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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
犬も人間や他の動物と同じように、突然死する可能性があります。愛犬が突然死してしまうと、長いあいだペットロスに苦しむケースも少なくありません。
今回は、犬が突然死する割合や、突然死につながる病気などを紹介します。突然死のあとにするべきことや、ペットロスを軽減する方法も紹介しますので、万が一の場合への備えとして役立てください。
目次
- 犬が突然死する割合
- 犬の突然死につながる病気
- 犬が突然死する前兆かもしれない変化
- 死期を悟った犬が取る行動
- 愛犬が突然死したときにするべきこと
- 愛犬の突然死によるペットロスを克服・軽減する方法
- まとめ
犬が突然死する割合
犬が突然死する割合は、どのくらいなのでしょうか。参考になるのが、東京大学で研究された「動物病院カルテデータをもとにした日本の犬と猫の寿命と死亡原因分析」です。
データによると、突然死は犬の死亡原因のうち第7位(6.8%)に上ります。性別で見ると突然死の割合が高いのは雄犬で、雌犬の2倍近い数値です。犬の死因のうち6.8パーセントとなると、決して少ない数字だとはいえません。
突然死といっても、病気が原因なら治療できる可能性があります。中毒やショックが原因なら、対策で防げるかもしれません。愛犬の様子を観察して、異変があったら動物病院で相談しましょう。
犬の突然死につながる病気
犬の突然死につながる代表的な病気を紹介します。以下は突然死につながる可能性がある病気ですので、注意が必要です。
- 心臓病
- 脳疾患
- 脊椎疾患
- 急性中毒
- ショック
それぞれの病気の概要を見ていきましょう。
心臓病
犬の突然死につながりやすい病気のひとつが心臓病です。心臓病だと季節の変わり目や環境の変化など些細な出来事に反応して、命を落とす場合があります。
犬の心臓病で特に多いのは「慢性弁膜症」と「心筋症」です。心臓病では、次のような症状が見られる場合があります。
- 疲れやすい
- 食欲が減退している
- 咳や吐き戻しがある
- 失神する
心臓病かどうかを調べるには、レントゲン検査・心電図検査などが必要です。治療を受けて突然死を防ぐためにも、上記のような症状が出たら早めに動物病院を受診しましょう。
脳疾患
脳疾患も、犬の突然死を引き起こす可能性がある病気です。病気の種類にもよりますが、脳疾患では次のような症状が見られます。
- 元気がない
- 周囲の物にぶつかる
- ふらつく
- けいれん発作を繰り返す
- ずっと寝ている
- 眼球が一定方向に小刻みに揺れる眼振が起こる
ただし、脳疾患は早期発見が難しい傾向にあります。「気づかないうちに症状が進んでしまった」というケースが少なくありません。何らかの神経症状が見られたら、なるべく早めに動物病院を受診してください。
脊椎疾患
脊椎疾患も、犬の命に関わる病気のひとつです。人間と同じように、犬の脊椎からも多くの大切な神経が出ています。そのため小さな異常であっても、深刻な症状につながってしまう可能性があります。
脊椎疾患も、見た目からはわかりづらい傾向があります。普段と違う様子が見られたら、早めに動物病院を受診してください。
急性中毒
誤飲や誤食によって引き起こされる急性中毒も、犬の突然死につながる原因です。犬が有害なものを誤飲・誤食しないよう、人間が注意しなくてはなりません。
たまねぎ・ぶどう・チョコレートなどをはじめ、人間は大丈夫でも犬には有害な食物が多数あります。少量なら大丈夫だと与えないよう、くれぐれも注意してください。
薬品や植物などでも中毒が起こる可能性があるため注意が必要です。子犬・シニア犬・体調の悪い犬は症状が重篤化しやすくなるため、誤飲・誤食がないよう、有害なものは遠ざけてください。
中毒症状は、誤飲・誤食から時間を置いて出る可能性もあります。誤飲・誤食があったら、症状が出ていない段階で動物病院に相談しておくと安心です。受診にあたっては、いつ何をどのくらい食べたのか、わかる範囲で伝えると参考になります。
ショック
犬は、ショックによって突然死する可能性もあります。ショック状態につながる原因は、熱中症・感電・交通事故などです。犬の体調によっては、小さなショックでも突然死につながりかねません。
また、子犬は食欲不振や嘔吐による低血糖症にも気をつけてください。血糖値が下がるとショック状態に陥る可能性があるためです。子犬に食欲不振や嘔吐なの症状が見られたら注意しましょう。
犬が突然死する前兆かもしれない変化
犬は突然死の前に、前兆となる変化が見られる場合があります。すべてが突然死につながるわけではありませんが、変化が見られたら注意しましょう。
突然死の前兆かもしれない変化は次の5つが代表的です。
- 食欲が落ちる
- 睡眠時間が増える
- 下痢・嘔吐をする
- 呼吸が不規則になる
- 意識レベルが下がる
ただし、前兆となる症状は亡くなる原因によっても違い、個体差もあります。複数の症状が出る場合もあるでしょう。愛犬の様子がおかしいと感じたら、速やかに動物病院を受診してください。
死期を悟った犬が取る行動
死期を悟った犬は、普段と行動が変わる場合があります。どのような行動が見られるかを知っておくと、「気づいてやれなかった」という後悔を減らせるかもしれません。
犬が死期を悟ったときに特に多く見られるとされるのが、次のような行動です。
- 飼い主のそばから離れようとしない
- いつもと違う場所で過ごしている
- 不安そうにしている
普段と違って飼い主から離れなかったり、いつもと違う場所で過ごしたりしているのなら要注意です。ただし、すべての犬に様子の変化が見られるわけではありません。行動に何の変化もないまま、突然死してしまう犬もいます。
愛犬が突然死したときにするべきこと
想像したくもないことですが、愛犬との別れは、誰にでもいつか必ず訪れます。突然その日が来たとしても、飼い主がしっかりと見送ってあげなくてはなりません。
しかし初めて愛犬との別れを迎えて、何をすべきかわからないという方も多いでしょう。
そこで、愛犬が突然死したときにするべきことについても紹介します。いざというときに何をするべきなのか、内容をチェックしてみてください。
遺体を清めて安置する
愛犬が亡くなったら、まず遺体を清めて安置してあげましょう。犬にも人間と同じように死後硬直があります。死後硬直が始まるまえに、愛犬の遺体を清めて安置してあげなくてはなりません。
亡くなったら、体を拭いて毛並みを綺麗に整えます。死後硬直が始まるまえに、まぶたを閉じて関節を軽く曲げましょう。
遺体からは、時間が経つと体液が出てくる場合があります。そこでペットシーツを敷いてから、犬を毛布やタオルのうえに寝かせましょう。安置場所には、できるだけ涼しくて風通しのよい場所を選んでください。
葬儀の準備をする
遺体の安置後は、葬儀の準備を行います。ペット火葬業者やペット霊園などに連絡して、火葬の予約を入れましょう。空き状況によっては、当日の火葬に対応してくれる場合もあります。
ペットの火葬を行っているのは、民間業者や自治体です。火葬には「合同火葬」「個別火葬」の2種類がありますので、どちらにするか選ぶ必要があります。
注意したいのが合同火葬です。個別火葬よりも費用を抑えられる合同火葬ですが、ほかの犬とまとめての火葬になります。そのため火葬後に愛犬の遺骨を受け取れません。
遺骨の受け取りを希望する場合は、個別火葬を選んでください。どうするか悩むときは家族にも相談してみましょう。
また、犬の場合は人間と違って土葬も不可能ではありません。しかし遺体を浅い場所に土葬してしまうと、動物に掘り起こされてしまう可能性があります。
そうした事態を防ぐためにも、自宅の敷地にお墓を作りたい場合は、火葬した遺骨の埋葬も検討してみてください。
市町村役場に届出をする
愛犬が亡くなったら、30日以内に市町村へと届出をする必要があります。犬を飼い始めたときや転居したときにも、市町村に届け出を行っているはずです。
電話で対応してくれる自治体もありますが、鑑札や狂犬病予防注射済票の返却が必要になる場合もあります。そこで犬の死亡で必要な手続きについては、お住まいの自治体に確認を行ってみてください。ペット保険に加入しているのなら、解約手続きも行いましょう。
愛犬の突然死によるペットロスを克服・軽減する方法
突然死に限らず、愛犬を失ってから訪れるのがペットロスです。食欲不振・不眠などを始め、ペットロスにはさまざまな症状があります。深刻なペットロスに苦しんでいる方も少なくありません。
つらいペットロスからの立ち直りには、次の過程が必要だといわれています。
- 否定(現実から目を背けたい、信じたくないという状況)
- 交渉(自分が代わってあげたいといったような気持ち)
- 怒り(早く気づくべきだった、自分のせいであるとの自分や誰かに対する怒り)
- 受容(愛犬の死という事実の受け入れ)
- 解決(ペットロスの解決)
愛犬が亡くなってから数日で気持ちが落ち着く方もいれば、何年もかかって解決を迎える方もいます。
短期間で解決の過程を迎えたからといって、犬に対する愛情が薄いというわけではありません。葬儀や火葬でしっかりと供養を行うと、ペットロスの克服や軽減につながります。
ペットロスの状態に陥ったら、なるべく悲しみや怒りを抱え込まないようにしてみてください。我慢してひとりで抱え込んでしまうと、悲しみが和らがずペットロスが長引く原因になってしまいます。
苦しいときは、家族・友人・パートナーなど愛犬について話せる相手を見つけて、気持ちを共有するようにしてみましょう。
まとめ
愛犬の突然死はつらくて悲しいものです。突然死を避けるには、普段から愛犬の様子を観察して、異変があったら動物病院で調べてもらいましょう。中毒やショック状態にならないよう、気をつけてあげるのも大切です。
愛犬の突然死によって、深刻なペットロスに陥ってしまう方も少なくありません。ペットロスを乗り越えるのには、どうしても時間がかかります。悲しみを共有できる相手を見つけ、少しずつ気持ちを整理していきましょう。