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酪農学園大学獣医学群獣医学類卒業後、動物病院勤務。小動物臨床に従事。現在は獣医鍼灸師の資格を得るために鍼灸や漢方を用いた中医学による治療を勉強中
トリーツとは、愛犬のトレーニングを効率的に行うためのご褒美のことです。一般的にトリーツには、愛犬が好む食べものが用いられます。しかし「どのようなトリーツを選ぶのが効果的なの?」「トリーツを与えるタイミングはいつがいい?」など、疑問を抱いている人も多いかと思います。
そこで今回は、トリーツに適した食べものの選び方やトリーツを与えるタイミング、適切な量などを詳しく解説します。トリーツを与える際の注意点についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 犬のトリーツとは?
- トリーツに適した食べものの選び方
- トリーツに適した市販品の例
- トリーツの適量はどれくらい?
- トリーツを与えるタイミングはいつ?
- トリーツを与える際の注意点
- まとめ
犬のトリーツとは?
トリーツは、犬のトレーニングの際に使用される「ご褒美」のことです。一般的に、愛犬の好きな食べものが用いられることから「おやつ」と混同されがちですが、トリーツとおやつは目的や役割が異なります。
まずは、トリーツの役割やおやつとの違いを詳しく見ていきましょう。
トリーツとは「ご褒美」のこと
トリーツは、愛犬のトレーニングの際、飼い主の指示(コマンド)に適切に応えた場合に与える「ご褒美」です。
指示に対する適切な行動を行うことで「ご褒美であるトリーツがもらえる」と学習すると、愛犬は飼い主の指示に従うようになります。トリーツには、愛犬のトレーニング効率を高める役割があります。
トリーツは「おやつ」ではない
市販の犬用のおやつには「トリーツ」という名前がついているものがあるため、トリーツ=おやつ、と認識している人もなかにはいるでしょう。
しかし、トリーツはあくまでトレーニングの「ご褒美」であり、間食や楽しみとして与える「おやつ」とは役割が異なります。トリーツはトレーニング中など決まったタイミングにのみ、目的をもって与えましょう。
トリーツに適した食べものの選び方
トリーツでトレーニングの効率を高めるためには、トリーツに適した食べものを選ぶことが大切です。ここからは、トリーツを選ぶ際のポイントについて紹介します。
愛犬が喜ぶもの
トリーツには「ご褒美」の役割があるため、まずは、愛犬が喜ぶものを選ぶことが大切です。愛犬の好みの食べものを取り入れて、トレーニングへの意欲を高めましょう。
愛犬が食べやすいサイズのもの
トリーツを選ぶ際は、サイズや食感にも注意が必要です。トリーツはトレーニングの合間に与えるため、愛犬がひと口で食べられるサイズが適しています。
特に、超小型犬や小型犬の場合は、小粒サイズのトリーツを選んだり、ハサミでカットしてひと口でも食べやすいサイズに調整したりしてあげましょう。
ひと口で食べきれなかったり過度な咀嚼が必要になったりすると、食べることに夢中になってしまい、トレーニングへの集中力が低下してしまいます。また、ボロボロとこぼれやすい食べものも、足元が気になって飼い主の指示に集中できなくなることがあります。
愛犬の集中力を切らさないためにも、ひと口サイズでこぼれにくい食べものを選びましょう。
硬すぎないもの・消化の良いもの
犬の好物というと「骨タイプのおやつ」を想像する人も多いのではないでしょうか。しかし、骨タイプおやつのような硬い食感のものは、咀嚼が必要になるためトリーツには適していません。
また、骨タイプのおやつは、犬がしっかりかみ砕いているように見えても、硬い破片が残っていて、消化不良や嘔吐の症状を起こしてしまう例もあります。
トリーツに使用する食べものには、犬が容易にかみ砕けるような硬すぎないもので、消化に良いものを選びましょう。
低カロリーのもの
トレーニングを始めたばかりのころは、同じ指示を何度も繰り返すため、トリーツを与える頻度も多くなります。そのため、カロリーの高いものをトリーツに使用してしまうと、肥満のリスクも高まるため注意が必要です。
また、小型犬のような食事量が少ない犬種の場合、トリーツでお腹が満たされてしまうと「食事をとらなくなる」「偏食になる」といった可能性もあります。愛犬の食欲の妨げにならないように、低カロリーのトリーツを選ぶようにしましょう。
トリーツに適した市販品の例
市販のトリーツには、さまざまな種類がありますが、咀嚼のしやすさなどを考慮すると、以下のような製品が適しています。
- ひと口サイズのトレーニングビッツ
- ひと口サイズの犬用チーズ
- 硬すぎない犬用ビスケット
- お好みサイズにカットできるソフトジャーキー
- 添加物の少ないトリーツ など
小粒のものやサイズ感が調整できるもの、簡単に咀嚼できるものといったポイントを押さえて、愛犬に適したトリーツを選びましょう。また、トリーツは与える回数が多くなりやすいことから、なるべく添加物が少ない製品を選ぶことも大切です。
トリーツの適量はどれくらい?
トレーニングの邪魔にならないように、1回に与えるトリーツは「ひと口」で食べきれる量にしましょう。一般的には、日ごろ使用しているドライフード1粒サイズくらいが目安になります。
また、1度に何粒も与えるのではなく、1粒ずつトレーニングのペースに合わせて与えましょう。
トリーツを与えるタイミングはいつ?
トリーツで効率的なトレーニングを行うためには「トリーツを与えるタイミング」が重要になります。
指示に応えたら「すぐ」
トレーニング中に飼い主の指示に適した行動を愛犬が達成できたら、すぐにアイコンタクトをとってトリーツを与えます。トリーツを与えるタイミングが遅れてしまうと、犬は何のためにご褒美がもらえたのかわからなくなってしまいます。
「おすわり」や「ジャンプ」など指示に適した行動と直結させるためには、そのほかの行動をする前に、間をあけずにトリーツを与えるのがポイントです。
愛犬が指示に従った行動ができたとしても、すぐに動き出してしまったり落ち着きのない様子を見せたりしたときは、トリーツを与えないようにしましょう。
このタイミングでトリーツを与えてしまうと、適切な行動だけではなく、その後に動いてしまったことまで一連の流れとして学習してしまう可能性があるため注意しましょう。
適切なタイミングで与えるための便利グッズを活用
トレーニング中の適切なタイミングで、すぐにトリーツを与えるためには、手元にトリーツを準備しておく必要があります。そこで活躍するのがトリーツポーチ(トリーツバッグ)です。
トリーツポーチとは、トレーニング中や散歩中にトリーツを入れておくための専用ポーチのことです。飼い主の洋服に固定でき、片手でさっとトリーツを取り出せるタイプがおすすめです。
トリーツポーチがあれば、タイミングを逃さず、すばやく愛犬にトリーツを与えることができるでしょう。
トリーツを与える際の注意点
愛犬とのトレーニングをサポートしてくれるトリーツですが、誤った与え方をしてしまうと、無駄吠えが増えたり愛犬の健康状態に悪影響を与えてしまったりといったリスクもあります。
そこで、ここからは、トリーツを正しく活用するための注意点を解説します。
先にトリーツを与えるのはNG
トリーツは、指示に応えた場合に与える「ご褒美」なので、愛犬が行動する前に与えても意味がありません。
「トレーニング中の無駄吠えを抑えたい」などの理由で、行動よりも前にトリーツを与えてしまうと、愛犬が「吠えるとおやつがもらえる」と学習してしまう可能性があります。その結果、トレーニング中の無駄吠えが増えてしまうケースも少なくありません。
トリーツは、トレーニングのご褒美であることを意識し、必ず飼い主の指示に応えた後に与えましょう。
トレーニング以外のタイミングでは与えない
トリーツを普段のおやつとして頻繁に与えてしまうと、犬にとっての「特別感」が薄れてしまい、ご褒美の意味がなくなってしまいます。また、トレーニング終了後に、余ったトリーツをまとめて食べさせる、といった行動もNGです。
トリーツは、あくまで愛犬にとって特別なご褒美であることを忘れずに、トレーニングのサポートとして活用しましょう。
褒め言葉や笑顔とともに与える
一般的にトリーツには、愛犬の好きな食べものが用いられます。しかし、トリーツは必ずしも食べものでなければいけないというわけではありません。例えば、飼い主の褒め言葉や笑顔なども、愛犬にとってはご褒美のひとつです。
そのため、トレーニング中はトリーツだけに頼らず、愛犬に声をかけて表情でも気持ちを伝えることが大切です。トリーツを与える際も、褒め言葉や笑顔を欠かさないようにしましょう。
トリーツの与えすぎに注意
熱心にトレーニングを行っていると、どうしてもトリーツを与える頻度も多くなってしまいがちです。しかし、トリーツの与えすぎは、愛犬の肥満や食物アレルギーのリスクを高めてしまうケースもあります。
トリーツを与えすぎてしまった日は、食事の量を調節するなどの対策を検討しましょう。また、愛犬のトレーニングが順調であれば、徐々にトリーツを与える頻度を減らしてみるのも方法のひとつです。
ただし、完全にトリーツをやめてしまうと、愛犬の意欲が低下してしまうこともあるので、愛犬の様子を見ながら適切なタイミングでトリーツを活用しましょう。
適度な運動を取り入れる
日々のトレーニングだけでは、犬にとって十分な運動量を確保できるとはいえません。室内トレーニングにトリーツを使用する場合は、その分摂取カロリーも多くなってしまいます。
トリーツを使ったトレーニングを行うのであれば、室内でのトレーニング以外にも散歩やドッグランでの遊びなどを取り入れて、適度な運動量を確保して肥満を予防することが大切です。
まとめ
トリーツは、愛犬が飼い主の指示に適切に応えた際の「ご褒美」として与えるものです。愛犬のトレーニングへの意欲を高め、学習を促す役割があります。
トリーツには、愛犬が喜ぶ食べものが使用されるのが一般的です。トリーツとして使用する食べものは、愛犬がひと口で食べられるもの、硬すぎず消化が良いもの、低カロリーのものなどを選びましょう。
トレーニングの効率を上げるためには、愛犬が飼い主の指示に応えたら、すぐにトリーツを与えることが大切です。トリーツを与える際のポイントや注意点を理解して、愛犬と楽しくトレーニングを続けましょう。