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学生時代から、引きこもり・非行少年支援や保護犬活動に携わり、2012年にキドックスをNPO法人化し、代表に就任。2017年に人間力大賞総務大臣奨励賞受賞。
認定NPO法人キドックスの犬も人も共に成長する「動物介在活動(ドッグプログラム)」とは?
目次
- 犬と人が手を取り合い社会復帰を目指す「認定NPO法人 キドックス」代表 上山 琴美さん
- 支援“される”側から“する”側へ。キドックスの「動物介在活動(ドッグプログラム)」
- 保護犬を助けることで、私たち人間が助けられている
- 人が孤立しなければ、一緒にいる動物たちも孤立しないはず
- 犬を与えるだけでは問題は解決しない。少年院の視察で教わったこと
- 「9割が大変なこと」上山さんが青少年・保護犬支援活動を続けられる理由
犬と人が手を取り合い社会復帰を目指す「認定NPO法人 キドックス」代表 上山 琴美さん
悲しいときや悩んでいたとき、たとえ言葉を交わさずともワンちゃんの存在に救われた。そんな思い出を持つ方も少なくないのではないでしょうか。
不登校となった若者と保護犬をつなぎ、手を取り合うことで自分らしく生きる。そんなサポートをおこなう「認定NPO法人 キドックス」の代表を務める上山琴美さんも、幼少期にワンちゃんの存在で救われた一人でした。
「保護犬を助けているようで、結局助けられているのは私たち人間側なんじゃないかと、いつも思うんです」
キドックスのこれまでの歩みや犬と人が手を取り合うからこそできること、そして多くの若者と保護犬の成長を見届けてきた上山さんの仕事のやりがいについて、お話を伺いました。
支援“される”側から“する”側へ。キドックスの「動物介在活動(ドッグプログラム)」
2012年、認定NPO法人キドックスは茨城県土浦市の古民家から活動をスタート。取り組みの中核となるのが、『動物介在活動(ドッグプログラム)』です。ドッグプログラムとは、犬という動物を介して、人に対しておこなう教育や支援活動の全般を指します。
キドックスでおこなわれているドッグプログラムは、不登校や働けなくなってしまった若者と一度飼い主に捨てられた保護犬をマッチングし、ペアとなった犬のお世話やトレーニングを若者が担うことで社会で生きていく力を回復していくものです。
一方、保護犬は若者との交流を通じ、ゆくゆくは新しい家族に迎えられることを目標としています。
キドックスのドッグプログラムの元となったのが、アメリカのオレゴン州の少年院でおこなわれている『プロジェクト・プーチ』と呼ばれる更生プログラム。犯罪を犯した少年が保護犬の心身のケアとトレーニングをおこない、里親を探す活動をおこなっています。
通常の再犯率は半数以上のところ、『プロジェクト・プーチ』を受けた200人以上の卒業生たちの再犯率はなんと0%。再犯を防ぐだけでなく、「責任」「忍耐」「愛情」をテーマとした教育プログラムとして、効果が認められています。
人と犬が共に手を取り合うことが、人の学びや社会復帰につながる理由。それは「唯一、“支援する側”として社会と関わることができるから」だと上山さんはいいます。
不登校になった子に対する支援はさまざまありますが、基本的には“支援される側”になりがちです。しかし、言葉を持たない保護犬たちは自分と同じくらいか、それ以上に社会的な立場が弱い存在。自分の関わりによって、保護犬たちが家族という新しい居場所を見つけられたときの“貢献感”は、大きな自信になることでしょう。