公開
転勤族の夫とともに、全国を転々としている。現在は東京の片隅で書店員として勤務。今年、『書店員は見た 本屋さんで起こる小さなドラマ』を上梓した。

大型犬が転勤族の家の前に捨てられていた……!
捨て犬を家族に迎え、少しずつ形を変えていく家族の日々。
森田めぐみさんと、愛犬・レイルくんとの10年を振り返っていきます。毎月第2・第4水曜日更新
目次
- 愛犬・レイルが旅立って
- レイルと仲良しだった愛猫たち
- 愛猫・アオの脱毛の原因…
- 人間も猫もみんな同じきもち
愛犬・レイルが旅立って
ここで一旦、最近のお話をしてもいいでしょうか。
レイルがいなくなり、我が家は、人間4人猫4匹暮らしとなりました。
家族全員、泣き暮らし……と言いたいところですが、ずっとメソメソしているのは、実は私だけ。
夫や子どもたちは、レイルが眠るように亡くなったその日こそ泣いていましたが、翌日から泣くことはありませんでした。
もちろん悲しい気持ちは私と同じように持っているのだけれど、ふとした瞬間に「うえーん」と泣き出すのは私以外にはいません。
泣いていると、みんなそっとしておいてくれますが、私ひとりがいつまでも立ち止まって悲しんでいる状況に、「私、いつまで悲しみ続けるんだろう……」と我ながら呆れてしまいます。
レイルと仲良しだった愛猫たち
お休みのある日、家で仕事をしながら、いつも足元に寝そべっていたレイルがいないことが悲しくなりまた泣いていると、猫のアオが寄り添ってくれます。
アオは、レイルが家族になった後、姉妹のハルと一緒に我が家にやって来ました。
レイルと同じ茶色だからなのか、3匹はすごく仲が良く、いつも一緒に遊んだり昼寝したりして過ごしていた仲間です。

「アオたんもレイルがいなくなって寂しいよねぇ」
寄り添うアオの脚のあたりを撫でていると、ん……?
アオ、ハゲてない?
よく見ると、左脚の内側の毛が無くなっています。
慌ててキャリーに押し込み、動物病院へ。
レイルのことでいっぱいいっぱいで気づかなかった!
ごめん、アオたん!!
愛猫・アオの脱毛の原因…
皆さん、近所の動物病院を覚えているでしょうか。
2階に入口があって、具合が悪いレイルを運び込むのに難航した、あの病院です。
レイルの腹水を抜いてもらった日以来、久しぶりの通院となりました。
診断結果は、アレルギーでも疥癬(かいせん)でもなく、“ストレス“。
「最近、何か変わったことはありました?」
先生の問いに「最近、レイルが亡くなって……」と伝えると、先生は「えっ……」と絶句。
先生、そんなに悲しんでいただいてありがとうございますーー!! そうですよね、レイルがいなくて寂しくてきっとアオたんもストレスで脱毛しちゃったんだと思うんです。
ん? 先生?
先生は、「……いやぁ、あの後、きっとすぐ亡くなったものだと思っていたのでびっくりしました。あの状態から、よく今まで……。頑張りましたね!!」
え? そっち?
先生は、レイルの思わぬ長生きっぷりに絶句していたのでした(笑)。
「レイルがいなかったら寂しいよなぁ」とアオたんを優しく撫でて、薬を処方してくれた先生にお礼を言い、病院を出た私。
帰り道、「出せーー!!」と暴れるアオが入ったキャリーを抱え、歩きながら、ちょっとホッとしている自分に気づきました。
そっか。家族みんな、声に出さないけど悲しいのか。
キャリーの中でギャーギャー喚き散らしているこの猫も、私と同じくらいレイルのことが大好きなのか。
なーんだ。泣いてなくても悲しいんだ。
じゃあ、私は気が済むまで泣いててもいいや。
「アオたん、ハゲを作るまで気づかなくてごめんね」
人間も猫もみんな同じきもち
家に帰ると、アオの姉妹のハルが心配そうに玄関で待っていました。
ハルは、アオよりもおっとりした性格で環境の変化にも強いタイプ。
「たぶん彼女は大丈夫かな」と思いながら、玄関で撫でていましたが、なんと、ハルのお腹にもハゲを見つけてしまいました……。
マジかーー!!
今さっきアオを出したキャリーにハルを押し込み、動物病院に引き返します。(ちなみに診断結果はアオと同じで、“ストレスが原因“でした)
みんな寂しいけど、寄り添って頑張るから大丈夫。
近況報告でした。アオハルの脱毛ももうすぐ治りそうです。
レイルを失った悲しみは簡単には消えませんが、泣いたり笑ったりしながら、家族みんなで少しずつ前に進んでいます。次回はまたレイルのエピソードをお話ししますね。
