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Animal Life Partner代表。ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、製品開発など幅広く活動。
犬の平熱は基本的に人間よりも2〜3度ほど高めです。しかし、異常に体温が高い場合は病気が隠れている可能性も考えられます。命にかかわる病気を抱えている場合もあるので、十分な注意が必要です。今回の記事では、犬が発熱する理由や疑われる病気、病院へ連れていくべき症状についてアニマルライフパートナー代表で獣医師の丸田香緒里先生に解説していただきます。
目次
- 犬の平熱は何度?
- 犬の発熱は病気?
- 犬が高体温になってしまう原因は?
- 犬が発熱しているとき、こんな症状が見られたらすぐ病院へ
- 犬が発熱しているとき、応急処置として家でできる対処法は?
- 日頃からスキンシップをする習慣をつけておくと、発熱の早期発見に
犬の平熱は何度?
犬の平熱は38〜39度で、人より2〜3度ほど高めです。ただし、この温度は安静にしているときの平熱になりますので、場合によってはもっと高くなる場合があります。たとえば、運動をした後や興奮しているときなどは、人間と同じで一時的に体温が高くなります。まずは、犬の発熱している状態や体温の測り方について知っておきましょう。
犬が発熱している状態の体温
安静にしている状態で体温が39.5度以上ある場合、発熱していると判断されます。特に40度を超えると、危険な状態と考えられるので注意しましょう。ただし、この温度はあくまで平熱時の体温です。運動時や興奮時は体温が高くなりやすいので、正しく判断するためにも愛犬が落ち着いているタイミングで測定するようにしてください。
犬の体温の測り方
犬の体温は主に2通りの測り方があります。以下を参考にして測ってみましょう。
日常生活での測り方
通常は肛門に体温計を入れて直腸の温度を使って測定します。人間用の体温計ではなく、先端のやわらかいペット専用の体温計を使うようにしましょう。他には耳道内に専用の耳式体温計を入れて測定する方法もあります。数秒で測定できるので、直腸で測る方法を嫌がる場合にはおすすめです。
出先や緊急時の測り方
体温計がない場合にも体温の異常を感じ取れるように、安静時の体温を手を当てるなどして確かめておきましょう。耳の中や腹部など毛のない部分の体温を参考にするのがおすすめです。ただし、外出時などで日光に当たってしまうと、体温が高くなってしまいます。正確な体温を測れるように必ず室内での体温を参考にするようにしましょう。平常時の体温を知っておくことで、いち早く異常に気づくことができます。
犬の発熱は病気?
犬が熱っぽい状態は、病気の初期症状のひとつです。その状態を放っておくと命に関わる場合もあります。サインを見逃さずしっかり対応するようにしましょう。考えられる主な原因は次の章で詳しく解説します。
犬が高体温になってしまう原因は?
犬が発熱している場合は、主に以下の症状や病気が疑われます。判断の基準となるサインや対処法などをそれぞれ見ていきましょう。
熱中症
熱中症は体温の調節機能がうまく働かないことで体温が下げられなくなり、さまざまな体の不調を生じる病気です。特に外出時や夏の密閉された室内にいた場合に起こる可能性が高く、放っておくと多臓器不全につながる場合もあります。そのため、早期に発見し、対応することが重要です。突然高い体温になった場合、一番に熱中症を疑いましょう。
細菌やウイルスなどの感染症
発熱している場合、細菌やウイルス、寄生虫などの感染症にかかっている可能性も考えられます。高熱とともに外傷などが見られる場合は、感染症が疑われるのですぐに動物病院を受診しましょう。
炎症性疾患
すい炎や腸炎、 急性肝炎などの炎症性疾患によって、発熱が起こる場合もあります。炎症性疾患とは特定の臓器に炎症の細胞が集まり、発症する病気です。中毒や免疫力の低下などが原因であることが多いと言われています。
悪性腫瘍
悪性腫瘍も発熱の原因のひとつです。悪性腫瘍が体内で大きくなって破裂したり、周辺組織を圧迫したりすると炎症を起こし、発熱につながります。
犬が発熱しているとき、こんな症状が見られたらすぐ病院へ
次にすぐに病院を受診すべき症状について、見ていきましょう。
体温が40度以上
犬の体温が40度を超えた場合、命に関わる危険性があるので注意しましょう。特に41度以上になると、脳障害や多臓器不全を起こす可能性が高まります。安静時に40度を超えたら、迷わず動物病院を受診してください。
長時間発熱し続けている
体を冷やしたり、水を飲ませたりなどの応急処置を施しても高熱が続く場合、動物病院に連れていきましょう。熱中症などの病気が疑われます。特に熱中症の場合、ぐったりする様子が見られたら、症化が重くなっている可能性が高いです。
激しい嘔吐や下痢、血便
発熱とともに胃腸の不調が見られる場合、嘔吐や下痢、血便のほか、食欲不振や体重低下などの症状も見られることがあります。急に病状が悪化する場合もあるので、すぐに動物病院を受診しましょう。
陰部から膿が出ている
メスで陰部から膿や血が出ている場合、子宮蓄膿症の可能性が考えられます。子宮蓄膿症は生理から約2か月後に起こることが多く、病状が進行すると発熱を伴うときがあります。食欲不振・お腹が膨らむなどの症状も見られるときは、すぐに病院へ行きましょう。
様子を見ても良い発熱は?
10分程度安静にして体温が下がる場合は様子を見ても大丈夫でしょう。しかし、長時間にわたって発熱が続く場合は病気や症状の重症化が疑われるので、必ず動物病院を受診するようにしてください。
犬が発熱しているとき、応急処置として家でできる対処法は?
愛犬の状態や発熱の原因にもよりますが、一時的な発熱の場合は、様子を見ても構いません。部屋を涼しくしながら、水を飲ませて体温が下がるか確認しましょう。発熱時に注意すべきことについて解説します。
家でできる効果的な熱の下げ方
家でできる熱の下げ方としては、アイスノンを外から触ってあまり冷気を感じないくらいにタオルで包み、内股や首の周りを冷やしてあげたり、体全体を濡らして風を当てたりするなどの方法が挙げられます。ただし、アイスノンなどを使う際は皮膚が冷たくなりすぎないように注意しましょう。これらの方法を試しても辛そうな状況が続くようであれば、すぐに病院へ連れていきましょう。
人間用のスポーツドリンクを与えても良い?
スポーツドリンクは与えても大丈夫ですが、糖分が多いのでそのまま飲ませないようにしてください。必ず水で2~3倍に薄めて与えましょう。ただし、キシリトール入りのスポーツドリンクは中毒を起こす危険性があるので注意が必要です。また、あくまで熱中症などの救急時のみ与えるようにして、普段は与えないでください。
人間用の薬を与えるのはNG
熱を下げるために人間用の解熱剤などの薬を与えようとすることがあるかもしれませんが、中毒を起こす成分が含まれている場合がありますので、犬には決して与えないでください。例えば、解熱剤などに含まれているアセトアミノフェンは犬が中毒を起こす可能性があります。
日頃からスキンシップをする習慣をつけておくと、発熱の早期発見に
発熱は病気のサインでもあるので、早期発見が非常に重要です。日頃からスキンシップをとる習慣をつけて、記事内で紹介した方法を参考にしながら愛犬の体温を把握しておきましょう。いち早く体温の異常に気づくことで、病気の重症化を防ぐことができます。発熱が疑われる場合は、すぐに体温計で測定する習慣をつけることも大事です。