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ますだ動物クリニック院長、国際中医師
「犬が好き!」「ペットを飼ってみたい!」と思っても、自分が犬を飼うのに向いているのか悩んでいる人もいるでしょう。今回は犬を飼うのに向いている人と向いていない人の特徴を紹介します。自分にあった犬を選ぶポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 犬を飼うのに向いている人の特徴は?
- 犬を飼うのが向いていない人の特徴
- 自分にあった犬を選ぶポイント
- まとめ
犬を飼うのに向いている人の特徴は?
ペットには猫やハムスター、インコなどの選択肢があるなかで、とくに犬の飼い主に向いているのはどのような人なのでしょうか。犬を飼うのに向いている人の特徴を6つ紹介します。
室内に犬が過ごす場所を確保できる
かつては、家の外に犬小屋を置いて飼うのが当たり前の時代もありました。しかし、外飼いは感染症や脱走、怪我などのリスクがあると問題視されるようになったようです。さらに、気候変動による気温差も大きくなり、現在では犬を室内飼いするのが当たり前になりました。そのため、戸建住宅もしくはペット可の集合住宅に住んでいることが、犬を飼うための前提条件です。
ペットを問題なく飼える物件であっても、お迎えする犬によっては十分な環境ではないかもしれません。環境省では、ブリーダーが犬の寝床として確保すべき最低限必要なスペースを【縦:体長の2倍×横:体長の1.5倍×高さ:6倍】と定めています。そのため、小型犬や中型犬であれば最低でも1〜2畳分の犬用スペースがあれば十分でしょう。一方で、大型犬は4.5畳程度のスペースが必要です。くわえて、犬が自由に動き回れるスペースが必要なため、ある程度床面積にゆとりのある住まいが望ましいでしょう。
また、犬が家中を自由に動き回れる状態では、玄関や窓から脱走してしまうリスクがあります。食べ物やゴミ箱を犬の届く場所に置いておくと、誤食してしまうかもしれません。犬が怪我をしたり病気になったりするリスクもあるため、犬をお迎えしたあとは生涯をまっとうするまで安全に気をつけ続ける必要があります。安全対策を徹底するためにも、廊下やキッチンとの境界をフェンスで仕切れて犬の行動範囲を制限しやすい間取りが理想的です。
自由に使える時間が十分ある
犬は運動するのが大好きな動物です。運動量が不足してしまうと、犬の心身に不調が出るリスクがあります。運動不足を防ぐためにも、毎日2回30分〜1時間程度の散歩が欠かせません。また、散歩は犬にとって匂いから環境や周辺に住む犬の情報を取得したり、刺激を受けたりする大切な時間です。仮に部屋の中で運動ができたとしても、定期的な散歩は必須です。
さらに、ごはんは1歳までの子犬期は1日3食、成犬になると1日2食与えます。空腹時間が長くなると嘔吐してしまうリスクがあるため、毎日決まった時間に与えることが大切です。自動給餌器もありますが、できれば家族が直接与えるようにしてください。犬の食いつきから健康状態をチェックできるうえ、ごはんを与えることもコミュニケーションの1つだからです。犬のごはんの時間には、家族の誰かが家にいるようにしましょう。
経済的に余裕がある
犬を飼うには、お迎えするための費用や月々の食費・ペットシーツ代にくわえて、高額な医療費もかかってきます。ペットフード協会の調査によると、犬1匹の生涯にかかる経費は平均244万円、年間平均17万円ほどです。
とくに1歳までの子犬期と、13歳以上のシニア期は動物病院にかかる機会が多いため、費用も高額になります。飼育経費は年々上昇傾向にあり、1ヶ月あたり4,000円ほど増えています。「年間17万円ならギリギリ飼えそう」と思っても、歳を重ねるごとに予想外の出費が生まれるかもしれません。そのため、余裕をもって支払えるような安定基盤が必要です。
責任感が強くてお世話好き
犬の平均寿命は、14.62歳です。14年近くの間には、飼い主のライフステージや社会情勢も大きく変化している可能性が高いでしょう。しかし、犬を家族の一員として迎えた飼い主には、どのような変化を迎えたとしても大切にお世話しつづける責任があります。また、犬自身も飼い主も気持ちよく暮らすために、お散歩やトイレなどのトレーニングを根気よく行うことが大切です。愛犬に対して責任と愛情をもって長期間にわたりお世話を続けられる人は、犬を飼うのに向いているでしょう。
掃除が得意
子犬期でトレーニングが身につくまでの期間はとくに、粗相をしてしまったり、いたずらをされたりといった問題がつきまといます。犬はきれい好きな生き物なので、汚れてしまったり破損してしまったりしたものはすぐに掃除する必要があります。
さらに、被毛がダブルコートの犬は換毛期に毛がたくさん抜けます。抜け毛を放置していると、犬自身が滑って怪我をしてしまうリスクがあるため、こまめな掃除が必要です。また、床に落ちているものを犬が誤飲・誤食してしまうと最悪の場合死に至るので、こまめな整理整頓も欠かせません。そのため掃除が苦ではない人であれば、犬にとって快適な住環境を保ちやすいでしょう。
体を動かすことが好き
散歩トレーニングで大切なことの1つが、飼い主さん自身が散歩を楽しむことです。飼い主さんが歩いたり体を動かしたりするのが嫌いだと、犬も「散歩は嫌なもの」と認識してしまう可能性があります。また、散歩にくわえて室内でのボール遊び、ドッグランでのノーリードの追いかけっこなど、身体を動かす機会はたくさんあります。そうした犬との運動を楽しめる人は、犬を飼うのに向いているかもしれません。
犬を飼うのが向いていない人の特徴
犬の飼い主に必要な条件を満たしたとしても、犬を飼うのはおすすめできない人もいます。
出張や旅行で留守が多い
犬は毎日散歩やごはんが必要なので、家族として迎え入れたあとは気軽に外泊できません。どうしても家を空けなければいけないときは、近くに住む友人の家やペットホテルに預ける選択肢もあります。しかし、慣れない環境で極度のストレスを感じる犬もいるため、お迎えした子が外泊を嫌がるかもしれません。家族のうち誰か1人でも家にいる環境であれば、犬も安心して過ごせます。
家族が動物アレルギーを持っている
自分もしくは同居人に動物アレルギーがある場合、犬を飼うのは難しいでしょう。動物アレルギーとは犬や猫などの毛やふけ、唾液、糞尿などが原因のアレルギーで、ぜんそくやアトピー性疾患などの持病を持つ人がかかりやすい病気だとされています。人によって何がアレルギーかは異なり、猫は大丈夫でも犬にのみアレルギー反応が出るケースもあります。心配な場合はアレルギーテストを受けるのがおすすめです。
自分の健康に不安がある
ご自身に大きな持病がある場合や高齢な場合は、万が一の事態により愛犬のお世話ができなくなってしまうリスクが高いでしょう。もちろん誰しもに、災害や不慮の事故によって愛犬が待つ家に帰れなくなってしまう可能性があります。健康な同居家族がいれば安心ですが、1人暮らしで犬を飼う場合は定期的に連絡を取る相手や、犬を預けられる先を見つけておくといいでしょう。
自分にあった犬を選ぶポイント
犬を飼うのに向いている・向いていないといっても、犬種によって性格やお世話の仕方が異なります。くわえて、人間と同じように同一犬種であっても個体差があります。そのため、自分と相性のいい犬をお迎えすることで、きっと飼い主自身も犬も楽しく快適に暮らせるでしょう。ここでは、自分にあった犬を選ぶポイントを3つ紹介します。
必要な運動量
どの犬種も散歩は毎日2回が理想ですが、時間は犬によって変わってきます。一般的には、大型犬ほど長い時間の散歩が必要です。大型犬のなかでもとくに運動量の多い犬種は、散歩だけでは体力を持て余してしまう子もいます。そのため、運動の好き嫌いだけでなく自分のライフスタイルも考えて、無理なく散歩や遊びの時間を確保できる犬種をお迎えするといいでしょう。
トレーニングのしやすさ
はじめて犬を迎える場合は、比較的トレーニングしやすい性格の犬種がおすすめです。トレーニングは子犬の生後3週間~14週間(生後3カ月半)の社会化期に始めると、抵抗なく覚えやすい傾向があります。ペットショップから迎える子犬の場合、社会化期をすぎていると、トレーニングが入りにくく、問題行動につながりやすくなる可能性があります。ブリーダーから迎える場合は、ブリーダーがトレーニングを実施してくれている場合がありますので、確認してみましょう。
また、保護犬を迎える場合は、もともと家庭犬であった場合はトレーニングが行き届いていることも多いです。元野犬の場合や、ブリーダー崩壊からのレスキュー犬の場合は、成犬になっても散歩が未経験であったり、一からトレーニングすることになったりする場合があるため、トレーニングや犬との信頼関係を築くのに長い時間を要することもあります。
毛の抜けやすさ
毛の抜けやすさは、犬種によって変わってきます。オーバーコートとアンダーコートという二層の被毛を持つダブルコートの犬は、一般的に夏と冬の変わり目に換毛期を迎えます。換毛期は毛玉ができやすく、毛玉を放置していると皮膚炎になってしまうリスクがあります。そのため、いつもより入念なブラッシングが必要です。
アンダーコートのないシングルコートの犬は、ダブルコートよりも抜け毛が目立ちにくいため、比較的掃除がラクでしょう。ただし、シングルコートの犬もまったく毛が抜けないわけではありません。選んだ犬種がシングルコートであってもダブルコートであっても、毎日ブラッシングの時間を設けてあげてください。ブラッシングは犬の健康チェックにも役立ちますし、犬と触れあうことによるスキンシップ効果もあります。
まとめ
犬を飼いはじめると、犬中心の生活をすることになります。睡眠時間や帰宅時間も犬の生活習慣にあわせますし、犬が快適に過ごせるよう室内の整理整頓や掃除は欠かせません。また、犬に健康でいてもらうためにも、金銭的な余裕が必要です。このように制約は多いものの、犬を迎えることでかけがえのない喜びや思い出も得られます。犬種やお迎えする方法によって犬の飼いやすさも変わってきますので、飼育計画を立てたうえで、ぜひ自分にあった犬を見つけてお迎えしてみてください。