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東大農学部獣医学専修卒後、ウガンダ国立遺伝資源研究所でのリサーチフェローや動物病院での臨床業務に従事。2020年に保護犬たちを新しい形でサポートする事業を開始。
フワフワの被毛と子羊のような見た目がかわいいベドリントン・テリアですが、ベドリントン・テリアを初めて飼う場合に気になるのが、どんな性格をしていて飼いやすいかどうかではないでしょうか。そこで今回は、獣医師の寺田かなえ先生に教えていただいた、ベドリントン・テリアの性格や特徴、かかりやすい病気やしつけのポイントなどについて解説していきます。
目次
- ベドリントン・テリアの歴史やルーツ、英語名は?
- ベドリントン・テリアの体高や体重は?
- ベドリントン・テリアの平均寿命は?
- ベドリントン・テリアの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
- ベドリントン・テリアはどんな性格、習性?
- ベドリントン・テリアを迎える際にかかる費用は?
- ベドリントン・テリアのしつけと社会化トレーニングのポイント
- ベドリントン・テリアに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
- ベドリントン・テリアを飼うのに向いている人は?
- ベドリントン・テリアがかかりやすい病気と予防法は?
- ベドリントン・テリアの日常のお手入れ方法
- ベドリントン・テリアとの生活で注意すべきことは?
ベドリントン・テリアの歴史やルーツ、英語名は?
犬種名 | ベドリントン・テリア |
英語名 | Bedlington Terrier |
原産国 | イギリス |
分類 | 小型犬 |
グループ | 3G:テリア |
ベドリントン・テリア【英語:Bedlington Terrier】はイギリスが原産の小型犬です。
ジャパンケネルクラブの犬種分類では、穴の中に住むキツネなど小型獣用の猟犬「3G:テリア」に属します。
ベドリントン・テリアの起源は定かではありませんが、オッター・ハウンドやダンディ・ディンモント・テリアなどを交配してつくられたといわれています。イギリス・ノーサンバーランド州のベドリントン周辺に住む、炭鉱労働者たちのペットとして愛されていました。日本に紹介されたのは1963年ですが、国内では希少な犬種です。一般社団法人ジャパンケネルクラブのデータによると、2021年時点で26頭しか登録されていません。
ベドリントン・テリアの体高や体重は?
体高:約41cm
体重:約8~10kg
ベドリントン・テリアは小型犬に分類され、流線型のボディと長い脚が特徴的です。
ベドリントン・テリアの平均寿命は?
ベドリントン・テリアの平均寿命は、12~14歳とされています。『アニコム家庭どうぶつ白書2021』によると、小型犬の平均寿命は14.4歳のため、平均とほぼ変わらないといえるでしょう。
犬を迎える際は、最期のときまでしっかり世話ができるかを考えておきましょう。
犬をみとる頃に自分は大体何歳になるか、犬の介護ができるか、自分の生活環境や経済状況などもあわせて考えなければなりません。
犬を迎えようと考えているシニアの方は保護犬などで成犬を迎えるケースも検討するほか、万が一自分が世話できなくなった場合を想定しておくことも重要です。犬の世話を頼めそうな人にあらかじめ相談して承諾を得てから迎えたり、老犬ホームといった預かり先を決めたりして急な環境の変化に備えておきましょう。
ベドリントン・テリアの毛色の種類、被毛、外貌の特徴は?
ベドリントン・テリアには数種類の毛色があります。色の種類は、ブルー(灰色)、レバー(濃赤褐色)、サンディ(砂色)、ブルー&タン(黄褐色)、レバー&タン、サンディ&タンがあります。
硬い毛と柔らかい毛があり、頭部と顔の毛は強くカールしています。頭の上部と耳の下部の毛を残すトリミングが、ベドリントン・テリアの定番スタイルです。
ベドリントン・テリアはどんな性格、習性?
ベドリントン・テリアはおっとりした外見に反して陽気で活発です。何かの刺激で興奮し、手に負えなくなることもあります。頑固で気が強い、テリアらしい性格をもっています。
一方で、飼い主に対して従順で忠実な面もあります。家の中では甘えん坊で、家族とのスキンシップを好みます。
ベドリントン・テリアを迎える際にかかる費用は?
ベドリントン・テリアを飼い始めるとき、飼い続ける際にかかる費用について説明します。
タイミング | 内訳 | 費用の目安 |
迎えるとき |
ペットショップ、ブリーダー |
約20~30万円 |
飼い始めるとき | 畜犬登録料 | 約3,000円 |
生活用品(クレートやケージなど) | 約5〜7万円 | |
1年に1回かかる費用 | 狂犬病予防接種費 | 約3,500円 |
混合ワクチン接種費 | 約5,000〜10,000円 | |
毎月かかる費用 | 消耗品(フードやおやつなど) | 約5,000〜10,000円 |
飼い始める際にかかる費用
ベドリントン・テリアをペットショップから迎える際の価格の目安は、約20~30万円です。月齢や血統、毛色などにより、値段が上がることもあります。他にも愛犬を迎えるには友人や知人から譲り受ける、譲渡会に参加する、保護犬を迎え入れるといった方法もあります。
犬を飼い始めるときには飼い始めてから30日以内に(子犬の場合は生後91日を経過してから30日以内に)お住いの自治体に犬の登録(登録料は3,000円程度)を行うほか、混合ワクチン接種費や狂犬病予防接種費も必要になります。母犬の初乳から得た免疫は徐々に低下していくため、混合ワクチンを子犬期に計3回接種してさまざまな感染症を防ぐ必要があります。子犬を迎える際の月齢によっては、ペットショップ側でワクチンを3回打っているため、生体代と一緒にワクチン代も支払います。3回全て打っていない場合は、飼い主が動物病院に連れて行って接種させましょう。
狂犬病予防接種は生後91日を過ぎた全ての犬が年に1回接種するよう法律で定められており、子犬の場合は混合ワクチンの接種を終えて2週間過ぎたタイミング(およそ生後110日前後)で打たせます。
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飼い続けるために必要な費用
犬を養育する上での生涯コストは、ドッグフードやペットシーツ、留守番時のエアコン代、一般医療費、トリミング代、レジャー費など200~300万円といわれています。トリミングに高度な技術が必要なベドリントン・テリアは、トリミング代がやや高額になると考えておきましょう。
なかには僧帽弁閉鎖不全症など手術費が100万円以上になる病気にかかる場合や、アレルギーなどによって継続的な通院や投薬の費用がかかることもあります。犬を迎えるにあたっては、計画的な貯金やペット保険の利用なども検討し、予期せぬ出費にも対応できるかよく検討しておきましょう。
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ベドリントン・テリアを迎える際に必要な生活用品としては、クレートやケージ、サークルをはじめ、首輪やリード、食器、給水器、ドッグフード、トイレなどが挙げられます。
また犬が遊べるようおもちゃも用意するとよいでしょう。ベドリントン・テリアは多くの運動を必要とするため、ボール遊びなどをさせて思い切り走り回れるようにするのがおすすめです。
犬の生体代を除く初期費用としては、5~7万円程度を見込みましょう。
毎月の消耗品としては、ドッグフードやおやつ、トイレシーツ、歯ブラシやボディシートなどが挙げられます。一般的に毎月の平均額は5,000円~10,000円ほどです。
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2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬や猫にマイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは思わぬ事故や災害で迷子になってしまったときに、保護された犬を飼い主の元へ返すための重要な役目を果たします。装着費用は3,000~5,000円程度で、さらに飼い主の氏名や住所、電話番号などの情報登録料としてかかります。登録はオンライン申請で300円、郵送する場合は1,000円です。
ドアを開けた際に外へ飛び出したり、散歩中大きな音に驚いて逃げてしまったりなど、飼い主の不注意やアクシデントで犬は迷子になってしまう可能性があります。そのため、ベドリントン・テリアを迎える際は迷子対策もしっかり講じましょう。迷子対策としてはマイクロチップの装着のほかに、迷子札などの導入が挙げられます。
迷子札は、飼い主の連絡先を記載したキーホルダーで犬の首輪に装着します。値段は1,000~5,000円程度で、素材やデザインによって異なります。
そのほか、家からの飛び出しを防ぐために玄関にゲートを設置するといった対策を取るのもおすすめです。
ベドリントン・テリアのしつけと社会化トレーニングのポイント
ベドリントン・テリアには頑固な一面があるため、ややトレーニングしづらい犬種だといえます。うまくできたときに褒めたりおやつをあげたりして、ポジティブによいところを伸ばしてあげましょう。
厳しいトレーニングは向いていません。難しいときはプロの訓練士の力を借りることをおすすめします。
また、ほかの犬に対して闘争心を見せ、けんかになりやすい面があります。子犬の頃から、仲よくできる社会性を身に付けさせるようにしましょう。
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ベドリントン・テリアに必要な運動量や散歩の目安、おすすめの遊びは?
✓散歩:1時間を1日2回
✓運動量:多い
✓おすすめの遊び:ボール遊び、フライングディスクなど
ベドリントン・テリアは運動量が多い犬種のため、1日1時間半~2時間は散歩しましょう。ボール遊びやフライングディスクなど、走り回れるような遊びも取り入れるとよいでしょう。
運動能力が高いので、アジリティなどのドッグスポーツもおすすめです。
ベドリントン・テリアを飼うのに向いている人は?
✓十分な運動をさせてあげられる環境
ベドリントン・テリアはパワフルでスタミナ豊富な犬種です。小走りを交えた散歩や、ボール遊びで走らせるなどして、毎日十分な運動をさせてあげられる人がよいでしょう。
✓テリア犬種の特性を理解し、しつけができる人
テリア犬種には、頑固で自己主張が強い性質があります。そんな特性を理解して、辛抱強く付き合える人がよいでしょう。
ベドリントン・テリアがかかりやすい病気と予防法は?
ベドリントン・テリアがかかりやすい代表的な病気と対策方法を知っておきましょう。
✓皮膚炎
ベドリントン・テリアの皮膚は薄くて敏感で、皮膚炎になりやすい犬種です。皮膚炎には、ハウスダストや花粉、ノミ、食べ物などさまざまな原因があります。飲み薬の投与のほか、塗り薬の使用や薬用シャンプーを使うなどの治療を行います。食べ物にアレルギーがある場合は、アレルギー対応食にする必要があります。
✓網膜異常形成
生まれつき網膜がうまくつくられない病気で、軽症のケースがほとんどです。重症の場合は失明することもあります。現在、有効な治療法は見つかっていません。検診や日常生活で異常が感じられたら、視力が下がっても生活しやすいように環境を整えましょう。
✓二重まつげ
まぶたの中にまつげが生えてしまう病気で、角膜炎や結膜炎を引き起こす場合があります。涙やけや目のしょぼつき、充血などが見られる際は、かかりつけ医に相談しましょう。二重まつげはまぶたの中のまつげを1本ずつ抜いて治療を行います。
ベドリントン・テリアの日常のお手入れ方法
✓ブラッシング:1週間に2~3回
✓シャンプー:1カ月に1回程度
✓トリミング:1カ月に1回程度
ベドリントン・テリアは抜け毛が少ない犬種ですが、毛が生えるのが早く、1カ月に1回程度のトリミングが必要です。高度なトリミング技術が求められるため、正しくカットできるトリマーを見つけなければなりません。
週に2~3回のブラッシングも欠かせません。ベドリントン・テリアは皮膚が弱いため、肌を傷めないよう注意しましょう。ブラッシング以外にもスキンシップの時間も兼ねて、表面からは分かりづらい皮膚の状態をチェックしたり、日々触れ合う時間をつくったりすることで、愛犬との信頼関係も高まります。
歯磨きは毎日~3日に1回、爪切りは1カ月に1~2回程度の頻度で行います。肛門腺絞りのタイミングはかかりつけの獣医師に相談して実施してください。
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ベドリントン・テリアとの生活で注意すべきことは?
ベドリントン・テリアと生活する上で注意すべきポイントを紹介します。
✓マメな皮膚のチェックをしよう!
ベドリントン・テリアは皮膚炎にかかりやすいため、皮膚に赤みや脱毛がないか、痒がったりしていないか、日頃から様子をチェックしておきましょう。また、加齢で鼻、足の裏、肘などが角質化しやすくなるため、必要なら保湿をしましょう。
✓運動不足に注意!
膨大な運動量が必要な犬種です。運動不足は、問題行動の引き金になるだけでなく、肥満の原因にもなります。さらに狩猟欲も強い犬種なので、毎日のアクティビティには、体力だけでなく知力も消費するような遊びを取り入れるとよいでしょう。
✓トレーニングをしっかりと!
頑固な性格で一歩も譲らない気の強さがあり、ほかの犬と争いになる恐れがあります。必要があればプロの手も借りてトレーニングをしっかり行い、衝動的な行動を抑えられるようにしましょう。