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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
小さく愛らしい見た目と、賢くて飼いやすいなどの理由から人気の高いミックス犬「マルプー」。これからマルプーを迎えたいと思っている方へ、今回はマルプーの大きさや性格特徴などの基本情報から、しつけのコツまで、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生監修のもと詳しく解説していきます。
目次
- マルプーってどんな犬?
- マルプーの歴史やルーツは?
- マルプーの体高、体重は?
- マルプーの平均寿命は?
- マルプーの毛色の種類や被毛の特徴は?
- マルプーの外見や吠え声の特徴は?
- マルプーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
- マルプーを飼うのに向いている人は?
- マルプーのトリミング・人気のカットスタイルは?
- マルプーを飼う上で気をつけることは?
- マルプーのしつけを始める時期やしつけポイントは?
- マルプーの食事の注意点は?
- マルプーがかかりやすい病気は?
- マルプーを散歩させる際に気をつけることは?
- マルプーにおすすめの遊びは?
- マルプーの日常のお手入れで気をつけることは?
マルプーってどんな犬?
「マルプー」とはマルチーズとトイプードルをかけあわせたミックス犬です。個体によって特徴は違いますが、両親の犬種の特徴を受け継いで現れることが多いです。
まず大きな特徴が現れやすいのが被毛です。その毛質はさまざまで、トイプードルのようなくるくるとした毛質が表れる場合、マルチーズのような直毛になる場合、両者を合わせたような緩いウェーブのかかったような毛質の場合などがあります。カラーバリエーションも、トイプードルやマルチーズの毛色が出てきます。
マルプーの歴史やルーツは?
ここ10数年程度で特に人気が出てきたのがミックス犬で、その歴史はまだ浅いです。人気の犬種同士をかけ合わせた犬種としてペットショップでも多く見かけるようになりました。なかでも人気のあるマルチーズとトイプードルをかけ合わせたのが「マルプー」です。「プーチーズ」と呼ばれることもあります。
マルプーの体高、体重は?
マルプーの体高や体重について見ていきましょう。
体高
個体差もありますし、トイプードルらしい体格になるか、マルチーズらしい体格になるかによっても異なりますが、オスの体高は21~28㎝程、メスの体高は20~24㎝程です。
体重
本来のマルチーズの体重とトイプードルの体重から考えると、一般的には、オス3~4㎏程、メス2~3㎏程になります。しかし、骨格など個体差があるため、一概にはいえません。オスの方が筋肉質な体型になりやすく、メスよりも一回りほど大きい傾向があります。
マルプーの平均寿命は?
小型犬同士をかけあわせたミックス犬であるため、平均で12〜15歳となります。最高齢についてはわかっていません。
マルプーの毛色の種類や被毛の特徴は?
マルチーズとトイプードルの被毛の特徴から、ふわふわとした細い毛質を持つ子が多いマルプー。毛色や被毛の特徴を詳しく見ていきましょう。
【毛色の種類について】
アプリコット
トイプードルの持つ毛色で、薄い茶色の毛です。
レッド
赤みの強い茶色で、トイプードルが持つ毛色です。
シルバー
薄い灰色の毛色でトイプードルの特徴です。
グレー
シルバーほど薄くない、濃い目の灰色で、トイプードルが持っている毛色です。
クリーム
トイプードルが持つ薄いクリーム色の毛色です。
パーティーカラー
2色以上で、斑点模様ができるようなパーティーカラーになる場合もあります。
【被毛の特徴について】
マルチーズもトイプードルもシングルコートと呼ばれるオーバーコートという毛質がメインに生えているタイプです。そのため、マルプーもシングルコートの構造を持ちます。シングルコートの犬種には毛が一定期間で大量に抜け落ち、生え変わる換毛期がないため、抜け毛の量は少ない傾向があります。また、被毛は伸びてくるので月に1〜2回のトリミングが必要です。
マルプーの外見や吠え声の特徴は?
マルチーズとプードルの両方から受け継がれた垂れ耳、黒くてつぶらな丸い目、小型の体型の犬が多いです。トイプードルのように足が長かったり、マルチーズのように少し胴長のスタイルになったりするなど、成犬時は両親のどちらかのスタイルに近づくことが多いですが、子犬の時から将来の体型を予測することは難しいでしょう。吠え声は小型犬であるため高めの声で吠える傾向にあります。
マルプーはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
マルプーの性格も個体差がありますが、一般的にはトイプードルの知的で活発な性格と、マルチーズの知的で大胆な性格を併せ持つタイプが多いです。上手に信頼関係を築くと飼い主を含め、人ともスキンシップを取るのが大好きな子に育つ可能性があります。オスはメスよりも筋力や体力があり、活発な遊びをすることが好きな犬が多いですが、もちろん個体差はあります。
マルプーを飼うのに向いている人は?
小型犬のため、運動量は必ずしも多く必要ではありません。室内の飼育が適していて、人とのコミュニケーションが好きなので、しっかり遊ぶ時間を取ってあげられる人がよいでしょう。
マルプーは初心者向きの犬?
とても賢く、愛嬌のある性格のプードルと知的で大胆なマルチーズの性格を併せ持つマルプーは、初心者の方でもしっかり向き合えれば、しつけをきちんとマスターし、素敵なパートナーになってくれます。また、大型犬ほどの飼育スペースを要さず、長時間のお散歩などは必要ないケースが多いです。そのため、初心者で一般的な家庭でも、迎えやすいでしょう。
マルプーのトリミング・人気のカットスタイルは?
マルプーはシングルコートのため、抜け毛は少ないです。しかし、被毛は伸びるので、定期的なトリミングが必要です。マルプーの飼い主さんに人気のカットスタイルをご紹介します。
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テディベアカット
くまのぬいぐるみのような仕上がりで、定番人気のスタイルです。マズルを丸く残し、愛らしいフォルムになります。お手入れも簡単です。
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マッシュルームカット
頭と耳を丸くつなげて、マッシュルームのような形でボリュームをつける人気のスタイルです。耳が長めの子に似合います。
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まんまるカット
頭と耳をつなげるようにして、お顔全体を丸くカットした愛くるしいスタイル。アフロカットよりもボリュームをおさえた形です。
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トップノット
頭部の骨格の一番高い部分にある冠毛(トップノット)を生かし、頭頂部の毛を結ぶ人気のスタイルです。毛が伸びてきても目にかからず、目元がすっきりします。
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アフロカット
ボリュームをたっぷり出して、頭全体を丸く仕上げるカット。ふんわりとしたシルエットが人気です。ボリュームがある分、こまめなお手入れは必須。
マルプーを飼う上で気をつけることは?
マルプーを飼う上で、どのようなことに気をつければよいか確認しておきましょう。
滑って怪我をしないような室内環境を整える
小型犬は骨格も華奢で、関節が弱い傾向があるため、滑ることによって関節に負荷がかかってしまったり、ひどい場合は骨折などの怪我につながったりする危険性があります。負担を軽減できるよう、ラグを敷いたり、滑りにくいような素材の床材に変えたりするなどの配慮が必要です。
寒さ、暑さに強くないので温度管理に気を配る
室内犬のトイプードルやマルチーズから産まれたマルプーは暑さや寒さなどには強くありません。室内でエアコンによって温度管理をしっかりしましょう。
マルプーのしつけを始める時期やしつけポイントは?
知的な性格をもつマルチーズとトイプードルの特徴を持つマルプー。生活のルールや自分の置かれている状況などを「社会化」を通して学んでいきます。生活環境に適応しやすくさせてあげるためにも、出来るだけ早いうちから、社会化やしつけを始めましょう。そうすることで、しつけの定着もしやすくなります。
しつけのポイント
かわいい容姿から、つい飼い主が甘やかしてしまいがちな傾向も。暴力はもちろん必要ありませんが、悪いことやいけないことをしたらきちんと厳しくしつける必要があります。
マルプーの食事の注意点は?
小型犬であるため、基本的には小型犬用のドッグフードをメインにします。そのドッグフードのパッケージなどの記載に従い、愛犬の体重に応じた適量を与えましょう。食欲旺盛な犬もいますが、食べ過ぎによる肥満は関節に負担を与えてしまうため注意が必要です。
食事の回数
若齢なうちは、胃も小さく1回の食事で食べられる量が少ない子もいます。その場合は少量のごはんを数回与える必要があります。成長に伴って、1日2回の食事で落ち着くケースが多いでしょう。
マルプーがかかりやすい病気は?
マルプーの体の特徴などからかかりやすい病気もあるので、把握しておきましょう。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝関節の動きを調整する膝蓋骨がはずれてしまう疾患です。その程度によって「グレード」と呼ばれる段階がつけられます。内科的な療法で状態を維持することも出来ますが、疾患の程度やかかる負荷によっては、外科的な治療が必要になることもあります。
皮膚疾患
皮膚のコンディションには個体差がありますが、デリケートな犬は自身の皮膚免疫バリアや脂分泌のコントロールが乱れてしまうことで、膿皮症や脂漏症などの皮膚疾患になることもあります。また、トリミングを必要とする毛が伸びるタイプの毛質であるため、伸びた毛が絡まったり、フェルト状になってしまったりすることで、皮膚炎につながる危険性もあります。犬の皮膚の特徴に合ったスキンケアや被毛のお手入れが必要です。
外耳炎
垂れ耳のマルプーは、夏場など蒸れやすい時期に外耳炎を起こしやすくなります。家庭での耳掃除のしすぎも、外耳炎につながる危険性があります。日常的なスキンシップの一環として、耳まわりに臭いがしないか、耳をめくって中に汚れが溜まっていないかも定期的にチェックするようにしましょう。
流涙症(涙やけ)
個体差がありますが、鼻涙管と呼ばれる涙の出る場所と鼻をつなぐ管が細いため、炎症を起こしやすかったり、詰まってしまったりする子がいます。その場合、「涙やけ」と呼ばれる目頭部分の着色が目立つことがあります。目周りの被毛を衛生に保てるようにカットし、こまめにふき取っておきましょう。変化があったらすぐに動物病院で診てもらい点眼などの対処をする必要があります。
マルプーを散歩させる際に気をつけることは?
個体差はありますが、小型犬は長時間や長距離の運動を必要としません。さらに、関節の弱い子が多いマルプーの場合、運動による負荷のかけすぎで関節にダメージを与えてしまう可能性があります。散歩の頻度は1日1~2回、30分程度で十分とされていますが、それでは足りない子もいれば、その量では足を痛めてしまう子もいたりと、個体によってさまざまです。愛犬の状態を見ながら、また、かかりつけの先生に相談し、調整しましょう。
散歩に行けない場合でも、室内でのスキンシップをはかって、体を使わせてあげるようにしましょう。発散させることは、室内でのいたずら防止にも繋がります。
犬の歩き方をよく観察し、健康チェックを
散歩時の歩行の様子を観察することは関節の異常に早く気付くチャンスでもあります。歩き方に違和感はないか、いつもと同じように歩いているかなど、健康チェックも兼ねて確認をしましょう。
マルプーにおすすめの遊びは?
とても知的なマルプーは、上手に信頼関係を築けると、人とのコミュニケーションを好む犬が多い傾向があります。飼い主さんと一緒に「もってこい遊び」をしたり、ノーズワークなどの知育トレーニングを一緒に行ったりすると、絆も深まるでしょう。
マルプーの日常のお手入れで気をつけることは?
マルプーの日常のお手入れについて、以下をチェックしておきましょう。
被毛のお手入れ
基本的には1か月に1回程度のシャンプーと1か月に1〜2回のトリミング、1~2週に1回程度のブラッシングで問題ないです。ただし、細毛で、伸びていく毛質のため、絡んだり、毛玉になったりしやすく、蓄積する皮膚や被毛の汚れによって皮膚炎につながる危険性があります。毛質や皮膚の状態次第では、もう少しこまめに行う必要も出てくるでしょう。
目の周りのお手入れ
特に目の周りの被毛は伸びすぎると目の中に入って傷付けてしまったり、目やになどで汚れて皮膚炎のもとになったりする可能性があります。トリミングや掃除を行い、気をつけましょう。
足裏の被毛のカットや爪切り
関節があまり強くない小型犬のため、足裏の毛が伸びていたり、爪が伸びていたりすると滑ってしまって、関節に負担がかかる危険性があります。関節への負担を軽減するために、足裏の毛や爪をこまめに手入れして、滑りやすいフローリングは滑り止めのラグなどを引く等の工夫が必要でしょう。
耳掃除
垂れ耳であるため、夏場などは蒸れやすい傾向があります。かといって、耳掃除のしすぎは外耳炎につながる危険性も。定期的なトリミングの際に必ず耳掃除も行ってもらうようにし、自宅では耳の外側に出てきた汚れをふき取るのみでも良いでしょう。ただし、悪臭などは外耳炎のサインの場合があるので、気づいた際には動物病院を受診しましょう。
歯磨き
顎が小さめの犬同士を掛け合わせた犬種であるため、マルプーも顎が小さめで、歯周病になりやすい危険性があります。若齢のうちから歯磨きの習慣をつけて歯周病を予防しましょう。