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こころ鳳ペットクリニック、大阪どうぶつ夜間急病センター所属。小動物臨床に従事。犬猫をはじめ、鳥類、爬虫類、両生類、霊長類など様々な小動物の診療・手術執刀を行う
犬は、古来より私たち人間の暮らしに密接に関わってきた動物です。犬との暮らしは、私たちにさまざまなメリットを与えてくれます。
今回は、犬を飼うことで得られる5つのメリットを解説します。また、犬をお迎えする前に必要な準備や心構えについてもご紹介しますので、「犬と一緒に暮らしたい」と考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
- 犬を飼う5つのメリット
- 犬をお迎えする前に準備しておきたい5つのこと
- あなたは犬向き?猫向き?それぞれの特徴を解説
- 犬を飼う際に持っておきたい心構え
- まとめ
犬を飼う5つのメリット
犬との暮らしは、家族が増える喜びを味わえるだけでなく、以下のようなメリットを期待できます。
癒やされる
私たちの脳内では、犬とふれあうとオキシトシンというホルモンが分泌されると言われています。オキシトシンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、ストレスを軽減しポジティブな気持ちを高めるなど、さまざまな効果を期待できるホルモンです。
犬とのふれあいによる癒やし効果は科学的にも証明されていて、ともに生活することで、仕事や生活のストレスがやわらいでいくのを実感できるでしょう。
また、犬のほうも、人になでられたり、抱っこされたりすると脳内でオキシトシンが分泌され幸せな気持ちを感じてくれます。オキシトシンには相手との絆を深める効果も期待できるとされているため、愛犬とは積極的にスキンシップをとるとよいでしょう。
運動不足を解消できる
犬の心身の健康を保つためには、日々の散歩が欠かせません。適切な散歩時間は犬の体格によって異なり、目安は次のとおりです。
<1日あたりの散歩時間目安>
- 小型犬
15~30分×2回以上
- 中型犬
45分×2回以上
- 大型犬
60~90分×2回以上
チワワやポメラニアンのような小型犬でも、1日最低30分は外を歩くことになります。基本的には毎日散歩をするのが望ましいため、飼い主も自然と運動不足を解消できるでしょう。
また、犬と暮らしはじめると、休日も公園やドッグランに行くなどアクティブな過ごし方が増えていきます。
犬を通じて友達ができる
犬と暮らしはじめると、いつもの散歩道や公園、ドッグランなどさまざまな場所でほかの飼い主との交流が生まれます。お互いに「犬が好き」という共通点もあるため、自然と会話も弾むでしょう。また、SNSなどで愛犬の写真を投稿すれば、世界中に友達をつくることができます。
犬を通じて交友関係が広がると「社会とのつながり」を実感でき、孤独感がやわらぐというメリットもあります。
部屋をこまめに掃除するようになる
犬と暮らしはじめると、愛犬の健康や安全を考えて衛生面に自然と気を使うようになります。
「部屋を掃除する頻度が増える」「犬が口にしないよう、落ちた食べ物をすぐ拾う」など、部屋をキレイに保つための習慣が形成され、結果的に人間にとっても快適な住環境をつくりだせるでしょう。
思いやりの気持ちを育める
人間と犬は「言葉」を使ってコミュニケーションをとれない分、相手が伝えたいことを一生懸命察考え、気持ちを察する力が必要になります。
とくに、お子さんがいるご家庭では、犬と一緒に暮らすことで子どもの情緒の発達にプラスの影響を期待できます。幼いころから犬と過ごせば、子どもの思いやりの気持ちや想像力を育むことができるでしょう。
犬をお迎えする前に準備しておきたい5つのこと
犬を家族として迎え入れるためには、さまざまな準備が必要です。ここからは、犬と暮らす前に準備しておきたい5つのことについて解説します。
飼育環境を整える
まずは、犬が快適に暮らせる環境を整えましょう。犬用のごはんやトイレはもちろん、さまざまなアイテムを揃える必要があります。
以下のチェックリストを参考に、ひととおりの飼育環境を整えていきましょう。
- フード
- 食器、水入れ
- 計量器
- サークル
- クレート
- トイレトレー、シーツ
- おもちゃ
- タオルや毛布
- 首輪、リード
- 歯ブラシ
- ブラッシング用品
また、犬がキッチンに入れないように柵を設置したり、電気コードをかじらないようにカバーをつけたりと、犬が安心、安全に過ごすための工夫を施すことも重要です。歯ブラシやブラッシング用品など、被毛のお手入れに必要なグッズも早めに準備しておきましょう。
ペット用の「除菌・消臭スプレー」など便利なアイテムを積極的に活用して、人も犬も快適に暮らせる環境を目指しましょう。
十分な収入を確保する
犬との暮らしには、生涯で350~500万円ほどの費用がかかるとされています。犬全体の平均寿命はおよそ14歳とされているため、最低でも月々20,000円ほどの費用がかかる計算です。
また、人間とは異なり、動物には公的な健康保険制度がないため、病気にかかると高額な治療費が必要となることも少なくありません。生涯責任を持って飼えるよう、十分な収入を確保することが大切です。
近隣の動物病院を確認する
ケガや病気に備えて、近隣の動物病院の場所を確認しておきましょう。自宅から近い数軒の動物病院の診察時間や休診日、また夜間診療や往診に対応可能な救急病院のリストを作成して、目につきやすいところに貼っておくとよいでしょう。万が一の際も、慌てずに対応できます。
万が一の場合にお世話を任せられる人を見つけておく
一人暮らしの場合は、入院や出張などもしものときにお世話を任せられる人を見つけておくと安心です。また、家族と一緒に暮らしている場合も、旅行や法事などで家族全員が家を離れる場合に、愛犬のお世話を誰に頼むかあらかじめ相談しておきましょう。
なお、お世話を家族や友人に頼めない場合は、ペットシッターを利用するという方法もあります。ペットシッターとは、飼い主に変わって散歩やえさやり、トイレのお世話などを請け負う人のことです。ペットをお世話するプロに依頼できるため、留守中も愛犬のことを安心して任せられます。
動物福祉について理解を深める
愛犬が健やかで幸せな生活を送れるよう、動物福祉についても理解を深めておきましょう。
動物福祉とは、「動物が心身ともに健康で、幸福であり、環境とも調和していること」を指します。イギリスではペットや家畜など、人間の飼育下にある動物の健康と幸福を守るために「5つの自由」という基本方針が定められ、現在では動物福祉の基本的な考え方として、全世界で認められています。
<動物福祉の「5つの自由」>
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・傷害・病気からの自由
- 恐怖や抑圧からの自由
- 正常な行動を表現する自由
あなたは犬向き?猫向き?それぞれの特徴を解説
ここからは、犬と猫の性格の違いや一緒に暮らすうえでの注意点から、「犬向き」「猫向き」それぞれの特徴を解説します。
「犬を飼いたいけど、自分の性格やライフスタイルに合うかどうか不安」「犬と猫どちらを飼うか迷っている」という方は、ぜひ参考にしてください。
犬と暮らすのに向いている人の特徴
犬は体を動かすことが好きな子が多く、健康のためにはある程度の運動量を確保することも大切です。毎日の散歩はもちろんのこと、休日も公園やドッグランでの遊びなど、犬の健康を維持するために、飼い主側にもある程度の体力が求められます。とくに大型犬の場合は力が強いため、体力に不安のある方は犬に振り回されてしまうこともあります。
運動量を確保するためには、飼育スペースの広さも重要です。犬の飼育環境としてはある程度の広さの家や、庭のある家など、犬が十分動き回れるスペースを確保できる家が望ましいでしょう。
また、犬は人とのコミュニケーションを好む傾向があるため、愛犬と一緒に出かけたり遊んだり、ペットとのふれあいを楽しみたい方におすすめです。
猫と暮らすのに向いている人の特徴
個体差はあるものの、猫は犬と比べてお世話にかかる負担が少ないと言われています。基本的には散歩も必要ないため、仕事や家事育児などで散歩の時間を確保できない方や、ペットとの暮らしに慣れていない方にもおすすめです。
また、猫はマイペースな性格の子が多く、犬と比べると飼い主とのコミュニケーションをあまり求めない傾向があります。もともと単独行動を好む習性があり、お留守番も難なくこなせるでしょう。仕事などで日中不在の時間帯がある方でも飼育しやすいといえます。。
犬を飼う際に持っておきたい心構え
最後に、犬を飼う際に持っておきたい3つの心構えをご紹介します。
いざ飼いはじめてから「イメージと違った」とならないよう、以下の3つの点を心得ておきましょう。
遠出や旅行が簡単にできなくなる
犬と一緒に暮らしはじめると、遠出や旅行は簡単にはできなくなります。犬と一緒に泊まれるホテルを探したり、友人や知人にお世話をお願いしたり、ペットホテルを予約したり犬を飼う前と比べると、遠出や旅行のハードルがぐっと上がってしまうでしょう。
また、犬と一緒に旅行する場合も、長距離移動が犬のストレスにならないよう注意する必要があります。
将来介助が必要になる可能性がある
犬も人間と同じように、高齢になると体の自由がきかなくなってくる場合が多いものです。散歩やトイレも自由にできなくなると、排泄介助や体位交換などの介助が必要です。また、犬の年齢に関係なく、病気によって介助が必要になるケースもあります。
介助には時間も労力も必要なため、生活が一変する可能性も考えられるでしょう。将来的に介助が必要になることも踏まえて、犬が寿命をまっとうするまで責任を持ってお世話をする覚悟が求められます。
引越し先が制限される
賃貸物件で愛犬と暮らす場合は、ペット可の物件を選ばなければなりません。しかし、ペット可の物件はそもそもの数が少なく、賃料も高い傾向があります。
また、ペット可であっても「小型犬のみ」などの条件があったり、契約時に敷金を上乗せしたりする必要があることも少なくありません。環境の変化は犬にとってストレスになるため、これまでの家と同じ広さの飼育スペースを確保する必要もあるでしょう。
このように、犬と一緒に暮らすことを考えると、物件選びになにかと制限がかかります。まずは「ペット可」を第一条件に、そこから希望に合う家を探すことになる点に注意しましょう。
まとめ
犬との暮らしは、私たちに多くの幸せを与えてくれます。「癒やされる」「運動不足の解消になる」など、心身の健康にもプラスの影響を期待できるでしょう。しかし、それと同時に、飼い主には犬が生涯健やかに、幸せに過ごせるよう努力する責任があります。今回紹介した内容を参考に、万全の準備をして犬をお迎えしましょう。