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札幌市、平岡動物病院の院長。主に呼吸器、整形、眼科、歯科の外科とエキゾチックアニマル診療を中心に力を入れている。趣味は娘と遊ぶこと。
コミカルで愛くるしい見た目と、人懐っこい性格が魅力のパグ。そんなパグのなかでも、「黒パグ」は世界中の犬好きから多くの人気を集めています。今回は、黒パグの特徴から魅力、快適に暮らすためのポイント、気をつけてあげたい病気などを紹介します。
「黒パグと一緒に暮らしたい!」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 黒パグってどんな犬?
- 黒パグの家族が気をつけてあげたい病気
- 黒パグが快適に暮らせるようにするためのポイント
- 黒パグの子犬はどこで探せる?
- まとめ
黒パグってどんな犬?
黒パグとは、黒い被毛を持つパグのことです。パグといえば薄いベージュにわずかに黒が混ざった「フォーン」というカラーが一般的ですが、実はフォーンの次に多いカラーが「ブラック」です。
ブラックのパグは耳やマズルを含め、体全体が黒い被毛に覆われていて、フォーンと比べるとやや珍しくなっています。パグ愛好家から「黒パグ」と呼ばれていて、高い人気を誇ります。
黒パグの外見の特徴
パグといえば、ぺちゃんこの鼻としわしわの顔、やや左右に離れた大きな瞳が特徴的です。顔のしわが多い分、表現が豊かで、笑っているように見えたり、ひょうきんに見えたり、さまざまな表情を見せてくれます。そのユニークで愛嬌のある顔立ちは、世界中で多くの人々を魅了してやみません。
◆ マズル(鼻)
ぺちゃんこの鼻はマズル(口から鼻まで)が短いことに起因しており、フレンチ・ブルドックやボストン・テリアなどと同じ「短頭種」に分類されます。「鼻ぺちゃ犬」と呼ばれることもあり、コアなファンが多くいます。
◆ 耳
耳の形は2種類あります。1つ目は耳の先端が前に倒れている「ボタン耳」と、2つ目は耳が後ろ側に倒れている「ローズ耳」です。
◆ サイズ
体高は25cm前後、体重は6.3~8.1kgの範囲におさまるのが一般的です。小型犬に分類されますが、チワワやポメラニアンなどのそのほかの小型犬と比べて、がっしりとたくましく、四角い体型をしています。
一方、頭部は小さくて丸く、凹凸の少ない形です。しっぽはくるりと二重に丸まった独特の形をしており、後ろから見ると背中にちょこんとのっかっているように見えます。被毛は短く、なめらかな毛質が特徴的です。
黒パグの性格
パグは陽気で人懐っこい性格で、遊ぶことが大好きな犬です。その表情豊かで愛嬌たっぷりな顔立ちもあいまって、一緒に遊んでいるうちに自然と笑顔になれます。顔のしわが多いためぶすっとした表情に見えることも多いですが、実は愛情深く、飼い主に対して献身的な性格です。
その一方、頑固でわがままな一面もあるため、子犬のころから根気よくトレーニングを行うことが大切です。
基本的には落ち着いていてのんびりとした性格なので、初心者にも飼いやすい犬と言えるでしょう。吠えたり噛んだりすることも少なく、ムダ吠えすることも少ないため、集合住宅に住む方にもおすすめです。
また、同じ「鼻ぺちゃ犬」であるフレンチ・ブルドックやボストン・テリアと比べて社交的な性格です。ほかの犬とも仲良くできることが多く、多頭飼いにも向いています。
黒パグの家族が気をつけてあげたい病気
パグは穏やかな性格で、初心者にも比較的おすすめの犬種ですが、注意したい病気が多い犬種でもあります。病気のリスクを低減するためのケアはもちろんのこと、万が一に備えて十分な治療費を確保しておくことが大切です。
愛犬の様子を注意深く観察し、気になるところがあれば早めに動物病院を受診しましょう。
皮膚病
パグはしわが多いため汚れがたまりやすく、皮膚のトラブルを起こしやすい犬種です。こまめなお手入れで、皮膚を清潔に保つよう心がけましょう。
肥満
パグは食欲旺盛で、肥満になりやすいとされています。もともとがっしりとした体型をしていることから、見た目では肥満に気づきにくいため、定期的な健康診断で体重をチェックしましょう。
鼻腔狭窄
鼻の穴が狭くなって、呼吸がしづらくなる疾患のことです。パグのような短頭種に多く見られます。肥満が症状を進行させる場合もあるため、体重管理に気をつけるようにしましょう。
壊死性髄膜脳炎/パグ脳炎
大脳やその周辺の炎症により、けいれん発作やふらつき、視力の低下や旋回運動などの神経症状が表れる病気です。ほかの犬種にも起こり得る病気ですが、パグに多いことから「パグ脳炎」とも呼ばれています。最悪の場合は命にかかることもあるため、少しでもおかしなところがあればすぐに動物病院を受診しましょう。
軟口蓋過長症
パグやフレンチ・ブルドックのような短頭種に多く見られる病気です。あごの(咽頭の)鼻と口を隔てる軟口蓋がのどの入り口を塞ぐことで呼吸が苦しくなり、「寝ているときにいびきをかく」「喘息のような呼吸音がでる」といった症状が表れます。
膝蓋骨脱臼
「膝のお皿」と呼ばれる骨が正常な位置から外れてしまうことです。小型犬に多く、足を引きずったり、ピョコピョコ上げながら歩いたりなどの症状が見られます。
気管虚脱
気管がつぶれてしまい、呼吸困難に陥る疾患です。小型犬に多く、軽い咳からはじまり、進行するとゼーゼーと苦しそうな呼吸音や乾嘔(嘔吐をするような動作)などの症状が表れます。
熱中症
犬は人間のように汗をかけないので、代わりにハアハアと呼吸を荒くして唾液を気化させることで体温を下げようとします。しかし、パグのような短頭種は激しく呼吸をすると軟口蓋過長を発症しやすく、呼吸がうまくできなくなってしまいます。また、その特徴的な顔のしわに熱がこもってしまい、体温が下がりにくい傾向もあります。
心臓疾患
パグのような短頭種は呼吸に負担がかかりやすく、呼吸器のトラブルが原因で心臓疾患にかかる場合があります。呼吸があまり得意ではない犬種なので、呼吸におかしな点がないか日頃から注意深く観察しましょう。
股関節形成不全
発育過程で股関節に形態的な異常が生じ、歩行異常や疼痛などの症状が表れる疾患です。一般的には大型犬に多いとされていますが、パグにも多く見られます。
黒パグが快適に暮らせるようにするためのポイント
黒パグと一緒に暮らす際は、次の5つのポイントに注意しましょう。
1. フードの量や選び方に注意
2. しわの周りをしっかりケアする
3. 興奮をコントロールするトレーニングを行う
4. 遊ぶ時間をたっぷり確保する
5. 熱中症に気をつける
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
フードの量や選び方に注意
パグは食欲旺盛で太りやすい体質なので、フードは適正量を守りましょう。また、皮膚や関節の病気にかかりやすいため、それらのリスクを低減できるようなフードを選ぶのもおすすめです。
また、パグは食器の縁に目が当たりやすく、食器選びを間違うと食事のたびにストレスがかかってしまうこともあります。基本的に、短頭種には浅めの食器を選ぶのがおすすめです。迷う場合は、「短頭種向け」と表記されている食器を選ぶとよいでしょう。
しわの周りをしっかりケアする
パグはしわが多い犬種なので、しわの間に汚れがたまらないよう、こまめにケアしてあげましょう。汚れをそのままにしておくと、皮膚炎のリスクが高まってしまいます。涙や皮脂、砂埃などで汚れていたら、湿らせたガーゼやお手入れシードなどで優しく拭き取ってあげましょう。
また、全身をキレイに保つためには、こまめにブラッシングしてあげることも大切です。パグは抜け毛が多いので、週2回を目安にブラッシングをして、抜け毛を取り除いてあげるとよいでしょう。その際、ラバーブラシ(シリコンブラシ)など肌に優しい素材のブラシを使用するのがおすすめです。
皮膚をこまめにお手入れすることで、「パグ臭」と呼ばれる独特のニオイを予防することもできます。
興奮をコントロールするトレーニングを行う
パグは基本的に穏やかで落ち着いた性格ですが、一方で興奮しやすい犬種でもあります。突然興奮して走り回る「パグ走り」はパグ特有の行動として知られており、とくにストレスがある環境下で起こりやすいとされています。
短頭種であるパグは呼吸器に負担がかかりやすく、興奮しすぎるとトラブルが起きるリスクが高まってしまいます。飼い主の指示でおとなしく待つ練習や、「おすわり」や「ふせ」の体勢で落ち着く練習など、子犬のころから興奮を落ち着かせるためのトレーニングを行っておきましょう。
散歩中にリードをぐいぐい引っ張る行為も呼吸器への負担となるため、飼い主のペースに合わせて歩く練習をしておくことも大切です。
また、ほかの人や犬と触れ合ったときに過度に興奮しないよう、子犬のころから飼い主以外とのコミュニケーションの機会を設け、社会性を育んでおきましょう。
遊ぶ時間をたっぷり確保する
パグは人懐っこく甘えん坊なので、人と遊ぶ時間をたっぷり確保できるとよいでしょう。さみしがりやでお留守番は不得意なので、常に誰か1人は家族が在宅しているご家庭に向いています。留守番させる場合は、少しずつ1人でいる時間を伸ばすようにしましょう。
小型犬なので必要な運動量はそれほど多くないものの、食欲旺盛で太りやすいので散歩は朝夕2回ずつがおすすめです。
熱中症に気をつける
短頭種であるパグは、暑い季節の体温調節が苦手です。とくに、黒パグの黒い被毛は日光の熱を吸収しやすいため、夏場の熱中症には十分注意しましょう。日中の散歩は避け、早朝や夜など比較的涼しい時間におでかけするのがおすすめです。
また、熱中症は室内でも起こり得るので、クーラーを活用して過ごしやすい温度を保つようにしましょう。
黒パグの子犬はどこで探せる?
黒パグの子犬を探す方法としては、ペットショップやブリーダーから迎え入れるケースが一般的でしょう。また、確実に黒パグと出会えるとは限りませんが、保護犬の里親になるという方法もあります。
ペットショップで購入する場合、価格は32万円~が相場です。ペットショップではやや出会いにくい傾向があるため、根気よく探すか、パグ専門のブリーダーを頼るのもよいでしょう。
まとめ
「黒パグ」とは、黒い被毛を持つパグのことです。黒くつややかな被毛と、コミカルで愛くるしい容姿が魅力的な黒パグは、人懐っこく遊ぶことが大好きです。また、さみしがりやの犬なので、ペットとの時間を十分確保できる人に向いているでしょう。
パグは皮膚病や熱中症など気をつけたい病気が多い犬種でもあるため、普段から愛犬の様子をしっかりと観察するとともに、十分なケアを行ってあげてください。