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ヤマザキ動物看護大学准教授、愛玩動物看護師、ペットグルーミングスペシャリスト。教育気・研究の現場だけでなく、数々のテレビ出演や、執筆活動など幅広く活躍。
ふわふわした被毛は、ポメラニアンが持つ大きな魅力のひとつです。ポメラニアンには被毛のカットが必要なのか不要なのか、気になっている方も多いと思います。
この記事では、ポメラニアンの被毛が持つ特徴、カットの必要性やお手入れ方法や種類などについて紹介します。ポメラニアンの被毛のお手入れをする際に、ぜひ参考にしてください。
目次
- ポメラニアンの被毛が持つ特徴
- 基本的にポメラニアンはカットが不要
- ポメラニアンの被毛のお手入れ方法
- ポメラニアンのカットのタイミング
- ポメラニアンのカットの種類
- ポメラニアンの柴犬カットは要注意
- まとめ
ポメラニアンの被毛が持つ特徴
ポメラニアンは、豊富な下毛により生じる美しい被毛を持つダブルコートの犬種です。被毛は、硬くて太い「オーバーコート」と、綿毛のように細い「アンダーコート」の2種類で構成されています。
アンダーコートは体温を調整する役割を持っている毛で、夏前や冬前の換毛期になると大量に抜け落ちます。抜け毛対策として、普段からブラッシングによる入念なケアが必要です。
ポメラニアンのシャンプーは、夏場ならば月2回、その他の季節は月1回が目安となります。皮膚疾患につながるおそれがありますので、シャンプーのし過ぎには注意が必要です。
ポメラニアンの子犬を飼うなら、被毛が大量に抜け落ちる「お猿期」があると覚えておきましょう。成長の過程で顔周辺の被毛が抜け落ち、猿のように見える状態に変化するのがお猿期です。
あまりにも毛が抜けるので、不安になってしまう人もいます。しかし、お猿期は多くのポメラニアンに起こるので、あまり心配する必要はありません。生後4~8か月頃になると、次第に毛は落ち着いていきます。
また、ポメラニアンの毛色は、ジャパンケネルクラブ(JKC)によると 、ホワイト、ブラック、ブラウン、オレンジなど全部で13種類の公認カラーがあります。
基本的にポメラニアンはカットが不要
ポメラニアンの被毛は伸びつづけるわけではないため、基本的にはカットが不要です。カットしなかったとしても一定の長さ以上には伸びません。
夏場はカットすることで涼しく過ごせるものの、被毛には紫外線から皮膚を守る大切な役割もあります。そのため、カットを行う際は、全身の被毛を短くし過ぎないよう注意しましょう。
カットしておくと良い部分は、排泄物が付着しやすいお尻周辺の毛です。ほかにも肉球の間に生える毛をカットしておくと転倒防止に役立ちます。
ポメラニアンは、関節のトラブルを抱えやすい犬種ですので、フローリングで滑って怪我をしないよう、肉球の間の毛は定期的にカットしてあげましょう。
ポメラニアンの被毛のお手入れ方法
ポメラニアンの美しい被毛を保つためには、こまめなブラッシングが必要です。ブラッシングをするときは、まず全身をチェックして、もつれや毛玉がないかチェックしてみましょう。
もつれている部分を見つけたら、指でゆっくりと左右に広げるようにしてほぐします。毛玉があった場合は指でつまんで、毛先側からブラシでとかしてください。
そのまま毛玉をとかしてしまうと、皮膚に痛みを感じてしまいます。毛玉から先を少しずつブラシでとかしていくのがほぐすときのコツです。
もつれや毛玉が見当たらなくなったら、スリッカーで毛先からとかし、コームを使って整えましょう。「毛並みにそってとかす」「毛並みと逆にとかす」を数回繰り返すと、被毛がふわふわになります。
ポメラニアンのカットのタイミング
ポメラニアンのカットをするなら、どれくらいの頻度がいいか知っておく必要があります。成犬と子犬のカットを始める時期について、確認しましょう。
成犬のカットのタイミング
ポメラニアンはダブルコートで、ある程度まで伸びると毛の長さがストップします。被毛がどんどん伸びつづける犬種ではないため、あまり頻繁にカットする必要はありません。
どのくらいの長さにするかにもよりますが、カットのタイミングは1、2か月に1回程度が目安です。短くし過ぎてしまうと、毛が伸びるまでに半年以上かかる場合もありますので気をつけましょう。
カットは負担がかかりますので、シニア犬は数か月に1回程度を目安にしてください。持病がある犬やハイシニア犬は、獣医師に相談したうえでカットをすると安心です。体調が悪い様子が見られたら、カットを避けておきましょう。
子犬のカットを始める時期
子犬のカットは、「生後3か月以上で、すべてのワクチン接種後2週間~1か月以降」とするサロンが一般的です。サロンによって違いもありますので、まずはカットのタイミングについて相談してみてください。
ポメラニアンに限らず、子犬はデリケートです。子犬時代に怖い思いをしてしまうと、カットがトラウマになりかねません。そのため子犬のカットには十分な注意が必要です。
カットを行う場合は、全身カットではなく部分カットから始めましょう。怖い思いをしないよう、少しずつ慣らしていくことが大切です。
ポメラニアンのカットの種類
本来ポメラニアンにはカットが不要だといっても、さまざまなカットを楽しんでいる方もいます。カットを楽しみたい方は、カットの種類にはどんなものがあるのかチェックしておくといいでしょう。
人気のスタイルをピックアップしましたので参考にしてください。
柴犬カット
ポメラニアンのカットでも、特に高い人気を誇っているのが「柴犬カット」です。柴犬カットのポメラニアンは「シバラニアン」とも呼ばれ、多くの人に愛されています。挑戦したいと考えている人も多いのではないでしょうか。
柴犬カットは耳を三角、顔を丸くして、体全体を短くする方法です。愛くるしい表情が楽しめるものの、顔立ちや残す毛の量で仕上がりには大きな違いが出ます。
思い通りの仕上がりになるよう、しっかりとトリマーさんへ相談しましょう。
たぬきカット
ポメラニアンでは丸みのある「たぬきカット」も人気です。たぬきカットでは、耳や顔など全体を丸く仕上げます。
被毛の量が多く、鼻が短めのポメラニアンに似合うカットがたぬきカットです。ただし短くし過ぎるとたぬきっぽさがなくなるため、カット時には注意が必要です。
テディベアカット
「テディベアカット」は、「くまさんカット」とも呼ばれている方法です。トイ・プードルでよく見られるカットの方法ですが、ポメラニアンにも似合います。
テディベアカットはぬいぐるみのように可愛らしく仕上がりますが、口まわりに注意が必要です。口まわりの毛量が多いと、どうしても食事での汚れが付きやすくなってしまいます。テディベアカットにするなら、食事のあとは口まわりを拭いてケアしてあげましょう。
チャウチャウカット
耳が見えないように顔まわりを丸くカットするのが「チャウチャウカット」です。体の被毛を短めにカットすると、チャウチャウらしさがさらに強くなります。
チャウチャウカットでは耳まわりの毛を長く残すのが大きなポイントです。毛を長く残すあまり、耳の付け根にもつれや毛玉が生じやすくなってしまいます。チャウチャウカットにするなら、耳まわりを忘れずにお手入れしてあげましょう。
ライオンカット
「ライオンカット」は、ポメラニアンの頭から胸元にかけて、たてがみのような毛を残す方法です。また、ライオンのようなスタイルになるよう尻尾の先にも毛を残します。
ライオンカットは、毛量が多いポメラニアンにはぴったりなカットです。ただし「たてがみ」の部分は被毛を長く残すため、もつれや毛玉ができやすくなってしまいます。普段のお手入れでは、たてがみ部分を丁寧にブラッシングして、もつれや毛玉を防ぎましょう。
アザラシカット
サロン名:runrun
b.こまめちゃん(アザラシカット)
ポメラニアンなら、全体を丸くカットする「アザラシカット」もおすすめです。垂れ耳だったり、耳を寝かせていたりすることが多いポメラニアンなら、かなりアザラシに近いスタイルが楽しめます。
ただしアザラシカットでは、全身のカットが必要です。自分が思うイメージになるべく近づけられるよう、アザラシカットをするなら事前に打ち合わせを行いましょう。
桃尻カット
サロン名:runrun
a.ルンちゃん(桃尻カット)
お尻の被毛だけをフルーツの桃のように丸くカットする方法が「桃尻カット」です。部分カットのひとつで、お尻の汚れ防止にも役立ちます。
ただし、桃尻カットは難易度が高い方法であるため、得意なトリマーさんに依頼するのがおすすめです。あまり桃尻カットの経験がないトリマーさんに施術してもらうと、思ったような仕上がりにならないかもしれません。
サロンによってはデザインカット料金が発生しますので、事前に確認しましょう。
ポメラニアンの柴犬カットは要注意
数多く存在するポメラニアンのカットのなかでも、特に柴犬カットは人気です。しかし柴犬カットにあたっては、あらかじめ注意点を把握しておく必要があります。
「思ったより短くし過ぎてしまった」という失敗が多いのが柴犬カットです。ポメラニアンはそもそもカットが不要な犬種なので、毛が伸びるまでに時間がかかります。そのため切り過ぎには注意が必要です。
被毛が短過ぎると皮膚に直射日光があたり、皮膚病や熱中症になるリスクが高まります。短くカットすると被毛の質が変化してしまい、ツヤが失われる可能性があることも知っておきましょう。被毛の質が変化しても、特に治療法はありません。
そこで失敗が起きないよう、柴犬カットでは事前にトリマーさんとしっかり相談するのが大切です。体の毛はバリカンで極端に短く刈り込まず、ハサミでのカットにしてもらいましょう。
まとめ
ふわふわの毛が魅力のポメラニアンは、本来はカットの必要がない犬種です。そんな犬種のポメラニアンですが、人気のある柴犬カットやたぬきカットなど、さまざまなカットを楽しむ方も多くいます。
ポメラニアンの毛は伸びるスピードは遅めです。あまりにも短くカットしてしまうと、なかなか伸びてこないうえに、被毛の質が変わってしまうかもしれません。皮膚病や熱中症を防ぐためにも、カットでは短くし過ぎないよう、注意しましょう。