。
プードルの人気のカットスタイルは?
シングルコートのプードルの被毛は抜け毛が少ない一方で、毛が伸びてきますので、カット(トリミング)が欠かせません。個性があらわれるポイントで、その時々で流行があるのも特徴です。どのようなスタイルがあるのか見ていきましょう。
クラシックスタイル
マズルに毛がなく、顔にバリカンが入ったカットスタイルです。
テディベアカット
クラウンと耳の境界がはっきりしているスタイルがベーシックで、クラシックスタイルが一辺倒だった時期から、マズルにバリカンが入らず毛がある新しいスタイルとして流行し定着しました。最近では、韓流テディやニュアンステディなどが流行しています。
アフロカット
テディベアカットの次に流行したクラウンと耳が一体化したスタイルです。
注意しておきたいプードルがかかりやすい病気は?
プードルには多発する疾患がいくつかあります。また、プードルで知られている遺伝性疾患のうち、進行性網膜委縮、変形性脊椎症、フォンビルブランド病の3つは、遺伝子検査を行うことで素因があるかどうかを診断することができます。子犬の両親が遺伝子検査を受けていれば子犬が素因を持つか否かの判断も可能になるので、積極的に受けるようにしましょう。以下、具体的にプードルがかかりやすい病気の症状を説明します。
進行性網膜萎縮
ミニチュアプードル、トイプードルに多いとされている疾患です。網膜が変性して萎縮する疾患で、遺伝性の場合が多いです。5歳頃から発症率が高まり、初期段階では夜間の視力障害が主な症状。徐々に昼間でも視力障害や視力喪失を示すようになり、瞳孔の散大や白内障などが見られることもあります。
変形性脊椎症
10歳を過ぎた高齢犬に発症しやすく、背中の脊椎骨の髄核(椎間板の中心部分を構成する組織)の減少により椎体が変形するのが原因とされています。初期段階では無症状ですが、進行すると痛みが出て動きたがらなくなり、悪化すると立ち上がれなくなります。
フォンビルブランド病
フォンビルブランド病は遺伝性かつ先天性の病気で、血液の凝固異常によって出血傾向を示します。
レッグペルテス病
足の骨(大腿骨頭)への血行が阻害され、骨頭が壊死してしまう病気。1歳未満に発症することが多いです。後ろ症状は足の歩き方の異常で、痛む足を地面につけたがらず3本足で歩いたり、あまり体重をかけないように歩いたりする動作で気が付きます。また、この壊死部分に強い衝撃が加わると骨折してしまうこともあり、ソファーや階段の上り下りをきっかけに急に症状が出ることもあります。
椎間板ヘルニア
脊椎骨の間にある椎間板に変性が生じ、その内容物が突出することによって脊髄神経を圧迫して、さまざまな神経症状を引き起こす病気です。加齢に伴って進行する場合もあります。腰を触ると痛がる、歩く様子がおかしくなるほか、「急性」の場合、四肢麻痺や失禁が認められます。特にミニチュアプードル、トイプードルで多く見られ、若齢時から急速に進行することが多いようです。
膝蓋骨脱臼
トイプードルに限らず、主に小型犬に多発する病気のひとつです。遺伝によるもの、または外部から大きな力が加わることにより、膝蓋骨が内側または外側にずれて発症します。獣医師に定期的に触診してもらって異常がないか状態を把握することが大切です。床を滑り止め加工する、カーペットを敷いてあげるなど、膝に負担をかけない工夫をすることも予防に効果的です。
骨折
トイプードルはとても骨折しやすいので注意が必要です。特に高齢になるとちょっとした段差でのつまずきや、階段の上り下りでも骨折してしまう場合があります。室内の段差を極力小さくし、抱っこをするときは飛び降りないようしっかりと抱えるようにします。また、骨を強くするために良質なバランスの取れた食事と適度な負荷の運動機会を習慣づけましょう。
外耳炎
外耳道で雑菌が繁殖し、耳道粘膜に炎症が生じている状態です。プードル犬種だけでなく垂れ耳の犬種や耳道に被毛が多い犬種が多発傾向にあります。耳を掻こうとしたり、首を振ったり、耳を痛がるようになることに加え、耳垢が垂れる、耳から悪臭がする場合は外耳炎の疑いが強いです。自宅治療では耳の奥深くまで根治できないので、必ず獣医師の治療を受けましょう。
これらの病気を早期発見には、毎日丁寧にブラッシングや触れ合いをする時間を持ち、健康チェックも合わせて行うことが大切です。飼い主が愛犬の健康管理に努めることで、愛犬の健康寿命も延びることでしょう。