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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
おもちゃを家具の隙間に入れては、とってくれと訴えてくるあの犬を『トッテホシーヌ』と命名。コレクションに加えました。隙間に入れるのはわざと?たまたま?『トッテホシーヌ』の生態や心理、対応方法について、獣医師の茂木千恵先生に解説してもらいました!
目次
- トッテホシーヌの生態《変な犬図鑑017》
- トッテホシーヌについて獣医師の先生に直撃してみた!
トッテホシーヌの生態《変な犬図鑑017》
トッテホシーヌは、ボールが好き。
ボールをくわえては転がして遊び、
そして…隙間に入れるのだ…!!!
「とれないな〜、とれないな〜」
絶対届かないって分かっているのに
一生懸命、ガリガリしている。
「そろそろとってほしいな〜」
こっちをふりむき、無言の圧力。
取るけどさ…ってこれ何回目?
トッテホシーヌについて獣医師の先生に直撃してみた!
どうして、あんなにボールが入ってしまいやすそうな隙間の近くで遊ぶのでしょうか?
隙間の近くなど、狭い空間が犬にとって安心できる場所だからです。
野生時代の名残で広い空間より狭い空間のほうが落ち着くと言われています。
リビングの中で狭い空間といえば、家具と壁との隙間。家具は、掃除がしやすいように床から数センチ立ち上がる構造になっています。そのため必然的に、“犬の遊びたい空間”の周りには隙間が存在するのでしょう。
本気でボールと遊んだ結果、たまたま隙間に行ってしまうだけですか?
それとも実は飼い主さんに取ってもらうための作戦なのでしょうか?
どちらも考えられます。散歩やエクササイズをする前にトッテホシーヌに変身するなら、純粋にボールで遊んでいるだけでしょう。
散歩やエクササイズをする前だと、犬が退屈し、そのストレス発散のために遊んでいると考えられます。
一方で飼い主さんがトッテホシーヌに反応しがちの傾向があるならば、ボールを飼い主さんに取ってもらうことが目的に変わっているかもしれません。飼い主さんの注目を得ようとしているのでしょう。犬は飼い主さんの対応を見て、その行動が報われることを学びます。トッテホシーヌに変身した後に特別な注意、おもちゃ、おやつなどを与える傾向がある場合は、より頻繁に要求するようになるのです。
「そろそろとってほしいな〜」という状況の時、笑顔の時とイラだっている時があります。この違いは何でしょうか?
犬のお願いする時の行動は、飼い主さんとの信頼関係によって異なるといわれています。信頼関係が厚いと笑顔、薄いとイラだってしまいやすいです。
まず、犬は困難に直面した時に信頼している人にお願いする仕草を見せることが分かっています。
取って欲しいと思って飼い主さんを見つめた時に、優しい雰囲気で対応してもらった経験がある子は、また次も取ってくれるという確信と信頼が芽生えています。そのため期待に満ちた「笑顔」で飼い主さんを振り返るでしょう。反対に飼い主さんとの信頼関係が厚くない子は、困難を飼い主さんに解決してもらおうせず、自らの力で解決しようとします。その結果、困難な状況が長引くと葛藤と欲求不満が高まって不機嫌になってしまうのです。
もちろん困難な状況が長続きしても葛藤をおぼえず諦める犬もいます。諦めるかどうかは生まれつきの性格が影響しています。
せっかく取ってあげてもそのあとには遊ばなくなる子もいるそうです。なぜなのでしょうか。
飼い主さんにボールをとってもらうことが目的の、別の遊びに変わっている可能性があります。
ボールを取り出してもらったことに満足感を得て、遊びが終了しているのかもしれません。
もしくは取ってあげるときに不機嫌そうに出していませんか?飼い主が怒っているかもと感じ取るとその場から離れて様子を見ようとすることがあります。