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神経病・てんかんの診療に力を入れる。重要な診断ツールで行動学的との鑑別にも役立つ脳波検査も実施。一般診療に従事しつつ、神経病に悩む動物の診療・手術を実施。
愛犬が「ブーブー」「ゴーゴー」と音を立てながら、激しく息を吸い込む様子を見て驚いたことはありませんか?これは「逆くしゃみ」と呼ばれる症状です。苦しそうな仕草と異常な音に、「心臓病ではないか」、「気管虚脱ではないか」、と不安になって病院へ駆け込む飼い主が少なくありません。
そこで今回は逆くしゃみの原因や対処法などについて解説していきます。逆くしゃみは多くの場合は心配いりませんが、時に病気のサインが潜んでいることがあります。病院に連れて行った方がよいケースや、間違えやすい似た症状についても紹介していきます。
逆くしゃみは、短頭種で1歳未満の若い頃から起こるものは、多くの場合心配はないですが、1歳を超えてからのものは病気が背景にある可能性が高まるので、検査を推奨します。
目次
- 逆くしゃみって何?症状や起こしやすい犬種
- 逆くしゃみの対処法と予防法
- 逆くしゃみが病気のサインかも?病院へ行った方が良いケース
- まとめ
逆くしゃみって何?症状や起こしやすい犬種
逆くしゃみの症状や、逆くしゃみをしやすい犬種を紹介していきます。
逆くしゃみって何?どんな症状?
逆くしゃみは、鼻から空気を激しく、連続して、小刻みに吸い込むこと、空気を吸い込む際に「ブーブー」、「ズーズー」「フゴフゴ」といった音が出る、突発性の呼吸です。普通のくしゃみや咳は呼気時に症状が出て空気を勢いよく吐き出しますが、逆くしゃみは「逆」に吸気時に出る症状で空気を勢いよく吸い込むことで起こります。
一見すると、激しく空気を吸い込む様子がけいれんや咳などと似ていることで、てんかん発作や心臓病などと間違えて心配される飼い主が多いのですが、ほとんどの場合では数秒~1分程度で症状は治まって犬はケロッとしています。逆くしゃみ自体は、ものすごい音が出ることがありますが病気ではありません。
くしゃみに関してはこちらの記事がおすすめ!
>犬のくしゃみが止まらない原因は?考えられる病気や病院に連れていくべき症状、逆くしゃみについても解説【獣医師監修】
逆くしゃみの原因と多い犬種は?
逆くしゃみの原因は普通のくしゃみと同じだと考えられていますが、明確な原因は特定されていません。鼻咽頭の疾患でよく見られる症状ですが、正確な機序は分かっておりません。
しかし、水を飲んだ後や興奮したときに多く見られたり、鼻の奥の筋肉のたるみや鼻腔の狭さなどが関係していること、ホコリや光による刺激や、鼻に違和感や刺激を覚えた際に誘発されたり、アレルギーやストレスが原因のひとつだと考えられています。
また逆くしゃみは若齢からやり始めることが多いですが、中高齢になって病気により突然出るケースもたまにあります。
逆くしゃみをする犬種で多いのは、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、ポメラニアンなどの小型犬、パグやフレンチ・ブルドッグ、シー・ズーなどの短頭種です。
逆くしゃみの対処法と予防法
愛犬が逆くしゃみをしていたらどうしたらいいのか、対処法と予防方法を紹介していきます。
愛犬が逆くしゃみをしていたらどうしたらいい?対処法
愛犬が「ブーブー、グーグー」と鼻を鳴らしている様子は苦しそうに見えることがありますが、実際は呼吸が苦しくないことが多いです。そのため愛犬が逆くしゃみをしていても、ひとまず自然に収まるまで静かに見守りましょう。
長引く逆くしゃみを早く鎮めてあげたい場合は、次の方法を試してみてください。
- 好きな食べ物を見せたり喉をさすったりして、飲み込み動作を誘発する
- 大きな音で気をそらす
逆くしゃみの予防方法は?
逆くしゃみの原因ははっきりとしたものは特定されていないため、これといった予防法はありません。
しかし、逆くしゃみを頻繁に繰り返すようなら、何がきっかけで愛犬が逆くしゃみをするのかよく観察して対策を講じましょう。原因を探るためには、「いつ、どこで、どのようなときに、どれくらいの時間どのような症状が続いたか」をメモに取っておくと、原因究明や獣医師へ相談する際に役に立ちます。
そして、愛犬の逆くしゃみのきっかけになると考えられている事柄から遠ざけるなど、次にあげるような対策を取ってみてください。
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- ニオイや刺激、煙など、逆くしゃみのきっかけになりそうなものを遠ざける
- 犬は嗅覚が優れているため、タバコ、香水、お香(煙)、ハーブや香辛料、殺虫剤などは近づけないようにする
- 居室では、空気清浄機の利用やこまめに換気をするなどして、愛犬の鼻への刺激を減らす配慮をする
- 加湿器を利用するなどして、室内の乾燥に気を付ける
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逆くしゃみが病気のサインかも?病院へ行った方が良いケース
逆くしゃみ、すぐに病院へ連れて行った方が良いケースは?
逆くしゃみ自体は、多くの場合深刻な状態につながる恐れはありませんが、病気のサインであることもあります。次のようなケースの場合は、動物病院へ行って診察を受けるようにしてください。
- 逆くしゃみのような症状が長時間続いたり頻繁に繰り返したりする場合
- 逆くしゃみ症状とともに、鼻水や鼻血の症状もある場合
- 逆くしゃみ症状とともに、食欲や元気がない場合
- 中高齢以降で急に逆くしゃみをするようになった場合
- 逆くしゃみとともに、皮膚や耳のかゆみや赤み症状がある場合
病院での診察では、愛犬が逆くしゃみをしている様子をスマートフォンなどで動画撮影したものを獣医師に見せると良いでしょう。逆くしゃみが症状として現れる病気には、鼻炎(細菌性、ウイルス性、アレルギー性)や鼻咽頭ポリープ、軟口蓋過長症、歯周病や鼻腔内腫瘍など進行すると深刻な病気もあります。
逆くしゃみと間違えやすい注意が必要な咳
逆くしゃみと間違えやすい症状に「咳」があります。「ガーガー」とアヒルが鳴くような音の咳や「ケッケッ」と乾いた咳は、病気の恐れがあるので獣医師の診察を受けましょう。
また、心臓の病気でも咳症状が出ることがあるので注意が必要です。愛犬がしているものが逆くしゃみなのか咳なのか分からない、というときは、スマートフォンなどで愛犬の様子を動画撮影して、獣医師へその動画を見せて診断を仰ぐと良いでしょう。
まとめ
逆くしゃみについて解説しました。逆くしゃみ自体は病気名ではなく症状名です。多くの場合は病的な背景ではありませんが、頻繁に繰り返している、なかなか収まらない場合は、他の症状がないか、病気のサインを見逃していないかよく観察するようにしましょう。
また判別が難しい咳症状と見間違えないよう注意してください。愛犬の異変にいち早く気が付いてあげるためには、日頃から愛犬の様子をよく見ていることが重要です。愛犬の健康に少しでも心配があったら、信頼できる獣医師へ相談するようにし、正しい知識を持って、愛犬の健やかな生活を守っていきましょう。