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明石むかい動物病院院長。獣医麻酔外科学会、獣医がん学会。
柴犬は近年、室内で飼われることが増えてきました。柴犬を家族の一員として迎え最初に教えたいことは、「トイレ」ではないでしょうか。飼い主に忠実で賢いと言われる犬種ですが、実はトイレトレーニングが上手くいかずに悩む飼い主は多いようです。
そのお悩みは、柴犬の習性やルーツを理解して、柴犬に合ったトイレを用意してあげることで解決できます。今回は、柴犬に効果的なトイレトレーニングの手順やポイントを解説します。
目次
- 柴犬の習性とトイレトレーニングの必要性
- 柴犬のトイレトレーニング
- 柴犬のトイレトレーニングの注意点
- まとめ
柴犬の習性とトイレトレーニングの必要性
【柴犬版】犬の寝床はトイレと離して!習性に合った効果的なトイレトレーニングを解説
室内で柴犬を飼う場合、所構わずおしっこやうんちをしないように、トイレトレーニングを行います。トレーニングでは、柴犬の習性を理解した上でトイレの場所を決めることが重要です。ここでは、柴犬のトイレトレーニングを行う前に、まず押さえておきたいポイントについて解説します。
柴犬は寝床のそばのトイレを嫌がる
日本では犬を室内飼いするケースが増えました。縄張り意識のある犬が単独で安心して過ごせる空間を提供してくれるサークルやケージも普及しています。サークルやケージを寝床として利用する場合は、トイレを一緒に設置することはやめましょう。なぜなら、柴犬をはじめ犬には、寝床のそばで排泄することを強く嫌がる習性があるからです。
<参考:サークルとケージの違い>
サークル
サークルは、天井がなく、側面だけが柵で囲まれているものです。簡単に愛犬のためのエリアを作ることができます。種類は豊富で「何枚かの柵を組み合わせたもの」「床があるもの」「布製で折りたためるもの」といったタイプがあります。子犬の場合は、ステンレス製がおすすめです。プラスチック製や木製のものは、噛んでしまう恐れがあります。
ケージ
ケージとは、天井と床面があり、四方を柵で囲まれたハウスのことです。全方向が囲まれていますので、愛犬はリラックスしやすいと言われています。ドアの種類は、引き戸タイプや前後ろに開くタイプなどがあります。中には、折り畳みができる布製のソフトケージと呼ばれるものもあります。
寝床のそばでトイレをしない理由
寝床のそばでトイレをしない理由は、犬のルーツにあります。野生時代の犬は、穴倉を寝床にしていました。寝床のそばで排泄をすると、匂いで外的に自分の居場所が知られてしまうため、寝床とは遠く離れた場所で排泄をしていたのです。
この習性は、人間と暮らす現代の犬にも引き継がれています。特にキレイ好きの柴犬は、野生時代の習性が色濃く残っていて、寝床のそばで排泄して汚すことを他の犬種より嫌がる傾向にあります。加えて、そもそも犬は好きな場所で排泄することが自然ですから、室内のどこでもトイレ候補となります。トイレを覚えてもらうためのトイレトレーニングに苦労する飼い主は多いようです。
トイレは寝床と離して設置すると良い
トイレは、寝床としているサークルやケージの中に設置するのではなく、トイレ用のサークルやケージを別に用意しましょう。サークルやケージを用意できない場合は、なんらかの仕切りで四方向を囲ってトイレ用のスペースを作るだけでもOKです。柴犬は、四方を囲めば「ここがトイレだ」と認識できますので、トイレ以外の場所で排泄することを防ぐことができます。
こうしたトイレ専用のスペースが用意されていないと、家の中全体を寝床と考えてしまうことがあります。そうなると、屋外や散歩のとき以外は無理に排泄を我慢するようになってしまいます。
柴犬のトイレトレーニング
柴犬は室内でのトイレトレーニングをしないと、散歩以外で排泄をしなくなる場合が多いと言われています。そのため、室内では排泄を我慢し、我慢しきれなくなったときに室内のどこかで排泄してしまうこともあるでしょう。さらに、雨や雪などの悪天候の際には散歩に行くこともできずに困ってしまいますので、室内で排泄できるようにトイレトレーニングをしておく必要があります。
なかなか上手くいかない場合もありますが、柴犬は忠誠心があって賢い犬ですので、言うことを聞かないわけでも、物覚えが悪いわけでもありません。柴犬の習性によるものです。飼い主は、その習性を理解して、根気強くトイレトレーニングに取り組みましょう。
トイレトレーニングの準備
寝床から離れた場所に、トイレ専用のスペースを作ってペットシートを複数枚敷きます。トイレの設置場所は、柴犬が落ち着ける場所を選ぶようにします。また、身体のサイズに合ったトイレを用意しましょう。小さすぎるとトイレを我慢します。排泄ができても、おしっこやうんちがトイレからはみ出す場合は、トイレのサイズが小さいということです。
トイレの環境に不満を感じると、トイレを我慢したり、失敗したりすることがあります。高いテリトリー意識と用心深さを持つ柴犬が、安心して排泄できるよう環境づくりを大切にしましょう。
トイレに誘導する
トイレにいきたいそぶりを見逃さないように、柴犬の行動を観察します。「床の匂いを嗅ぎながらうろうろする」「前足を軸にクルクルとその場で回って排泄の態勢を整える」「室内で小走りをする」といった行動は、トイレにいきたいというそぶりです。それを見つけたら、「シーシー」「トイレトイレ」「チーチー」などとトイレを促すための言葉をかけてトイレに誘導しましょう。
子犬がトイレにいきたくなるタイミングは、月齢ごとに変化します。たとえば、3か月齢は約3時間ごと、4か月齢は約4時間ごとにトイレにいきたくなるようですので、柴犬の様子に注目しましょう。この他「ご飯のあと」「水を飲んだあと」「遊んで体を動かしたあと」「寝起き」といった排泄したくなるタイミングでトイレに誘導することも、トレーニングとして有効です。
トイレで排泄をしたらほめる
上手にトイレができたら、「いい子!」「good!」などの言葉をかけながら、ご褒美をあげてほめましょう。犬はほめられると「良いことをした」と学習しますので、トイレで排泄をしたら、しっかりとほめてあげてください。何回か繰り返せば、自分でトイレにいって排泄をするようになります。
ご褒美は、おやつをあげたり、頭をなでたり、抱っこしたり、おもちゃを与えたり、散歩に連れていったりと、柴犬が喜ぶことをしてあげてください。ポイントは、トイレをした直後にほめることです。時間が経つと、ほめられた理由がわからなくなってしまいます。
トイレの清潔を保つ
キレイ好きな柴犬は、清潔なトイレでなければ排泄をしません。排泄をしたら、その都度トイレシートを交換しましょう。ちょっとした工夫として、一番下に大きなシートを敷き、その上に小さなシートを敷き詰めておけば、汚れた部分だけを交換すれば良いので、掃除がラクですし、シートの費用も節約できます。
状況に応じてトイレシートを使いわけてもいいかもしれません。在宅していてすぐに交換できる日は1回ごとの使い捨てシートがおすすめです。長時間留守にする日は、吸収率が高いシートや脱臭効果がついているシートが良いでしょう。
なお、犬の排泄物は想像以上に匂いがきついので、ペット用の除菌スプレーを使って簡単にトレーの拭き掃除も併せて行います。週に一度は、トレーを水洗いすることをおすすめします。適度に薄めた塩素系漂白剤などで除菌すると、なお良いでしょう。メッシュタイプのトレーを使っている場合は、ブラシでメッシュ部分も洗ってください。
柴犬のトイレトレーニングの注意点
柴犬のトイレトレーニングを順調に進めるために、気をつけてほしいポイントを紹介します。
絶対に叱らないこと
寝床に近いトイレで排泄しないのは、犬にとって野生の時代から受け継がれてきた習性です。人間だって習慣を変えることが難しいように、犬も習性を変えることは簡単ではありません。そもそも人間社会に無理やり合わせてもらうことを強いています。そのことを理解して、根気強くトイレトレーニングをしましょう。
最初はトイレではないところで粗相をすることがあるかもしれませんが、決して叱ってはいけません。犬は「トイレと違う場所で排泄したから叱られていること」を理解できません。騒がず何事もなかったかのように片づけてください。叱ったり騒いだりすれば排泄自体が悪いことだと勘違いします。その結果、排泄を我慢するか、飼い主の目の届かないところで排泄するようになるでしょう。
なお、粗相した場所は、消臭剤で匂いを完全に消してください。匂いが残っていると「ここがトイレ」と誤解してしまいますので、ご注意ください。
充分なトイレのスペースを確保する
愛犬の体格や排泄時の癖に合わせたサイズのトイレを用意してください。トイレの匂いを嗅ぐ、排泄のポーズや落ち着く場所を探すといった行動が不自由なくできるスペースを確保しましょう。
また、寝床スペースよりもトイレ用サークルの方を広くとるようにしましょう。柴犬は寝床からできるだけ離れた場所で排泄したいという習性があるためです。また、必ず四方向を囲ってください。囲わなければ室内のどこででも排泄してしまいます。
トイレにいきたいそぶりを見逃さない
トイレにいきたいそぶりを見逃せば、トイレトレーニングができません。犬は寝起きや食後に排泄することが多いので見逃さないようにしましょう。また、子犬の場合は1日に複数回排泄をします。食後のほか、遊んで身体を動かした後に排泄をする傾向があります。床の匂いを嗅ぎながらうろうろしはじめたらトイレにいきたいサインですので見逃さないようにしましょう。
トレーニング中にトイレの場所を移動しない
トイレを覚えないうちに、トイレの場所を移動してしまうことは控えましょう。設置する部屋を変えるなどの大移動は、柴犬が混乱してしまいます。やむをえず移動させる場合は、トイレを覚えさせながら、少しずつ移動させてください。
まとめ
柴犬はとても賢い犬種であり、飼い主に忠実と言われる代表格の犬種です。柴犬がトイレを覚えるスピードは、個体による違いではなく、飼い主の教え方の違いと言われています。失敗しても決して叱らず、成功したらたくさんほめながら、根気強く教えてあげてください。