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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬が足や足の間や肉球をしきりに噛んだり舐めたりしていたら、それは指間炎にかかっている可能性があります。指間炎とはどのような病気なのでしょうか?今回は、指間炎の症状や原因、治療法について、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬の指間炎とは?
- 指間炎の症状とは?
- 犬の指間炎の原因とは?
- 指間炎になりやすい犬種とは?
- 犬の指間炎はどのように予防すればいい?
- 犬の指間炎の治療法は?
- 指間炎の治療にかかる費用はいくらくらい?
犬の指間炎とは?
指間炎とは、犬の足の指や肉球の間に炎症が起きる病気です。ただの皮膚疾患だと考えて放置しておくと、患部の状態が非常に悪くなってしまうことがあります。指間炎という言葉自体、あまり聞き馴染みのない方もいるかもしれませんので、次項で詳しく症状や原因を見ていきましょう。
指間炎の症状とは?
愛犬がしきりに足を舐めたり噛んだりしている場合は、指間炎にかかっていることを疑いましょう。炎症を起こした部分は赤くなったり腫れたりします。症状がひどくなると化膿してしまうこともあります。痛痒いのを嫌がって舐めたり噛んだりを繰り返すと、患部はジメジメと湿った状態になるため、細菌が繁殖しやすくなり症状が悪化しがちです。そうなる前に、飼い主は早めに指間炎に気づいてあげたいものです。
犬の指間炎の原因とは?
犬の指間炎の原因には、日常生活で起こる様々なことが関わっています。きっかけとなる原因を特定することは難しいかもしれませんが、もし指間炎を繰り返しているならば、以下の項目を確認してみてください。
皮膚疾患
指や肉球の間も皮膚ですので、アトピーなどのアレルギー性皮膚炎、脂漏症など皮膚のトラブルを起こしやすい子は、どうしても指間炎になりやすくなります。アレルギー性の皮膚病は、生後6か月から3歳頃に最初の症状が出るのが一般的で、症状が落ち着いたり悪くなったりを繰り返します。発症には、遺伝的な原因や、犬種、居住環境など、多くの要因が関与すると考えられています。
また、真菌の感染が指間炎のきっかけになることもあります。皮膚糸状菌症とは、皮膚や被毛に真菌(カビ)が感染することで起こる病気で、皮膚のバリア機能が低下すると発症しやすくなります。 ノミ、ヒゼンダニ、マダニ、シラミなど、寄生虫が感染することによる皮膚病もあります。
ケガ
犬は屋外でも靴を履くことはありませんから、散歩中などに小石やガラス、トゲがある草の実などを踏んでしまうことによって足に傷ができ、そこから指間炎になることがあります。
火傷
気温が高くなるとアスファルトの温度は、想像以上の高温になります。飼い主が気づかないところで肉球を火傷してしまい、それが元で指間炎を引き起こすことがあります。
爪の疾患
爪が欠けてしまったり、逆に伸びすぎて巻き爪になり肉球に刺さってしまうことがあります。犬が爪の違和感を感じて足先を舐めたり噛んだりすることによって、指間炎が起こることがあります。
皮膚疾患以外の原因
犬の中にはストレスが原因で足先を舐める、かじるといった行動をする子がおり、それが原因で、指間炎が起きることがあります。また、神経系の異常が原因で足先を舐めたり噛んだりすることがあります。他にも、発作の症状の一種として指間炎が見られる場合もあります。
汚れ
外を散歩することで被毛に土やほこりなどの汚れが溜まり、そこから雑菌が繁殖して指間炎となることがあります。雨の日などは、散歩の後に被毛を濡れたままにしておくと雑菌が繁殖しやすくなります。
トリミングなどでの違和感
トリミングなどで足にバリカン処置をした後、短い毛による刺激や、バリカンの刃に皮膚が負けて細かい傷がつき、痛みやかゆさなどを感じている場合があります。気になって何度も舐めたり噛んだりすることにより、指間炎が起こります。
指間炎になりやすい犬種とは?
外傷による指間炎は、どの犬種でも同じ確率で罹患する可能性があるのですが、皮膚病になりやすい犬種は、指間炎を起こしやすいと言えます。皮膚病になりやすい犬種としては、シーズー、ゴールデン・レトリーバー、ダックス、パグ、フレンチ・ブルドッグなどです。アトピーやアレルギー性皮膚炎からの波及だと、柴犬でも見られやすい傾向にあります。
犬の指間炎はどのように予防すればいい?
指間炎の症状や原因が分かったところで、次はどのように予防すればいいのかが気になるところですよね。まずは、日常生活の中で簡単にできるケアを紹介していきます。
家庭でのケアについて
指間炎の予防には飼い主のケアが必要です。基本的に、指間を清潔に保つことが重要ですので、散歩後に異物が挟まっていないかを確認するようにしましょう。帰宅後は、汚れを洗い落とし、しっかりと乾かしてあげましょう。
アトピーなど、基礎疾患がある場合には皮膚疾患のケアが必要です。また、トリミングの際に足裏バリカンなどを注文したあとは、犬が違和感なく過ごしているかをみてあげてください。足裏の不快感が指間炎を引き起こしますので、飼い主の注意深い観察が必要となります。
犬の指間炎の治療法は?
犬の指間炎の治療にはいくつかの種類があります。以下のような方法のどれが愛犬には適しているのか、事前に獣医師に相談しておきましょう。
原因の除去
お話ししたように、犬の指間炎の原因は様々なので、かゆみを取る、炎症を抑えるなどの対症療法だけでは十分ではありません。指間炎を引き起こした原因をなくさない限り、指間炎を繰り返します。基本的には、皮膚病などの基礎疾患があれば、その治療を行い、土やほこり、毛などの異物を取り除いてあげ、足を清潔に保つことが大切です。
投薬治療(内服薬、外用薬)
抗生剤や抗炎症剤などを用いて治療をします。軽度であれば外用薬のみで治療できることもありますが、重度の状態や、外用薬をすぐに舐めてしまうようなこの場合には、飲み薬で体の内側からアプローチすることもあります。
薬浴(シャンプー)
薬浴とは、薬用シャンプーを使って身体を洗うことです。抗菌、殺菌、抗脂漏、抗炎症などの作用があるシャンプーを使って、定期的に薬浴させることが有効です。犬の好みを考慮しつつ、獣医さんに症状に合わせたシャンプー選びのアドバイスをもらってもいいでしょう。
シャンプー後はしっかりと乾かさないと、雑菌が繁殖しやすい環境を作り出してしまうので注意しましょう。また、洗い残しは皮膚炎の原因になりますので、ご自宅で行う場合には病院でレクチャーを受けてから行うのがオススメです。
毛を整える
被毛が長いと汚れが付きやすく、指間炎も起こしやすくなります。汚れが付きにくいような長さに整えることも予防に繋がります。
エリザベスカラーをする
患部を舐めたり噛んだりすることによって悪化しますので、これらの行動を防ぐために、犬の負担にならない範囲でエリザベスカラーを使用することがあります。
肉球の隙間の毛を刈る
肉球間の通気性をよくするために毛を刈ることが予防につながることがあります。ただ、皮膚がバリカン負けして、短い毛が刺激となって逆に悪化させてしまうこともありますので注意が必要です。
指間炎の治療にかかる費用はいくらくらい?
治療内容から炎症の状態によって費用が大きく変わり、1回の通院で3,000円から1万円以上するものまでさまざまです。もし、不明点があり、不安を感じる場合は事前に獣医師に相談をするのが良いでしょう。
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