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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
柴犬と言えば飼い主に忠実で、凛としたたたずまいが魅力の犬種ですが、そこに子犬のような可愛らしさが加わった豆柴をご存じでしょうか。日本国内だけでなく世界的にも人気が高まっている豆柴の特徴や飼い方の注意点について、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 豆柴とは?
- 豆柴の平均寿命は?
- 豆柴の被毛や毛色の種類は?
- 豆柴はどんな性格?
- 豆柴は初心者が飼っても大丈夫?
- 豆柴におすすめのしつけの方法は?
- 豆柴の食事の注意点は?
- 豆柴を散歩させる際に気を付けることは?
- 豆柴がかかりやすい病気とは?
- 豆柴の日常のお手入れで気を付けることは?
豆柴とは?
柴犬の中でも小型の犬を「豆柴」と呼ぶようになりましたが、実は正式な犬種として存在するわけではありません。豆柴は1955年ごろに誕生したといわれていますが、「JKC(ジャパンケネルクラブ)」などの団体では、豆柴を犬種としては認めておらず、発行する血統書には、柴犬、つまり「柴」と記載されます。
豆柴の平均的な体重や体高は?
通常の柴犬は35~38cmですが、それよりも小柄な豆柴の平均体高は28~34cm、平均体重は5㎏程度となっています。また、「豆柴」よりもさらに小さい、「小豆柴」と呼ばれる犬種は体長24cm前後、体重は2kgくらいとなります。
両親の大きさと体高をチェックしておく
豆柴も小豆柴も犬種としては柴犬になるので、豆柴として迎え入れたものの将来的に柴犬のように育つことも考えられます。どのくらいの大きさに成長するかの一つの目安として、両親の大きさや体高をチェックしておくといいでしょう。もちろん例外はありますが、将来的な姿をある程度は予想することができます。
豆柴の平均寿命は?
11歳前後と言われており、通常の柴犬と比較して短めです。ただし、なかには20年以上生きた例もあるようなので、飼い方次第では平均寿命よりも長く生きる場合があります。
豆柴の被毛や毛色の種類は?
豆柴の被毛や毛色の特徴は、基本的には柴犬と同じです。ポピュラーなのは赤色の被毛でしょう。黒色や胡麻などの希少な毛色は購入価格が高価になる傾向があります。
被毛の特徴
豆柴の被毛は通常の柴犬同様に、トップコート(外側の硬い上毛)とアンダーコート(内側の柔らかい下毛)の2種類の毛質で構成されるダブルコートです。寒い地域出身の犬によくみられる被毛のタイプで、春と秋の換毛期に気温の変化に対応して毛が生え変わります。
赤茶
赤みがかった茶色です。「裏白(うらじろ)」と呼ばれ、顔の下(顎下)から胸元、お腹をへてしっぽの先まで白くなっているのが理想とされています。一番出生数が多い色味です。
黒
黒色で、赤茶同様「裏白」であるのが理想だそうです。出生数はあまり多くないようです。
胡麻
赤、白、黒が混ざった色で、赤が強いものは赤胡麻、黒が強いものは黒胡麻と呼ばれます。胡麻は比較的珍しい毛色だと言われています。
白
白というよりクリームに近い色合いの子もいます。全体的には白色ですが、一部に赤色などの他の色が入っている場合もあります。鼻鏡(鼻の表面)や唇が黒色で、眼の色が暗褐色か黒色であるのが理想的と言われています。
豆柴はどんな性格?
日本古来の猟犬である柴犬の性格を継承しますが、小型化されることによって依存心が強くなる傾向にあります。そのため、基本的には柴犬と同じような性格を持っていますが、柴犬よりは甘えん坊な子が多いかもしれません。そんな豆柴の性格の特徴をより詳しく見ていきましょう。
従順で誠実
もとは屋外飼育や半屋外での生活だったため、独立心が強く、飼い主に対しての忠誠心が強く、従順に従います。
活発で運動好き
柴犬が猟犬として野山を駆け回っていたルーツを持つことから、豆柴も元気いっぱいで運動することが大好きです。
警戒心が強い
外部の人に対しての警戒心は強く、攻撃行動に出る場合があります。ただし、それほど吠える犬種ではありません。
オスとメスで性格の違いはある?
オスはメスと比較して攻撃的で縄張り意識が強いという傾向があります。また、メスはオスと比較するとおとなしい性格ではありますが、自立心が強く頑固な性格でもあります。
豆柴は初心者が飼っても大丈夫?
比較的初心者でも飼いやすいかもしれませんが、抜け毛対策や日々の運動、忠誠心が強すぎるが故の周りへの攻撃性を抑えるトレーニングなども必要になりますので、しつけやケアに時間を十分に取れる人でなければ飼うのは少し難しいと思います。
豆柴におすすめのしつけの方法は?
豆柴はもともと生粋の猟犬ですので、警戒心が高めなところがあります。そのため、早い時期からの適切な社会化とトレーニングが必須です。
しつけはお迎えした日から
おうちに迎え入れたら、できればその日から行いましょう。できるだけ早めにしつけを行うことで将来的にしつけしやすい犬になります。
適度な距離感を保つ
飼い主は、おうちに来たばかりの豆柴の可愛さになにもかも許してしまいたくなるかもしれません。ですが、そこをぐっとこらえて適度な距離感を心がけ、してはいけないことをきちんと伝えるようにしましょう。忠誠心が強い犬種ですが、しつけができずに適切な関係性をつくれないと、飼い主の指示に従わない犬に育ってしまうことがあります。
時間をかけて、社会化トレーニングをする
もともと警戒心が強い気質の持ち主なので、とくに家族以外の人を警戒しすぎる場合があります。そうならないためには、いろいろな人や犬と触れ合いながら、犬の社会化を心がけることをオススメします。
体を触られることに慣れさせる
警戒心が強いため、体を触られたりすると威嚇したり、噛みついたりすることがあります。焦らずにゆっくりと慣らしていくことが大事です。
豆柴の食事の注意点は?
成長して通常の柴犬サイズになってしまうのを避けようと、食事を制限するようなことはやめましょう。愛犬の健康を保つことが一番大切ですので、適正なフードの量を与えてあげてくださいね。以下の点に注意して、健康的な食事をさせるようにしましょう。
豆柴の平均的な1日あたりの給餌量
その子の体格によるので、体重や運動量から必要なカロリーを計算して、適切な量のごはんをあげましょう。(犬の安静時エネルギー要求量)×(ライフステージ別係数)で必要な食事の量を計算することができます。
犬の安静時エネルギー要求量
体重(kg) |
1.5 |
2.0 |
3.0 |
4.0 |
5.0 |
エネルギー要求量(g) |
94 |
117 |
159 |
197 |
234 |
ライフステージ別係数
生後4か月までの子犬 |
3.0 |
生後4か月から1年までの犬 |
2.0 |
避妊、去勢していない犬 |
1.8 |
避妊、去勢済みの犬 |
1.6 |
肥満傾向もしくは中高齢期で、避妊・去勢していない健康な犬 |
1.4 |
肥満気味、もしくは中高齢期で、避妊・去勢済みの犬 |
1.2 |
減量が必要な犬 |
1.0 |
おやつのあげすぎに注意する
豆柴は太りやすいと言われている犬種です。おやつをあげ過ぎると肥満の原因となるため、与える場合は1日の総カロリーの10%程度にしましょう。
豆柴にあったドッグフードを吟味する
豆柴のフードには動物性たんぱく質がしっかりとれるものがおすすめです。柴犬のように日本原産の犬たちは穀類の消化も得意な傾向にあるので、穀類がある程度含まれているフードをオススメします。
豆柴を散歩させる際に気を付けることは?
活発な豆柴にとって、散歩は欠かせない運動です。愛犬の運動欲求を満たすだけでなく、ストレス解消になる散歩を、飼い主も一緒に楽しんでくださいね。
散歩をするおすすめの時間帯
トレーニングやしつけができていない子の場合には、人や犬が多い時間を避けて散歩させると良いでしょう。また、暑すぎる時間帯の散歩は、熱中症のリスクがありますので避けてください。
散歩の頻度、回数
1日2回、1回30分程度を目安に行うと良いでしょう。
無駄吠えに注意
警戒心が強いため、すれ違う人や犬に対して吠えないよう社会化トレーニングとしつけを日々意識するようにしましょう。
豆柴がかかりやすい病気とは?
柴犬に比べると小柄な分、抵抗力も弱いと考えられますので、体調には十分に配慮してあげましょう。とくに気をつけたい疾患について解説します。
アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎
何らかのアレルゲンによって皮膚に炎症が起こる疾患で、5歳までに発症しやすい傾向にあります。先天的な原因が多いですが、アレルギーが疑われた場合にはアレルギー検査をして特定のアレルゲンを除去したり、こまめな部屋の掃除をしたりすることを心がけましょう。また、定期的なシャンプーが予防につながることがあります。治療はアレルギー除去食、抗アレルギー薬、定期的なシャンプーなどがあります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝のお皿(膝蓋骨)が内側や外側に外れてしまう疾患で、小型犬の場合には内側に外れることが多いです。先天的に膝の骨がはまる部分である溝(滑車溝)が浅い場合などもあるため、悪化させないためには肥満にさせない、滑りやすい床を歩かせないようにして、膝関節に負担をかけないようにしましょう。
軽度の場合にはトレーニングやリハビリ、痛みがあるときには消炎鎮痛剤などを使うケースがあり、重度の場合には手術を行うこともあります。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、遺伝や外傷、激しい運動、老化などによって椎間板が変性し、神経を圧迫することで、痛みや麻痺などが起こる病気です。軽度であればダイエットと投薬、重度の場合には手術を行うことがあります。最近では鍼治療を行う病院も増えてきています。予防としては、肥満にならないように気を付けるだけでなく、滑る床を走らせない、ジャンプに気を付けるなどして、脊椎に負担をかけないことが重要です。
緑内障
緑内障は、目の中を満たしている眼房水が溜まってしまい、視神経が圧迫されることで痛みが伴ったり、失明してしまったりする病気です。
点眼薬などで眼房水(がんぼうすい)貯留を抑える方法や、手術で眼球を摘出することもあります。日々の様子をこまめに観察することが早期治療につながります。
外耳炎
アレルギー性皮膚炎と同時に併発しやすいのが外耳炎です。外耳道が細菌感染したり、皮膚常在菌のバランスが崩れたりすることによって炎症が起きてしまう病気です。悪化すると鼓膜まで炎症が達し、鼓膜に穴が開いたり、痛みを伴ったりします。
認知症
認知症とは、脳の神経細胞の破壊による認識や記憶、判断といった能力に障害が現れ、社会生活に支障をきたす状態のことを指します。柴犬は他犬種よりも認知症になりやすいと言われており、血中の不飽和脂肪酸量の著しい低下が一つの原因だということも分かっていますので、日常的に魚やEPA/DHAサプリメントを摂取することが予防につながるかもしれません。現時点では、有効な治療法はなく、症状を抑えるために鎮静剤や麻酔薬などを使ったりすることがあります。
趾間皮膚炎
肉球間に赤みが見られたら、趾間皮膚炎(しかんひふえん)になっているかもしれません。症状としては脱毛、赤み、痛みなどが挙げられます。原因はアレルギー、感染によるもの、免疫的な問題など多岐にわたります。治療としては、感染症治療、シャンプー、投薬などを行うのが一般的です。散歩などから帰ってきたら、足を拭く際に肉球や肉球間、爪などに異常がないか確認をしてあげるようにしましょう。
豆柴の日常のお手入れで気を付けることは?
豆柴がなりやすいとされるアレルギー皮膚炎は、日ごろのお手入れでケアできることが多いです。神経質になる必要はありませんが、皮膚の弱い犬種だということを念頭にお手入れしてあげるといいでしょう。以下のポイントに注意をしてお手入れしてあげてください。
服はあまり着せない
服を着せるメリットとして抜け毛の飛散防止や、アレルギーの子であればアレルゲンとの接触を避けられるという点が挙げられますが、被毛の密度が高く熱がこもりやすい傾向にあるので、暑い日であれば、通気性が良い、涼しさを感じさせるものを着せると良いと思います。また、常時服を着せているのは、皮膚や被毛の状態が確認しづらくなりがちです。着替えは毎日行い、定期的にブラッシングをしてあげるようにしましょう。
シャンプーを定期的に行う
皮脂を落としすぎないよう、保湿できるシャンプーを使って定期的なシャンプーを心がけましょう。また、ブラッシングを毎日行うと、皮膚・被毛の健康が保つことができます。ブラッシングの際に、皮膚に赤みやかぶれ、傷などの異常がないかも確認するといいでしょう。
耳の点検、掃除を欠かさない
豆柴は、耳のトラブルになりやすい傾向にあるため、赤みがないか、耳垢が増えていないか、かゆみを感じていないかなどのチェックを行いましょう。