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上京どうぶつ病院院長。北里大学出身。日本獣医生命科学大学付属動物病院にて研修後現職。
さといもは秋の味覚の代名詞ともいわれ、古くから日本の食卓で親しまれてきた食べ物です。なかには美味しい旬のさといもを、犬にも食べさせてあげたいという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、犬にさといもを食べさせるときの効能や適量、注意点、調理のポイントについて解説します。また、犬にさといもを与えるときの調理例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 犬にさといもを食べさせても大丈夫?
- 犬にさといもを食べさせる効能、メリット
- 犬にさといもを食べさせるときの注意点
- 犬にさといもを食べさせるときの適量は?
- 犬用にさといもを調理するときのポイント
- 犬にさといもを食べさせるときの調理例
- まとめ
犬にさといもを食べさせても大丈夫?
さといもは、犬に食べさせても大丈夫な食べ物です。さといもには、ガラクタンやカリウム、ビタミンB1などの良質な栄養素が豊富に含まれており、犬にとって腸内環境の改善や免疫力アップが期待できます。また、さといもは犬が食べられる食材のなかでも比較的カロリーが低いため、普段の食事やおやつにも取り入れやすいのが特徴です。
ただし、さといもに含まれている「シュウ酸」と呼ばれる成分は、犬にとって中毒の原因になることもあります。さといもを食べさせるときは必ず加熱して、アク成分であるシュウ酸を減らしてから与えるようにしましょう。さといもの皮は犬も問題なく食べられますが、シュウ酸を減らすためには皮を剥いて調理するのもポイントです。
犬にさといもを食べさせる効能、メリット
犬にさといもを食べさせることで、さまざまなメリットが期待できます。ここでは、さといもに含まれる栄養素と、その効能について見てみましょう。
【ガラクタン】腸内環境の改善につながる
ガラクタンとは、さといもの皮をむくときに出る特有の“ぬめり成分”で、タンパク質や食物繊維などからなる栄養素のことです。糖質の吸収をゆるやかにして血糖値の上昇を抑えたり、血中のコレステロールを減らしたりする効能があるとされています。また、ガラクタンは腸内細菌のバランスを整える作用があり、老廃物の排泄も促してくれるのが特徴です。犬にとっても、腸内環境の整備やお通じの改善などの効果が期待されています。
【カリウム】塩分の取りすぎを調節する
カリウムは、細胞内に多く含まれるミネラルの一種です。カリウムはナトリウムと連携して、体液の浸透圧を最適に保つ役割があります。余計なナトリウムを尿として体外へ排出する機能もあるので、塩分の取りすぎを調節するのに重要な栄養素といえるでしょう。また、カリウムは高血圧にも効果が期待される栄養素です。犬の場合でも不足すると脱力感や食欲不振などが起こってしまうため、食事に取り入れることで健康促進につながります。
【ビタミンB1】皮膚や粘膜を健康に保つ
ビタミンB1は、「チアミン」とも呼ばれ、ブドウ糖をエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。不足すると糖質をうまく代謝できなくなるため、倦怠感や食欲不振、筋力低下の原因にもなりかねません。犬にとっても体内のエネルギー生成に欠かせないので、積極的に食事に取り入れたい栄養素です。また、ビタミンB1には皮膚や粘膜を正常に保ってくれる効果もあります。皮膚病の予防という観点でも、摂取するメリットがあるでしょう。
犬にさといもを食べさせるときの注意点
さといもは犬にとってメリットがある一方で、デメリットやリスクがあるのも事実です。ここでは、犬にさといもを食べさせるときの注意点について解説します。
さといも中毒と尿路結石症に注意(シュウ酸)
さといもには、「シュウ酸」と呼ばれる成分が含まれています。シュウ酸は針状の結晶になっており、皮膚を刺激してしまうのが特徴です。なかには、さといもを触っていると手がかゆくなる人もいますが、これはシュウ酸の刺激が原因といわれています。犬がシュウ酸を大量に摂取してしまうと、舌や胃の粘膜が刺激されてしまいます。場合によっては、下痢や嘔吐といった「さといも中毒」を起こす可能性も考えられるので、注意が必要です。
また、シュウ酸は「尿路結石症」の原因になるともいわれています。尿路結石症とは、尿の通り道に結石ができてしまう病気のことです。尿路結石症は腎臓に強い負担を与えるため、腎臓病に発展する可能性もあります。ポメラニアンやシーズーなど、尿路結石症になりやすい好発犬種もいるので、事前に調べておくことが肝心です。
腎臓への負担に注意(カリウム)
カリウムは犬にとって必須のミネラルですが、腎臓の働きが低下している状態で摂取すると、カリウムを体外へ正常に排出できなくなってしまうのが特徴です。最悪の場合には、脱力感や嘔吐などの「高カリウム血症」を引き起こしたり、不整脈が出て心臓に負担をかけてしまったりする可能性もあります。そのため、腎臓病の既往歴がある犬や、腎機能の低下しているシニア犬には、さといもはできるだけ食べさせないように注意しましょう。
食物アレルギーに注意(タンパク質)
さといものぬめり成分には、タンパク質が含まれます。ただし、犬にとってタンパク質は、食物アレルギーの原因(アレルゲン)にもなりうる栄養素です。万が一食物アレルギーを起こすと、皮膚のかゆみや赤み、下痢などの症状が出てしまいます。どの食べ物に対して食物アレルギーが出るかは、犬の体質や今までの食事歴などによってさまざまです。そのため、さといもを与える前に、犬のアレルギー体質を確かめておくことも重要でしょう。
犬にさといもを食べさせるときの適量は?
たとえ健康に良い食材であっても、一度に大量に摂取してしまったら、消化不良を起こしてしまいかねません。犬にさといもを食べさせるときには、適量を与えることもポイントです。さといもをおやつとして犬に与えることを想定すると、おやつはフード全体の摂取カロリーの“10%程度”が適量といわれています。つまり、仮に1日の食事における総摂取カロリーが250kcalの犬であれば、さといもは最大で約25kcal分が適量といえるでしょう。
さといものカロリーは100g当たり52kcal(※水煮の場合)なので、25kcal分を与えたい場合は約50g程度(中サイズ1~2個)が妥当です。ただし、1日の消費カロリーは犬のサイズや体重によって大きく異なります。そのため、1日の食事量を事前に確かめたうえで、そこから逆算しておやつの適量を計算するようにしましょう。
犬用にさといもを調理するときのポイント
犬にさといもを与えるときには、より食べやすくなるように調理方法を工夫することが大切です。ここでは、犬用にさといもを調理するときのポイントを紹介します。
必ず茹でてから使う
さといもを調理する際に最も注意すべき点は、シュウ酸をできるだけ減らすことです。
さといもに含まれるシュウ酸は水に溶けやすい性質なので、茹でてしまえばある程度取り除けます。茹でたあとのアクにはシュウ酸が多く含まれているので、必ずアクとりをすることもポイントです。生のさといもにはシュウ酸が含まれているので、中毒症状を引き起こさないためにも、決して生では与えないよう注意しましょう。
また、さといもは表面近くに多くのシュウ酸が集まっているといわれています。さといもは皮ごと食べられるのが特徴ですが、シュウ酸をできるだけ減らしたい場合は、皮を剥いてから犬に食べさせるのも一つの方法です。
小さくカットして食べさせる
犬はよく噛んで食べるという習慣がないので、食べ物を丸ごと飲み込んでしまう可能性があります。さといものサイズが大きすぎると丸飲みしてしまい、のどに詰まったり、消化不良になったりする危険性があるでしょう。そのため、さといもを犬に与える際には、できるだけ小さく食べやすいサイズにカットしておくことも大切です。
犬にさといもを食べさせるときの調理例
犬用にさといもを調理する際は、他の食材と組み合わせたり、味を工夫したりするとより食べやすくなります。
レシピの例としては、さといもと豆乳を混ぜて、温かいスープにするのも一つの方法です。また、ごぼうやしいたけ、にんじんなどのたっぷりの野菜と一緒にお米を混ぜ合わせて、雑炊にするというレシピもあります。他には、牛もも薄切り肉やパプリカと混ぜて“すき焼き風”にすると、犬の食欲もアップするのでおすすめです。
ぜひ愛犬の好みに合わせて、栄養たっぷりのさといもレシピを試してみましょう。
まとめ
さといもは食物繊維やミネラル、ビタミンなど、栄養素が豊富な食べ物です。犬にとっても腸内環境の改善につながったり、皮膚や粘膜を正常に保ったりと、さまざまな面で健康増進が期待できる食材といえます。ただし、さといもを犬に食べさせる際には、シュウ酸を減らせるよう、十分加熱をしてから与えることがポイントです。
さといもは消費カロリーも比較的低く、ごはんやおやつにも使いやすい食材です。ぜひ栄養たっぷりのさといもを使って、きょうの犬用ごはんを考えてみてはいかがでしょうか。