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韓国ソウル出身の作家。京都で学生時代を送った。主にエッセイ漫画、絵画を描いている。代表作は2022年韓国で出版した『グルモン〜文書を書くわんこ』
愛犬・ムンゲくんを描く、韓国のアーティストyeye(イェイェ)さん。ムンゲくんとの日々や作品に表現する想いとは?
目次
- 愛犬のエッセイ本も出版。韓国のアーティスト、yeye(イェイェ)さん
- 愛犬を描き、絵の表現が豊かに。「愛が重すぎる」と感想も
- 愛犬の“今”を表現したいから。何回だって見ながら描く
- 元気がいっぱいのマルチーズの子犬を“養子”に迎える
- 心臓の病気と闘う愛犬のために、点滴を打ってあげる毎日
- 「私たちは恵まれている」犬と共存する素晴らしさを実感
- 飼い主ではなく保護者。愛犬・ムンゲとyeyeさんの関係
- ムンゲとの今を大事に生きる。15歳の愛犬とのこれから
愛犬のエッセイ本も出版。韓国のアーティスト、yeye(イェイェ)さん
白いふわふわの毛並みに垂れた耳の犬。この子は、韓国ソウルで作家・エッセイ漫画家として活動するyeye(イェイェ)さんの愛犬です。
これまでyeyeさんは、愛犬をテーマに、数多くの作品を描いてきました。くすっと笑える愉快なシチュエーションや、哀愁のある姿。かわいいだけではない様々な表現が、見る人の心を揺さぶります。
2022年4月には「ムンゲが文を書くとしたら」というムンゲくんの視点で書籍『グルモン』を出版。SNSでもイラストや絵画を投稿し、日本でも多くの人の目に触れるようになりました。
韓国人のyeyeさんは、日本に深い縁があります。実は京都精華大学に留学し、アニメーション学部を卒業後、大学院のマンガ研究科でマンガと絵本を学んでいたからです。
「仕事で心が折れそうになったとき、家族からのどんな励ましの言葉より、ムンゲの存在に救われました」
そう話すyeyeさんに、15歳を迎えたムンゲくんとの日々や創作にかけるこだわりをじっくり聞きました。
愛犬を描き、絵の表現が豊かに。「愛が重すぎる」と感想も
yeyeさんは大学で動物を短時間で簡潔に描くクロッキー(スケッチ)に力を入れていたときがありました。当時は、動きのある対象を表現するのが得意ではなく、練習をしていたそうです。
そのときふと浮かんだのが、愛犬のムンゲくん。
思い立って実家に帰省した際、ムンゲくんを描いてみました。すると、その絵を見て、先生も「動きがあっていいね」と褒めてくれたのだそう。
「愛情のある対象を描くと、きっと絵が豊かになるんですよね。大切な家族であるムンゲを描くってこんなに気持ちがいいのか、と思いました。この体験がきっかけで、ムンゲを描くようになったんです」
2022年11月には、ソウルで個展を開催。足を運んだ人の中には、自分の愛犬を思い出して涙を流す人もいました。
「『yeyeさんの作品は愛が重すぎて辛くなります』という感想もいただきました。私自身は、明るく楽しい個展にしたつもりでしたが、自分の深いところにある、ムンゲへの深い愛情が絵に滲みでていたようです。自分のありのままを表現しようと心がけているので、それはそれでよかったのかもしれません」
愛犬の“今”を表現したいから。何回だって見ながら描く
これまで何百枚も何千枚もムンゲくんを描いてきたyeyeさん。現在は、大学時代に絵本や漫画を学んだ経験から、絵と文章で表現する“エッセイ漫画”の作家としても活動中です。
「リアルな愛を描きたい」
そんな想いから、ムンゲくんを描くときは、出来るだけ手書きで描きます。さらに、ペンや鉛筆、水彩絵の具など、いろいろな画材を使い、多様なムンゲくんを表現しています。
ムンゲくんを描くときは、たくさん触れ合い、目を見つめ、一緒に寝転ぶのがyeyeさん流。「とにかく観察することが大切」という、恩師の先生からの教えにならっています。
「絵の基本は、恩師から教えてもらいました。それまでの私はカッコつけるような絵ばかり描いていて、デッサンや線画の技術を磨くことに注力していたんです。でも、その先生と出会って、直接触れ、よく観察する“リアル”を大切にした作品づくりを学びました」
一番大事なことは、描く対象物と向き合うこと。
たとえすごく下手な線でも、自分が愛する犬の形だと思えれば、それが正解だといいます。
yeyeさん自身、何回ムンゲくんを描いても、キャラクター化してしまわないよう、気をつけています。
「ムンゲとずっと一緒にくらし、頭の中にはいつもムンゲがいるので、もちろん見なくても描けますが、“今”のムンゲは日々変化しています。だからこそ私も絵にするときは、毎回目の前のムンゲと向き合っています」
今後は、ムンゲくんの作品を通じた、日本での展開も視野に入れています。日本での本の出版や第二の故郷・京都での個展開催など、国境を超えた展開もあるかもしれません。
「大学時代の先生にムンゲの本を送ったところ、『あなた、絵が上手いんだから、これからも頑張って進んでいきなさい』という言葉をかけてもらいました。お世話になった先生や先輩、友人の多くは日本にいるので、日本語の本を出して読んでもらいたい、ムンゲの絵を見てもらいたいという気持ちが強いです」