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往診専門るる動物病院、TNRののいちアニマルクリニック 所属。小動物臨床15年、往診による一般診療、終末期医療、オンラインでの診療や相談にも積極的に取り組む。
ペットとして迎えてはじめて分かる、犬のいいところがたくさんあります。犬は可愛いだけでなく、飼い主の生活や健康に多くのメリットをもたらすでしょう。今回は犬のいいところと、犬と猫で迷っている方に向けて猫のいいところも紹介します。犬を飼うかどうか考えるための参考にしてください。
目次
- 犬のいいところ9選
- ちなみに猫のいいところは?
- 犬を飼ううえでの注意点
- まとめ
犬のいいところ9選
犬にはいいところが数え切れないほどあります。犬を飼う人に質問すると、さまざまな答えが返ってくることでしょう。犬のよさは犬種によっても変わってくるため、ここでは多くの犬に共通する魅力を紹介します。
幸せホルモンの効果で心身ともに癒やされる
犬とのふれあいによって、飼い主と犬の脳内に「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。オキシトシンはセロトニンの分泌を促し、コルチゾールの分泌を抑えるホルモンです。犬好きであれば犬と触れあって癒やされた経験があると思いますが、この癒し効果はオキシトシンの働きによってもたらされます。
また、オキシトシンはぬいぐるみやロボットとの交流では得られないことも確認されています。このように幸せホルモンであるオキシトシンの分泌を促す存在であることが、犬のいいところに挙げられるでしょう。
運動不足を解消できる
飼い主の運動不足を解消してくれることも、犬のいいところの1つです。犬には散歩が必要なことは、犬を飼ったことのない人もご存知でしょう。散歩の時間は犬種によって変わりますが、犬の健康のためには1日2回の散歩を30分〜1時間程度行うのが理想とされています。厚生労働省が推奨する成人の運動量は「歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上」です。つまり、犬の散歩を毎日行うと、飼い主にも理想的な運動習慣が身につきます。
出典:健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023|厚生労働省
規則正しい生活ができる
犬は飼い主の生活リズムにあわせて過ごす生き物である一方、犬の散歩には適した時間帯があります。とくに夏場は、日中に散歩に行くと地面が高温になっているため、早朝や日没後に出かけるのが理想的です。また、ごはんも1日2回に分けて与えるため、徐々に生活のルーティンが形成されていくでしょう。たとえ飼い主が夜ふかししていつもより遅い時間まで寝ていたとしても、犬がごはんをもらうために飼い主を起こしにくるので、睡眠時間も整いやすくなります。
交友関係が広がる
犬を飼うと、散歩やドッグラン、イベント、SNSなどを通して飼い主仲間や犬好きとの交流が生まれるようになります。会社や学校でのつながりとは違った人たちとの交流も生まれるでしょう。そうした交友関係の広がりも、犬のいいところの1つです。
家族との会話が増える
「子はかすがい」ということわざのように、同居家族と犬のお世話を通して会話が増える可能性があります。お散歩やごはんをお願いしたり、犬を一緒に可愛がったりといった積み重ねで、犬を迎える以前よりも仲良くなるかもしれません。また、離れて暮らす家族が犬好きであれば、犬の成長記録を送ったり、頻繁に遊びに来たりとコミュニケーションの機会が増えるでしょう。
部屋をきれいに保てる
犬にとって快適な室内環境を整えるために、整理整頓や掃除をこまめに行うようになります。犬は野生のころの名残で、落ちているものは何でも口にしてしまう生き物です。そのため、犬の手が届く範囲に食べ物やゴミ箱を置いていると、誤食してしまうリスクがあります。食べたものによっては命に関わることもあるため、整理整頓を徹底することになるでしょう。
子どもの思いやりを育める
子どもは飼い犬を通して、お世話が必要なこと、相手が嫌がることはしないことなどを学べます。そのため、小さい子どもがいる家庭は、犬を迎えることで子どもの情操教育につながるでしょう。幼稚園・保育園や小学校に入ったあとも、きっとほかのお友達に思いやりをもって接する子に育ってくれます。
子どものアレルギーや感染症のリスクを下げる
福島県立医科大学医学部小児科学講座の岡部永生氏らによる研究「Associations between fetal or infancy pet exposure and food allergies: The Japan Environment and Children’s Study」によると、胎児期または幼児期初期に犬または猫を飼っている家で過ごしていた場合、3歳までに食物アレルギーを発症するリスクが低下することがわかりました。
また、フィンランドのクオピオ大学病院(Kuopio University Hospital)が乳児397人を対象に行った調査「Associations between dog keeping and indoor dust microbiota」では、犬を飼っている家庭の乳児は呼吸器疾患や耳の感染症にかかるリスクが低いという結果が出ています。その要因は、乳児期から犬の糞尿や体につく菌に触れることで耐性がつくためだと言われています。
しかし、アレルギーも感染症の要因は人によってさまざまです。「犬を飼ったらアレルギーにも病気にもならない」というわけではないことは理解しておきましょう。
認知症リスクの低下につながる
犬を飼う高齢者は、認知症のリスクが40%ほど低下するという研究結果もあります。その理由は、毎日散歩に行き、決まった時間にごはんを与えるという犬中心の生活習慣がキープされるためです。また、散歩で飼い主仲間を含む近隣住人と交流する機会があることも、認知症リスク抑制の要因だと言われています。
防犯になる
犬は縄張り意識が強い生き物で、知らない人がいると警戒して吠えます。その性質を利用して、かつては番犬として家庭で飼われてきました。警察庁の「住まいる防犯110番」によると、空き巣が犯行をあきらめる理由に犬を飼っていることが上がっています。そのため、犬を飼うことは空き巣対策としてのメリットもあるといえるでしょう。
ただし、不審者に吠える犬は、宅配業者や来客にも吠えて近隣トラブルの原因になるリスクもあります。番犬として高度なトレーニングを重ねるか、吠えないようトレーニングするかのどちらかの方法でトラブルを避けましょう。
ちなみに猫のいいところは?
ペットを飼いたくて犬と猫のどちらにするか迷っている人もいるでしょう。犬にも猫にも、それぞれいいところがあります。とくに犬と対照的な猫のいいところは、次のとおりです。
散歩が必要ない
猫は持久力よりも瞬発力に優れた生き物なので、散歩のような長時間の運動はあまり得意ではありません。ジャンプして遊べるキャットタワーのように立体的な動きができるグッズを用意したり、猫じゃらしのように狩りの動きができるおもちゃで遊んであげたりすれば十分です。
鳴き声が小さい
犬の鳴き声は約80〜100デシベルで、救急車のサイレンや電車の走行音と同じレベルの大きさだと言われています。一方で、猫の鳴き声は75デシベル程度と、犬よりもやや小さい傾向にあります。不快に感じる音は人それぞれではありますが、騒音によるご近所トラブルの可能性は犬よりも抑えやすいかもしれません。
マイペースに過ごす
猫は犬よりも自立した性格で、マイペースに過ごす子が多い傾向にあります。ごはんも少量ずつ食べるため、1日分のドライフードをまとめて置いても、自分で量を調整しながら複数回に分けて食べる子もいるようです。一方でマイペースだからこそ、飼い主が家事や仕事をしている最中にも邪魔して甘えてくる側面もあります。
広くない家でも飼いやすい
犬と違ってジャンプ力のある猫は、縦の移動が得意な生き物です。高さのある家具やキャットタワーで上下運動をするため、1Kや1DKといった一人暮らし用の間取りでも十分飼えます。ただし、猫は狭い隙間にも侵入できてしまうため、柵で行動範囲を制限してもすり抜けてしまうリスクがある点には要注意です。
犬を飼ううえでの注意点
犬を飼うことでいいことはたくさんある一方で、これまで通りの暮らしが送れなくなる可能性もあります。犬を飼ううえでの注意点をしっかり理解したうえで、犬を家族としてお迎えするかどうか検討してみてください。
家を長い時間空けられなくなる
犬の散歩や食事のために、朝や夜は家にいる必要があります。そのため、医療・介護関係、警備、運送などのような勤務時間が不規則な仕事に就いている人には、犬を飼うのをおすすめできません。自分が不在の際にお世話してくれる同居家族がいない場合、決まった時間に働ける職場に転職しないかぎり犬を飼うのは難しいでしょう。また、頻繁に旅行や出張で外泊することもできなくなります。そうした覚悟のうえで、犬を迎え入れましょう。
引っ越し先の選択肢が限定される
一戸建ての持ち家に住んでいる場合は基本的に自由に犬を飼えますが、集合住宅の場合はペット可の物件でなければ犬は飼えません。ペットの可否は基本的に賃貸契約書や管理規約に記載されていますので、確認してみてください。一人暮らし、カップル、高齢者の方は今後生活環境の大きな変化がないか、10年、20年と犬を最後まで責任をもって飼い続けることができるか、収入やライフステージの変化をよく考えておきましょう。
また、犬を飼うためには犬が寝床とするサークルを置くスペースと、ある程度走り回れるスペースが必要です。さらに、誤食の可能性があるものを遠ざけるためにも、十分な収納スペースも欠かせません。そうした条件を満たす物件に住む必要があるため、犬をお迎えしたあとは引越し先が限られてしまう点にも要注意です。
家具や壁が傷つくリスクがある
子犬期の歯が生え変わるタイミングではとくに、犬が口に違和感を覚えるため、壁や家具などを噛む傾向があります。また、犬の本能によってソファーや布団、クッションなどの柔らかいものを掘って形を整えることもあります。大事な家具や内装に傷がついたり劣化が早まったりするおそれもあることは、事前に理解しておきましょう。
治療や介護にお金も時間も必要
犬は人間のような健康保険がないため、医療費が高額になります。ペット保険はあるものの、人の治療費と比べるとかなりの出費が必要です。また、寿命が近くなると目が見えなくなったり、歩けなくなったり、排泄のコントロールがきかなくなったりと、身体機能が低下するケースもあります。動物病院への通院はもちろん、家族による介護が必要になるため、時間もお金もかかることは覚悟しておきましょう。
まとめ
犬は愛嬌があって可愛いだけでなく、ペットとして迎えると犬にあわせたライフスタイルになるため、飼い主の健康にも良い効果をもたらします。さらに、家族や散歩仲間とのコミュニケーションも生まれるなど、良いことずくめです。ただし、猫と違って鳴き声が大きく、飼うためには室内に一定以上のスペースが必要なため、犬を飼うのが難しい家庭もあるでしょう。
ペットを迎えるには、ペットショップのほか、ブリーダーや保護犬、保護猫を迎えるといった方法もあります。犬を飼ううえで負うべき責任や覚悟をしっかり理解したうえで、犬とのしあわせな暮らしをはじめてみてはいかがでしょうか。