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ちば愛犬動物フラワー学園所属。北里大学獣医畜産学部卒業 / 現在は専門学校に勤務しつつ、地域の動物病院にて勤務医として従事。
愛犬の健康管理は、毎日の食生活からしっかりと行いましょう。とはいえ、犬の食事内容は好みやライフスタイルによって実にさまざまです。市販のドッグフードや手作りおやつなど、何をどのくらい与えればよいのか迷ってしまう方も多いと思います。
そこで今回は、犬の食事の基本スタイルを徹底解説します。ドッグフードの正しい選び方や、手作りフードを与える場合の注意点など、詳しく解説します。犬にとってのNG食材、OK食材も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- ドッグフードの正しい選び方
- 犬にドッグフード以外の食べ物を与えるときの注意点
- 1日に必要な摂取カロリーを知る方法
- 犬に与えてはいけない、注意したいNG食材
- 犬に与えてもOKな食材
- ドッグフードの切り替え方
- 食事の頻度や食器選びのポイント
- まとめ
ドッグフードの正しい選び方
愛犬の食事は、ドッグフードを中心としているというご家庭も多いでしょう。まずは、ドッグフードを選ぶ際の重要ポイントを解説します。
主食として与えるなら「総合栄養食」
毎日の主食として与えるドッグフードは、「総合栄養食(※1)」と記載されているものを選びましょう。ドッグフードにおける総合栄養食とは、「このフードと水だけで、愛犬の健やかな成長に必要な栄養素を摂取できる」というものです。炭水化物やタンパク質、脂質など、犬にとって必要な栄養素がバランスよく配合されています。
「総合栄養食」の表示を許可されているのは、「ペットフード公正取引協議会」の定める基準をクリアした製品のみとなっています。愛犬の成長段階において、必要な栄養素をきちんと摂取することができます。
また、ドッグフードにはその他にも、おやつやごほうびとして与えるものや、病気や健康維持のサポートを目的としたものなど、さまざまな種類があります。愛犬とのコミュニケーションや健康維持の一環として、それぞれのフードを上手に取り入れましょう。ただし、療養食のフードは、必ずかかりつけの獣医師の指導を受けたうえで与えてください。
※1輸入フードの場合は表記方法が異なる場合もあります。
愛犬のライフステージに合わせて選ぶ
ドッグフードのなかには子犬用・成犬用・高齢期用など、犬の成長段階に合わせたラインナップを取り揃えているものも多いでしょう。成長段階に応じた工夫が施されているため、愛犬のライフステージに合わせて選ぶことが大切です。
子犬用フード |
成長期に必要な栄養素がバランスよく配合されています。また、子犬は一度の食事量が少ないため、少量でも効率的にエネルギーを摂取できるような工夫が施されています。 【パッケージの表記例】子犬用、パピー用、成長期用など |
成犬用フード |
成犬期とは、成長期終わりから高齢期始まりまでの期間を指し、成犬に必要な栄養素がバランスよく配合されています。製品によっては、「◯歳~◯歳程度まで」と細かな年齢区分が表示されているものもあります。 【パッケージの表記例】成犬用、維持期用など |
高齢期用フード |
加齢による代謝の低下や、健康面に配慮されたものが多くあります。加齢による体調の変化は個体差が大きいため、愛犬の健康状態に応じて選ぶことが大切です。 【パッケージの表記例】高齢期用、シニア犬用、エイジングケアなど |
また、ドッグフードのなかには「オールステージ用(全成長段階用)」と記載されている製品もあります。子犬・成犬・高齢期と、すべてのライフステージに対応しているので、さまざまな年齢の犬と暮らしている場合に便利です。ただし、それぞれのライフステージや体重などに合わせて、食べる量を調整する必要があります。
必要な機能を取り入れる
ドッグフードのなかには、犬の健康に配慮して、さまざまな機能性を付与したタイプもあります。食物アレルギーに配慮したものや、体重管理に適したものなど、愛犬の体質や健康状態に応じたフードを取り入れるのもおすすめです。なお、その場合は必ず獣医師の診察を受け、ドッグフードの種類や量について相談してから与えるようにしましょう。今までのフードから急に切り替えると胃腸の負担が増えるため、1週間かけて今までのフードに混ぜて少しずつ切り替えるようにします。
また、メーカーによっては、犬のサイズ別や犬種別のフードを展開していることもあります。その他、さまざまな着眼点のフードを展開するメーカーもあるので、一度チェックしてみるとよいでしょう。
犬にドッグフード以外の食べ物を与えるときの注意点
犬に人間が食べるのと同じ食材を与える場合は、次のポイントに注意することが大切です。
・NG食材、OK食材を知る
・体重別の適量を与える
・味付けはしない
・体調に不安がある場合は獣医師に相談する
NG食材、OK食材を知る
人間にとっては問題のない食材でも、犬にとっては健康に悪影響を及ぼす可能性があります。人間と同じ食材を使って愛犬に食事を用意する場合は、「犬が食べてもOKな食材」と「犬が食べたらNGな食材」をしっかり把握することが大切です。具体的なOK食材・NG食材については、後ほど解説します。
体重別の適量を与える
ドッグフード以外の食べ物は、1日の摂取カロリーの10%以内におさえるとよいとされています。たとえば、愛犬の1日の摂取カロリーが500kcalなら、人間と同じ食材を使った食事は50kal以内におさえるのがベターです。ただし、一般家庭で栄養バランスのとれた食事を用意するのは難しいので、基本的にはドッグフードを主食とするとよいでしょう。まずは1日の摂取カロリーを把握し、ドッグフードとそれ以外の量を調整するのがおすすめです。
味付けはしない
食材に「刻む」「加熱する」などの調理を加えるのは問題ありませんが、塩や砂糖などで味付けするのは避けましょう。ドッグフードには犬にとって必要な塩分量が含まれているため、味付きの手作りフードやおやつを与えると塩分過多になってしまいます。過剰な塩分は尿と一緒に排出されますが、塩分の多い食事が続くと内臓に負担がかかってしまうため注意が必要です。
人間にとっては薄味でも、犬にとっては十分美味しさを感じられるでしょう。
体調に不安がある場合は獣医師に相談する
体調に不安がある場合や、持病がある場合は、手作りフードを与える前にかかりつけの獣医師に相談しましょう。犬の健康状態によっては、市販のドッグフードのほうが食事を管理しやすい場合もあります。
1日に必要な摂取カロリーを知る方法
犬が1日に必要な摂取カロリーは、以下の計算式で求められます。
安静時のエネルギー要求量(RER)× ライフステージ別活動係数(エネルギー係数)
ただし、この計算で求められる摂取カロリーはあくまで目安であり、実際に必要な摂取カロリーには個体差があります。
<安静時エネルギー要求量(RER)の算出方法>
1.体重×体重×体重(愛犬の体重を3乗する)
2.√(ルート)を2回押す
3.2の数に70をかける
<ライフステージ(活動係数・エネルギー係数)>
・生後4か月までの幼犬:3.0
・生後4か月から1年までの幼犬:2.0
・避妊・去勢済みの成犬:1.6
・避妊・去勢なしの成犬:1.8
・7歳以上で避妊・去勢済みの中高齢犬:1.2
・7歳以上で避妊・去勢なしの中高齢犬:1.4
・肥満傾向の成犬:1.0~1.2
たとえば、避妊・去勢済みの成犬の場合、計算結果は以下のとおりです。
■小型犬(8kg)
333(RER)×1.6(ライフステージ)= 約533kcal
■大型犬(25kg)
783(RER)×1.6(ライフステージ)= 約1,253kcal
犬に与えてはいけない、注意したいNG食材
ここからは、犬に与えてはいけない代表的なNG食材を紹介します。
中毒症状を引き起こす恐れがある食材
食材 |
理由 |
ねぎ類(長ねぎや玉ねぎ、ニラやにんにくなど) |
貧血につながる恐れがある |
アボカド |
果肉や皮に中毒成分が含まれる |
ナス |
アクが多く、カルシウムと結合して尿路結石を引き起こす可能性がある |
甲殻類や淡水魚 |
生食にて大量に摂取すると、チアミン欠乏症に陥り、食欲不振や嘔吐、神経障害などを引き起こす |
イチジク |
果肉や皮、葉にも中毒成分が含まれる |
チョコレート |
下痢や嘔吐のほか、痙攣を引き起こす恐れがある |
キシリトール(ガムなど) |
低血糖を引き起こし、肝障害や嘔吐、痙攣などの症状につながる |
生卵 |
卵白に含まれるアビジンがビオチン(ビタミンB群)を分解してしまうため、必ず加熱してから与える |
消化不良につながりやすい食材
食材 |
理由 |
イカ、タコ |
身が硬く、消化しにくい |
ごぼう |
食物繊維が豊富で、消化されにくい |
わかめ |
消化されないまま便として排出されることが多い |
カロリーオーバーにつながりやすい食材
絶対にNGというわけではありませんが、脂質の多い食材はカロリーオーバーにつながりやすいため注意が必要です。たとえば、脂身の多い肉や魚、油分の多いパンなどは摂取量をコントロールしましょう。
犬に与えてもOKな食材
野菜ならブロッコリーやさつまいも、トマトなどがおすすめです。ただし、犬は食物繊維を消化しにくいため、細かく刻んだり、加熱して柔らかくしたりと食べやすい状態にしてから与えるとよいでしょう。
肉類なら、脂身の少ない鶏肉やラム肉、豚肉・牛肉の赤身などが適しています。犬はかつて狩りをして生肉を食べていた動物ですが、加熱用の肉を生のまま与えるのは危険です。
また、魚は、塩鮭など塩分を多く含むものは避け、アニサキスの感染を防ぐために加熱してから与えましょう。
ドッグフードの切り替え方
ライフステージや食の好み、体調の変化などに合わせてドッグフードを切り替える場合、いきなり新しいフードを与えると消化器官に負担がかかってしまう可能性があります。だんだんと慣れていけるように、まずは新しいフードを少しずつ混ぜるところからはじめてみましょう。
食事の頻度や食器選びのポイント
愛犬の健康を守るためには、食事の頻度や食器選びに気を配ることも大切です。
犬の食事の頻度
成犬の場合は、1日2回が目安です。子犬は成長期なので、1日3~4回程度は食事を与えるとよいでしょう。ただし、犬に与える食事の回数に明確な決まりはなく、どちらかといえば摂取カロリーや栄養バランスのほうが大切です。犬の成長段階や健康状態に合わせて、食事を与える回数を調節しましょう。
犬用の食器の選び方
犬用の食器を選ぶ際は、「素材」「大きさ」「高さ」「重量」の4つのポイントを重視しましょう。それぞれのチェックポイントは、以下のとおりです。
・素材:ステンレスまたは陶器素材がおすすめ
・大きさ:食べるときに、お皿の縁が耳やひげにあたらず、邪魔にならない大きさのものを選ぶ
・高さ:首を曲げなくてよい高さのお皿にすると、シニア犬も食べやすくて◎
・重量:ある程度の重さがあるものだと安定感が増す(扱える程度で重い食器を選ぶ)
まとめ
愛犬の健康を守るためには、毎日の食事に気を配ることが大切です。1日に必要な栄養素や摂取カロリーは、犬のライフステージや体重などによって大きく異なります。総合栄養食であるドッグフードをベースにしつつ、手作りフードやトッピング、おやつも無理のない範囲で楽しみましょう。