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兵庫ペット医療センター東灘、獣医皮膚科学会、VET DERM TOKYO 皮膚科第1期研修医
体が小さいポメラニアンも、健康維持のために毎日の散歩は必要です。好奇心旺盛な性格のポメラニアンは、きっと散歩が大好きになるでしょう。ただし、足が小さくて短いからこそ、散歩の時間帯やルートは飼い主がしっかり配慮してあげることが大切です。この記事では、ポメラニアンの散歩量の目安や、散歩を楽しんでもらうためのポイントを解説します。
散歩中のトラブルの対処方法も紹介しますので、ポメラニアンの散歩で悩みを抱えている飼い主も参考にしてください。
目次
- ポメラニアンにとって散歩は大切
- ポメラニアンの散歩量の目安
- ポメラニアンに散歩が大好きになってもらうには
- 散歩中に起きるトラブルの対処法
- まとめ
ポメラニアンにとって散歩は大切
ポメラニアンは体高20cm前後で超小型犬として分類されるため、運動量も他の犬種より少ない傾向にありますが、室内遊びだけでは運動不足になってしまいます。ここでは、ポメラニアンにとっての散歩の重要性や、散歩が必要になる時期について解説します。
散歩のメリット
散歩で体を動かすことで、運動不足やストレスを解消する効果があります。運動不足やストレスを抱えた状態がつづくと、イライラを発散するためにいたずらをしたり、体調を崩したりする可能性があります。毎日の散歩をしっかり行うことで、そうしたリスクを抑えられるでしょう。また、散歩中にたくさんのものに触れることで、好奇心を刺激したり、社会性を身につけたりすることもできます。
お散歩デビューの時期
初年度のワクチンプログラムが完了したときが、お散歩デビューのタイミングです。2回目の接種から2週間が経過するまでは、免疫機能が十分に備わっていませんので、地面や他の動物が持つ細菌に感染するリスクがあります。感染症を防止するためにも、窓から外を眺めたり、室内で首輪やリードをつけて慣れさせたりするのみにとどめましょう。
また、ワクチン接種前であっても子犬が他の犬と触れ合ったり、自分の足で直接地面に触れたりしなければ大丈夫なので、抱っこしてお散歩するのは問題ありません。衛生管理がされている動物病院でのパピープログラムやしつけ・飼い方教室などに参加するのもおすすめです。
ワクチンプログラムが完了したら、まずは抱っこやカートで外の景色に慣れさせた後、リードをつけてのお散歩に移ると、ゆっくりとお散歩に慣れていけます。
ポメラニアンの散歩量の目安
ポメラニアンが散歩に慣れた後は、どのくらいの時間や頻度で散歩に連れ出すといいのでしょうか。理想的な散歩量と、悪天候時や寒さの厳しい時期の散歩量を紹介します。
ポメラニアンの散歩は1日2回
ポメラニアンの散歩は、15〜30分程度を1日に2回行うのが理想的です。1日の散歩を2回に分けて行うことで、散歩のタイミングで排泄する習慣が身につきますし、外の景色を見る機会が増えるため脳の活性化にも繋がります。適切な散歩時間や頻度は個体差があるので、愛犬の表情を見ながら、無理のない範囲でお散歩に出掛けましょう。
ただし、持病がある場合や高齢の場合、散歩をすることで身体に負担が掛かってしまいます。ポメラニアンは関節の病気になりやすく、脱臼も起こしやすいので、関節や骨への負担にならないよう注意してください。
雨や雪の日の散歩
雨や雪が降る中での散歩は、カゼを引いたり、滑ってケガをしたりするリスクが高まります。防寒対策をしっかり行った上で外出し、散歩の時間は排泄など必要最低限の目的を果たせる範囲に留めましょう。帰宅後は身体をしっかりと拭くと、体が冷えるのを防げます。
冬の散歩
ドイツ原産でダブルコートを持つポメラニアンは、比較的冬の寒さには強い傾向にあります。とはいえ、長い時間室内で過ごしているため、個体によっては寒さへの耐性がない可能性も考えられるでしょう。寒がる様子を見せている場合は、いつもより散歩の時間を短くして問題ありません。
寒暖差が激しい屋外にいきなり出るのではなく、玄関など家の中でも涼しい場所でしばらく過ごしてから散歩に行くのもおすすめです。散歩で体を動かすことで筋肉量が増え、寒さへの耐性がつくため、雪の日以外はなるべく散歩に行くように心掛けましょう。
ポメラニアンに散歩が大好きになってもらうには
散歩はポメラニアンの健康を維持するために大切ですので、ポメラニアン自身にも散歩を楽しんでほしいものです。ここでは、ポメラニアンに散歩を好きになってもらうための5つのポイントを紹介します。
安全なお散歩コースを選ぶ
ポメラニアンは被毛がモコモコなので体が大きく見えますが、骨が非常に細く、華奢な体つきの犬種です。脚も細いため、溝がある場所を通ると、上手く着地できずケガをしてしまう可能性があります。また、段差や傾斜がきつい場所を上り下りすると関節に負担が掛かってしまうので、通る際は飼い主が抱きかかえてあげてください。交通量が多い場所も事故のリスクが高まるので、できれば避けましょう。ポメラニアンは好奇心が旺盛な性格なので、こうした安全な散歩ルートを複数見つけて、日によって変えるのがおすすめです。
暑さを避けられる時間帯に散歩する
真夏の太陽に照らされたアスファルトは非常に高温で、約65度まで上がると言われています。肉球で直接触れると火傷してしまうため、大変危険です。また、ポメラニアンに限らず小型犬は足が短く、体と地面の距離が近いため、地面の熱の影響を受けやすい傾向にあります。飼い主が体感しているよりもさらに厳しい暑さを感じている可能性が高いでしょう。日没後であっても地面が冷え切っていない可能性もあるため、飼い主が手の甲で地表面を触って暑いと感じなくなってから散歩に出掛けるようにしましょう。
歩くスピードを合わせる
散歩中に歩くスピードは、ポメラニアンのテンポに合わせるようにしましょう。アイコンタクトを交わしてコミュニケーションを取りつつ、ポメラニアンが他の犬や人に興味を持った時は一緒に歩みを止めましょう。リードを無理やり引っ張ると、首を怪我するリスクがありますし、散歩を楽しめず苦手になってしまう可能性があります。 好奇心旺盛なポメラニアンは、屋外にあるたくさんのものから刺激を受けることでストレスを発散できるので、興味をもったものにはなるべく触れ合わせてください。
スタンダードタイプのリードを選ぶ
ポメラニアンの散歩には、伸縮性のないスタンダードタイプのリードがおすすめです。リードには他にも伸縮リード(フレキシブルリード) 、ロングリード(トレーニングリード)などの種類がありますが、どちらもポメラニアンのコントロールが難しくなるため公道での使用は避けましょう。
リードの太さは1cm程度が目安です。太いリードは耐久性が高い反面、重くて首に負担が掛かります。また、飼い主さんにとっても持ちづらく、ポメラニアンが走り出した瞬間に手放してしまうリスクもあるでしょう。ポメラニアンの健康と安全を守るためにも、適切なリードを選んでください。
飼い主自身が散歩を楽しむ
ポメラニアンに限らず、犬は飼い主の気持ちを敏感に察知する生き物です。飼い主が散歩を面倒に感じていると、ポメラニアンも散歩を退屈だと思ってしまいます。そのため、飼い主自身が散歩を楽しんで、散歩は楽しいものだと伝えることが大切です。散歩ルートを変えて景色を楽しんでみたり、散歩途中で公園やドッグランなどで遊ぶ時間を作ったりすることで、ポメラニアンにとってだけでなく飼い主自身への刺激にもなるでしょう。
散歩中に起きるトラブルの対処法
散歩をしていると、トラブルはつきものです。ここでは、散歩中によくあるトラブルの原因や対処方法を紹介します。
首輪やリードを嫌がる
散歩デビューに向けてはじめて首輪、リードをつけたときや、新しいものをつけるときは、嫌がって首をかいたり床や壁に擦りつけたりすることがあります。その場合は、まずは家の中で装着して慣れさせましょう。
散歩中に吠える
散歩中に吠えるのは、さまざまな原因が考えられます。散歩のたびに激しく吠える場合は、社会化不足により他の犬や人間、車などを警戒していることや、過去に怖い経験をしたことが原因だと考えられます。その場合は、まず交通量が少ないルートを選んで慣らしましょう。飼い主自身の力で問題解決するのが難しい場合はトレーニング教室に通ったり、獣医師に相談したりするのもおすすめです。
散歩の途中で動かなくなった
散歩中に突然立ち止まった場合、原因に合った方法で対処することが重要です。大きな音がしたり、他の犬をじっと見つめたりしているときなどは、恐怖や不安が原因の可能性が考えられます。その場合は、おもちゃやおやつなど犬が好きなものを差し出して誘導してください。疲れが原因の場合は休ませて、それでも動かない場合はケガや病気の可能性もあるため獣医師に相談してみましょう。
道端に落ちているものを食べてしまった
ポメラニアンをはじめとする犬は、道端に落ちている食べ物や嘔吐物、タバコなどの毒物を口にしてしまう可能性があります。食べた物の種類や状態によっては下痢や嘔吐などの症状に繋がることもあるため、拾い食いに気づいたら動物病院に相談しましょう。また、道端に生えている草を食べて、生理現象として嘔吐することもあります。草自体には基本的には害はありませんが、殺虫剤などが付着している可能性も考えられるので、積極的に食べさせるのは避けましょう。
まとめ
ポメラニアンは毎日15〜30分ほどの散歩を2回行うことで、適切な運動量を確保できます。ただし暑さに弱いため、真夏の散歩は地面の熱が冷めている夜間や早朝に行うようにしましょう。また、ポメラニアンは好奇心旺盛な性格だからこそ、吠えたり拾い食いをしたりといった悩みを抱えることもあります。その場合は獣医師をはじめとする専門家に相談すると、愛犬も飼い主も散歩を楽しめるような助言をもらえるはずです。