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ふくふく動物病院院長。得意分野は皮膚病。飼い主とペットの笑顔につながる診療がモットー。キャバリアと5匹の保護ねこ、わんぱくなロップイヤーと一緒に暮らしている。

ドッグフードには、総合栄養食や一般食などの「目的別」、またドライタイプやウェットタイプなどの「形状別」、子犬用や成犬用などの「ライフステージ別」、肥満対策や療法食の「機能別」など、さまざまな分類があります。ペットの健康に関わるドッグフード選びは複数の種類の中から選ぶ必要があります。
この記事では、獣医師の平松育子先生に聞いた、たくさんあるドッグフードの中からどの種類を選べばよいのか、それぞれの分類の特徴と選び方について解説していきます。
目次
- ドッグフードの種類、総合栄養食と一般食の違いは? 目的別分類は4つ
- 【ドッグフードの種類①総合栄養食】
- 【ドッグフードの種類②療法食】
- 【ドッグフードの種類③間食】
- 【ドッグフードの種類④その他の目的食】
- ドライやウェット…ドッグフードの形状分類4つと選び方のポイント
- ドッグフードのライフステージ分類と選び方のポイント
- 【①子犬期/成長期用】中・小型犬は~1才、大型犬は~1才半程度
- 【②維持期用(成犬用・高齢犬用)】中・小型犬は1才程度~、大型犬は1才半程度~
- 【③オールステージ用フード】
- 【④妊娠期/授乳期用】
- 機能別ドッグフード(療法食や体重管理用、犬種別など)の種類と選び方のポイント
- “原材料”の種類と選び方のポイント
- カインズで取扱中のドッグフードやトッピングに使えるフード
- まとめ
ドッグフードの種類、総合栄養食と一般食の違いは? 目的別分類は4つ
ドッグフードは、給与目的で分類すると「主食」と「間食」に分けられます。主食には「総合栄養食」や「療法食」、おやつやご褒美などで与える「間食」、さらに「そのほかの目的食」の4つの分類があります。それぞれについてくわしく見ていきましょう。
【ドッグフードの種類①総合栄養食】
「総合栄養食」とは、主食として与えることを目的としたドッグフードです。
総合栄養食のドッグフードと水だけで、成長段階ごとの健康が維持できる栄養素が配合されているフードです。海外製品のドッグフードでは、「総合栄養食」ではなく「AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準をクリア」などの記載となっていることがあります。
なお、「総合栄養食」には、特定の犬種のかかりやすい病気などに配慮した「犬種別フード」や、体重管理や気になる健康ポイントに応じた「機能性フード」など、さまざまな種類があるので、愛犬に合ったものを選んであげましょう。
【ドッグフードの種類②療法食】
「療法食」とは、特定の病気や健康状態の犬に対応するため、獣医師の指導のもとで与えるドッグフードです。病気の治療・予防を食事面からサポートすることを目的として、特殊な栄養バランスに調整されています。
なお、総合栄養食の「機能性フード」は、「療法食」の代わりにはならないので注意してください。
【ドッグフードの種類③間食】
「間食」とは、おやつやごほうびなどでコミュニケーションの手段として犬に与えるものです。ジャーキーやボーロ、チーズなどがこれに当たります。
愛犬に「間食」を与えるときは、1日に必要なエネルギー量の10%ほどにとどめ、栄養バランスが崩れないように注意することが大切です。また、「間食」を与えた日は、カロリーオーバーになってしまわないように、間食を食べた分主食となる「総合栄養食」の量を減らします。
また病気や特定の体質のために療法食を与えている場合は、自己判断で「間食」を与えないようにしてください。必ずかかりつけの獣医師に相談し、指示に従うようにしましょう。
【ドッグフードの種類④その他の目的食】
上記3つ以外のドッグフードのことを、「その他の目的食」といいます。表示方法はさまざまで、「一般食」「副食」「栄養補完食」「カロリー補給食」と記載される場合もあります。
食いつきのよいおかずタイプやふりかけタイプのドッグフード、サプリメントなどもこれに当てはまります。おかずタイプのものは、「総合栄養食」と間違えやすいですが、栄養基準を満たしていないので「それだけ」を与えるのでは栄養バランスが偏ってしまうので注意してください。
与える量は、1日に必要な摂取カロリーの10%程度までで、与えた分主食を減らして調整します。
ドライやウェット…ドッグフードの形状分類4つと選び方のポイント
ドッグフードは形状ごとの分類が4種類あります。水分量や加工法の違いからドライ、ソフトドライ、セミモイスト、ウェットの4タイプ、主な特徴は次の表を参照してください。
水分量 | 加工法 | 特徴 | |
---|---|---|---|
ドライ | 10%以下 | 加熱発泡処理された固形状 | ・長期保存できる ・コストが安い |
ソフトドライ セミモイスト |
25~35% | 加熱発泡処理されている 湿潤調整剤を使用してしっとりさせている |
・嗜好性が高い ・水分が多く傷みやすいため保存料や添加物が使われる |
ウェット | 75% | 殺菌工程を経て、缶詰やレトルトパウチに充填される | ・嗜好性が高い ・水分摂取ができる ・ドライフードに比べて高価 |
ドライタイプのドッグフードは、種類が豊富で、水分量が少ないことから傷みにくく保存もききます。他のタイプと比べてコストもかからないため、基本的には愛犬の健康管理のための主食には、ドライタイプの総合栄養食をおすすめします。
犬は一般的に、水分を含んだ食べ物の方が風味を強く感じるため、ドライタイプよりソフトドライタイプやセミモイストタイプ、ウェットタイプを好む傾向にあります。
しかしソフトドライタイプやセミモイストタイプのフードは、水分を多く含むことからそのままでは傷みやすいため、腐敗を防止するための添加物が使われています。そのため日常的に主食として与えるのはおすすめしませんが、食欲がないときのトッピングに活用したり、トレーニングなどでおやつとして与えたりするのに便利です。ただし、保存料や添加物に敏感な、アレルギー体質の犬には注意が必要です。
ウェットタイプのフードは、柔らかく食べやすいことから、特に歯が弱くなっている老犬におすすめです。また、食いつきも非常に良くなります。病気や加齢で食欲がない犬やドライフードだけでは食べない犬にはトッピングに利用できるため、食事のバリエーションを広げることもできます。
ウェットフードは、災害時などの非常食としてもおすすめです。ストレスフルな環境で食欲が落ちていても、食いつきが良くなり水分も一緒に摂れるので、災害備蓄品としてストックしておくことをおすすめします。
ただしウェットフードは水分を多く含むため、歯に残りやすく歯石の原因となりやすいです。日々の口腔ケアとして食後の歯磨きを徹底しましょう。
ドッグフードのライフステージ分類と選び方のポイント
総合栄養食のドッグフードには、対応するライフステージ(成長段階)があります。子犬、成犬、高齢犬と、それぞれのライフステージによって必要な栄養素や栄養バランスは変わるので、それぞれに見合ったフードを選ぶことが大切です。
では、ライフステージごとにどう違うのか見ていきましょう。
【①子犬期/成長期用】中・小型犬は~1才、大型犬は~1才半程度
ドッグフードのパッケージに、「子犬用、パピー用、成長期用、グロース」等の表記がされています。
この時期は、成長するために栄養がたくさん必要です。しかし内臓も消化機能も成長途中で未発達なため、一度にたくさん食べることができません。そのため幼児期用のドッグフードは、少量で効率良くエネルギーや栄養素を摂取できます。高タンパクかつ高エネルギーで、成長のために必要な栄養素が強化された配合です。
【②維持期用(成犬用・高齢犬用)】中・小型犬は1才程度~、大型犬は1才半程度~
ドッグフードのパッケージに「成犬用、維持期用、〇才以上」などの表記がされています。成長が落ち着いた犬の食事管理の課題は“健康の維持”です。そのため、この時期の犬にとって健康維持のために必要な栄養素がバランス良く配合されたつくりになっています。
一般的には高齢期までを含めて維持期用(成犬用)のフードとされていますが、メーカーによっては7才前後からは「シニア用(高齢犬用)」として別商品を展開していることもあります。さらに、シニア用とハイシニア用で別商品が設定されているものもあります。
シニア用のフードは低カロリー、低脂肪です。活動量が減ったり代謝が落ちたりする、加齢の変化に応じた作りになっています。また、内臓機能の低下に配慮し、消化しやすい仕様になっています。
高齢期の健康状態は個体差があるので、年齢で一概に区切らずに、愛犬の体調や食欲を見ながら獣医師と相談して適したフードを選ぶようにするとよいでしょう。
【③オールステージ用フード】
ドッグフードのパッケージに「全成長段階用、オールステージ用」の表示がされています。
名前の通り、どの成長段階の犬にも与えることができるフードなので、成長段階の異なる犬を複数飼育している場合に便利です。
与える際に、給与量を成長段階に合わせて調整します。
【④妊娠期/授乳期用】
ドッグフードのパッケージに「妊娠期、授乳期用」と記載されています。
妊娠中や出産して授乳している母犬に適した栄養豊富なフードで、母犬の健康維持と子犬の成長をサポートするための良質なタンパク質や脂質、食物繊維、カルシウム、リン、DHAなどがバランスよく配合されています。
栄養価の高い幼児期用のフードを代用することもあります。
機能別ドッグフード(療法食や体重管理用、犬種別など)の種類と選び方のポイント
前述した「維持期用(成犬用)」のドッグフードには、次のような特殊なドッグフードもあります。
✓機能性フード
小麦などの食物アレルギーに配慮したフードや、肥満対策用(体重管理用)のフード、皮膚・被毛ケアや眼の健康のためのものなど、気になる健康問題にフォーカスしたさまざまなものがあります。
避妊、去勢をした犬はホルモンバランスが変化して太りやすくなるため、避妊・去勢手術後の体重管理が可能な「避妊・去勢手術後用」のフードがおすすめです。
✓療法食
療法食は、食事管理が必要な疾患に対して、特別に栄養バランスが調整されています。
療法食は特定の病気の治療のためのフードですので、獣医師の指導の下に使用する食事です。病気ではない犬が食べると健康を損ねることがあります。自己判断で与えるのはよくありません。
必ず獣医師に相談するようにしましょう。
✓犬種別のフード
犬種ごとの健康課題に対応した栄養バランスに調整したフードです。
たとえばミニチュアダックスフンドは、脚(関節)や腰へ負担軽減のため、太りやすい体質の対策に体重管理に配慮した仕様になっていたり、フレンチ・ブルドッグは、皮膚の健康維持や腸内環境の健康維持に配慮した仕様になっていたりします。
とはいえ、犬種によって必要な栄養素が異なるわけではないので、一般的な総合栄養食でも問題ありません。
“原材料”の種類と選び方のポイント
ドッグフードを選ぶ際には、まずは目的別の分類やライフステージ別の分類から選びます。そして最後に“原材料”をチェックするとよいでしょう。
ドッグフードのパッケージには、そのドッグフードに使われている原材料が表示されています。このパッケージの原材料表記は、「愛玩動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」によって内容が決められているので、ドッグフードを選ぶ際の指標にもなります。
原材料表記からは、次のことをチェックしましょう。
✓愛犬の好みのタンパク源か
✓安心できる材料・部位が使用されているか
✓アレルギーがある場合は、原因食材が含まれていないか
よく勘違いされやすいのが「添加物」についてです。
添加物には、加熱によって失われる栄養素などが加熱工程の後に添加される「栄養添加物」や、フードの品質を保つための「保存料」や「酸化防止剤」、見栄えを良くしたり嗜好性を高めたりするための「着色料」や「香料」などがあります。
基本的に国内で販売されているドッグフードに使用される添加物は、ペットフード安全法の基準に従っているため安全性に問題はないとされています。添加物は、一見体に悪そうなイメージを持たれがちですが、ドッグフードの品質を守るためには必要なものもあるということを念頭に置いておきましょう。
また原材料名は、配合量の多い順に記載されています。そのため「タンパク源(肉・魚)が一番はじめに書かれているものがよい」といわれることがあります。しかし記載するスペースが限られる場合は、原材料を「穀類」「肉類」のように分類名による表示も可能なため、表示方法によっては順序が変わってしまうことがあるということを知っておきましょう。
添加物に関しては添加物名と用途名を両方表示する必要があります。
カインズで取扱中のドッグフードやトッピングに使えるフード
カインズのオンラインショップでは、ドッグフードをライフステージ別に展開しています。
愛犬の好みや体質に合わせて選んでください。
スマイリア サーモンと玄米のぜいたく素材ごはん 800g 成犬用
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
ドッグフードの種類について解説してきました。
犬の健康管理には、主食としてライフステージに合った総合栄養食のフードを与えることが大切です。数ある総合栄養食のフードの中から、ライフステージや愛犬の健康課題、好みなどを考慮して、愛犬の健康維持のために最適なフードを見つけましょう。
ドッグフードを食べて体調を崩したことがある犬や、何らかの疾患を持っている犬の場合は、自己判断でドッグフードを選ばずに獣医師に相談しながら選んだ方が安心です。愛犬のために正しい知識を持って、愛犬に最適な栄養バランスのドッグフードを選んで与えましょう。